想いが届くまで

《夏樹side》

俺の気持ちは宙ぶらりのまま彼女に繋がっている。
それは一方的なものだが。
いつかこの気持ちが行きつく先があるんだろうか?
今の俺には分からない。
心の中にある虚無感をどうすればいい?
咲、俺が欲しいのはお前だけ。
でも、もう俺の元には戻って来てくれることはない。
そして俺は、咲に捕えられたまま・・・・・。



《沙希side》

京子と景山さん知り合いだったの!?

私は京子が手を振りながら呼んでいる人、景山さんを見つめながら突然のことに驚いたままになっていた。
そんな私をよそに景山さんは私達の方に近づいてくる。
「あの、注文は?」
景山さんを見つめたままになっていた私に呼び止めたまま注文を聞くのを待っている店員さんが痺れを切らして注文を聞いてきた。
「すいませんっ、じゃモスコミュールを。」
私は急いで店員さんに注文をすると、その頃には私達の近くまで来ている景山さんに気がついた。
「乃木(のぎ)、こんな所で人の名前を大きな声で呼ぶなよ。」
「だって、景山さんに気づいちゃったんだから仕方ないじゃないですか。」
「仕方ないってお前な。
あれ?沙希さん?
ここにいるっていうことは乃木と知り合い?」
「そうなんですっ!
あの、でも、景山さんと京子も知り合いなんですか?」
「知りあいというか、会社の後輩なんですよ。」
「そうそう、景山さんは私の先輩なの。
でも、沙希と景山さんも知り合いなの?」
「それは・・・」
私は京子に景山さんが私のお店にお弁当を買いにきてくれるお客さんだと教えた。
好きな人とは本人がいる前では言えなかったけど。
でも、鋭い京子は私の話で何か感じたみたい。
それもそうよね、お弁当を買いに来てくれる人で好きになった人がいるってことは話してるんだから、その人が景山さんだということを京子が気付かないはずはなかった。
「そんなんだ、景山さんが1人でお弁当ねぇ〜。」
「なんだその目は。
まったく、そうやって言われるのが分かってたから会社では言ってなかったのに。」
「すいませんっ。
景山さんが会社で言ってないことを私が言っちゃったりして。」
私は景山さんの言葉に焦ってしまい、頭を下げながら謝った。
「別に沙希さんが謝らなくていいんですよ。
そんなに内緒にしておくことでもないんですから。」
「でも・・・・」
「そうそう、沙希が気にすることないって。」
「お前が言うなよ乃木。
お前はもう少し周りを気にしろ。」
「景山さん何だか私と沙希とじゃ扱い違う気がするんですけど。」
「当り前だろうが。
沙希さんにはいつもお世話になってるんだから。
乃木お前にはお世話はしていてもお世話になっていないからな。」
「うー、そんなことはない・・・、とは言えないところが悲しい。」
がっくりと首を項垂れる京子が可笑しくて笑ってしまう私に景山さんが話しかけてくる。
「沙希さんと乃木は仲が良さそうだね。」
「悪友ですから。」
景山さんにそう答えると、
「景山さん折角ですから一緒に飲みましょうよ。」
と、京子が私にとってうれくなるお誘いを景山さんにしてくれる。
「そうだな、俺にもツレがいるけどいいか?」
「全然OKですっ。
じゃ景山さんの所に移動しますね。」
京子はそう言ったかと思うと素早く店員さんを呼び、私達の飲み物や食べ物を移動させてくれるように頼んだ。
あまりの手際のよさに驚く私だったけれど、移動の時に京子はしっかりと私の耳にささやいた。

「お膳だてはしたんだから、後はしっかりやるのよ。」

と。









「何だ、乃木じゃないか。」
「何だ、はこっちのセリフですよ。」
移動した私達の前には京子が知っている人らしい男の人が1人いた。
「向こうで会ったんだ。」
「すいません突然。」
「いえいえ、男2人で飲むよりは楽しいし。
ところでこの可愛い子は誰?」
「私の友達で藤見 沙希です。
間違っても日向(ひゅうが)さんの毒牙にかけるつもりはありませんからそこのところよろしくお願いしますね。」
京子はニッコリと笑いかけながら日向さんという人に話しかけた。
「誰が毒牙を出すんだ。
可愛い子を可愛いと言って何が悪い。」
「その軽そうなところが怪しいんですよ。」
「乃木、お前は俺のことを誤解してるよな。
こんなに紳士的な奴はいないんだぞ。」
「自分で紳士的なんて言う人は信用できませんね。」
「お前達そのくらいにしとけ、沙希さんが驚いてるだろ。」
京子と日向さんのしゃべりに圧倒されている私に景山さんがそう言って2人の会話を止めてくれた。
「沙希さん、こいつ等のことは気にせず座りなよ。」
「はい。」
そう言って景山さんは自分の隣の椅子を引いてくれた。
私は景山さんの隣に座ると思うと緊張してぎこちない動きになってしまったけれど、嬉しくて思わず顔が緩んでしまう。

景山さんとこうして一緒にいることができるなんて私ったらなんてラッキーなんだろう。
こんな偶然があるなんてね。
京子感謝ですっ!

