砂糖菓子のような恋



公兄が笑っていた理由が分からないまま今日の仕事を終えた私は着替えた後家に帰るべく挨拶をしながら更衣室を出た。
その後玄関から出て歩いていた私に公兄が声をかけてきた。
「桃依、一緒に帰ろう。」
「もう少しかかるのかと思ってた。」
「家にお邪魔しないといけないし、買い物して帰るんだろうから荷物持ちがいるかと思ってな。」
「荷物持ちしてくれるんだったら助かるよ。
車じゃないから1人で荷物を持つのは辛いなと思ってたところだから。」
「そうだと思ったよ。
久しぶりに桃依の手料理食べるんだからそれぐらいしておかないと後が怖そうだからな。」
「怖いことなんてないのに。
そんなこと言われると何かしてもらいたくなるじゃない。」
「だから荷物持ちを進んでやることにしてるだろ?」
「はいはい。」
私と公兄は歩きながら軽い感じの会話を続けて道路の車が何台か通り過ぎていくのを横目で見ていると、見たことがある車が速度を落としながら私達の横で止まった。
何事かと思いながらも関係ないことだと思って歩いているとクラクションが大きな音をたてて存在の主張をする。
すると、
「何だ秋定じゃないか。」
公兄がそう言って私達の横に停まった車に近づいた。
すると窓がゆっくりと開き社長の顔がはっきりと私の目にうつる。
「先に帰ってると思ってたのにわざわざ俺達を乗せるために停まってくれたのか?」
公兄はニヤッっと笑いながらからかうような口調で社長に話しかけた。
「2人が歩いているのが見えたから停まっただけだ。
乗るなら早く乗れ。」
社長は無表情なんだけどどこか不機嫌そうな表情をして公兄を見ながらそう言うと、私の方を見て、
「何をしてるんだ、ボーっと立っていないで早く乗るんだ。」
と、強い口調で私に車に乗るように話しかけてくる。
その口調はいらついているということを伝えるには十分なもので、朝と違ってこのまま車には乗らずに帰ると言える空気じゃないということを感じる。
どうしようかと少し悩んだけれど、公兄もいることだし会社の人に仮に見られてしまったとしても誤魔化せるだろうと思い社長に言われるまま車に乗ろうとすると、
「桃依は助手席に座るんだ。」
後部座席に座ろうとする私に助手席に座るように促してくる。
「ここで助手席に座るのはどうかと。」
「そういっている間に座れば問題はないと思うんだがな。」
「桃依、旦那様がこう言っているんだから助手席に座るといいんじゃないか?」
公兄はそう言って助手席のドアを開けると私を助手席に押し込んでしまった。
押し込まれてドアまで閉められてしまっては大人しく座るしかなくて、公兄が後部座席に乗りこむ頃にはシートベルトを着けしまっている私がいた。










車に乗り込んだ後、公兄が社長に私が買い物に行くつもりだったと伝えると、
「そうか。」
と、一言言った後昨日連れていってくれたスーパーに向かってくれて、しかも再び私の買い物に付き合ってくれた。
公兄は、車で待っているということでエンジンをかけたままの車の中、快適な環境で私達のことを待っていることになった。
社長と思いがけず再び買い物をすることになった私は、とりあえず目的のものを早く買ってしまおうと早足で店内を移動する。
別に早足で買物をする必要はないのかもしれないけれど、スーツ姿の社長は昨日2人で買物に来た時よりも場違いな空気をかもし出して私を急かしているとしか思えない。
けして社長がそういうつもりがあって私の買物に付き合っているわけじゃないということは分かっている。
でも、

社長の周りの空気は庶民のスーパーには合ってないのよっ!

私は心の中で叫ばずにはいられなかった。
そんな私の心情など知るはずもない社長は、
「そんなに焦ったように買物しなくてもいいぞ。」
無表情ではあったけど、不機嫌だった空気はすっかりなくなった状態で私のことを見ながら言った。

社長はよくても私はこんな空気を感じながら買物をゆっくりする気にはなれませんからっ!!

