私と彼の関係〜はじまりの夜〜

出会いは偶然、始まりは必然?
あなたと過ごした初めての夜は私にとっては予定外のことだった。
だから、なかったことにしようと思えばできたのかもしれない。
でも、そんなことできるはずがなかった。
あなたの本当の姿を好きになってしまっていたから。
それはあなたも一緒だったはず。
だから私達は今も一緒にいるのだから・・・・。










「主任今日は7時からですよ。」
「そうだったわね。
でも、私すぐには行けそうにないから先に始めてて。」
「わかりました。
早く来て下さいね。」
「了解。」
終業時間になり、後輩の1人が私、白金 遥(しろがね はるか)に確認の意味で予定されている忘年会のことを話しかけてきた。
今日の忘年会は会社全体で行われるのではなく、部署の忘年会だ。
今年1年も終わりが近づいている中、例年の如く忘年会の季節もやってきていた。
あまり飲み会というのが好きじゃない私は、何かと理由をつけて断りたいのが本音だったが、立場的にそういうわけにはいかない。
とりあえずは、仕事が残っているのは本当なので終わらせてからみんなと合流するつもりだ。
きっと私が行く頃にはみんな出来上がっている頃のはずだから、少しだけ付き合いその場を去ろうと密かに計画していたりする。

できることなら家でゆっくりしたい。
だからといって何をするわけではないけど。
どうせ家に帰っても1人なのに。
いつからこんなに人づきあいが億劫になってしまったんだろう。
1人でいるのが気楽に感じてしまうのは、女として終わっていると言ってもいいのかもしれないわね。
こんなんだから男性と付き合っても長続きがしないんだろう。
でも、それが分っているからといって不便があるわけではない。
ホント終わってるわね私。

パソコン画面を前にそんなことを考えながら自分にしか分らない程度にフッと笑ってしまう。
そんな私に声をかけながら次々と忘年会の会場に移動を始める人達に挨拶を返しながら指を動かし続けていた。












「とりあえず終わりかな。
では、行きますか。」
1人残って仕事を続けていた私は、一段落ついた仕事の書類をまとめ立ち上がりながら背伸びをした。
更衣室に向かうため部屋から出ようと視線を向けるとその場所には外回りにいっていたと思われる後輩が近づいてきているのが見えた。
「今まで外回りしてたの?」
「はい、契約がとれそうだったので。」
「で、どうだったの?」
「とれました。」
部屋に入ってきた後輩に話しかける私に、契約がとれたからと言ってうれしそうな声を出すわけでもなくいつもと変わりがない抑揚で返事をする後輩。
この後輩は、入社2年目の頭山恭平(とうやまきょうへい)。
風貌は社会人としてそれはないんじゃないと思えるボサボサ頭に長い前髪。
その姿は太い黒ぶち眼鏡をかけていて野暮ったい印象を受けるので、一目全く仕事が出来ないようにも見えるのに、仕事ができるのにはみんなが驚いていること。
でも私は、彼から受ける印象はみんなと違っていた。
時折髪の毛の間から見え隠れする目は、鋭く獲物を狙う目。
そして、どこか自分の本性を隠しているようにも思える。
彼がどういう本性を隠しているのかは分らない、もしかしたら私の気のせいかもしれない。
そのせいか時折彼の姿を目で追ってしまう。
「頭山君は今日行かないの?」
「行きますよ、主任は行かないんですか?」
「行くわよ。
今から行くんだったら一緒に行きましょうか、遅れた者同士。
1人で行くよりは行きやすいし。」
「そうですね。」
そう言って私達は会社を後にし、目的地に向かって歩き出した。







2人並んで歩きながらチラッと隣を見る。
その横顔は何を考えているのかは読み取れない。
上司である私とは親しい間柄でもない頭山君は同じ部署に親しくしている人がいる様子はない。
謎の後輩といってもいいかもしれない。
そのせいだろう、私の中にある考えが浮かんだ。
「頭山君、今から行っても酔っ払ってるみんなのペースにはついていけないだろうから、別に飲みに行かない?」
浮かんだ考えのとおりに私は口に出す。

私はいったい何を言ってるの?
主任として忘年会に行かないといけないことは分かっているはずなのに、私の口から出たのはそんな自分の考えを妨げる言葉。
自分の言葉が信じられないけれど、私は頭山君に興味がある。
その興味は色気がある意味ではないけどね。

