見掛けで騙されてはいけませんよ



彼が転校してきたのはある寒い日の事だった。11月を過ぎた時に彼が私のいるクラスにやってきた。一年の月日の方もあっという間に残り二ヶ月を切っており、この前までいつにない連日の夏の猛暑に身体が付いていけずに体調を崩して数日間部屋でダウンしていたというのに今では気温の方もすっかり下って段々寒くなっていく中、外には冬がやってくる事を知らせる雪虫が毎年のように現れるようになったそんな日のこと。
〈×××県から転校してきた加賀谷愁(かがや しゅう)です。宜しくお願いします〉
 それが転校生となる彼の第一声だった。教卓に立つ教師の隣に立たされて誰一人知り合いもいない新たなる環境の場でこれから一緒の時間を過ごしていくクラス30人の興味深い視線を一斉に受けながらも31人目となる新たなクラスメートとなった彼は転校初日緊張した様子などなく至って淡々とした口調でありきたりな転校の挨拶を言ってきた。
 それから教師の口から早くこのクラスに馴染めるよう彼の事について簡単に紹介してくれた。彼は以前にもここに住んでいた事があったのだが、父親の転勤によってここを離れたそうだ。そして今回もまた父親の転勤で十年ぶりに戻ってきた事を伝えられた。
 転校生がやってきた。その事実は一気に全学年に伝わってそう滅多に外部の人間を受け入れようとしないこの学校にやってきた転校生の存在に生徒が盛り上がっていたのは最早言うまでもない。それはどちらかというと男子よりも女子の方だろう。他県からやってきた男の子の存在に女の子は興味津々。我よ我よと彼の側に駆け込んでいく。休み時間にでもなれば彼の周りや廊下にはどんな転校生なのかを見に来る生徒の数が暫く絶えなかった。
 以前にスポーツでもしていたのか、背もかなり高くて一段と目を引くモデル並みのルックス。まるで小動物みたいに人懐こくて笑顔が可愛い…らしい(友達談)。そんな彼の笑顔を見て胸がときめいて恋心を抱いてしまった女子生徒がいるとまで言われている。心にもない笑顔を振り撒いて全く罪な男。しかもそれに気付いているから更に質が悪い。
 でも周りがそのようになってしまうのも仕方ないといえば仕方なかった。もしも彼が普通かもしくは平均以下だったら何もここまで周りの女の子が盛り上がる事もなかったのかもしれない。転校生という物珍しさも一週間経てば彼の存在自体が当たり前となってそんなに珍しくも感じなくなってくると沈静化へと向かって大分落ち着いていくというのに。
 それが彼にとってこの現状が当たり前な事にも感じているのか、周りの異様すぎる盛り上がりようにも何ら動じる様子はなく、普段から転校の多い彼は新しいクラスでの慣れ合いも心得ており、たった一日であっという間に新しいクラスに溶け込んでいった。
 絶対騙されている、と私は思った。それは彼の見掛けに。こうして地元に戻ってくるまでは長い間何度も転校を繰り返していたせいか、人前で演じる事には何よりも長けていた。それを本人は何処かしら面白がっているところがあったりもしている。
 彼に夢中な女の子達が知るそれは人前で見せる顔、何の心にもない笑顔。誰も気付く由もない。私だって最初は気付かなかったぐらいなのだ。それが上辺だけの付き合いで見せる顔。可哀相に…。私は心の中でそんな彼女達に同情した。もしも彼の本当の顔を知ったら彼女達が抱く理想の王子様像が一気に崩れてしまうだろう。もう一瞬でがたがた。
 本当の彼を知る人は殆どいない、仮面を付けない本当の顔。私の前で見せる姿は少なくとも人前で見せる顔ではなかった。まず表で晒すのには致命傷なもう一つの別な顔を――。

