-10.ずっと一緒-



目の前の状況が信じられなかった。

賢が私以外の人と楽しそうにしているということが。

私は裏切られたんだ。

もう私のことが嫌いになったの?

私はまだ賢のことが好きなのに。

でも、こんな場面を見てしまったらもう一緒にいられない。

だからといってこのまま黙って身を引くほど出来た人間じゃない。



胸の中のモヤモヤを抱えたまま賢に近づいていった私に賢が気づいた。

その顔は、なぜ私がいるのかと思っているのが分かる驚いた顔だった。



そりゃ驚きもするわよね、浮気現場に彼女が現れたんだから。



賢の顔を見ながらニッコリと笑った私は思いっきり賢の頬を叩いた。

クリーンヒットと言っていいくらいうまい具合に賢の頬に当たった私の手は、

賢にダメージを与えていたけど、私の手や胸にもダメージを与えていた。

叩いてすっきりすると思っていたのにそんなことは全然なくて、涙が自然と 込み上げてくる。

だからといってここで泣くわけにはいかない。

だから、

「さようなら。」

そう言って私は賢のそばを離れるために走り出した。



何で今日出かけてしまったんだろう。

出かけなければこんな場面に遭遇しなかったのに。

そして、賢とサヨナラすることもなかったのに。

でも、今日こんなことにならなくても、近いうちに賢から別れの言葉を

聞いていたのかもしれない。

賢とこんな別れ方するなんて思ってなかっただけにつらい。

こんなところで泣きたくなんかないのに涙が出てしまいそう。



そんなことを考えながら目的もなく走り続けていると、私の腕を強い力で

つかまれてしまった。

「やっと捕まえた。」

私の腕をつかんでいたのは賢だった。

いつもは見せない焦った顔をしながらつかんでいる。



言い訳なんか聞きたくないのに何で追いかけてくるのよ。



「離してっ!」

「駄目だ。美奈子何か誤解してるだろ。

なんだよサヨナラって。」

「言葉とおりの意味よ。

浮気している人の言い訳なんか聞きたくないっ!」

「浮気?

ほら、やっぱり誤解してるだろうが。」

「まだそんなこと言うわけ、この目で女の人といたのを見た私に。

いい加減認めなさいよねっ。」

「俺は浮気なんてしてないっ!

とにかく落ち着け、今からきちんと説明するから。」

「言い訳は聞きたくないっ!」

「あのー、そろそろ私もしゃべってもいいかしら。」

賢とは違う声に腕を振り払おうとしていた私の手の動きは止まってしまい、

声をかけてきた女の人に視線を向けてしまった。

「ここでそんなに騒ぐから周りの人が見てるんだけどいいのかなって。

場所変えない?

あなたが美奈子ちゃんね、私賢の姉の優です。はじめまして。」

ニッコリ笑いながら私の目の前に手を出されてしまい、その手を握るしか

なかった私は、今言われた言葉を頭の中で反芻していた。



姉?姉ってことはお姉さん・・・。

お姉さん!?





「だから誤解だって言っただろうが。

それなのに全然人の話を聞かないんだからな美奈子は。」

「それならそうと早く言ってくれれば良かったのに。」

「言う間もなく人のほっぺた叩いて走りだしたのはどなたでしたかね。」

「それを言われると・・・。

でも、賢だって悪いんじゃない!」

「俺は何も悪くないだろうが。」

「お姉さんと出かけるなら出かけるって正直に言ってくれてたらこんな

誤解しなくても良かったのに。」

あれから私達は近くにあった私のお気に入りの喫茶店に3人で入り、

落ち着いて話をすることになった。

賢のお姉さんの前で取り乱してしまった自分が恥ずかしくて賢を責めて

しまう私だったけど、お姉さんは気にしてる様子もなく楽しそうに

私達の会話を聞いている。

「美奈子ちゃんには心配かけちゃったわね。

でも安心してね、賢は美奈子ちゃん一筋だから。

いつもは私に頼みごとなんてしない賢が美奈子ちゃんのために頼みごと

してきたんだから。」

「頼みごと?」

「もーいいから!

ねーちゃん用事あるんだろ?もう帰っていいよ。」

「失礼な態度ね。人が折角協力してあげたっていうのに。」

「時間潰しに付き合ったくせに。もう待ち合わせの時間だろ?」

「はいはい、お邪魔虫は消えますよ。

じゃ美奈子ちゃん今日はゆっくり話せなくて残念だけど、また今度ね。

これからはいろいろ話す機会も増えそうだし楽しみだわ。じゃ。」

そう言って爽やかな笑顔を残して私達から去ってしまったお姉さんだったん

だけど、最後の言葉が気になってしまった。



これからは話す機会が増えるってどういうこと?

今日会って顔見知りになったからかな?



お姉さんが言った言葉の意味を考えていると、

「これで誤解は解けただろ。」

と、賢が話しかけてきた。

「はい、私の誤解でした。

でも、賢が誤解させるようなことをするから悪いのよね。

何をお姉さんに頼んでたの?」

「言わないと駄目か?」

「言わないと駄目。」

「本当は場所とかいろいろ考えてたんだぞ。」

「場所?」

賢はズボンのポケットをゴソゴソしだしたかと思うと小さな箱を

取り出した。

「何これ?」

「いいから開けてみろよ。」

「うん。」

私は賢に促されるまま箱を開けると中にはケースが入っていた。

そのケースは一目見ただけで指輪が入っているのが分かる。

「これ・・・。」

驚いて賢の顔を見ると、大きく深呼吸した賢が話し出した。

「美奈子、これからもずっと一緒にいたい。

だから俺と結婚してくれ。」

急な賢からのプロポーズに驚いて話せないでいると、

「早く返事してくれ、緊張してるんだから。」

と、賢が照れた顔で聞いてくる。

「私も賢とずっと一緒にいたい。

だから結婚してください。」

うれしくてしかたない私は、うれし涙を流しながら賢に返事をすると、

「よかった。」

そう言って賢が笑顔になった。

「断られたらどうしようかと思ったよ。」

「何で断るのよ。断るわけないじゃない。」

「やっぱり心配になるんだよこんな時は。

でも、これでずっと一緒にいる約束ができたな。」

「そうだね、これからもずっと一緒にいようね。」

「ああ。」

そう言って賢は私の指に指輪をはめてくれた。

その指輪はすごくきれいで賢の気持ちが込められている気がした。

これからも賢と一緒にいることができるなんてうれしい。

大好きよ賢、これからもずっと一緒にいようね。







odai:Heaves



+おわり♪+




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