砂糖菓子のような恋



「急な話で驚かせてしまったと思っている。
しかし、私には時間がなかったんでね。」
「時間がなかったとはどういうことですか?」
「分かりやすく言うと、私に妻が必要なんだよ。
そうしないといけない理由があってね。」
社長は私の眼をじっと見つめながらゆっくりと予想もしていなかったことを話しだした。

妻が必要?
社長に妻が必要だからって何で私がここにいないといけないのかまったく分からない。
だって、内容的に私には関係ないと思うのよね。

社長の話がどんなに考えても私には関係のない話としか思えずにいた。
そんな私の疑問が分かったのか、社長は私の疑問に答えるように話を再開した。
でも、その話は私が素直に納得できるものではなかったんだけど。








「私の祖母は早くに亡くなった母の代わりに私を育ててくれた。
その祖母が最近体調が思わしくなくてね。
祖母は私に結婚することを望んでいるんだ。
だが、私には結婚したいと思う相手はいないし困っていた。
そんな私に公浩がある提案をしてきた。
それが君だ。」
「私?」
「そうだ。
公浩が言うには君も私と同じような状況にあるという。
それで君となら契約結婚ができるんじゃないかと思ってね。
期限は祖母が亡くなるまで。」
「おばあ様が亡くなるまで・・・。
ということは、そんなに体調がお悪いんですか?」
「今のところは日常生活に支障はないんだが、もって半年と言われている。
祖母の最後の願いだから叶えてやりたい。協力してくれないか?」
社長の話が終わり、急な話過ぎて私の頭の中はきちんと整理することができずに、社長に返事することができない。

社長のおばあ様の状態が悪くて、そのおばあ様が社長の結婚を望んでいる。
でも、社長にはそんな相手はいないと。
そこで、同じように両親から結婚を迫られている私に白羽の矢が刺さった・・・・。
いやいや、私じゃ駄目でしょ社長!
そんなに大切なおばあ様なんだったら騙しちゃいけないと思うんですけどっ。

「社長、私は結婚できません。」
「なぜ?」
「なぜって、社長にとって大事なおばあ様を騙すようなことはなさってはいけないと思います。
きちんと社長が本当に妻にしたいと思う方と結婚した方がいいと思います。」
私は自分が思う素直の気持ちを社長にはっきりと伝えた。
このまま社長と結婚するということはおばあ様に心苦しくて私にはできないから。
本当は社長もそう思っているはずと思いながら社長の顔を見ると、感情が読み取れないいつものような無表情な顔でじっと私の話を聞いている。

読めない、いつものことだけど社長の反応が読めないわ。

「さっきも言ったが私にはそんな時間はない。」
「しかし、社長ならどんな方でも探せると思うのですが。」
「そんな確実性のないことを言われても真実味がないと思うんだが。」
「しかし・・・。」
「河野君、これは決定事項だ。
君は俺の妻となる。
早いうちに祖母にも会ってもらう。」
そう言って社長は温くなっているはずの甘いコーヒーを飲み、これ以上私には何も言わせないというような空気を纏ってしまっている。
でも、ここで私も引き下がるわけにはいかない。

だって結婚よ、そんな簡単にしていいわけないじゃないの!
私も結婚したいとは思わない人だけど、世間一般の常識は分かっているつもりよ。
そのことから考えてもおかしいでしょうこれは!
しかも決定事項なんて上からもの言う言い方はないんじゃない?
そりゃ社長と秘書の立場だけど、秘書にも人権はあるんだ!!

自分の中にふつふつと湧き起こる憤りというか怒りというか何とも表現しがたい感情が私の口を自動的に動かす。
「社長、決定事項とおっしゃいますが、私には社長と結婚する意志はありませんので。
では、失礼します。」
そう言って私はソファーから立ち上がり一礼して社長のそばを離れようとすると、
「そんな恰好でどこに行くんだ?
それに所持金もないだろ。
君はここにいるしかないんだよ。」
社長は立ち去ろうとする私を見ることもなくコーヒーカップを優雅に持ちながら落ち着いた口調で話しかけてくる。

格好?所持金?

私は社長の言葉に頭の中にはてなマークを浮かばせながら自分の改めて自分の格好を見ると、当然のことながら寝ていたままの恰好、ブラなし短パンTシャツという格好だった。

あー!
そうよ、私とてもじゃないけどこんな恰好じゃ外に出れないじゃないのっ。
しかも、寝てるところを連れてこられたんだからお金なんて持ってるわけもないし。
うう、何だかこれじゃただのお間抜けさんじゃないの!!

私は自分の今の状況に顔が熱くなってくるのを感じながらも、素直に社長の所に戻ることも出来なくて、ドアの前で止まってしまっていた。
「結婚と言っても婚姻届は出さない。
とりあえず式は形だけでもやらないといけないが、身内だけでやるから私達が結婚したことに気づくものはいないはずだ。
君もご両親に結婚の話はされなくなるわけだし、契約が終わった時は私に理由があるようにすれば君に迷惑をかけることはないはずだ。
君にとって悪い話ではないと思うんだが。
それともこのままその恰好で歩いて家まで帰って職を失う方が君はいいのか?」
ドアの前で立ち尽くしている私に社長は変わらない口調で話しながらも、私に不利な内容で話を進めていく。
そんな社長に私の怒りが再び燃え上がるけれど、仕事のことを出されると私はこれ以上反抗するわけにはいかなくなってしまった。
今の仕事は自分がやりたくて入った会社だからこんなことで職をなくすわけにはいかない。
そう思うと私に残された選択は1つしかなかった。
「分かりました、社長と結婚します。
そのかわりきちんと先ほど言われた内容は守ってくださいね。」
「分かっている。
では、契約成立だな。」
そう言って社長は私に近づき手を差し出す。
私はその手に自分の手を重ね、契約成立の握手を交わした。
この握手は私にとっては不本意なものだったけど。











握手を交わした後社長は私に家の案内をしてくれた。
社長の家はマンションだけど、さすがというか広くて部屋の数も多かった。
そして、私の部屋だと案内してくれた部屋は15畳はあって、ベッドや家具も置いてあった。
しかもその家具は私の好みに合っていて驚いてしまった。

何?私社長と好みが一緒なの?

そう思ってしまうほどの部屋の家具だったけど、
「家具は公浩に君の好みを聞いて用意させた。
その様子だと気に入ってもらえたようだな。」
と、私の表情をしっかりと見ていた社長がそう言うと、家のチャイムが鳴り訪問者が来たことを知らせた。
その訪問者とは引っ越し業者さんで、私の荷物が送られてきた。
社長は業者さんに部屋に荷物を入れるよう指示をすると、あっという間に私の荷物は部屋の中に詰め込まれてしまった。
業者さんは私の荷物を部屋に入れてしまうと爽やかに去っていってしまい、再び社長と私の2人だけ残されたような形になってしまっている。

私の荷物いつの間にまとめてあったわけ?
ここまで準備がいいとあっぱれとしか言いようがないわね。

「君は何でも素直に表情に出るんだな。
今は驚いているのがすぐに分かる。
仕事中には気づかなかったことだが。」
そう言う社長の言葉に振り返ると、社長が微笑んでいるような気がした。
気がしたというのは、すぐにいつもの表情に戻ったから。

でも、確かに社長は微笑んでたわよね。
私も社長がそんな顔で微笑むなんて思わなかったです。

胸のトクンという小さい音を立てながらそう心の中で思わず呟く私だった。





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