続・優しく甘くささやいて



部活も終わりに近づくと空は薄暗くなってきていて、体育会系の部活の部員達の声が響いていた運動場からは、少しずつ聞こえてきていた声が少なくなってくる。
放送室で放課後を過ごしていた私は、部長の解散の声の後置いてあったカバンを自分の手元に持ちながらチラチラと他の人に気づかれないようにある人を見ていた。
その人に一緒に帰ろうと声をかけたいのに隣にいる女性陣の姿に圧倒されて目的を達成することが出来ない私。
結局いつも2人で帰ることは出来ないでいるけれど、付き合うことになったわけだから恋人同士として放課後帰るというのはちょっとした憧れがあったりする。
そう、私がさっきからチラチラと見ている相手は、今でも信じられないけど気持ちが通じて付き合うことになった彼。
でも、まだ友達や部員のみんなには言っていない。
何故かと聞かれても、何故だろう?としか答えることか出来ない、かな。
ううん、違う、本当は分かってるのどうしてみんなに言えないか。
いまだに彼と付き合うことになったことが信じられなくて、実感できないからだと思う。
付き合いだしたといっても特に今までと何かが変わったわけじゃない。
彼とクラスも違うから会うのは部活の時だけ。
お互い好きだと知ったあの日から1ヶ月経つけれど休みの日に出かけたりも、ない。
男の子と付き合うということが初めての私は、どういう風に彼に接したらいいのかがまったく分からなくて、今までと同じように遠いところから眺めてるだけ。

私達付き合ってるんだよね?
彼女達みたいに私あなたの隣に立っていてもいいんだよね?
1ヶ月も経つのに彼の隣に立つことも出来ないなんて、あの時の彼の言葉は私の願望が見せた夢だったのかな?

そういう風に思ってしまうのは、私が彼の彼女だと自信をもっていえないせいなのかも。
やはり変わらず私の目の前で女の子達に囲まれている彼とは2人で帰れそうにはなくて、いつもと同じように部員みんなで帰ることになってしまった。
私が所属している放送部は、少人数というほど人数が少ないわけじゃないけど、盛んな運動部のように人数が多いわけでもない。
でもそのせいか部員仲はいい方だと思う。
意地悪をするような人もいないし、楽しい部活生活が送れている。
だから余計に思ってしまうのかもしれない、あの日の出来事は夢だったのかもしれないって。
いつもと変わらない彼、いつもと変わらない私。
いつもと同じように彼を見つめているだけの私。
私はあなたの彼女になったんだよね?と言うことも出来ない私。
暗くなった帰り道をみんなと帰りながら前を歩く彼の背中を見つめるだけの私。
そんな私のことに気づいてくれる様子もない彼・・・・。












この授業が終わったら昼休みだな。
今週は当番の日だから放送室にいかないと。

そう思っていた時、タイミングよく鳴り響くチャイムを聞いた後授業が終わり、お弁当を手に持ち放送室に急いだ。
放送室に着きドアを開けるとまだパートナーは来ていなくて、とりあえず昼休みに流す曲の準備を始めることにしてCDを見ていると、閉めていたドアが開く音が聞こえて振り向くとそこには、当番じゃないはずの彼が立っていた。
「今日、当番じゃ、ないよね?」
「うん、当番じゃないよ。
でも、変わってもらったんだ。」
「変わってもらった?」
「そう。
ほら、そんなにボーっとしてたら昼休みが終わっちゃうぞ。」
「え、あっ。」
「今日はどれかけようか。」
「あ、あのっ、これに、しようか、と。
あっ!」
「おっと、大丈夫?」
「うんっ、大丈夫!
早くしないと昼休み終わっちゃうね!」
CDを彼に見せようとすると私の手から落ちそうになってしまって何とか落とさずに済んだのに、こんな所でと思ってしまうおっちょこちょいな私が出てしまって、折角落とさなかったのに自分の身体のバランスを崩してしまった。
コケる!と思っていた私を彼がすばやく抱き止めてくれ、私は彼の腕に抱かれる形になってしまった。
私はそのことにすぐに気がつき、驚きのあまりすぐに彼から離れ手に持っていたCDを流すために機械の前に座り、身体を固めてしまう。
音楽が流れだす中、彼が私の隣に腰かけたことに気づいたけれど、隣を見ることなんて恥ずかしくてできなかった。

