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優しく甘くささやいて

空は雲ひとつない青空。
スカイブルーというのがピッタリな空。
そんなステキな日なのに、私は頬杖をつきながらダミ声の数学教師の授業を聞いている可哀想な状況。
でも、私の視線の先は数式だらけの黒板じゃなくて、運動場で走り回りながらサッカーをしている男子生徒の風景だ。
しかも、その中で1人の男の子に視線はピッタリとピントを合わせ、彼の動きに目だけがキョロキョロ動き、姿を逃すまいとしている。
私の視線を捕らえて離さない彼は隣のクラスの住人。
そして、中学から私と一緒の『友達』。
友達といっても彼がそう思っているだけで、私は違う。
いや、友達ではあるんだけど、友達以上に思ってると言った方が正しいのかな。
いわゆる彼は、私の『大好きな人』、なんだよね。





彼を好きになったキッカケ、それは中学に遡らなくちゃいけない。
中学2年生のいつもの昼休み、私は友達と机を向かい合わせにしてお弁当を食べていた。
その時、校内放送が始まり、スピーカーからは、今まで昼休みに聞いた事がない声の持ち主が、心地のいいバリトンの声で今日かける音楽の説明をする声が響く。


何この声!?


今まで聴いたことがないほどのいい声。
胸がドキドキしてきた。
この声の持ち主は誰なんだろ?
私はスピーカから聞こえなくなった声の主を、代わりに聞こえてきた音楽を聞きながら一緒にお弁当を食べていた友達に聞いた。
友達からの返答に驚いてしまった私は、思わずコントのように椅子から転び落ちそうになってしまった。
だって、驚きもするわよ。
声の持ち主は同じクラスの男の子だったんだから。





私は自分で言うのもなんだけど、かなりの声フェチだと思う。
芸能人も顔がいくら良くても声が嫌いなら好きになれない。
みんなが騒いでるアイドルだったとしてもね。
そんな私の心の中にストンと入り込んできた声。
今まで聞いたことがないくらい私には心地いい声だった。
驚きなのは、声の主がいつも同じ教室で授業を受けている彼だったということ。
だって、彼とはそんなにはなしたことないから気づかなかったんだものっ。





中学2年にスピーカーから流れてきた彼の声を聞いてから3年。
それと同時に、彼に片思い歴3年の私。
偶然にも同じ高校にだった私達は、同じ中学出身ということもあり、親しくと言っても、挨拶をしたり、教科書を貸し借りするくらいなんだけど、中学校の時よりも、話をするようになった。
そして私は、何とか彼との接点を増やすべく、彼と同じ部活である放送部に入部した。
でも、彼の周りにはいつも誰か女の子がいる。
そう、彼は声も良ければ顔も良い。
女の子がほっとく訳がないんだよね。
部活に行っても、必要最低限なことしか話せないでいる私と違い、ほかの女の子達は、積極的に彼にアプローチをしている。
その姿を見て、私も積極的にならなきゃと思いながらも、焦れば焦るほど、話すことが出来ない。
たちが悪いことに、焦ってしまう私は、彼の前でつまずいてみたり、物を落としたりと、落ち着きがないせいで、おっちょこちょいな子だと思われている。と思う。
確かに、そんなに落ち着きがある方ではないんだけど、彼の前では特に、おっちょこちょいな所を見せてしまう。
うまく話せない上に、おっちょこちょいな所ばかり見せちゃうなんてホント情けない。









サッカーを楽しそうにしている彼を見るのは今日だけじゃない。
窓際の席になってからは、彼が体育の授業のたびにその姿を見ている。
ゴールを決めた彼を見て、思わず大きな拍手しそうになったけど、授業中だから音が出ないように、両手を合わせて指先だけで拍手をした。


え?こっちを見てる?
しかも手振ってる!?


心ばかりの拍手をしたばかりの私に、彼は笑顔で手を振ってくる。
拍手をしたのは分からないはずなのに。
彼に答えるべく手を振ったほうがいいのかと思いながらも、授業中だし。
でも、振り返さないとっ。と、胸をドキドキさせながら頭の中で考えていると、前の席に座る同じ放送部の女の子が手を振り返している。


そうだよね。
私にじゃないよね。
それなのに、手を振り返そうとした自分が恥ずかしいっ。


手を振り返そうとしていた私は、自分がしようとしていたことが恥ずかしくて、ずっと見ていた彼から視線を外し、上げかけていた手を自分の膝の上に置いた。












放課後、部活に行きたくなくて仕方なかったんだけど、サボることができるほどの勇気もなくて、1人トボトボと部室までの道のりを重い足を何とか持ち上げながら向かった。
部室に着くとまだ誰もいなくて、私はため息をつきながらパイプ椅子に座り、机の上に両腕を乗せ、そこに自分の頭を乗せた。
思い出したくなくても数学の授業での出来事を思い出してしまう。
彼が私に手を振ってくれるなんてことを思うなんて。
そんなことしてもらうほど彼とは親しくなんかないのに。
私と彼はただ中学が一緒で、部活が一緒なだけ・・・。
3年も片思いをしていて、3年前から彼との距離を近づけることが出来ない私。


何やってるんだろ?
彼はモテる。
気づいたら彼女が出来ているなんてことがかなり高い確率でありうる。
その時私は平気?あきらめられる?
分かんない。
考えられないよ・・・。
でも、自分に自信がなくて、一歩を踏み出すことが出来なくて・・・。