 私――久坂部莉子(くさかべ りこ)は一人屋上で昼食を摂っていた。雪が降る季節以外、昼休みはいつも自由に開放されている屋上、私は雨以外だといつもここを利用させて貰っている。誰でも自由に行き来できる憩いの場。ここでは普段から友達と一緒に食べている他の生徒の姿を見掛けたりもしたが、今では全然人気がない。外はこんなにも青空で広がっているというのにここは寂しかった。寧ろ自分一人であるといった方がいい。それが以前だったら私も友達と一緒となってここで母親が作ってくれたお昼ご飯を美味しく食べていたというのに今ではもう11月を過ぎて外が寒くなっているせいか、私以外誰もここには寄らなくなっていた。外で寒い思いをするよりは中で食べた方がましだ、と友達はそのように言っていたし、それは尤もな意見だと思う。だけど私は一人で昼食を寂しく食べている。私がここにいれば必ずやってくるある人を待ちながら。私はここに足を踏み入れた瞬間からその時が訪れるのを心待ちにしている。すっかり人気者となっている以上、学校では一時間しか許されない時間。私達が誰よりも親密になっている秘密な関係。
「一人で飯食っているのも寂しいな」
 ついこの間まで当たり前のように聞こえていた楽しげな声も来年の春になるまではすっかり影を潜めてそこにはただ冷たい風のみが身体にきつく当たっていたそこからふっと上から声が突然降ってきた。そこで何気なく顔を上げてみると例の彼が私をじっと見ていた。
 加賀谷愁だ。ここには私一人しかいなかった屋上に彼の存在が突然自分の視界に入った事によって私は小さく息を呑んだ。彼がここに来るとは初めから解っていたけど、私の胸は一気にときめく。さっきまで冷たくて仕方なかった身体がぽかぽかと温かくなっていく。
「いいじゃない、別に。私が好きでここで食べているんだし」
「俺は本当の事を言ったまでだ。こんな寒くて凍えそうな寂しいところで」
「もう寒いからよ。これが暖かい時季だとここにいるのも私一人だけじゃないのよ」
「まぁ俺にはどっちでもいい事だけどね。莉子が何処で食べようとも俺には関係ないし」などと口ではそう言いつつもここから離れようとはせず、私の隣に腰掛けてくる。
「それ、酷いな」別に悪気がなくてもそのいい加減さにむっとしたのは言うまでもない。
「どうして?」何も解っていないからそのような反応が当たり前のように返ってくる。
「だって私がここで食べているのも一体誰の為だと思っているのよ」
 彼は全然私の気持ちにも気付いていない様子だったから不意に湧き起こってきた怒りを隠す事が出来ずにたまらず不満をぶつけた。もしも彼がいなければ私は今頃ここで一人寂しく食べたりはしなかっただろう。私だって一人より友達と一緒に食べた方が楽しいし、折角一時間の休み時間があるんだから無駄に使うよりは有意義な時間を使いたいものだ。
「ああ……俺の為だって言いたいの?」
 彼は思い出したように言って私を一瞥しながらへぇ…と意地の悪い笑みを浮かべていた。
「そ、そ、そうよ。全部愁の為なんだからね、私がこんな寒い屋上で一人食べているのも」それは隣から一点に向けられてくる熱い眼差しに気付いて私は見る見る恥ずかしくなってくると横からちくちく感じてくる視線から態と逸らすと忽ち掻き乱されて落ち着きがなくなっている感情を紛らわそうと手に持っていたフォークで一番最後に食べようと取っていた大好物のエビフライを口にした。「じゃないと何もこんな所で食べようともしないから」
「それなら何も屋上じゃなくても他にだってあるだろ?」
「嫌よ、それだけは」私は即答で返した。「だってここが一番リスクが少ないんだもの」
 それが人の出入りが多い暖かい季節だと話もまた違ってきたりするのだが、こうして人の出入りの少ない屋上は今の私達にとって何より持って来いの場所なのだ。確かに学校には普段から使用されていない教室が各階に幾つかあったりするのだが、でもそれら大半は内側から鍵を掛けられていて普段から生徒が入られないようになっているからそこで顔を合わすのは鍵でも盗まない限りはほぼ不可能にも近い。今は屋上という場所があるからいいものの、それが他の季節となったら私達はどのように逢えばいいのだろうか。
 ある意味私達の関係は例え友達でも決して知られてなどいけない秘密の関係だった。愁は転校初日から異常なまでの持て囃されぶりであったからあの頃からとても近付けるような状態じゃないし、例え同じクラスであっても話す機会など殆どなかった。お互い背を向けてまるで相手には全く興味もないといった感じ。まさかここに私と愁が顔を合わせている事など誰も知る由がなく、普段から余り接点などがない事からそれは意外な組み合わせである事には間違いないだろう。そんな私達が密会を毎日のように重ねているのだからもしも誰かに知られた時の事を考えるとそれはえらい騒ぎとなってしまうのは確実なのだ。
