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Magic Pearl

追われるものと傍観者 2

「逸香!やっと逢えた!!」
「ぎゃー!!」
色気のかけらもない叫び声を上げる逸香ちゃん。
そんな彼女を現われた男性は歓喜を隠すことなく表しながら逸香ちゃんを抱きしめている。
逸香ちゃんと言えば、男性の腕の中でもがいていた。
「はーなーせー!!」
「何でそんな寂しいことを言うかな逸香は。やっと逢えたんだよ俺達。
感動の再会じゃないか。」
「どこが感動の再会よ!私は二度と会う気はなかったのに。」
「またまたー。本心は違うでしょ?」
「…どこから来るのよ、その自分都合な考えは。」
男性の胸を押しのける逸香ちゃんは本気で怒っているみたいだけど、そんなことは全く気にしていない様子の男性は満面の笑みを見せている。
目の前で繰り広げられるやり取り、ここはやっぱり止めるべき?
そう思って口を開こうとした私の口元をそっと圭さんの手が隠してしまい、声を出すことが出来なくなってしまった。
どうして止めるのかと視線で訴える私に圭さんは心配ないと言いたげな視線を返してくるから、もう私達は目の前の出来事を傍観するだけの人になってしまう。
逸香ちゃんに迫っている男性は状況的にさっきまで2人が話していた「アイツ」だと思う。
肩に着くほどではないけれど男性にしては長めな髪、人懐っこそうな顔の造りはパーツ的にも整っている。
逸香ちゃんをすっぽりと包みこんで抱きしめられるくらいの体格と身長、傍観者である私は突然現れた男性と逸香ちゃんを交互に見ながらしっかりと観察してしまう。
その間も逸香ちゃんと「アイツ」の攻防は続いていた。
「うっとおしいのよ、離して!」
「うっとおしいって、それはひどい。そんなこと言われたら傷つくじゃないか。」
「別にあんたが傷つこうが私には関係ない。」
「どうして素直に会えて嬉しいって言えないかなぁ、逸香は。」
「だから、嬉しくないって態度で表してるでしょうがっ。いい加減気づけ!!」
逸香ちゃんが身体を押しのけようとするなら抱きしめる腕の強さを緩めない「アイツ」のやり取りは続き、このまま傍観しているわけにはいかない雰囲気を醸し出していて、圭さんの遮りを外すべきなのかと考える。
そんな私の考えはやっぱり圭さんには分かっているらしく、それでも口を出すなと視線で訴えてくる。
本当にそれでいいのかと思っていると目の前の光景は攻防戦から変化をしてしまっていた。
「アイツ」が逸香ちゃんの唇を奪い黙らせてしまったから。
目の前で他人のキスを見るというのは何だか恥ずかしい。
そんな様子を逸香ちゃんに見られていたんだと思うと顔が熱くなって目を伏せてしまう。
深く口づけを交わす2人は私達がいることなど忘れてしまっているかのようだ。
どれくらいの時間が経ったのか、ゆっくりと唇を離した2人。
逸香ちゃんと言えば放心状態なのか大人しく「アイツ」身体を預けていた。
でもそれはほんの少しの時間、勢いを増して腕を伸ばした逸香ちゃんから「アイツ」が離れ、逸香ちゃんとの間に空間が生まれている。
「あんたの、鷹也のそういうところが嫌なのよ。
キスで陥落させてしまえばいいって思っているところがっ。
どうして私が鷹也から離れたのか分かってない所も。
嫌なのよ、鷹也の都合に振り回されるのは。
何も言わず突然いなくなる、そうかと思えば突然現れる。
女だって私だけじゃなかったじゃない。
都合のいい女はもう嫌なの!」
瞳を潤ませながら今まで貯め込んだ想いを吐き出す逸香ちゃんは私が今まで知らなかった逸香ちゃんの一面。
「アイツ」のことが好きだけど一緒にいることが辛かったのだということを訴えている。
そんな逸香ちゃんの声を「アイツ」はじっと受けとめていた。
すべてを言いきったと思われる逸香ちゃんはそのまま店を出ようとする、そんな彼女の後を見つめるだけだった私と違い「アイツ」は追いかけた。
そして、ドアに手をかける逸香ちゃんの背中から優しく抱きしめる。
「俺は逸香が好きだ。」
「言葉だけじゃ嫌なの。」
「言葉だけじゃないさ。俺は逸香のそばにいる。」
「でも、すぐに行っちゃうじゃない。」
「その時は逸香も一緒に連れていくさ。
今までそうしなかったのは、逸香を連れていくだけの余裕がなかったのと逸香の時間を俺が奪うわけにいかないと思っていたからだ。
でも、そんな遠慮をしていて逸香がそばにいないくらいならもう遠慮はしない。
だから、そばにいてほしい。」
「…他の女にも同じこと言ってるくせに。」
「他に女なんていない。逸香がいなくなってから誰とも付き合ってもいない。」
「うそ。」
「本当だ。こんなこと嘘ついてもすぐにばれるだろ?疑うんなら圭に聞いてみるといい。
アイツは俺を庇うことなんてしない奴だから本当のことしか言わないよ。」
「アイツ」こと鷹也さんの言葉に逸香ちゃんが圭さんを振り返る。
「鷹也の言葉は嘘じゃない。ずっと本木のことを想って探してたからな。」
圭さんの言葉に逸香ちゃんは鷹也さんの顔を見上げる。
その瞳は潤んではいたけれど優しく、愛しさが溶け込んでいた。
「これが最後のチャンスなんだから。」
「分かってる。でも、チャンスを無駄にするつもりはないから安心していいよ。」
「…もう、結局こうなるのよね。本当にずるい男。」
「諦めるのは嫌いなんだ。それに、逸香には時間をあげたんだからもう逃がさないよ。」
「時間って、結構な時間だったと思うけど。」
「でも、好きだろ逸香。王子様とお姫様の話。」
「っもう、どこまでも知り尽くしてるって感じがムカつく。」
「逸香のことで知らないことは少ないと思うよ?そうでなきゃここまで気長に待てないしね。」
「むかつく。」
「なんとでも。」
してやったりと笑う鷹也さんと悔しそうな逸香ちゃん。
それでも嬉しさと愛しさが2人を包み込んでいた。











