切なくて、恋しくて

「咲さん金曜日はありがとうございましたっ!
咲さんのお陰で草壁さんとお近づきになれましたよっ!!
昨日は咲さん達と別れてから、すっごくすてきなバーにも連れて行ってもらって、私幸せですっ!!」




月曜日、会社に行くと、千佳ちゃんが私に話をしたそうな顔をしながらちらちら見てきていたが、週の始めの日ということもあり、話を聞いてあげることが出来なかった。
でも、心のどこかで千佳ちゃんの話を聞きたくないと思っているからかもしれないんだけど・・・。
そして昼休み、千佳ちゃんは時間になった途端に私のそばに来て、
「咲さんっ、昼ご飯食べにいきましょ!」
と、誘ってきた。
断ることもできなくて、千佳ちゃんに急かされながら会社から出て、近所にあるお店にランチを食べに向かった。
千佳ちゃん曰く、食堂ではゆっくり話せないからということだった。
お店に着くと、千佳ちゃんは金曜日私達と別れてから裕也と過ごしていた内容をうれしそうに話してくれた。
それは本当に幸せそうに・・・。




「それでですね、草壁さんがまた食事に行こうねって行ってくれたから、2人でですか?って聞いたんですよ。
そしたら、当然だよっ、て言ってくれたんですっ。
結構いい雰囲気だったんですけど、その日にっていうのはどうかなぁと思ったから、次に会うときには私のすべてを受け取ってもらおうと思うんですよっ!
でも、女の子がそんな気持ちだと引かれちゃいますかねぇ、どう思います?咲さん。」
「えっと、どう思うかって言われてもね。
裕也とはそんないい雰囲気だったの?」
「はいっ!
もう次に会ったらお付き合いをお願いできると思うんですよ。」
「そ、うなんだ・・・。」
「はいっ!
だから咲さん、うまくいくように応援してくださいねっ!!」
「う、うん。」
千佳ちゃんは身を乗り出して私の両手を強く握り締めながら勢いよく言われてしまい、私は思わず返事をしてしまった。

何返事してるのよ私はっ。
でも、返事をしてしまうのは仕方がない。
だって、千佳ちゃんに裕也のことが好きだっていうことが出来なかったんだから。
そんな私が千佳ちゃんに裕也に近づかないでっ、て言えるわけないもんね。
でも、千佳ちゃんが裕也と付き合うことになったら私は2人を近い所で見ないといけない。
今まで裕也と付き合っていた人達は、私と接点がない人達だったから気づかない振りをすることが出来ていた。
でも、千佳ちゃんは・・・・。
気づかない振りが私にできるのか分からない・・・。

千佳ちゃんが私の手を離し、ランチを食べだした後、千佳ちゃんの顔を見ながら考えていたが、今の私にははっきりした答えを出すことが出来なかった。
それに、他に考えないといけないことも増えてしまっている私の頭はいっぱいいっぱいになっていた。
「そういえば、あの後咲さん達はどうしたんですか?」
と、食事の手を止めて千佳ちゃんが興味深げに聞いてきた。
「すぐ帰ったわよ。」
と、私はそう言うと食事を黙々と続けた。

帰ったと言うのは嘘だったから・・・・。








ランチを済ませた私達はまだ昼休みの時間は残っていたが、会社に戻り私は千佳ちゃんと別れて屋上に向かった。
屋上についた私は、持ってきたコーヒーを飲みながら千佳ちゃん達と別れた後の出来事を思い出していた。




コーヒーを飲みに誘われた私は、景山君の考えが読めなくて話しかけることもできず無言のまま後をついていった。
喫茶店に着くと景山君は私のコーヒーも一緒に頼んでくれた。
「咲さんコーヒーが好きだって先輩に聞いたことあるから勝手に頼みましたけど良かったですか?」
「大丈夫よ。」
「ここのコーヒー結構美味しいんですよ。
コーヒー好きの咲さんが気に入ってくれるといいんですけど。」
景山君がそういった後私達は無言になってしまい、コーヒーがくるまでの間私は、何をするわけでもなく、窓から外の景色を眺めることしか出来なかった。
コーヒーがきて飲んでみると、景山君が言ったようにとても美味しくて気に入ってしまった。
「嘘じゃなかったでしょ?」
景山君は先ほども見せた可愛らしい笑顔を見せながら聞いて、私が頷くとうれしそうな表情になった。

何でそんなにうれしそうな顔を見せるんだろう彼は。
頷いただけなのに。

そんな疑問を感じていると、
「咲さんがコーヒーを飲みに付き合ってくれたのは、俺が言った言葉が気になったからでしょ?」
と、私の考えがやっぱり分かってたんだと思わせるには十分な言葉で私に聞いてくる。
私は今更誤魔化すことは無意味だと思い、
「そうよ、何であんなこと言ったの?
別に私は裕也のことは好きじゃないのに。」
と、景山君に私が裕也を好きだということを否定した。
すると、景山君は、
「咲さん、嘘はいけませんよ。
あんな熱い視線を先輩に向けてるのに気づかないわけないでしょ?
咲さんの視線は先輩のことが好きだって訴えてるんですから。」
私のすべてを見透かしているような顔をしながら思いもよらなかったことを私に知らせる。
「そんなわけないじゃないっ。」
「咲さん、どうしてそんなに自分を抑えてるんですか?
先輩に一番近い場所にいるのに。
そこまで自分を抑えさせているのは何なんですか?」
「そんなの景山君に関係ないでしょっ!」
「認めましたね、先輩が好きだって。」
私は景山君の言葉に、自分がむきになって嘘をつけていないことに気づき、きゅっと唇を強く閉じた。

どうしよう・・・。
今まであずみにしか気づかれてなかったのにっ。
もう私は裕也のそばにいられないの?

