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「いや〜、近くで見るとますますいい男だったわよね〜。

これからがんばるぞーっ!」

亜季ちゃんは私を教室に連れ帰った後、ニコニコしながら授業を受け、

放課後私の家に寄るからと私を引き連れてというのもおかしいんだけど、

2人で私の家に向かっていた。

亜季ちゃんは家までの道のりを私にお兄ちゃんのことを聞いてきた。

でも私は、子供の頃のお兄ちゃんしか知らなくて、亜季ちゃんの質問に

答えられないことが多かった。

亜季ちゃんの行動はいつものことなんだけど、いつもだったら頑張って

と思うのに、今回は違っていた。

亜季ちゃんがお兄ちゃんの話をするたびに、胸の奥にモヤモヤしたもの

が増えていくような気がして、亜季ちゃんのことを素直に応援できない

気持ちが私の中にあったりする。


何でだろ?

いつもだったら頑張ってって言ってるのに、今回言えないのは何で

なんだろ?

お兄ちゃんの手をギュッと握っていた亜季ちゃんの手をすぐにお兄ちゃん

の手から離したいと思ったのは何でなんだろ?

ううっ、何か苦しいよ〜。


そんなことを思っていた私は、亜季ちゃんの話を途中からあんまりよく

聞いてなくて、亜季ちゃんはそんな私に気付いて、

「私の話きいてないなぁ〜。」

と、私の頭を突いてきた。

「あ、ごめんね。」

「ホントどうしたのよ?京平さんが帰って来たことに驚いたままなの

かな?

美佐には私の恋が成就するように協力してもらわないといけないんだから、

ボーっとしたままじゃ困るわよ。」

「う・・・ん、そうだね、協力しないと・・・ね。」

「頼むわよっ!手始めに私のことを知ってもらわないとね。

その為には美佐の協力が必要なのっ!よろしくねっ!」

亜季ちゃんは私の肩をポンポンと叩きながら言った。







そんなこんなで、私はもやもやした気持ちのまま亜季ちゃんと共に

家に着いてしまった。

まだお兄ちゃん達は帰って来ていないみたいで、私の部屋で待つこと

になり、私の部屋にあるアルバムを見ながら、私と一緒に写っている

お兄ちゃんを見て楽しそうにしていた。

そんな亜季ちゃんの様子を見ながら、いまだに自分の中にもやもやした

ものがどんどん増えていき、何だか息苦しくなってきた気がしていた。


何だろホント。

うー、嫌だよー。こんな気持ち悪くてイライラするの。


自分の中にある不快なものに悩まされていると、1階から翔兄の私を

呼ぶ声が聞こえてきた。

「美佐ー、帰ったぞー。

京平も来てるから降りてこいよ。」

翔兄の声に私が返事をする前に亜季ちゃんが、待ったましたという様子で、

「はいは〜いっ。」

と元気よく返事をして、私の方を振り返り、

「さーて、下に降りるわよっ!」

そう言って、だだだっと勢いよく下に降りて行ってしまった。

私は何だか下に降りたくない気持ちになってしまって、なかなか下に

降りないでいると、コンコンッと私の部屋のドアを誰かがノックをした。





「はい。」

私が返事をすると、ドアがゆっくりと開きお兄ちゃんが入ってきた。

そして、ベッドにうつ伏せに横になっていた私の横に座った。

「どうしたんだ?降りて来ないなんて。

久しぶりに美佐に会ったからゆっくり話したかったのに、美佐が降りて

来ないと話も出来ないだろ?」

お兄ちゃんはそう言って、私の頭を優しく撫でた。

私はお兄ちゃんが撫でてくれる頭に感じるお兄ちゃんの温もりがなんだか

こそばゆかった。

そして、今まで自分の中に溜まっていた嫌な気持ちとは違う胸を締め付け

られるようななんだか分からないものが私の中で生まれていた。

そんな私の様子なんてお兄ちゃんが気付くはずもなく、返事をしない

私に、

「ホントどうしたんだ?具合でも悪いのか?