「お騒がせしました。」
「本当にビックリしちゃった。
逸香ちゃんからは鷹也さんのこと何も聞いてなかったし、どうしたらいいのかと思ったもの。」
「そうよねぇ。目の前で痴話げんかされたら驚くわよねぇ。
でも、それ以上に私が驚いてたんだから許してほしいわ。」
「許すも何も、逸香ちゃんが幸せな顔をしているのが私はうれしいもの。」
「もー、本当に真珠は可愛いったらないわね。」
いい子いい子するように私の頭を撫でる逸香ちゃんはあの後落ち着きを取り戻し、照れた顔を見せながら私達の方へ近づきとりあえずということでみんなに腰掛けてもらいお茶の用意をし、話をしている状況での会話だ。
目の前に座っていた逸香ちゃんは私の頭をしばらく撫でていたけれどそんな様子に圭さんは、私を自分の方へと引きよせ中断させる。
「何よ、私が真珠のこと可愛がるのが嫌なわけ?」
「いつまでもやる必要がないと思っただけだ。
折角の真珠の髪が乱れる。」
「ふーん、まさか八坂君が独占欲丸出しで女性と付き合うようになるとわねぇ。月日が人を変えるということかしら?」
「月日が俺を変えたわけじゃない。真珠が俺を変えたんだ。
大切にしたいと感じさせてくれるのは真珠だけだからな。」
真面目な顔で照れくさくなることを言ってしまう圭さんに逸香ちゃんはニヤニヤとしながら私の顔を覗き込む。
「そうなんだって、良かったわね真珠。」

コメントしずらいことを振らないで逸香ちゃんっ。

心の中で叫びながらも圭さんが言ってくれた言葉は素直に嬉しくて、私の肩を抱いている圭さんにそっと寄り添う。
「俺も逸香のことを大切に思ってるんだから淋しがるなよ。」
「…まだすべてを信用したわけじゃないんだからね。」
「そんな寂しいこと言うなよ。」
素早く逸香ちゃんの頬にキスをしながら言った鷹也さんの行動に、照れくさそうにしながらも平常心を保とうとする逸香ちゃんがいつもと違う一面を見せていて、可愛らしく思えた。
3人がどういう関係なのかと聞いたところ大学の同級生だという答えが返ってきた。
逸香ちゃんと鷹也さんは恋人同士だったけど、写真家でもある鷹也さんには放浪癖があり音信不通になることがしばしばあったらしい。
しかも、逸香ちゃん曰く女性関係も派手だったらしくそんな鷹也さんに痺れを切らして逸香ちゃんが姿を消したということだった。
それでも、嫌いで逸香ちゃんも姿を消したわけではなく、探してほしいという気持ちもあったわけで。
鷹也さんとしては逸香ちゃんの居場所を見つけようとしたらしいけれど、見つけても同じことの繰り返しになると圭さんに言われ、まずは足場を固めることに専念していたということだった。
ここまでは逸香ちゃんがいるところで聞かされた話。
鷹也さんが言っていた王子様とお姫様という言葉に繋がるのか、知らなかったけれど逸香ちゃんは乙女チックな一面もあるらしく、シンデレラや白雪姫の王子様のように探し出して幸せにしてくれるというのに憧れをもっていたということに今回鷹也さんの登場に繋がりを持たせ、逸香ちゃんを逃さないよう考えられた計画だったのだと圭さんと2人になってから聞かされた。
まさか圭さんを紹介するという計画が逸香ちゃんと鷹也さんを引き合わせる計画になるとは思ってもみなかったけれど、逸香ちゃんが幸せになってくれるのならこんなに嬉しいことはない。
知り合ってから姉のように私を可愛がってくれた逸香ちゃんの幸せは私にとってじぶんのことのように嬉しい出来事だから。
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