「何も考えていなさそうな割にはちゃんと考えているんだ」
 私がそこまで考えているとは予想していなかったのか、その口調は何処か感心している様子。だが、裏を返せば言葉遣いそのものは余り良くはなく、それは却って人を馬鹿にしているようにしか感じなかったりするのだが、それは彼なりの褒め言葉でもあった。
「相変わらず言葉遣いが悪いんだから」
 口ではぶつぶつと不機嫌そうに言っても実はそんなに嫌な気はしない。何も彼の性格は今に始まった事ではないのだから。もうそのまま大きく成長したっていう感じだ。
 それが彼の素、普段人前で見せているものは単なる演技。かっこよくて優しくてその上勉強やスポーツも出来るというと女の子なら誰もが抱く理想の彼氏像。ごく限られた人にしか見せようとしない、一切自分というものを演じない本当の部分は幾等かっこよくたって性格や言葉遣いが悪いし、勉強やスポーツが出来ても何より自分のルックスそのものを自覚している厄介な人。これだけに留まっているのならまだしもそれに加えて私に対してはえっちな人だと思う。私にちょっかいを出すのがほんと早かったし。
「五月蝿い女共も丁度入ってこない事もあるしな」
 それは妙に納得した声。態々寒い思いをしてまでここに好き好んで来る人はいないだろう。そもそも自分で蒔いた種であるというのに全然悪びれた様子がない性格の悪い人。
「それ、他の子にも聞かせてあげたいな」
 愁の弱味を握っている私は小さく勝ち誇ったように態と嫌味を言ってみた。自ら作り出した偽りの彼に夢中になっている純な女の子達に。すっかり表面上の見掛けだけに騙されてそれを信じている女の子達に。本当の彼が一体どういう人なのか全然知らないんだから。
「聞かせてどうする?」と、試しに興味深そうに訊いてくる。
「ライバルを蹴散らす為よ」
 私ははっきりと宣言した。私の周りには今でもライバルが多い以上、何かあった時には手段を選ばないのかもしれない。彼がほんと余計な事をしてきたからそれは見て明らかな邪魔な存在。彼の本性を暴露させる事でイメージをダウンさせてライバルそのものが彼の側からいなくなってくれればこっちはどんなにほっとする事か。この関係が秘密になっている以上、普段の私は全然興味のなさそうな振りをしていても本当は全然気が気じゃないのだ。休み時間になると私はいつも耳をダンボにして教室から漏れてくる会話をじっと聞いたりもしている。一瞬でも見逃そうとはしない。私は案外独占欲が強いのかもしれない。
「ヤキモチ焼きな奴」すると愁はくすっと小さく笑ってちゅっと軽く私の唇にキスをしてきた。「可愛いな、莉子は」これで一気に気を良くしたのかもしれない。見る見る表情が緩んできて上機嫌になった愁は人懐こい笑顔を向けながら私を優しく撫でてくる。
「なっ…。不意打ちは卑怯よ」
 私は思わずたじろいでしまい、手にしていたフォークをアスファルトの上に落としてしまった。突如やってきた思わぬ攻撃に予想していなかった私は一気に顔が真っ赤になって冷たい風に晒されている事で外の寒さにすっかり冷え切っていた筈の身体が反比例するように熱くなっていった。寒い青空の下、小さな炎が身体の奥にひっそりと宿った。
「何も今更恥ずかしがるような事でもないだろ。このぐらいまだまだ可愛いもんじゃないか。莉子もキスぐらいでがたがた言うな。もう俺とはヤッちまっているんだしよ」
「愁!そんなストレートに言わないでよ。もしも誰かに聞かれたらどうするの?」
 幾等事実であっても聞いているこっちの方が恥ずかしくなってくる。愁は平気で恥ずかしい事をあっけらかんと言ってきても私は何もかも彼と一緒ではないのだ。不意に愁と身体を交わった日を思い出して私の身体はまた違った意味で熱くなっていった。
「何純情ぶっているんだよ。莉子は俺の×××咥えてひーひー啼いていたじゃん」冷ややかな視線を送りながら自分の知る事実と全く異なった現状に愁はすっかり呆れ返っている。
「あ、あれは愁が離してくれなかったからよ。まるで私がえっちみたいじゃない」