「いいですよ、どこに行きますか?」
私の言葉に頭山君は何でもないことのように返事をする。
「じゃ、行きましょうか。」
私は自分の中に浮かんだ頭山君への興味を見せることなく主任としての顔で本来の目的地ではない場所を目指し歩き続けていた。














「ん・・・、どこ、ここ・・・。」
頭山君と飲んでいたはずの私は、気付けばベッドの上にいて自分の部屋と違う天井の壁紙が視界に入る。
身体をゆっくりと起こし、周りを見ようとする私の視線は椅子に座り煙草を吸っている頭山君が入り込む。
「目、覚めたみたいですね。」
私が目を覚ましたことに気づいた頭山君は煙草を灰皿の中で消し、近づいてくる。
「ここは?」
「主任が酔って店で眠りだしたんで近くにあったホテルに入ったんですよ。」
「そうなの、ごめんなさい迷惑かけて
もう目も覚めたから大丈夫よ、帰りましょうか。」
ベッドから降りながらそう言う私に、
「もう遅いしこのまま泊まるのがいいと思いますよ。
それに、こんなおいしい状況をみすみす逃すほど俺も馬鹿じゃない。」
「え?」
自分の耳を疑ってしまう言葉を言う頭山君は視界を邪魔していた髪をなくし、以前見た鋭い目で私を見つめる。
その目は獲物を狙う目と言ってもいいのかもしれない。
いつもの頭山君とは違う別の男性。
立ちあがろうとした私の身体を再びベッドに倒し、上から見下ろす。
その表情はどこか楽しげだったけれど、私は目を離すことができない。
「逃がさないよ、遥の気持ちは今日聞けたからもう遠慮は必要ないしな。」
「私の気持ち?」
「覚えてないのか?
俺のことを好きだと言ったのに。」
「そんなこと言ってないわっ!」
頭山君の言葉は身に覚えがないもので、私は声高く叫んでしまう。

そんなこと言ってない!
確かに頭山君に興味がなかったわけじゃないけれど、それは恋愛対象としてではない。
だから、好きだなんて言っているはずがないわ!

私は自分の身に覚えがない言葉を言う頭山君を睨みながらそう思っていると、
「覚えてなくてもかまわないけど?
確かに俺は聞いたんだから遠慮なく遥を俺の物にするだけだ。」
「人を物扱いしまいでっ。
それに、上司である私の名前を呼び捨てするなんてどういうこと?
早く私から離れて。」
「言うことはそれだけ?
男女の関係に上司も部下もないんだよ。
そんな馬鹿なこという遥には身体でわからせないといけないみたいだな。」
私の睨みを気にすることなくフッと笑ったかと思うと、私の唇を激しく奪った。
そのキスは激しすぎて私の思考回路をおかしくしてしまうものだった。
嫌がらないといけないはずなのに、私の身体は素直に頭山君のキスを受け入れてしまっている。
そのことに衝撃を受けながらも、頭山君から与えられる快感は多くなっていく。
「身体は正直だよな遥。
身体だけじゃなくて自分の気持ちに素直になる方が楽なのにな。
遥、俺が好きだろ?」
唇が離れた後、潤んでしまっている私の目に映る頭山くんの表情は、男の人なのに色っぽさを醸し出している。
そして、声も・・・。

好き?私が頭山君を?
そう、私は好きだったんだ。
興味があるという言葉で誤魔化してしまうほど。
上司としての自分が部下を好きになるなんていけないことだと訴える。
だから、私は自分の中に芽生えた恋心に気付かない振りをしていただけ。
だから、お酒が私の気持ちのストッパーをはずしてしまったんだ。

「好き、恭平が好きなの・・・。」
ストッパーが外れてしまったことを自覚すると、私の口からは自分の恋心を伝えてしまう。
そして、恭平の首に腕を絡ませお互いの熱を肌で感じる。
「素直な遥は可愛い。
俺も遥が好きだよ。」
そう言って恭平は私の唇を再び激しく奪う。
そして、私達はお互いの熱を分け合い感じるほど激しく身体を絡ませ、1つになった・・・・。





出会いは偶然、始まりは必然。
上司と部下として会った私達は今も一緒にいる。
会社の人間は誰も知らない内緒の関係。
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