想いが届くまで

《夏樹side》
俺は咲が先輩を好きだと知りながら告白した。
咲が先輩に自分の気持ちを知られるのを恐れていることを知っていた。
そして、そんな咲の想いを利用した。
どんなことをしても咲を手に入れたかったから。
そんな俺の行動は卑怯なのかもしれない。
咲に取引を持ちかけて、咲の気持ちを先輩から離そうとしていたから。
咲は嫌だといった。
でも、俺はそれを許さなかった。
咲が俺の張る罠にかかるように俺は仕向けた。
そして咲は捕まった。
それから咲は俺のそばにいてくれた。
決して俺のことを好きになったわけではなかったのに・・・・。
それでもよかった、咲が俺のそばに居続けてくれるなら・・・・。
叶わなかった俺の願い・・・・・、今も俺の心は咲に囚われたまま先に進めない・・・・・。


《沙希side》
「好きです。」
その言葉は私の中で膨れ上がっていた景山さんへの想い。
こんないきなり言うはずじゃなかった。
きちんといつ言うか考えて、場所も考えて言うはずだった。
でも、もう私の想いは膨れ上がり過ぎていた。
私の中にある景山さんへの想いが溢れてしてしまうほどに・・・・。











お互いの手を握ったままの状態の中、私達の周りに漂う無言の時間。
本当はたいした時間じゃないはず。
でも、今の私にはとてつもなく長い時間に感じる。
そんな沈黙の空気を破ったのは景山さんだった。
「沙希さんうれしいよ、俺なんかのことを好きだって言ってくれて。
でも、今俺は誰とも付き合う気はないんだ。」
景山さんの口から出た言葉は私が予想していた答えだった。
ほんの少しだけ期待していた私が本当に欲しい言葉はもらえなかった。
でも、私は景山さんのことをこのまま諦めることはできない・・・・。
「そうですよね、急に好きだなんて言われたらびっくりしますよね。」
私は握りしめた景山さんの手を離しながら私はニッコリと笑いかけた。
「ごめん・・・。」
「そんな、謝らないでください。
謝られたら悲しくなっちゃう。」
私は頑張って見せた笑顔をうつむかせながらそう言った。
「送るよ。」
うつむいたままの私に景山さんは帰るように促す。
でも、私はこのまま帰ることなんてできなかった。
「まったく望みはありませんか?」
私の口から出たのは私の願い、だった。
「ごめん。」
そんな私の願いを伝えても景山さんの口から出るのは謝罪だけ。
「ごめんじゃ分かりません。
私は景山さんのことがずっと好きで、来なくなったしばらくの間自分の気持ちを言わなかったことを後悔しました。
そんな時景山さんがまた来てくれた。
だから決めたんです、自分の気持ちに素直になろうって。
景山さん、私こう見えてもかなり諦め悪いんです。
だから、景山さんが私のことを嫌いだと言わない限りは諦めるつもりはありません。
どんなに謝られても。」
私は景山さんに話しながら自分にも言い聞かせていた。
本当に好きになった人、だからこのまま何もしないで諦めたくない。
だから踏ん張んなさいって。
そんな自分の決意を胸に景山さんをじっと見つめていると、
「今の沙希さんを見ていると自分の愚かだった頃を思い出すよ。」
景山さんは目を伏せながら辛そうな声で話しだした。
「俺はね、自分が好きな人を手に入れるために彼女の気持ちが自分に向いていないことを分かっていながら付き合った。
その結果、彼女は俺の前から去っていった。
だから今の沙希さんを見ているとそんな情けない自分を思い出してしまったよ。
そんな俺なんか好きでいるのはもったいないよ。」
景山さんは辛そうな顔のまま話を終えた。
私はそんな景山さんを見ながら景山さんにこんな表情をさせてしまったのは自分だというのを感じていた。
でも、景山さんの告白を聞いたからと言って彼のことを嫌いになれるはずもなくましてや、はいそうですかと諦めることなんてできるはずがなかった。
私の彼への気持ちはそんなに簡単なものじゃないから。
そのことを知ってほしくて、
「誰にでも辛い過去があると思います。。
でも、だからと言って人を好きになるのを止めてほしくありません。
1人の人を本当に好きだった気持は尊いものだと思う。
だから、その時の景山さんの気持ちを大事にしてほしい。
私はそう思います。
それに、次の恋は目の前にあるのかもしれませんよ?」
私はそう言って景山さんの手を取りニッコリと笑った。
「景山さん、私はあなたのことが好きです。
だから諦めません。
覚悟してくださいね。
・・・・今日はこのまま送ってもらってもいいですか?」
景山さんの手を握ったままの私は、自分の気持ちを伝えこれからの自分にエールを送るように景山さんに微笑みかけながら手を握ったままの状態で歩き出した。
今私が話したことに景山さんがどう思ったかは分からない。
どうしても景山さんが答えを出してこのまま終わりということにはしたくなかった。
今はただ、景山さんと一緒にいる時間を大切にしたいと思った。
だから私は自分の気持ちに正直なままでいたいと思いながら景山さんの手をにぎったまま歩いている。
そんな私の手を振り払うことなく景山さんは握ってくれて一緒に星空に照らされた夜道をゆっくりと歩いた。










景山さんに送ってもらった私は、景山さんにお礼を言って家の中に入って行った。
何かを言いげな景山さんを残したまま。
また謝られるのが嫌だったから・・・・。


次の日、お店に出た私はレジを前にボーっとしていた。
昨日の出来事を考えていたせいだ。
私は勢いにまかせた自分の告白を思い出すと落ち込んでしまう。
自分の気持ちを押しつけたままで別れてしまったことを後悔し始めていた。

私が景山さんを好きなことは本当だけど、自分の気持ちを押しつけちゃったよぉ。
でもあのままだともう景山さんとは終わりのような気がして。
て、あんな告白をした私にもう会ってくれないかもっ!
あーん、何であんなことになったのよぉ。
私の馬鹿っ!!

心の中で反省している私の前にお客さんが立ったことに気がついた私は顔を上げた。
そこには予想もしていなかった人が立っていた。
「来ちゃったよ。」
お客さんは日向さんだった。
「総菜も結構あるんだね、何がいいかなぁ。」
日向さんはそう言って惣菜の物色を始めた。
「どうしてここが?」
「どうしてって、夏樹に聞いたけど教えてくれなかったから乃木に聞いたんだよ。」
「京子に?」
「そう、そしたら一緒に着いてくるって聞かなくて、本当は1人で来たかったのにい一緒に来ちゃったよ。」
「やっほー、京子さんだよ〜。」
京子は日向さんの影に隠れていたのかひょっこりと日向さんの背中から顔を出して私に手を振ってきた。
私は京子の顔を見ると、
「京子〜。」
と、安心したせいか涙が流れだしてきてしまった。
「ちょっと、人の顔を見た途端に泣き出さないでよ。」
「だって〜。」
「あーも、そんな顔でお客さんの前には出れないでしょ?
日向さん、ちょっと店番しといてください。」
「おい!
俺店番なんかしたことないぞ!!」
「なんとかなります。」
京子は無理やり日向さんに私が付けていたエプロンを渡すと私の手を引いて外に出た。
私は京子に手を引かれたまま大人しくついていくことしかできないでいた。
Copyright (c) 2007 machi All rights reserved.

面白かったよとちょっとでも思ってくれたら押してもらえるとうれしいです♪
よろしかったら感想も一緒に書いてもらえるとますますうれしいです♪

Novel

Top

Next

Back




検索サイトから来られた方は、 こちら からTOPへどうぞ。