 私は顔をタコみたいに真っ赤かにさせながら慌てて否定する。はっきり言ってそれは言いすぎだ。私は彼が思うよりそんなにはえっちな子ではないと思っている。そう信じたい。
「そのままエロいだろ、莉子は。普段はそんなふしだらな事には興味ありませんって顔をしているくせにそういうの大好きだし、えらいぐちょぐちょになって感じまくっているし」
「そ、そんなに私は酷くないわよ!間違った言葉を使おうとしないで!」
 全然自分の考えを変えようとしないから私は強く反発した。変に誤解されてしまっては正直困る。だけど愁に言葉で攻められている現状にそれは気分を悪くするどころか却って身体が変な反応を示している事に内心私は困惑の色がじわりじわりと強くなっていった。
「何せ俺がたっぷり可愛がってあげているんだからな。そりゃあ当然だろ?」

 彼が転校してきた日に初めて愁がくれるキスの味を知った。それは私の部屋でベッドの上で。惹かれ合うまま私達は初めて唇を静かに重ねた。両親が共働きで夕方になるまでは戻らず、そこには私達だけしかいないところで誰にも気付かれぬまま私達は生まれて初めてそれ以上の深い関係となった。それは自然の成り行きで、ふと気が付けば私は愁に身体を許していた。愁は私の身体を目茶苦茶に掻き回して何度も何度も侵していった。
 特別怖くはなかった。私にとって愁が初めてではあったけれど、不思議と初体験に対する恐怖心は抱かなかった。それが以前なら両耳を押さえて閉ざしたくなる程怖い怖いって言っていたくせに。もう友達の何人かは既に初体験を済ましている人もおり、一足早く脱皮したそんな友達からの体験談は雑誌での特集よりも遥かにリアリティがあってまだ処女だった私に大きな衝撃を与える程だった。だが実際に自分がその場に立ってみるとなるとその感触もまた全く異なるものだった。何も痛くなかったという訳じゃなかったけれど、それは痛さそのものよりも愁が与えてくれる快感の方が群を抜いて上回ってしまっていた。
 私はもしかしたら愁に大きな信頼を寄せていたのかもしれない。この人なら大丈夫だろうって。この人なら一緒に歩いてもいいのかもしれないって。だからこそその先にあるまだ一度も開けた事のないドアを開く事を許した。私の初めてを愁に全部あげた。
 学校にいた時は全く素知らぬ顔を貫き通してこれっぽっちも関わろうともしなかったのに実は顔見知りだったりするのだ。愁は十年ぶりに高校で再会した私の幼馴染み。この事実はまだ私達だけしか知らないのだが、実は昔、愁は私の家の近くに住んでいてその頃はよく一緒に遊んだりしていた仲なのだ。だが、それはもう十年も前の事だったし、それから何の連絡のやり取りすらなかったものだからまさかその時に別れた幼馴染みであった事には結び付く事もなく、私は直接本人に言われるまで全然気付こうともしなかった。彼は学校で初めて私を見た時から瞬時に私があの頃に一緒に遊んでいた『りこ』だと判ったというのに。それなのに私は愁を『しーちゃん』であると全く見分ける事が出来なかった。
 転校初日、私の家の前に立っていた愁。いつ帰ってくるのか判らない私を一途に待っていた彼。もう十年も経っているのに私だけじゃなくて家までちゃんと記憶していたのだ。
 転校生の存在に私は驚いた。その時はまだ幼馴染みであった事には全然気付いていなかった訳だし、先に帰った筈の彼がどうやってここに来たんだろうかそれが不思議で仕方なかったのだが、十年前まで一緒に遊んでいた幼馴染みであった事を告白されると今現在を知らなくても十年前である『しーちゃん』をちゃんと覚えていた私はすんなりと納得した。現に彼は親も知らない私達だけにしか知らない事もちゃんと知っていたのだから。
 この時まで何も気付かなかったとはいえ、それは思わぬところで幼馴染みとの再会を果たしたものだから私は純粋に嬉しく、思い出に華を咲かせたくて部屋に入るよう誘ったのだが、まさかここで幼馴染みの関係から一気に進む事になろうとは思いもしていなかった。

 軽く何度も啄みながら優しいキスを繰り返していく内にぬるりとした生々しい感触が割って入り込んでくるとそこからどんどん深くなっていく。私の口内に侵入してきた愁の舌が私の舌をねっとりと絡ませて縦横無尽に動き回りながら私を乱してくるソレに犯されながら強く吸い上げられると心が震える。私はそんな彼に付いていくのだけでも精一杯。私に合わせたゆったりしたスピードで甘い唾液が流れ込んで彼の味でいっぱいに満たされる。
