想いが届くまで

《夏樹side》
俺はこれから咲以外の女を好きになることがあるんだろうか?
いまのままじゃとてもそんな気持ちになれない。
そんな俺に告白してくれる女の子がいる。
その子は咲と同じ名前だ。
俺には「さき」という名前の女に縁があるんだろうか?
だからといって咲のように彼女のことを好きになれるとは思えない。
だから、俺ははっきりと言ったはずだった、付き合えないと。
でも、そんな俺に返ってきたのは諦めてくれるような返事ではなかった。
本当に昔の俺を見ているようだ、あの諦めが悪かった俺のよう。
そんな自分のことを考えればこの先彼女が幸せになれるとは思えない。
だから、俺はもう彼女とは会わない方がいい・・・・・。



《沙希side》
京子に手を引かれながら目から涙が止まらない私。
そんな私を近くの公園に連れてきた京子は、ベンチに座らせると、
「何があったの?」
と、優しい声で話しかけてきた。
私はゆっくりと昨日の出来事を話した。
話し終えてしばらくすると、
「何でそんなタイミングで言っちゃうかな沙希は。」
と、京子の声が聞こえてきた。
「そんなの言われなくても分かってるわよ。
でも、言わずにはいられなかったからしょうがないじゃない。」
「確かにそんな状況になったら言っちゃうかもしれないわね。
沙希、景山さんにはね噂があるの。
噂と言ってもほぼ本当の話みたいなんだけど。」
そう言って京子は景山さんが言っていた言葉の意味と繋がる景山さんの恋の話を聞かせてくれた。
それは、景山さんにとって辛い恋だったんだということが分かる話だった。
「景山さんはね、同じ課の先輩の彼女としばらく付き合ってたみたいなの。
でも、その彼女は先輩のことがずっと好きだったんだって。
だから景山さんと付き合っても諦められなかったらしいの。
しかも、その先輩も彼女のことを好きだったらしいのよ。
そこで景山さんは身を引いたってわけ。
これは確かな筋からの話だからそんなに間違いはないはずよ。
この話の出来事は私が入社する前だったらしいんだけど、まだ1年も経ってないみたいよ。
だから、景山さんはまだ彼女のことを忘れられないでいるのかもしれないわね。
沙希にとっては辛い話になっちゃったかもしれないけど、知らないよりは知ってた方がいいかと思って話しちゃった。」
京子は時間をかけて私が分かりやすいように話してくれた。
そして話を聞いた私は、景山さんの気持ちを考えていた。

景山さんは私の告白を聞いて自分のことを話していた。とても辛いことのように。
京子の言う通りきっとまだ景山さんはその彼女のことが好きなんだと思う。
だからと言ってこのままその彼女のことを景山さんが好きなままだと景山さんはいつ幸せになるんだろう?
このままその彼女のことを好きなままで景山さんは幸せなんだろうか?
ううん、そんなことはないはず。
景山さんには幸せになってほしい。
その幸せの中に私がいることができたらもっとうれしい。
だから、私頑張るっ。

「京子、私頑張るねっ!」
私は両手を握りしめながら力一杯勢いをつけて京子に宣言をした。
「いや、この話を聞いて頑張ってもらおうと思ったわけじゃないんだけど。」
「ううん、京子の話を聞いてますます頑張んなくっちゃって思ったの。
だから、応援してね!
よしっ、頑張るぞー!!」
私はスクッと立ち上がり空に向かって握り拳を上げた。
「私は沙希が頑張るって言うなら応援するけどね。
でも、頑張り過ぎないでよね。
沙希の泣き顔なんてみたくないんだから。」
「分かってる。
でも、もし泣いちゃうことになったら慰めてね。」
「はいはい、それが私の役目ですからね。」
そう言って京子は肩をすくめた。