そう思うと私の目にはうっすらと涙が浮かんできてしまった。
そんな私を見た景山君は、
「咲さん何で泣くんですか?
俺はただ聞いただけですよ。」
と、少し焦った口調で言った。
「もう私は裕也のそばにはいられない・・・。」
私は小さな声でそう言うと、ポロッと私の目からは涙が流れてた。
「何でいられないんですか?
別に俺が咲さんの気持ちを知ったからっていられなくなるわけないでしょ?」
「駄目よ、裕也が私の気持ちを知ったらそばにはいられないんだから。」
「それが俺には分からないんですよ。
何でですか?」
「裕也は私に女の部分を見せると嫌がるの。
友達としての私は裕也のそばにいることが出来るけど、女の私は裕也のそばにいることが出来ないのよっ。
それが景山君に何の関係があるの!?
何でこのまま私を裕也のそばにいさせてくれないの!?」
私は声を大きくして景山君に自分の気持ちをぶつけた後、涙は堰を切ったように私の目から次々と流れ出し、止まらなくなってしまった。

ただそばにいるだけを望むのもいけないの?
何故景山君が邪魔をするの?







「そんなに泣かないで、咲さん。」
景山君は私にハンカチを手渡してくる。
その声は、穏やかな声で、興奮していた私の耳に静かに響いてきた。
「俺は先輩に言うつもりはないですよ。
ただ、何で咲さんがそんなに自分を押し殺しているのか知りたかっただけです。
そんな咲さんを正直俺は見たくないんですよ。」
「景山君には関係ないことでしょ?
私が裕也のことを好きなことは。」
「それがそうでもないんですよ。
俺、咲さんのことが好きなんです。
だから、好きな人の悲しむ顔は見たくないんです。」
「何言ってるの?」
私は景山君の突然の告白に驚いてしまい、涙で濡らした眼で顔を上げ景山君の顔を見つめた。
「俺先輩と仕事で行動すること多いから咲さんにも会ったことあるんですよ、咲さんは覚えてないみたいだけど。
それで咲さんに会うときに先輩のことを好きなんだっていうことに気づいたんです。
でも、咲さんは何かを我慢してるみたいで気になって。
それから咲さんのことが気になって見ている内に、気づいたら好きになってたんですよ。
だから、先輩に咲さんの気持ちを言うつもりはないです。
咲さんには俺のことを好きになって欲しいですからね。」
「私のことを好き?」
「そうですよ、俺は咲さんのことが好きなんです。
今日はチャンスだと思いました。
これで咲さんとの接点が出来るって。
これからは、俺のことを好きになってもらいますよ。
もう、先輩のことは忘れてもらいます。」
次々に言われる言葉が頭に入ってくるが、変換されるのは単語のみで、景山君が私のことを好きなこと・裕也のことを忘れてもらうと言っていることぐらいしか考えることが出来なかった。




「私は裕也のことが好きなの。
だから、景山君のことを好きになることはないわ。」
私は頭で考えながら、自分が強く思っている裕也が好きだということは、自然に口から出てきた。
それはきっと、今の私には裕也以外の人を好きになるなんて考えられなかったから。
景山君は私の言葉を聞いた後、ニッコリ笑い、
「今はそうでも、これから先のことは誰にも分からないんですよ咲さん。
だから、咲さんが俺のことを好きになる可能性もあるんですよ。
これからは、咲さんに俺のことを知ってもらったんだから、積極的に口説きます。
覚悟しといて下さいね。」
と、説得力があるようなことを言いながらも、内容は私を驚かせ、動揺させるには十分な言葉だった。

確かにこれからのことは誰にも分からない。
でも、私は裕也のことを忘れることは出来ないの。
それが出来るんだったら今頃こんな切ない気持ちで裕也のそばにいるはずがないんだから・・・。
でも、私は何でこんなに景山君の言葉に動揺しているんだろう?
自分のことなのに自分が分からなくなっている。

「すいません、急に告白なんかして驚かせてしまいましたね。
出ましょうか。」
そう言って景山君は立ち上がりレジに向かった。
私は、慌てながらその後ろについていくべく立ち上がった。






「じゃ咲さん、遅くなったからタクシーで帰りましょうか。」
そう言って景山君はタクシー乗り場に向かいだした。
「待って。
景山君、私は裕也が好きなの。
だから、景山君を好きになることはない。ごめんなさい。」
「咲さん、さっきも言いましたけど、誰にもこれから先のことは分からないんですよ。
だから俺はあきらめません。
咲さんに俺のことを好きになってもらいます。」
そうはっきり言うと、景山君は私の正面に急に立ち、気づいたら顔が近づいてきて、私の唇に柔らかくて温かい唇を重ね、静かに離れていった。
それは、触れるだけの優しいキスだった。
「これは俺の誓いのキスです。
じゃ、今日はここで。」
そう言って景山君はタクシー乗り場に着く前に私に笑いかけ、帰っていった。
私は、突然のキスに思考を停止させてしまっていて、キスをされた場所からしばらく動けず、立ち尽くしてしまっていた。
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