「しゅ、しゅう」もうキスだけで私は頭がぼんやりとしていた。「んっ」彼の熱い唇は肌の上を這ってふっと吐き出される吐息に優しく撫でられると私の身体が自然と震えた。
「この時点からもう真っ赤かになっているから色々と教え甲斐があるな、ほんと」
 私の唇を美味しく味わっていた唇からからかいを隠せない声でそっと耳元で囁くと愁は耳朶のラインを舌先でなぞりながらちゅっと強く吸って口に含んできた。
「あっ、ん…しゅう……」
 本当は気付いているくせに。私の身体を自分のモノのように操るのが巧い人。愁がしてくれるから花が鮮やかに咲き開く。愁が私の身体に火を点けて熱くさせるのだ。
「だ、駄目だよ、こんなところで。もしも誰かに見られたら言い訳できないよ」
 ブレザーの上から一際目立つようにぼんと飛び出して膨張している胸を包み込むように触れている手に気が付いて私は慌てた。愁はこんなところでしたいと思っているのだろうか。彼はその上から探り当てるように中心にある先っぽを摘んできゅっと力を入れてきた。
 私はまた不意打ちを食らわされてしまい、この目には届かないところでじわっと熱く感じてしまう。愁に触れられればスイッチが簡単に入ってしまうから困ったもの。見え隠れしている甘い疼きに反発できるような力など全くなく、私はそのまま流されてしまう。
「別にいいんじゃないの?この事実が周囲に明るみにされても」
「んあぁっ。だ…んめっ」
 自分の身体に触れようとしてくる手を退かそうとしたが、目の前で呆気なく弾かされてしまって全てが空回り。片手で押え付けられると上に持ち上げられるような形で高々と聳え立つフェンスに押さえ付けられていた。そこで私が抵抗する事は一切許されない。
「駄目じゃない。莉子が俺を可愛く誘ってきた罰。俺がこのまま我慢できるとでも思う?」
「…………………………」
 できないのかも。愁が転校してくるまで十年間、その日まで全く顔を合わせる事もなければそれまで全く違った環境を送っていたものだからそこには見て明らかな大きなブランクがあったにしてもこの数週間一緒に側にいる事で大体彼の性格も徐々に解ってきた。この場合、疑問系で言ってきた時は自分を抑えられませんよという意味にも繋がっている。
「や…んっ、誘ってなんか、ない。で、でも、こ、こは……」
 第一私達は屋上にいるのだ。もしもここが自分の部屋ならすんなりと彼を受け入れられたのかもしれないが、幾等外が寒くて今や屋上での使用率が極端に減ったにしてもここが学校という公共の場である以上、必ずしも人が100%来ないとは限らなかった。それにここは外だ。外でそういう事をやった事がないせいか、恥ずかしくて少々抵抗感がある。
「でも俺の目には誘っているように見えたから正直にそう言ったまでだけど。だったら今度は場所をちゃんと考えて気を付ける事だ。俺を手懐けるのはそう容易くないんだからな」
 にやっと笑ってくると私の唇をまた奪って直ぐそのナカに入り込んできた。それはまだ余計な考えを持っている私にそのような余裕を一切持たせないようにこの小さな空間に踏み込んで蹂躙されていって私はそのまま彼が与えてくるその流れに呑み込まれていく。
「はぁっ……ああっ、あ…っんんっ……」
 外は寒くて仕方なかった筈なのに私の身体はそれらを吹き飛ばす程に身体が熱くなるのを直に感じていた。先程まで寒かった筈なのに今では全然寒くもない、熱くなった体温が遥かに上回っていたから。私の身体は自分の感情よりも何より素直な反応を示してくれる。もうそこで私が余計な抵抗しない事をその反応を見て感じ取ったのか、愁はフェンスに押さえ付けてそこから逃れないように縛り付けていた手もいつしか解放されていた。
 シャツのボタンを外され、外の冷たい風に晒されて露わにされた肌の上から彼の舌が私の身体をなぞってきた。丸く膨らみのできた付け根からゆっくりと押し上げるように頂点に上り詰めてくると乳首をぺろっと舐めて擦り付けてきた。一度口に含むとちゅっちゅっと態と音を立てて私に聞かせるように赤ちゃんのように吸ってきては全く相手にされなくてすっかり拗ねてしまっているもう一方には指の肉でソコを転がしてくる。痛いぐらいに硬く突き上がっているソコを擦られ弾かれて私は自分自身を抑える事が出来ない。