京子と日向さんが帰った後景山さんが来るのを待っていた私だったけど、その日はとうとう景山さんは来なかった。
景山さんは私のことを避けていることが分かった。
でも、避けられても私は景山さんへの気持ちは変わらない。
それに、嫌いと言われたわけじゃない。
だから、このまま終わらせるわけにはいかないと思う私は、明日こそ景山さんと会おうと考えていた。





次の日、いつも景山さんが来る時間になってもやってこない景山さんに痺れを切らした私は京子に電話をかけた。
そして、景山さんが会社にいることを確認すると、お弁当を持ってお母さんにお店を任せて景山さんがいるはずの会社に向かった。
しばらく外で待っていると景山さんが出てきた。
「景山さん。」
私は景山さんに声をかけながら近づいて行った。
近づきながら景山さんが驚いているのが分かった。
その顔が次第に悲しそうな顔になるのも。
景山さんは優しい人なんだと思う。
だからこんな表情で私のことを見ているんだというのが分かる。
「昨日も来なかったし今日も来ないみたいだから配達しにきました。」
「沙希さん、この間言ったように俺は君とは付き合えないんだよ。
だから、こんなことをされても困るんだ。」
「でも、私は景山さんのことが好きだから。」
そう言う私に景山さんはやっぱり悲しそうで辛そうな顔で、
「俺は沙希さんのことが嫌いなわけじゃない。
でも、この先好きになれるとも思えない。
だから、俺のことは諦めてほしい。」
「先のことなんて誰にも分かりませんよ。
だから、景山さんが私のことを好きになるかもしれない。」
「今の沙希さんと同じようなことを言ったことがあるよ。
でも、その人は俺のことを本当には好きになってはくれなかった。
人の気持ちなんてそんな簡単には変わらないんだ。」
そう言って景山さんは私の横を通り過ぎようとする。
私の顔を見ながら何かを思い出すのを振り切るように・・・・。

私じゃ景山さんの中に住んでいるひとには勝てないの?
ううん、勝てなくてもいい・・・・、景山さんが解放されるなら。
私じゃない別のひとでもいいから景山さんを解放してあげてほしい。
本当は私がその人でありたかったけど・・・・。
でも、私がいることで景山さんに辛い顔をさせてしまうのなら、私は景山さんを幸せにすることなんて出来ないから

そう思うと景山さんの腕をつかみ言わずにはいられなかった。
「待って!
私のことを好きになってほしいと思う。
でも、それは無理なことかもしれない。
そんなことは分かってたの。
だからと言ってこのまま景山さんがこのままその女性に囚われたままになっている姿を見るのは辛いの。
私のことを好きになってくれなくてもいい。
でも、幸せになってほしい、景山さんには。」
「沙希さん・・・」
「これ食べてください。
景山さんが好きなから揚げ弁当です。
おまけも付けときましたから食べてくださいね。
・・・・景山さん、好きでした。
幸せになってくださいね。」
そう言って私は景山さんに袋を渡した後ニッコリ笑いながら背中を向けて走り出した。
堪えていた涙を流しながら・・・・。










「あーあ、失恋か。」
私は京子と一緒に来た公園のベンチに座りながら星空を見上げていた。
涙が流れて景山さんと見た星空みたいにきれいにはみえなかったけれど。
景山さんは私のことを好きにはなってくれない、それは分かっていたこと。
彼の中にいる彼女に勝てなかった。
でも、その彼女に囚われたままの景山さんを見ているのは辛かった。
だから、私は彼のそばにいて少しでもその彼女の影を消し去りたかった。

そんなことはできなかったけれど。

私が言った幸せになってほしいという言葉が少しでも景山さんを彼女から解放してくれたらいいな。
ふふ、そんなにうまくはいかないか。
京子に頑張るって言ったのになぁ。
頑張れなかったよ。
私じゃ景山さんの中にいるひとを消し去ることができそうにないから・・・・。
でも・・・、



景山さん、幸せになってくださいね。
私は景山さんが幸せになってくれることをいつまでも願ってます。
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