砂糖菓子のような恋


15


秋定さんのことが好き、この気持ちを伝えよう。

おばあ様の前で泣いてしまったけれど、公兄にも言えなかった自分の本当の気持ちをおばあ様には素直に言うことができた。
そして、おばあ様の言葉に励まされ、私は自分の気持ちに素直になる決心がついた。

恋にこんなに憶病だったのかと秋定さんを好きになって初めて知った。
自分の気持ちを言うだけのことなのにそんな簡単なことが出来ないのが恋心というものなのかもしれない。
そのことに気付かせてくれた秋定さん、私にとって大切な人。
そして、ずっと一緒にいたいと思うことが出来た人。
だから、契約者としての関係ではなく、本当の婚約者になれるように・・・・。

自分の中で決意を強くする私に、
「何だかすっきりした顔になっている気がするわ。」
おばあ様は微笑みかけながら私に声をかける。
「はい、おばあ様のお陰です。」
「こんなおばあちゃんがお役に立てたんだったらうれしいわ。
桃依さんはやっぱり笑顔がよく似合っているわね。」
「奥様、到着しましたがどうされますか?」
今まで話すことがなかった運転手が目的の店に着いたことを知らせる。
まだ泣いたのが分かる状態の私だったが、
「おばあ様が選んでくださった洋服を早く見てみたいです。」
と、笑顔でおばあ様に話しかけた。
「まだ目が赤くなっているけれど、大丈夫?」
「大丈夫です。」
「じゃ、行きましょうか。」
そして私達は、運転手がドアを開けてくれると車から降り目的の店に入って行った。










おばあ様と一緒に洋服や小物を選んだ後、お昼ご飯を一緒に食べ家まで送ってもらった。
「これで着る物も決まったことだし、週末を待つだけですね。
本当楽しみだわ。」
「はい。
今日は本当にありがとうございました。」
いつもの自分を取り戻した私は、車を降りる前におばあ様に挨拶をして降りた後、車が見えなくなるまで見送った。

おばあ様、私頑張りますね。

見えなくなる車を見ながら、心の中でおばあ様に話しかける私がいた。





家に帰った私は、冷蔵庫の前に立ち中身を確認する。
そして、秋定さんのために夕飯とお菓子を作る準備を始めた。

秋定さんがおいしいと言ってくれた私の料理とお菓子。
一生懸命作って、それを秋定さんに食べてもらいたい。
そして、私の気持ちを告白しよう。
そうしなければ私はいつまでも契約者のままになってしまう。
だから、頑張らないとっ!

勢いをつけた私は、よしっ!と大きな声を出した後、材料を出し料理を始めた。
料理を作りながら、本当に私は自分の気持ちに素直になってもいいのかという考えが浮かんでは消えを繰り返す。
そのたびに料理を作る手を止めてしまうけれど、そんな私の気持ちを吹き飛ばしてくれるおばあ様の顔と言葉が料理を作る手を動かしてくれる。
そして、料理とお菓子を完成させた。











作り終えた私は、身体から力が抜けてしまい、ソファーに座りこんでしまう。

出来上ってしまった・・・・。
こんなに力みながら料理したのは初めてかもしれない。
秋定さん、今日は早く帰ってくるかしら?
食事会は入ってないはずだけど・・・・。
よしっ、電話をして早く帰ってきてほしいことを伝えよう。
そうしないと決心が鈍ってしまいそう。

私は電話を手に取り、秋定さんに電話をかける。
耳にあてた受話器からコール音が聞こえ、私の心臓の音が大きくなっている気がした。
「はい。」
しばらく鳴らさないといけないかもと思っていた私の考えを裏切り、秋定さんは3コールほどで電話にでてしまい、
「あっ、あの・・・・、桃依です。」
私は言葉を詰まらせながら話しだした。
「秋定さん、今日は帰りは遅くなる?」
「どうしてだ?」
「私、秋定さんに話したいことがあって。
料理も作ったし、お菓子も用意したから早く帰ってきてくれたらうれしいなと思って。」
「桃依からの話か、何だか怖い気がするな。
でも丁度良かった、私も桃依に話したいことがあったんだ。
だから早く帰る。」
「私に話したいこと?何?」
「電話ではゆっくり話せないから話にくいな。
桃依は電話で話せるような内容なのか?」
「それは無理。」
「では、もうしばらくしたら帰るから待っていてくれ。」
「わかった。
気をつけて帰ってきてね。」
「ああ。」
そう言って秋定さんは電話を切った。
電話が切れたことを確認した私は、受話器を置くと大きく息を吸い込んだ。