「やっ、あっ……んっぁあはぁぁっ」普段の私の声にはまず出てくる事のない声がこの口から漏れてくるとそれは彼の思うままに導かれていく。「あぁっ…あんっ、ああっ」
 愁は私の知らない一面を引き出していくのが上手だと思う。私は愁に身体を許すようになってからいい意味や悪い意味も込めて色んな部分を知っていった。自分の身体は自分が誰よりも知っている筈なのに私の知らない部分に関しては愁が一番よく知っている。
 愁はもう気付いているだろうか。本当はこんなところで出したくなかったのに愁が私の身体にちょっかいを出してきたから見る見る私の身体はえっちになっていくのだ。もう私の恥ずかしいところはすっかり出来上がっている。まさかここでこうなるとは予想にもしていなかったから下着の替えすらも持ってきていないのに赤のチェックで可愛くデザインされたショーツには染みを作られてしまい、熱く蕩けるような濡れた潤いが増している。
「ほら、ぐちょぐちょだ」
 微妙な私の変化に気付いた愁はするりとスカートの中に手を入れてその上から濃密な香りが漂いつつある秘所に指を強く押し付けるとナカから言い訳の出来ない蜜が溢れ出てしまい、じわっと布地に大きく染みが広がってくるのを直に感じて私は恥ずかしくなる。
「やあんっ」私は首を横に何度も振る。「違う…こんなの全然違うよ」本当は気付いている私の身体、だけどそれはからかいの対象のネタとされるから私は必死に抵抗する。
「違う?こんなになっているのにか?」理解できない眼差しを向けながら彼の太くて私を掻き乱す指が僅かにできた隙間から滑り込ませて入っていくとくちゅっとえっちな音がして彼の指を抵抗なくすんなりと奥に呑み込んでいく。「それとももっと凄いって意味?」裂け目の奥に入り込んだソレは静かな抽送を繰り返しながら私が感じるところを捉えて強く擦り付けていたのにやがて二本に増えるとそれは倍となって新たな快感を生んでいく。
「んはぁぁっ、んあぁっ、はぁ…はぁ…っ、どっちもっ、んあっ……ち、違う…よぉ……」
「嘘吐き。それが違うんなら何もこんな事にはならない筈だろ」
 明らかに反抗的な態度を示す私に呆れて愁は中心に埋まっていたソコから指をずるっと引き抜くと身体のナカで起きていたこの異常さを見せ付けてきた。すると私の目の前に差し出してきた二本の指は愁が意地悪されてきた事で湧き起こってきた私の蜜によって指の付け根までどろどろに絡み付いて滴るようにまだ汚れていない綺麗な手まで汚していた。
「やだぁ」はっきり否定できないこの現実に耐えられずに私は両手でその先に映り込む視界を見ないように隠そうとしたが、またしても愁が咄嗟に動いて抑え付けられたので私はこの現実から一度も逸らす事が許されない。「もうそんな意地悪しないでぇ」
「意地悪も何もそれが事実。何もここは嘘吐いていないんだ。正直だろ、お前の身体は。常に俺を求めていやがる」愁はにんまりと満足そうに笑みを浮かべながら「こんなにも可愛い反応をされてしまったら我慢できる訳がない。だからこそ俺も欲しくなるんだよ」下ろされたジッパーの奥から出てきたモノは何処にも隠す事ができない怒張した大きな塊。
「んああはあぁぁぁっ!」愁が与えてくれた愛撫によってずんと一気に深々と入り込んでくる衝撃に私は一瞬真っ白になる。「んあぁ……っ、あんっ…あんふうっぅんっ……」
 私の身体を持ち上げながら後ろから激しく突いてくる。愁の指よりも太くて私をこの上ない快楽へと促してくれる逞しいモノが上下に動いて私の身体を容赦なく刺激してくる。
「あぁっ!あ、あ、あんっ!あぁぁっ!」
 行き止まりにぶつかるのを解っていながらも鋭く突いてくるその衝撃にかかってくる振動が大きく、時々結合が外れそうにもなった。愁は何度も何度も抉るように肉壁を強く擦り付けては勢いよくぶつかってくる。後ろからされるのは今回が初めてだった。私は今までに感じた事のなかった快感に何度も襲われてがくがくと身体に震えが起きても私はこの身に起きてくる己の欲望を次第に抑えられなくなっていき、その先に少しでも早く入ってくれるよう私は腰を振って一回り大きくなった彼のモノをそっと導いていく。
