切なくて、恋しくて

「ご無沙汰だったわね。そんな仕事忙しかったの?」
「そうなの、忙しかったのよ。
ていうのは言いすぎかな。
休みの日に家から出るのがめんどくさくて引きこもりしてただけ。」
「若い女性が引きこもりなんて悲しすぎるわよ。
しかも、やっと出た先が友達の家だなんていうのも悲しいものね。」
「悲しいって強調しないでくれる?
自分で悲しいって思ってなきゃいいんだから。」
「そういうもんかしらね。」
「そういうもんです。」




今日は休みで、大学時代の親友、新見(にいみ) あずみの家に来ていた。
あずみは結婚していて、もうすぐ1歳になる可愛い1人娘がいる。
旦那さんは私も裕也もよく知っている大学時代の同級生、大樹(だいじゅ)だ。
この2人は恋人時代から羨ましくなるほどお互いを思いやって仲の良い恋人同士だった。社会人になってしばらくして当然のように結婚してしまった。
1人娘の喜美(きみ)ちゃんが出来るまでは、裕也も交えてよく遊びに行ってたんだけど、子供が出来たらそういうこともなかなか出来ないようで、たまに家にお邪魔させてもらっている。
そうはいっても、今日はかなり久しぶりのお宅訪問なので、こんな会話をすることになってしまった。

確かに悲しいわよね、若い女がデートする予定もなく、家にいることが多いって。
でも、今日は家にいるんじゃなくてあずみの所に来てるんだからまだましってもんよね。

私はそう自分に言い聞かせるように心の中で思っていた。






「今日大樹いないんだね。」
「そうなの。
休日出勤になっちゃって。
久しぶりに咲にも会いたがってたんだけどね。」
「私は喜美ちゃんを見て脂下がっている大樹見なくてよくて安心してるんだけど。
どうせ家にいれば喜美ちゃんに付きっきりなんでしょ?」
「そうなのよ。
でも、そこが大樹らしくて私はうれしいわよ。」
「それはごちそうさまです。
いつまでも仲良いわね2人共。」
「当然でしょ?大樹のこと愛してますからね。」
「いや、もうのろけはいいですから。」
私は、肩をガックリ落としながらため息まじりにそう言った。

他人のラブラブぶりを見せ付けられても1人者にはつらいだけなんですけど。

私の心の声を知ってか知らずか、のろけ話を終わらせたあずみは、おかわりのコーヒーを入れるために台所に向かった。








それからしばらくは、お互いの近況などを話し、話が盛り上がった。
途中あずみは、私達が話している間に眠ってしまった喜美ちゃんを抱き上げてベッドに寝かしつけた。
寝かしつけから戻ってきたあずみはゆっくりソファーに座りながら、
「裕也はどうしてるの?
いつもと変わんないの?」
「変わんないわよ。
また新しい彼女が出来て仲良くやってるみたいよ。」

裕也はしばらく、といっても、2週間ぐらいだったと思うけど、彼女も作らず過ごしていた。でも、彼女と別れたという話が社内に広まると、待ってましたと言わんばかりに女の子達が裕也に積極的にアタックを始めた。
今は、その中の1人の女の子と付き合っている。
その子は可愛らしい子で、女の子という雰囲気をかもし出していて、裕也の好みの女の子だ。

そう、私と正反対の子・・・・。
私には出せない空気を裕也に見せることが出来る女の子。







裕也の近況を話すとあずみは、わざとらしい大きなため息をついた後、
「また指をくわえてその様子を見ていたわけね咲は。」
と、私の痛いところをついてきた。
でも私も素直にそうです、と言うことも出来なくて、気にしていないという様子を見せながら、
「別に指なんかくわえてないし私。」
と答えた。
でも、あずみを騙すことは出来なくて、姉が妹に話すように優しい口調だが、どこか心配げな声であずみが話し出す。
「咲、もう7年だよ?
このまま何もしないまま裕也のそばにいるのを続けるつもり?」
「そっか、もうそんなになるんだね。
このままいけば、更新記録は続くわね。」
「いいの咲はそれで。」
「いいのか悪いのか分かんないけど、今の私は、現状維持が居心地いいんだよね。
この関係を壊して裕也のそばにいれなくなる方が耐えられないの。」
「壊れないかもしれないでしょ?裕也に咲の気持ちを言っても。」
「そんな賭け事みたいな告白はもう出来ないよ。
もっと早くにだったら出来たかもしれないけど、こんなに友達として近づきすぎてしまった私は、もう先に進むのは無理なのよ。」
私は目を伏せながら落ち着いた口調であずみに自分の今の心境を素直に伝えた。




そんな私を自分のことのように苦しそうな顔をしながらあずみは話を聞いてくれる。
「何であずみの方が辛そうな顔になるのよ。
私のことなんだから、あずみがそんな顔しないでよ。」
「辛くもなるわよ、咲が裕也のことを好きだって気づいて咲に気持ちを自覚させちゃったのは私なんだから。」
「そんな、自分の気持ちなんだからあずみに言われなくても自分で気づいてたわよ。
だから、そんな気にしないでよ。」
「でも・・・。」
「確かに辛いことも多いけど、こうやってあずみが私の気持ちを知ってて、話も聞いてくれるし、自分1人で悶々とするのは避けられてるんだから、あずみが私の気持ちを気づいてくれたのは良かったことなのよ。」
私はそう言ってあずみを見ながらニッコリと笑いかけた。
すると、あずみもその笑顔につられたように笑いながら、
「裕也も馬鹿よね、近くにこんないい女がいるっていうのに気づかないなんて。」
と、怒った口調で言ってくれる。
「ホントよね、裕也ももったいないことしてるわよね。」
と、私は冗談を言うようにおどけて見せながらそう言った。

あずみ、ありがとうね。
私のことを自分のことのように考えてくれて。

私は、友達のありがたさを噛みしめながら心の中でそう思っていた。
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