想いが届くまで

《夏樹side》
俺の心の中にいるのは咲だけだ。
そう思っていた。
でも、沙希さんの別れ際走り去る顔が頭の中から離れない。
それはどういうことだ?
彼女は俺の幸せを願っていた。
俺の幸せ?
先輩を選ばないでくれっ、俺を選んでくれ!
俺は咲にそう言いたかった。
でも、俺じゃ咲を幸せに出来ないのが分かっているから言えなかった
自分の気持ちに嘘をついて咲の幸せを願った
だから俺はいつまでも咲に心を囚われたままだ。
沙希さんは俺が咲に囚われていることに気づいていた。
それは、彼女が俺のことを好きでいてくれるから分かることなんだろうか?
そんな俺に彼女は幸せになってくれと言う。
沙希さんがいう幸せになるにはどうしたらいい?
どうしたらなれる?
沙希さんの顔が頭の中から離れないというのは、俺が幸せになるためのきっかけになるんだろうか・・・・。


《沙希side》
景山さんと会わなくなって1週間が過ぎた。
その間京子に会って飲みに行ったりしていた。
その時京子に事の顛末を話した。
京子は特に何も言わずただ私の話を聞いてくれて、泣いてしまった私の頭を優しく撫でてくれるだけだった。
そんな京子の優しさがうれしかった。
本当に友達っていいもんだとしみじみ思った。
1人では耐えられなかったかもしれない。
そんな私のそばにいてくれた京子は本当に大切な友達だと思う。
どれだけ感謝しても足りないくらいだ。
だから、今は胸が痛むことがあっても耐えられるのかもしれない。
景山さんを好きだという自分の気持ちを忘れることができたわけじゃない。
でも、景山さんを好きだという気持ちを私はまだ大事にしたいと思っている。
本当に好きな人だったから。
景山さん、幸せになってくれるかな。
今の私はそれだけを願っている。










「沙希買いに来たよ〜。」
京子が手を挙げてお店に入ってきた。
その後ろからは日向さんがやってくる。
「京子、日向さん。」
京子は私が失恋したことを話してから毎日のようにお店に来てくれる。
でも、日向さんが一緒に来たのは以前店番を頼んだ時以来だ。
「どうしたの2人で来るなんて。」
「私は1人で来たかったんだけど日向さんがどうしてもって言うからしょうがないから連れてきちゃった。」
「しょうがないはないだろうが彼氏を捕まえて。」
「彼氏!?
聞いてないよそんなこと!」
「あれ?言ってなかったっけ?
日向さんがどうしても私と付き合いたいって言うから仕方なくね。」
「おいおい、誰がどうしても付き合いたいなんて言った?
乃木が俺と付き合いたいって言ったんだろうが。」
「そんなことないわよ!」
「私としてはどっちでもいいんですけど。」
「「よくない!」」
2人は声を合わせて私の方を見ながら大きな声で言った。
そのタイミングのよさに私は笑ってしまう。
「仲いいんだね2人共。
うらやましいな。」
私がそう言うと、
「ごめん沙希。」
と京子が謝ってきた。
「ちょっと何で謝るのよ。」
「だって・・・・」
「そんな気にしないでよ私のことは。」
「沙希ちゃんは夏樹のことが好きだったんだよね。」
「過去形じゃないですよ、今でも好きなんです景山さんのこと。」
「そっか、今も好きなのか。
夏樹も幸せ者だなこんなに好きになってくれる子がいて。」
「そんなことないですよ。
私が勝手に景山さんのことを好きなだけなんですから。」
私はそう言って少しだけ笑った。
言いながら自分の諦めの悪さに笑ってしまう。
あれから景山さんはお店には現れない。
もう来てくれないんだと思うと悲しくなってしまう。
それでも景山さんのことを嫌いになれない私は今も彼を好きなままだ。
でも、それが嫌なわけじゃない。
景山さんが幸せになってくれるんだったらそれだけでもいいと思ってる。
今すぐに景山さんが幸せになってくれるとは思わないけど、これから幸せになってくれるんだったらそれでいいのかなと思ってる。
このまま会えないのは寂しいし辛い、正直に言うと。
本当は景山さんが私のことを好きになってくれるといいなと思うのが本音。
世の中うまくいかないもんだなぁ。










京子と日向さんが帰ってしばらくすると閉店の時間になりシャッターを降ろしに外へ出て下げていると話しかけられた。
「沙希さん。」
その声はこの1週間聞きたくて聞きたくて仕方なかった人の声だった。
「景山さん。」
私は声がする方を振り返りながら自分の目を疑ってしまった。

どうして、どうして景山さんがここにいるの?

