私と彼の関係〜初めての想い〜

俺は今までの人生、すべての物事をなんなくこなしてきた。
見た目もいいらしく、女に不自由をしたこともない。
そんな俺は来るもの拒まず、去る者負わずな奴だった。
そんな俺のことを男は好意的に見るはずもなく、友人も少ない。
だからといって困ることはない。
人数が多いからいいものでもないからな、友人なんて。
人にどう思われてもいいと思うタイプの人間のせいか、周りに関心を示さない俺。
だから、勝手に俺のそばに寄ってきて、1度寝たくらいで彼女顔する女が面倒くさくなった俺は、大学入学を機に女避けをすることにした。
その方法は、ボサボサ頭に長い前髪、太い黒ぶち眼鏡をかけていて野暮ったい印象をだすことだった。
今までの俺の姿から想像することが出来ない格好だ。
「何だよ、その恰好は。」
友人というか悪友の1人でもある飯田実(いいだみのる)は、腐れ縁で同じ大学に行くことになった俺を構内で見かけてまぬけな顔でそう声をかけてきた。
「そろそろ女遊びにも飽きてきたから女避けだよ。」
俺は自動販売機に小銭を入れながらそう言うと、
「はー?
この歳でそういうことを言うか普通。
でも、これでお前の毒牙にかかって泣く女の子が減るんだと思えばいいことなのかもしれないな、お前の今の恰好は。」
小銭を入れ終わった俺を見ながらそう言うと、俺より先にボタンを押して出てきた缶を俺の手にのせながら実はくくくっと含み笑いをする。
実がのせた缶は、まったく俺が飲みたいとは思わないおしるこで、
「俺はおしるこなんて飲む気はないぞ。」
睨みながらそう言う俺の手から缶をとり、
「じゃ、もったいないから俺が飲んでやるよ。」
そう言って実は嬉しそうにおしるこを飲みだす。
そんな姿を見た俺が、実のそばを離れたくなったのは言うまでもない。
「お前も俺みたいに大切な人ができたら変わるのにな。」
変わらずおしるこを飲みながら並んで歩く実は、しみじみと話しだす。
「人間がそう簡単に変わってたまるか。
それに、俺には実がいう大切な人なんてできる気がしないよ。
だいたい、1人の女に縛られた生活なんて俺には耐えれない。」
「本当、悲しいこと言うんだなお前は。
でも、こんなこと言っている奴に限って変わるんだよな。
そんなお前が見られる日を楽しみにしてるよ。」
「安心しろ、そんな日はこないから。」
「じゃー賭けるか?
もし恭平に大切な女性が出来たら1日何でも俺の言うことを聞くこと。」
「いいよ、そんな日は来ないからな。」
俺、頭山恭平(とうやまきょうへい)は、そんな日が来るなんて確実にないだろうという思いにそう返事をしたが、数年後実との賭けに負けることになる。














大学を卒業した俺は就職して営業課勤務になった。
大学時代、計画どおり女避けが出来た俺は真面目に勉学に励み、難なく就職を決めることができた。
女避けはしていたが、男の生理現象というものはあるからそれなりに遊んではいた。
もちろん後腐れなく付き合える女性限定だったが。
そんな俺は当然のように職場でも大学時代のスタイルを保っている。
だから、職場の人間には怪しい目で見られることも少なくない。

本当、人間は見た目で何でも判断するんだな。

それが、俺が就職しての第一印象だ。
見た目がパッとしない俺が、就職して間もないのにそれなりの成績をキープしていることで、余計にそう思うのかもしれない。
そんな人間が多い職場に、1人だけ違う人がいた。
その人は、女性ながら主任という立場にいる人、白金遥(しろがねはるか)だった。
怪しい俺のことを避けている人間が多い中、白金主任だけが他の後輩と変わらず俺に接してくる。