秋定さんも私に話があるなんて。
いったいどんなこと?
気になって仕方がないけど秋定さんが帰ってこないことにはどうしようもないわよね。

私は気持ちを落ち着かせるためなのか、気を紛らわしたいのか分からないままテレビをつけたが、内容なんて頭に入ってくるはずもなくただ眺めながら秋定さんの帰りを待っていた。










テレビ番組がいくつか終わった時、玄関のチャイムがなった。
秋定さんが帰ってきたということに再び心臓が大きな音をたて出す。
玄関に向かい、ゆっくりとドアを開けながら、
「おかえりなさい。」
と笑顔で言った私の前に立っていたのは、秋定さんではなかった。
そこに立っていたのは、スタイルがいい華やかな雰囲気の女性だった。
「こんばんは、秋定はいるかしら。」
突然の女性の訪問に驚いている私に、その女性はどこか冷たい目で私を見ながら秋定さんの所在を確認する。
「今留守ですが。」
「そう。
じゃ帰ってくるまでお邪魔するわ。」
女性はそう言って玄関に入り、靴を脱ぐ動作ををするので思わず、
「突然来られて許可もなく部屋にあがるのはどうかと思いますが。」
と、強い口調で言ってしまう。
「あなた何?」
「私は秋定さんの婚約者です。
あなたこそ誰なんですか。」
「あなたが秋定の婚約者?
ちょっと冗談やめてよね。
まったく、私が結婚したがらなかったからってこんな子を婚約者にするなんて秋定もどうかしてるわね。
あなた、私が帰ってきたからんだからもう用はないわ、あなたなんかより美登理(みどり)の方がいいって秋定も言うはずだから。
あなたは用済みよ。」
「美登理?松本さん?」
「あら?あなた私のこと知ってるの。
それなら話は早いわね。」
そう言って私の横を通り過ぎていく。

松本美登理さん、秋定さんと公兄と同じ大学で私が会社に勤めるまで秘書課にいた人。
噂で秋定さんと付き合っているのではないかということを聞いたことがある。
でも、私が就職した時はすでに会社にはいなくて。
だから今まで思い出しもしなかった。
どうして今更この場所に現れたの?
秋定さんはずっとこの人と付き合いがあったのに私と契約者の関係になったの?
どうして?

「やだ、なにこれ。」
突然の松本さんの出現に動揺している私の耳に聞こえてくるのは松本さんのどこか馬鹿にしたような声だった。
私は急いで声がする方へ向かうと、なぜか冷蔵庫を開け私が作ったプリンを手に持っている松本さんがいた。
「ちょっと、秋定にこんな手作りなんてもの食べさせようと思ってるのあなた。
秋定は舌が肥えてるんだから手作りのものなんて食べないわよ。
やーね、手作りをすることで男が落ちると思っている女って。」
やはり私を馬鹿にしたような顔をしている状態で、私を松本さんは見ている。
「秋定さんにお菓子を作ってあげたことはありますか?」
「そんなこと必要じゃないもの、するわけないでしょ。」
「秋定さんは私が作るお菓子をおいしいと言って食べてくれます。
手作りのお菓子が秋定さんにとってどんなものかあなたは知っていますか?
秋定さんにとって手作りのお菓子がどんなに大切なものか知らないあなたが秋定さんを大切にしてくれるとは思えないっ!」
私は松本さんが秋定さんにとって大切なお菓子を作る気もないというのが許せなくて、そんな人が秋定さんのために作ったお菓子を持っていることが許せなくて私は気付くと大きな声で叫んでいた。
「あなたおかしいんじゃない?
お菓子1つで秋定の幸せが決まるわけないじゃないの。」
松本さんは笑いをこらえた顔で私にそう言うと、
松本さんをじっと睨んだままだった私の身体を急に誰かが引きよせ、広い胸元と優しい腕で包みこみ、私の頭の上で声を発する。
「お前じゃ俺を幸せにすることは出来ないんだよ。」
私を強く抱きしめているその人は、見たことがない顔で松本さんを睨みつけている秋定さんだった。





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