「どうして・・・・」
私は自分が思っていたことを口にしていた。
「こんばんは。」
景山さんはそんな私の顔を見ながらニッコリと微笑む。
「どうして景山さんがここにいるの?」
私はまた同じ言葉を繰り返した。
「どうしてって、沙希さんに会いたかったからかな。」
「どうして景山さんが私に会いたいなんて思うの?」
「どうしてばっかりだな。
じゃ、どうしてだと思う?」
景山さんは言葉遊びのように私に問いかけてくる。
でも、私には景山さんがこの場所にいる理由なんか分かるはずがなかった。
だから、
「分かんない。」
そう答えるしかなかった。
そんな私の答えに景山さんは困ったような顔で、
「実は俺にも分からないんだ、正直に言うと。」
そう答えた。
「分からない?」
「そう、どうして俺は沙希さんの顔が見たいと思ったのか。
どうしてこんなに沙希さんに会いたいと思うのか。」
「それって・・・・」
私は景山さんがいう言葉の意味を自分の都合のいいように考えてしまう。
それは本当に合っているのかも分からないのに。
「どうしてだと思う?」
そんな状態の私に景山さんはまた聞いてきた。
だから、私は自分が考えていることを答えた。
「私のことが気になるから?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
正直に言うと自分が沙希さんのことが好きなのかはっきり分からないんだ。
でも、好きだった咲が占めていたはずの俺の心と頭の中に沙希さんが入りこんでくる。
これって、どういうことだと思う?」
景山さんはそう言って私のことを自分の胸元に引き寄せて自分の腕の中に私を閉じ込めてしまった。
「それは、私のことを好きになってくれてるってことなんだと思うよ。」
景山さんの腕の中で私は、景山さんの疑問に答えるようにはっきりとした言葉でそう言うと、
「やっぱりそう思う?
俺もそうじゃないかと思ってたりするんだけど、今まで俺の心を占めていた咲が大きすぎて分からなくなってたんだ。
でも、今沙希さんの顔を1週間ぶりに見て分かった。
俺は沙希さんが好きになってるって。
まだ俺の心の中には咲が住みついている。
でも、この先沙希さんが俺のそばにいてくれるならきっと俺の心の中は沙希さんが満たしてくれると思う。
だから、沙希さんが言うように俺が幸せになるためには沙希さんが俺のそばにいてくれなくちゃ駄目なんだ。
だから、俺のそばにいてほしい。」
景山さんは私のことをギュッと抱きしめながら言った。
私はそんな景山さんの言葉と抱き締める腕を感じながら自分の腕を景山さんの身体にしがみつかせた。
「私がそばにいてもいいの?」
「沙希さんじゃないと駄目だ。」
「私が景山さんを幸せに出来るの?」
「沙希さんじゃないと俺を幸せにできないよ。」
「うれしい。」
私は景山さんの腕の中で自分が景山さんを幸せにできるという事実に心を震わせていた。
遠くから見つめなくちゃいけないと思っていた景山さんの幸せを私が作ることができる幸せ。
私はこのまま死んでもいいと思うくらい幸せだ。
「俺ばっかり幸せになるのはどうかと思うけど、俺がそばにいることで沙希さんは幸せになれる?」
「そんなのあたりまえだよ。
景山さんがそばにいてくれるんだったら私は幸せだよ。
だから、2人で一緒にいられるなら幸せだらけになるね。」
「はは、そうだな。
幸せだらけだ。」
そう言って景山さんが私の唇に優しく触れた。
その温もりは指先から感じていた温もりよりも暖かな温もり。
そして、その温もりはゆっくりと離れていってしまった。
「沙希さん、こんな俺ですが一緒に幸せになってくれますか?」
景山さんは私の顔を覗き込みながら聞いてくる。
私はそんな景山さんの言葉に自分の正直な言葉で答えた。
「はい喜んで。
一緒に幸せになろうね。」



+おわり♪+




景山君の恋バナいかがでしたか?
いつもと趣向を変えて景山君視点の話を入れてみました。
ほんの少しですけど(汗)
男性視点が苦手な私には精一杯だったのでこれでお許しくださいね。
やっと幸せになった景山君。
これからは沙希ちゃんと幸せになってくれると思います。
ここまで読んでくださってありがとうございました♪



マチ拝
Copyright (c) 2007 machi All rights reserved.

面白かったよとちょっとでも思ってくれたら押してもらえるとうれしいです♪
よろしかったら感想も一緒に書いてもらえるとますますうれしいです♪

Novel

Top

Back




検索サイトから来られた方は、 こちら からTOPへどうぞ。