 何処かで螺子が取れてしまうと自分の手ではもう止められないのかもしれない。このような晴れた空の下、屋上では幾等私達だけしかいなくてもここで行われたやり取りそのものの会話を何処にも聞かれていないとも限らないというのに私は抑える事ができずに愁しか知らないまだ誰にも聞かせた事のない声がこの口から漏れてしまう。それを彼以外の人にこの声を聞かれたら恥ずかしい。もしもこの声で変な想像をされただけでぞっとしてしまう。だけどそこまでの余裕がすっかり消えてしまって今は何も考えられなかった。
「全く…きつく締めようとすんなよ。直ぐに出ちまうだろうが」
 私に文句をぶつけながらもその口調は何処か嬉しそうで喜びを隠せないでいる愁。今はどのように私を見ているのだろう。後ろで繋がっているから今の表情を見られないのが正直残念。正面でちゃんと向き合っていれば今の彼の表情を見られる事が出来たというのに。
「し、知らない。そ、そんなの勝手に…あぁっ!」愁は私に喋る隙すらも与えたくないのか、透かさず後ろから強く叩き付けてきたので一瞬でも気を許して不意を突かれてしまった私はたまらず声を揚げてしまう。「やっ……あっ、しゅ、しゅう……」
「舌噛んじまうのかもしれないからなるべく口をきつく縛っていろ」
 それは鈍い音。突き破りそうな勢いで行き止まりになっているソコをきつく叩いてきた。私の初めてを奪った時みたいに一気にソコ目掛けて彼のアソコが透かさずやってくる。
 そんな無茶苦茶な、とさえ私は思ったが、彼が止めない限りはそれを守れそうにない。
「やっ……ぁっ、ぁぁっ、んやぁぁっ」
 ずしずしと振動が間を殆ど置かずにやってくるものだから私達が一緒になるように繋がったところから締め付けが起きてきてこのような狭いところではきつく圧迫しながらも彼のスピードは衰えるどころか益々上がっていくばかりで次第に私は追い詰められていった。
「やっはあぁっ、あ、あ、やはぁっあぁっ………」
 もしもこんなところを彼の好きな子が見てしまったらどう思うんだろう。誰も人前で見せる演技に気付かぬまま女の子の心を鷲掴みにして転校初日から人気を一気に掻っ攫っていった彼のこんな一面。私と一緒になって腰を振って突き上げている愁を見てしまったら。どんな反応を示してしまうのだろうか。私のアソコに彼のペニスを咥えて呑み込んでいる姿は、やがて訪れるその瞬間が押し上げられるように欲望を私に放つ姿を見てしまったら。
 でも、それは見せたくないのかもしれない。こんな彼を知っていいのは私だけなんだから。私しか見たらいけないんだから。このようなものは一発で隠されていた私達の関係がはっきりと証明される事であっても私のナカに膨れ上がって爆発した証を全て吐き出した後で彼が見せてくれる少し長い前髪から覗かせる恍惚とした表情は私だけが許されるものなんだから。他の人には絶対見せたくない。この瞬間を迎えられるのは私だけのもの。

「このまま授業を受けるのもどうも気が引けるな」全てを終えた後、乱れていた制服もきちんと整えてここでした事実も綺麗に証拠隠滅させてからぽつりと洩らした彼の一言。
「どうして?」
 私は意味が解らずに首を傾げた。一時間という昼食も含めた長い休み時間もあっという間に過ぎ去って残りの時間も僅かとなってもうそろそろ教室に戻らないと先生が来てしまうというのに彼は私を強く抱き締めたままなかなかここから放してはくれなかった。
「そんな火照ったままの顔で教室に戻ったら野郎共に変な目で見られるだろ?」
 それは滅多に私の前で見せようとしない独占欲を垣間見た瞬間でもあった。





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ありがたいことに、相互リンク記念小説なるもの頂いてしまいました。
ゆかさんリクエストに応えてくれてありがとうございますw

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