もうっ、何でこけるのよ私ったら!
しかも彼に急接近だし!!
心臓が、心臓がバクバクいってるよぉ。

「どうして変わってもらったのか聞かないの?」
「ひゃっ!あー!!」
耳元で彼が私の大好きなテノールで優しく私の耳に心地よく響く声で耳元でささやく。
突然のことに驚いた私は、思わず音量のスイッチを最大にしてしまい、そのことに気づいた私はすぐに元の音量に戻したけれど。
「そんなに動揺するくらい俺の声が好きなくせにどうしてよそよそしくするんだろうね。」
「え?」
「さすがにね、付き合いだして1ヶ月もよそよそしくされたら俺も傷つくよ。」
彼は私の横髪に触れながら言うからますます私の心臓は早くなってしまう。
「もしかして声だけが好きでつきあう気はなかったの?」
「そんっ、そんなことない。」
「そう?」
「うん!
だって、声が好きなのは確かだけど、それだけで一緒にいたいなんて思わないもん。
それに、私の方こそ本当に私なんかでいいのかなってずっと思ってた。
だから、話しかけることもできなくて。」
「そっか、それなら俺の不甲斐なさが原因だったんだな。」
「そんな、私が自分に自信がないからどうすることもできなかっただけで。」
「どうして自信がないなんて思ったの?
俺は好きだからつきあいたいって言ったのに。
でも、そういう風に思わせたのは俺の不甲斐なさだよ。
珍しくためらってたからな、もしかしたら無理に好きだって言わせてたのかもって。
初めてだよ、女の子とつきあうのに慎重になったの。
何でだか分かる?」
「分かん、ない。」
本当に分からなくて素直にそう答える私に彼はクスッと笑った後、私の横髪から手を離した。
「好きだから、だよ。
だから、慎重になり過ぎちゃったんだ。
三輪(みわ)は俺のこと好き?」
「私も曽我(そが)君のこと好きだよ!」
「良かった。
これからは、お互い遠慮はなしにしような、付き合ってるんだし。
ということで、今日は俺と一緒に帰ること。」
曽我君は笑顔で私がずっと思っていたことを提案する。
一緒に帰る、それは私がずっと望んでいたことだから反対する理由はない。
だから私はすぐに返事をした。
「うんっ、一緒に帰りたい!」
「じゃ部活が終わったら一緒に帰ろうな。
これは約束の印だよ。」
「っ!」
曽我君は約束と言って私のおでこにキスをした。
突然のことに私は顔を真っ赤にさせて身体を固めてしまう。
そんな私の様子を曽我君はクスッと小さく笑った後、
「そんなに顔を真っ赤にさせたらリンゴみたいだね。
俺に食べてほしいのかと思ってしまうけど、今のところは我慢することにするよ。」
そんな大胆なことを曽我君は言っていたけど、動揺が最高潮の今の私の耳にはまったく聞こえてはなかった。



その日の放課後、つきあいだして1ヶ月にして初めて彼と2人で帰ることにができた。
これからは、彼のそばにいることが出来ることがとてもうれしい。
でも1つだけ心配事が。
彼の声を耳元で聞くことが多くなった私は、ドキドキすることが片想いの時より増えてしまい、 心臓がおかしくなるんじゃないかと思う毎日を過ごしていたりする。


+おわり♪+


90万HITキリリク小説です。
リクエストは、「優しく甘くささやいて」の続編をということでした。
続編をという声がいくつかあったこの話ですが、なかなか書くタイミングといいますか、頭の中に話が浮かんでこなかったといいますか。
でも、今回キリリクでリクエストをもらってみると、話が浮かんできたんですから不思議なものです(笑)

今回、リクエストをくれた水谷ゆかさん、この話を書くきっかけをくださってありがとうございました。
リクエストにきちんと答えることが出来ているか不安な気もしますが良かったらもらってやってください。





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