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「また帰ってくるよ。」

「ホント?」

「うん。すぐには無理だけど、必ず美佐の所に戻ってくるよ。

それまで待っててくれる?」

「うん!美佐待ってる。だから絶対帰ってきてねお兄ちゃん。」







りりりりりりっ。



目覚ましの音が、朝が来たことを伝えている。

目覚ましの音を止めた後も、布団から出るには身体が起きていなくて、

再び眠りの中に誘われていく。



「こら!目覚まし止めたんだったらさっさと起きろっ!」

そう言って、再び眠ろうとしていた私をいつものように起こしに来る人

がいた。

私はその声に負けないよう布団の奥に潜り込んでみたが、私の行動はすで

に予測されていて、勢いよく毛布を剥がされてしまった。

「み〜さ〜、毎朝同じことさせるなよ。早く起きないと朝ご飯食べれなく

なっても俺は知らないからな。」

そう言うと私を起こしていた声の主は、部屋から出て大きな音をたてて

階段を下りていった。


はううぅ、ご飯は食べたい。


そう思い、なんとか身体をベットから引き剥がし、制服に着替えて顔を

洗った後、朝ご飯が並べてあるテーブルの椅子に座った。

「目が覚めたか?」

「うん、なんとか。

翔兄今日もおいしそうだねぇ〜。」

「あたりまえだ、俺が作ってるんだからな。」

「へへ、そうだね。いただきまーすっ。」

私は手を合わせそう言った後、翔兄が作ってくれた朝ご飯を食べだした。

「翔兄、鮭の焼き加減抜群だよ。」

「そうだろそうだろ。しっかり食べるんだぞ。」

「はーい。」

翔兄はニコニコ笑いながら私の頭をポンポンっと優しく叩いた。





「おはよー。」

そう言って私は教室に入りながら、クラスのみんなに挨拶をした。

翔兄が作ってくれた朝ご飯を食べた後、一緒にバスに揺られて学校へ

やって来た。



私、松田 美佐と、翔兄こと松田 翔太は1歳違いの2人兄妹。

私は高校2年生、翔兄は高校3年生。

同じ学校に通っている。

結構、いや、かなり仲がいい兄妹の私達。

小さい頃から翔兄に可愛がられてきた私は、友達の間では「お嬢様」と

言われている。

翔兄は、私のことを可愛がりすぎて「シスコン」なんて呼ばれたりしてたり

している。

友達に言わせれば、私に好意を持っている男の子はことごとく翔兄が駆除

しているとかいないとか。

そんなことを言われても、私に告白してくる人なんて今までいなかったから

信じられないんだけどね。

子供の頃泣き虫だった私は、よくいじめられていた。

そんな時すぐに助けに来てくれたのが翔兄だ。

そしてもう1人。

今は近くにいない、隣に住んでいたお兄ちゃん。

翔兄と同じ歳で、私のことをすごく可愛がってくれた。

おじさんの転勤で遠い空の向こうにあるアメリカに行ってしまったのが

10年前。

小さい時の記憶だけど、時々夢の中でお兄ちゃんとは出会っている。

その夢はいつも一緒。

お別れの時の場面。

そして、お兄ちゃんとした約束の場面。

でも、いまだにお兄ちゃんは帰ってこない。

しかも、連絡もない。

始めの頃は手紙のやり取りをしていたんだけど、その手紙も次第にこなく

なってしまった。

私は何度も手紙だしたんだけどね。


お兄ちゃんはもう私に会いたくないのかなぁ。


なんてことを思ったりしてお兄ちゃんのことなんか忘れちゃえ、と、思ったり

もしたけど、お兄ちゃんはいつでも私の夢の中に現れる。



それがどうしてなのかは私にはわからなかった。







「美佐っ!ニュースよニュースっ!!」

「何が?」

「転校生が3年に来たのよ。しかもかなりのいい男。これはチェックよっ!」