「眠いのか?」
「ひゃっ!?」
落ちこんでいる私に耳元で大好きな声でささやく人がいる。
彼に急に話しかけられた私は、パイプ椅子を倒し、勢いよく立ち上がる。
彼のことを思っている時に急に登場されて動揺してしまう私。
「そんなに驚かなくても。」
彼はクスクス笑っている。
「驚くよ、そんないい声で耳元にささやくように話しかけられたら。
いつも話しかけてくる時は耳元にささやいてくるけど癖なの?」
そう、彼はいつも私に話しかけてくる時はいつも耳元でささやくように話かけてくる。
私が落ち着きなくなる原因にもなっている。


だって、大好きな彼に、大好きな声でそんな風に話しかけてこられると、心臓がバクバク外に聞こえそうなぐらい動くんだよ?
動揺もしますよ。


「まー癖と言えば癖かもな。」
「そうなんだ。
ところで今日はみんな遅いね。」
何とか自分を落ち着かせてパイプ椅子を元に戻しながら言うと、
「そりゃそうだろ、みんなには休みになったって連絡したんだから。」
と、いたずらっ子のような顔をしながら彼は楽しそうに言う。


え?休みなの?
何の連絡もなかったんですけど!?
もしかして、仲間はずれ?


「今仲間はずれと思っただろ。」
「うん、思った。
何で分かったの?」
「顔見たら分かるよ。すぐ顔に出るから分かりやすい。」
「えっ、え?」
私は彼の言葉に思わず自分の顔をぺたぺたと触ってしまう。
「2人でゆっくり話をしたかったからみんなに嘘ついたんだ。」
彼は、またいたずらっ子の顔でぺろっと舌を出す。
「さて、本題に入ろうか。」
「本題?」
「そう。
今日俺の体育の時間手を振ったのに振り返さなかったね。
それまでは俺のことじっと見てたのに。」
「えっ、私に手を振ってくれてたの?
というか、私が見てたこと気づいてたんだ。」
私は彼の言葉に思わずうつむきながら答えてしまう。
「そりゃ気づくよ。いつも俺のこと見てるだろ?
視線をビシビシ感じるからな。」
「そ、そうなんだ。
ごめんね、迷惑だったでしょ?」


気づかれてたなんて・・・。
きっと嫌だったからそれを今日言うためにみんなが来ないようにしたんだろうな。
もう、見ることも駄目なのかな・・・。


彼の言葉にグルグル悪い想像だけが膨らんできて、鼻の奥がツンッとしてきて、身体から力が抜ける。いや、これは脱力感。
「おーい、何で泣きそうなんだ?」
彼はうつむいている私の顔を覗き込もうとする。
でも、今にも泣き出しそうな私は顔を見られるのが嫌で、顔を背けてしまった。
「何で顔を背けるんだよ。」
「だって・・・。」
彼は少し怒ったような口調で聞いてくる。
「嫌だったんだよね。ごめんね、ずっと見ちゃって。
これからは見ないようにするね。」
私は、涙で声が震えださないように、ゆっくりとでも、小さな声で彼に伝えた。
すると、気づいたときには私は彼の腕の中にいた。
私の顔は、彼の温かい胸に触れている。
突然のことに驚きすぎて、身体を動かすことが出来ない私に、
「気づかなかったのか、俺もお前のことが好きだって。」
「え?」
「お前が俺の声が好きだって聞いたから、意識して欲しくていつも耳元でささやいてたんだぞ?
それを、こんな勘違いされるなんてな。
まー、俺もきちんと言わなかったのがいけなかったのかもな。」


カレハナニヲイッテルノ?


「で?返事はもちろん俺が欲しい返事をくれるんだろ?」
私は話の展開についていけなくて、パニック状態の頭の中をますますパニックにさせ、膝から力が抜けてしまう。
そんな私を彼は支えてくれるけど、
「え?ええ〜っ、なっ、ええ〜っ!?」
私の口から出るのは、言葉にならない声だけだった。
「今のは返事じゃないぞ。ちゃんと返事が欲しいんだけど。」
彼はクスクス笑いながらからかうように聞いてくる。
私は今の状況が信じられなさ過ぎてパニックになったままだったけど、
「好きっ、好きですっ!!」
と大きな声で答えた。
そんな私の様子に彼は、
「分かってたけど、言質は取らないとな。」
そう言って、私をぎゅっと抱きしめた。





私は彼に抱きしめられながら、そっと彼の背中に自分の腕を近づけ、自分でも抱き返した。
3年の片思い歴が今日で終止符を打ち、今度はお付き合い歴になる喜びに胸がいっぱいになった。
「これから先はボチボチ、な。」
と、彼はいつものように心地いい声で私にささやいてきた。
どういう意味なのかよく分からなかったけど、私が大好きな彼の声がこれからも私にささやきかけてくれることは奇跡のよう。




これからも優しく甘くささやいてね。
+おわり♪+




突発短編です(汗)
なぜ突発なのかはblogに書こうと思いますので、お暇な方は
覗いてみてください(笑)
久しぶりというか、『初恋』以来の18禁ではない小説となりました(笑)
よろしけでば感想などもらえるとうれしいですww
最後まで読んで頂いてありがとうございました☆

追記:続編あります。NEXTまたはNOVELページより移動可能です。
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