「へー、偶然って結構身近にあるもんだなぁ。」
「そうですよねー、私もそう思ったんですよ。」
「夏樹、お前も水臭いよなぁ、こんな可愛い子が働いてる弁当屋を教えてくれないなんて。
教えてくれたら俺も毎日買いに行くのに。」
「そんなんだから教えなかったんだよ。
俺が気に入ってる場所をお前に教えるなんてもったいないことできないしな。」
「友達がいない奴だな。」
日向さんはそう言いながらも嫌そうな顔をせずに次の話題を出して話しだした。
京子も知っている人達ばかりのせいか楽しそうにしている。
そんな中、景山さんも楽しそうにはしているけれどどこか目は遠い所を見ているような気がした。

どうしてそんな目をしているの?

私の中に芽生えた疑問は景山さんに聞くことなく燻り続けていた。



しばらくしてお開きになり私達はお店の外へ出ると、
「じゃ景山さん、沙希のこと送ってもらってもいいですか?」
と、京子は何ともないことのように言いだした。
「ちょと京子っ。
景山さん私1人で大丈夫ですから。」
私は慌ててそう言うと、
「送るよ。
いつもおいしいお弁当食べさせてもらっておまけまでもらってるからね。」
「そんなことくらいで送ってもらうなんて悪いです。」
「沙希送ってもらいなよ。
じゃ日向さん不本意ですけど私のこと送ってくださいね。」
京子は日向さんにそう言うと有無を言わさず腕を引っ張って歩きだした。
日向さんは嫌がる様子は見せてなかったのが救いだけど。
そうやって私達の前から京子と日向さんが離れていき、私と景山さんが残されてしまった。
「じゃ、行きますか。」
景山さんはそう言って歩き出し、私はパタパタと後を追いかけた。










景山さんと肩を並べたまま歩いていると、自分の心臓が大きな音をたてているのがいるのが分かる。

景山さんと2人で歩ける日がくるなんて。
緊張して何話したらいいのか分かんないよぉ〜。
でも、緊張しちゃうけどやっぱりうれしい。

「沙希さん。」
「はいっ。」
景山さんと一緒に歩けることに夢心地になっていると景山さんが話しかけてきて、慌てて返事をしてしまった。
「いつも弁当を買いにくる奴って変?」
景山さんはさっき日向さんが、
「お前も寂しい生活だな。
沙希さんも毎日こんな奴が買いにくるなんてびっくりでしょ?」
と、話していたことを気にしているのかと思う言葉だった。。
私はそんな景山さんに気にすることないということを伝えたくて話し出した。
「変じゃないですよ?
他にも景山さんみたいに毎日買いに来てくれる人もいるし。」
「そっか。」
「どうしてですか?」
「いや、やっぱり毎日買いにくるって怪しいかなぁって思って。」
少し照れたような表情で言う景山さんが何だか可愛くて私はクスクス笑ってしまった。
「そんなに笑わなくても。」
「ごめんなさい。
だって、景山さん何だか可愛い。」
「男に可愛いって・・・。」
「あの、悪い意味じゃないんですよ。
親しみやすいって意味です。」
ニッコリ笑いながらそう言うと、
「そっか、いい意味ということで受け取っていいのか。
毎日沙希さんの所のお弁当を買いに行ってるけど、本当何だか落ち着く味っていうか懐かしい味がするんだよね。
だから、これからもお世話になりたいと思ってます。
よろしく。」
景山さんはそう言ったかと思うと立ち止まり、それと同時に立ち止まった私の目の前に手を差し出した。
「えっと・・・」
「これからもよろしくってことで握手。」
そう言って景山さんは私の手を取り握手をした。
景山さんから感じられる手の温もりは今までお弁当を渡す時に感じていた温もりとは比べようもないほどの温かさで私を包み込む。
そのせいか私の中にある景山さんへの気持ちも今まで以上に暖められる。
だからなのか、景山さんが離そうとすると私は離すまいと無意識に景山さんの手を握りしめてしまった。
そんな自分の行動に驚きながらも、暖められて膨れ上がってしまった私の想いは暴走してしまう。
「好きです。
ずっと好きでした。」
気づくと私の口からは溢れ出した想いが言葉として出てしまっていた。
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