亜季ちゃんがクラスメイトを蹴散らす勢いで、興奮しながら自分の机に

座っている私の所にやってきた。





亜季ちゃんは高校で仲良くなった友達で、今1番仲がいい友達だ。

活発な女の子で、亜季ちゃんのテンションに押され気味になったりするん

だけど、とても優しい女の子だ。

ただ、好みの男の子がいたらすぐ好きになってしまうという癖をもっている。

そのたびに失恋してしまってたりする。

多分、積極的過ぎて男の子が引いてしまうんじゃないかというのがクラス

メイトの意見だ。

私から見たら、何で駄目になっちゃうのかよくわからなかったりする。


亜季ちゃんはとってもいい子なのになんでなのかなぁ。



「聞いてるの美佐っ!」

「聞いてるよ。」

「美佐のシスコン兄と同じクラスみたいだから、後で一緒に教室に

行くわよね。」

「翔兄のことシスコンなんていわないでよ。」

「だって本当のことじゃないの。ほらほら、そんなにほっぺたふくらまさ

ないの。」

亜季ちゃんはそう言って私のほっぺたを楽しそうについている。

そして、私の頭をぎゅっと抱きしめながら、楽しそうに言った。

「まーこんなに可愛ければシスコンになる気持ちも分からないでもない

けどね。

ちっちゃい身体に天然パーマのふわふわウエーブ。

しかも顔も可愛いときてるじゃない。

いやー、私が兄でもシスコンになってるかもね。」

「もう、何言ってるのよ。

翔兄の教室に行くのと関係ないでしょうが。

昼休みに行くの?」

「そうね、昼休みの方がゆっくりしゃべれるかもしれないしね。」

「はいはい、昼休みですね。」

「じゃ、そういうことでよろしくねぇ〜。」

そう言って亜季ちゃんは抱きしめていた私の頭を離し、自分の席に

戻っていった。







昼休み、亜季ちゃんにせかされながら翔兄が作ってくれたお弁当を

一生懸命食べた後、翔兄のクラスに向かった。

教室に着いて亜季ちゃんに肘でつかれながら、扉の近くに立っていた女の

人に話しかけ、翔兄を呼んで欲しいと頼んだ。

女の人はすぐに翔兄を呼んでくれて、扉で待つ私達の所に不思議そうな顔

をしながらやってきた。

「どうしたんだ急に?教室を訪ねてくるなんて珍しいな。」

「うん。あのね、お願いがあって。」

「ん?なんだ?」

「翔兄のクラスに転校生きたんだよね。亜季がその人と話ししたい

なぁって。」

「後藤、人の妹を伝書鳩みたいに使うな。」

翔兄は嫌そうな顔を亜季ちゃんに向けながら言った。

亜季ちゃんはそんな翔兄なんて気にする様子もなく、

「いいからシスコン兄、転校生紹介してよ。」

と、翔兄にしっしっと手を振って言った。

そんな亜季ちゃんに呆れた顔しながら、

「俺にそんな強気発言できるのは後藤以外いないぞ。」

そう言って、教室の中に入っていった。

そして、再び私達の所に来た時、1人の男の人を連れてきた。


この人が転校生なんだ。確かにかっこいいかも。


そんなことを思いながら翔兄と一緒に来た男の人を見ていると、その男の人は

私をじっと見ている。


何で私のこと見てるんだろ?


あんまり見つめられすぎて、思わず私もじっと見てしまった。

そんな私達に翔兄がニヤニヤしながら思いがけないことを言った。

「美佐、懐かしいからってそんなに見てるんじゃないよ。」


懐かしい?


私は翔兄が言っている意味がよく分からなくて首をかしげていると、

「なんだ?気付かないのか?京平だよコイツ。

10年ぶりだからわからなかったか?」

まだニヤニヤしながら楽しそうに言った。

私は、翔兄の言葉に頭がついていかず、頭の中を整理した。


京平?京平って・・・、お兄ちゃんっ!?





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