変わった女だな。

それが第一印象。
しかし、気がつけば彼女が俺の視界に入ることが多くなったことに気づく。
その理由はきっと、彼女の仕事への姿勢と公平な態度のせいだと思う。
誰に対しても公平であり、噂を信じることはなく自分が見たことだけを信じるところ、そんな彼女に興味を持つことは仕方がないのかもしれない。
今まで出会ったことがない人種だったから。
ただそれだけのこと、そう思っていた俺にそうじゃないんだと自覚させる出来事が起きた。





ある日の休憩中、白金主任の携帯に着信があり話を始める。
話し続けている白金主任の表情は、今まで見たことがないくらい嬉しそうな表情をしていて、そのことが何故か俺をいらつかせていた。

誰と話したらそんな表情になるんだ?
俺は今まで彼女のあんな表情なんて見たことなんかない。
それよりも、彼女にあんな表情をさせる奴は誰なんだ?

いらつき続ける俺に気づくことなく、彼女は話を続けしばらくして通話を切った。
誰と話していたのか聞きたい気持ちを抑えていると、
「主任、今誰と話していたんですか?
もしかして彼氏とか。」
同じ部署の女性が興味津々に彼女に問いかける。
「やだ違うわよ、弟からだったの。
歳が離れているせいかいまだに弟のことが可愛くって。」
照れながらそう答える彼女は、本当に弟のことを大事にしているんだということが分かる。
「そうなんですか、すごくうれしそうにしてるから彼氏かと思いましたよ。」
「ないない、彼氏なんていないもの。」
手を振りながら彼氏がいないことを知らせる姿に、1人心の中でほっとしている俺。
そんな自分の心に驚きながらも、自覚してしまう。
白金遥に恋をしていることを。
今まで感じたこともない嫉妬というものを今日初めて感じたことで自覚したというまぬけさに笑ってしまいそうになるが、自分の中にそんな感情があったのかという思いもある。
一生大切な人なんて出来ることがないと思っていた。
でも、出会ってしまったんだ俺は。

だから、あなたを俺の物にするよ。

自覚した自分の想いに決心させるように話しかけていた。





自分の想いを自覚したからといって、彼女との仲が急接近するはずもなく、変わらず自分の視界の中に彼女を入れて過ごす日々。
でも、そんな日々の中気づいたことがある。
彼女の視線を感じるようになったこと、ふとした拍子に俺を見つめていること。
見つめている目は、他の女で見たことがある潤んだ瞳、

遥さん、俺のことを好きだったりする?

そんな考えが自分の中に生まれてくる。
そんな都合がいいことがあるとは自分の見た目から考えても思えないでいたが、彼女の視線を感じながら自分の考えは正しいという思いが強くなる。

「頭山君、今から行っても酔っ払ってるみんなのペースにはついていけないだろうから、別に飲みに行かない?」
「いいですよ、どこに行きますか?」

忘年会の日、営業から帰ってくるのが遅くなった俺は、1人残業で残っていた彼女に誘われた。
この誘いは俺にとって好都合としか言えなくて、

あなたが自分で踏み込んできたんだよ。
だから、もう逃がさないよ、遥。

思いがけず酔った遥から告白された俺は、その日のうちに遥をものにすることになる。











今は遥と恋人として過ごす日々に、今までの自分の考えが間違いだったと気づく。
大切な人ができたことで、俺の中に今までなかったいろんな感情が心を占める。
そんな日々に幸せを感じることができるのは、遥のお陰だ。
俺と遥の関係は、会社の人間は誰も知らない秘密の関係。
でも、幸せを感じることが出来る何事にも変えられない関係だと言えるだろう。
Copyright (c) 2007 machi All rights reserved.

面白かったよとちょっとでも思ってくれたら押してもらえるとうれしいです♪
よろしかったら感想も一緒に書いてもらえるとますますうれしいです♪

Novel

Top

Next

Back




検索サイトから来られた方は、 こちら からTOPへどうぞ。