心の声を社長に聞かせたいと思うほど心の中で叫んでしまう私だけど本人にそんなこといえるはずもなく、
「焦ったりなんてしてないですよ。
ただ、社長も公兄もお腹が空いてるだろうから早めに家に帰ってご飯作りたいなと思ってるだけで。」
そう言ってニッコリ笑うしかなかった。
「空腹を感じないわけじゃないが、桃依を急かしてまで食事をしたいわけじゃない。
だから、買物はゆっくりするといい。」
「はい、社長がそう言ってくれるならそうします。」
私は早く帰りたいのっ!と思う自分の気持ちを抑えつつそう答えてしまっていた。

再びこんなに気を使いながら買物する日が来るなんて思ってなかったわ・・・・。










疲れる買物を終えた私は家に無事に帰りついた。
その後食事を作り始めると社長と公兄は書斎に籠ってしまった。
特に急ぎの仕事はないはずだからリビングで待ってもらってよかったんだけど、2人で話すことがあるからと言われるとそれ以上引き留めることはできない。
2人を見送った後食事作りを再開した。





でも、あんなにスーパーが似合わない人がいるなんてね。
何だか今考えるとおかしいかも。
御曹司で今までスーパーにも行ったことがない人は浮き過ぎて仕方がない。
それでも社長はそんなことをまったく気にする様子もなくて。
不思議というか考えが読めないというか。
今日だって急に食事会には行かないなんて言い出すし。
でも、どうして急に行かないなんて言い出したんだろ?
やっぱり社長は私にとって謎の人だなぁ。

食事を作っている間社長のことを考えながら作り続けている私は、社長のことをずっと考えてしまうほど意識しているということには気づいていなかった。







「出来ましたよ。」
食事を作り終えた私は、書斎に社長と公兄を呼びに行くと、社長は何故かまたムッとした表情で公兄はニヤニヤと含み笑いをしながら出てきた。
「何かあったんですか?」
2人の様子が気になった私は社長に聞いてみたけれど、
「何でもない。」
社長はムッとした表情のまま素っ気なく返事を返してきた。
そんな社長の様子に何とも声がかけようがなくてとりあえず食事を食べてもらってこの状態を変えないといけないかなと思い、2人を早く来るように促した。
食事を始めると社長の口に合ったらしく、次第に表情がいつもの無表情だけど不機嫌ではないような顔に戻ってきた。
私は自分が作った食事で社長の表情が変化していく様子が可笑しかったけれどでも、なんだか嬉しくも感じていた。

私が作った料理で社長が反応してくれるのは素直に嬉しいかな。

そんな自分の想いは3人で食べる夕食を楽しい時間にしてくれた。
そのお礼というわけではないけれど、社長は甘いものが好きだということでデザートを用意して食後に出した。
それは、市販の粉で作ったプリンで、少しだけでも豪華に見せようと生クリームをつけてみたりと工夫をしたけれど、甘いものに関してはいつもおいしいものを選んで食べている社長だから口に合わないかもしれないという不安が心の中を占める。
それでも折角作ったからと思い切って出したはいいけれど、プリンを口にいれようとする社長の顔を心配でじっと見てしまう。
すると、
「このプリンは桃依が作ったのか?」
と社長が聞いてきた。
「そうです、お口に合わないようなら残してもらっていいですから。」

市販の粉で作ったプリンなんて出すんじゃなかった。
社長がいつも食べているプリンを買ってきたらよかったのに私ったら調子に乗ってこんな物作ったりなんかしてっ。

心の中で悔やみながら早く社長の視界からプリンを消してしまわないといけないと思い社長が手にしているプリンがのっている皿に自分の手を近付けると、
「何をしているんだ?」
と、社長が私をじっと見ながら聞いてきた。
「いえ、お口に合わないものを作ってしまったから引き下げさせてもらおうかと思いまして。」
と、私が言うと、
「誰がそんな事を言った?
桃依が作ったものだ、おいしいに決まっているだろ。」
社長は明るい笑顔ではないけれど、今まで見たことがないくらいの頬笑みと優しい声でそう言って私を見た後プリンを食べ始めた。
私は皿に近づけていた手を自分の方に無意識に引き寄せながら今まで感じていた胸の動悸よりも大きな音と身体に溜まる熱を感じてしまっていた。


それは、自分の気持ちに気づくには十分な想いで、私の身体を支配していく・・・・・。





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