具合悪いんだったらゆっくり寝てていいからな。

話なんて何時でもできるんだし。」

お兄ちゃんはそう言って私の頭から手を離し、ベットからゆっくり腰を

上げた。

私はお兄ちゃんの手が私の頭から離れて今まで感じていた温もりが離れて

行くのが嫌だと思ってしまった。

そして、私が取った行動は、ベッドから起き上がりお兄ちゃんの洋服を

掴み、引き止めるという行動だった。

そして、私は何で自分がそういう行動を取ってしまったのかわからず、

ビックリした顔で私を見ているお兄ちゃんに気付いてパッと洋服から

手を離した。







「ホントどうしたんだ?」

お兄ちゃんは心配そうな顔をして、手を離した後俯いてしまった私の

顔を下から覗き込みながら涙を浮かべている私に気付いてしまった。


何で涙がこみ上げてきてるんだろ?

本当わかんない。

自分のことなのに、泣きたくなんかないのに、何で涙が出るのかわかん

ないよ。

うー、嫌だよ〜。

こんなわけが分からない涙が出るのは嫌だよぉ〜。


瞳からポロポロと流れる涙が毛布の上に落ち、私の涙を毛布が吸って、

小さなシミがゆっくりと広がっていった。





どんどん広がっていく毛布のシミを見ながら、自分の瞳から流れる涙を

止めれないことが嫌だった。

そんな私を困ったように見ていたお兄ちゃんは、再び私の頭を撫でながら

「よしよし、何で泣いてるのかよくわからないけど、泣き止んでくれないか?

昔から俺は美佐の泣き顔には弱いんだ。」

そう言った。



そんなお兄ちゃんの言葉を聞いて、私は昔のことを思い出していた。

いつもいじめられて泣いていた私を、いつも優しく頭を撫でながらお兄

ちゃんは、私を慰めてくれた。

そして私は、お兄ちゃんを頭を撫でられると嬉しくていつもすぐに泣き

やんでいた。

でも、今は無理みたい。

だって、嬉しい気持ちよりも苦しい気持ちが湧き上がってくる。

昔はそんなことなかったのに・・・。

この苦しい気持ちはどういうものなのかはわからない。

だって、今まで感じたこともないものだから。





「お兄ちゃん・・・。」

私は、涙を流しすぎてあまりでない声を出した。

そんな私の声にお兄ちゃんは、

「何だ?」

と、昔と変わらない優しい声で答えてくれた。

その声に私は、今まで自分の中にあった疑問を言わせるだけの威力が

あった。

そして、私は顔を上げてお兄ちゃんの顔をじっと見ながら涙が流れる顔の

まま、自分が聞きたかった質問をした。

「お兄ちゃん、手紙をくれなくなったのは私のことが嫌いになったから?

私お兄ちゃんに嫌われるようなことしたのかな?

ずっとお兄ちゃんからの手紙待ってたのに・・・。」



お兄ちゃんは私の言葉に苦しそうな何かを耐えているようになった。

でも、私の質問にはなかなか答えてくれようとはしない。

そんなお兄ちゃんに痺れを切らした私はお兄ちゃんに詰め寄っていった。

「ねーお兄ちゃん答えてっ!そうでないと私苦しいままだよっ。

今まで音信不通だったくせに突然帰ってきて前と変わらない態度で私に

話しかけてくる。

そんなことが今の私にはとっても苦しいよっ!

何でかわかんないけど苦しいのっ!!」

そう言って私はわんわん今まで以上に小さい子供のように泣いてしまった。

そんな私を見て、お兄ちゃんが思いつめたような顔になりながら、ゆっくりと

話し出した。

「俺は、だんだん辛くなったんだよ。」

お兄ちゃんが話し出した言葉は、私には意味を理解するだけの言葉では

なかった。

だから、お兄ちゃんの言葉をもっと聞きたくて、何とか涙を止めようと

頑張った。

でも、涙は急に止まるはずもなく、ひっくひっくとしゃくり上げてしまった。





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