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Magic Pearl

2人で過ごす時間 2

「えっと、えっとですよ?」
「何?」

この場合、私はどうしたらいいんだろう?

抱きしめられたままの状態で八坂さんに身体をあずけたままどうすることも出来ずにいながらも、しっかりと私の両腕は八坂さんの背中に触れていた。
「ね?こうしているのも暖かい。」
「そう、ですね。
でも、照れくさい。八坂さんの顔がこんなに近くにあるなんて。
頭がボーッとしちゃう。大好きな人の顔が近くにありすぎるんだもの。」
私の素直な気持ち。でも、緊張しすぎて自分が何を言っているのか分からなくなっていた。
「本当、真珠には勝てない。」
「え?」
抱きしめていた腕の力が強まり、八坂さんの身体がさっきよりも密着したかと思うと、吐息混じりにつぶやいた。
その言葉の意味が分からなくて疑問符を投げかけると、少しだけ身体を離した八坂さんの顔が至近距離で話しかけてきた。
「惚れてる女性に何度も告白されたら抑えられるものも抑えられなくなる。
それが、男の心理ってものだよ。
もしかして、分かってやってる?
そんなわけはないか。今の真珠の顔を見たら俺の深読みだって分かるからね。」
「私、どんな顔してますか?変な顔?」
「変な顔なんてしてないよ。いつもと変わらない俺が好きな真珠の顔。」
「っ照れくさくなるようなこと言わないで、ほしい。」
「先に言ったのは真珠の方なのに?」
からかう口調、でも、優しい声色はどことなく色気というか私の中にある欲情を呼び起こす気がした。

な、何考えてるの私!
八坂さんがそんなつもりで言ってるとは限らないのに一人でいけない想像しちゃうなんて。
でも、もしかして?
えっ、どうしよう!下着、色っぽいのはいてない!!
やっぱり見た目って大事だよね!?

下着の心配をする時点で考えすぎだとか暴走しすぎているとかいう考えはまったくなくなっていて、慌ててしまうことしかできない。
だから、八坂さんが不思議そうに私のことを見ていることなんて気づくことも出来ない。
いきなり抱きしめている私が百面相しているのだから驚くのは仕方がないこと。
「真珠?」
「え!?下着色っぽくないけどいいですか!!」
八坂さんが私の名前を呼んだ返事に何を間違ったかありえない言葉で返事をしてしまい、開いた口が塞がらない状態ということを身を持って経験することになってしまった。
ククッと堪えた笑いの後に聞こえてくるのは大爆笑。

穴があったらずっぽりと埋まってしまいたいっ!!

考えていたことをそのまま口から出してしまうなんてありえないことをやってしまった自分があまりにも恥ずかしすぎる。
しかも、八坂さんは大爆笑。
そりゃ、八坂さんでなくても笑ってしまうだろう。
自分の間抜けさ加減に泣けてしまう。
「見せてくれるの?下着。」
笑いを口に含んでいたけれど、堪えながら聞かれた言葉は返事に困ってしまい、開けていた口を閉じてしまう。
「自分から言ったのに黙秘というのはずるいと思うけど。」
「あのっ、あれは、間違いというか、何と言いますか…。」
「でも、本心でしょ?」
「…はい。」
「じゃ、見せてもらおうかな。色っぽくない下着。
ここでもいいけど、奥にあるって言っていた部屋で、というのはどうだろう?」










「えっとですよ?シャワーは浴びたいなって。」
「じゃー、一緒に浴びようか。」
「ダメっ、絶対ダメ!!」
「それは残念。じゃ、真珠が先に浴びておいで。」





店の電気を消して奥にある部屋へと移動した後、恥ずかしくなる会話をしてお互いシャワーを浴びた私達。
でも、この後どうしたらいいのかまったく分からずとりあえずベッドの上に座ってみる。
ギシッと音を鳴らし隣に座られ、心臓の音は最高潮に達して息をするのも忘れてしまいそう。
クスッと笑う八坂さんの表情は朗らかさを漂わせているけれど、目もとが色気を醸し出しているように見えるのは私の気のせい?
高まる心臓の音はたとえようもないほど私を攻め立てる勢いを衰えさせない。
「ごめんなさい!私すごく緊張しちゃって。
こういう場合ってどうしたらいいのかまったく分からないから。
どうしたらいいのか教えてください!」
この歳になって何てことを言っているんだろうということは分かっていても、言わずにはいられない。

だって、どうしたらいいのか分からないんだもの!
こういう場合は余裕を見せた方がいいの?
でも、私にはそんなことは出来ないし…。

「真珠、可愛すぎ。」
横に座る八坂さんはてんぱり過ぎている私を抱きしめ優しく言ってくれたけど、笑いも混じっているように思うのは私の気のせいだろうか?
気のせいではないようで、耳元で聞こえ続けるのは笑い声。
大笑いではなく、笑いを堪えているというのが正しい。
「ひどいっ、私は真剣に言ってるのに笑うなんて!」
身体を押し戻しながら叫んだけれどビクともしない八坂さんの身体は私を抱きしめたままだから唸るしか私には出来ない。
「俺も真剣に言ったんだけど?可愛いって。」
「真剣だったら笑わないと思います。」
「笑ったのは、やられたって思ったからだよ。
そんなことを思う自分に笑ったんだ。だから、真珠のことを笑ったわけじゃないよ。」
「どういうこと?」
八坂さんの言葉の意味が分からなくて問いかけると、答えはすぐに返ってくる。
「女性に対して可愛い、愛しいという感情はほぼ皆無だったと言っていいほどの人間が、真珠にはメロメロすぎて、そんな自分が嫌じゃないって思っているのが意外すぎて可笑しかったんだ。だから笑ったんだけど、分かってくれた?」
「えっと、分かったような、分からないような。」
「真珠のことを愛してるんだって実感したって言ったつもりなんだけど。」
「ひゃっ!?」
耳元で囁かれた言葉の後に待っていたのは、耳たぶを甘噛みする唇の感触。
突然の感触に身体をすくませてしまったけれど、それと同時に身体が熱くなってしまった。
こんなことされたことなんて当然ながらないわけで、どう対処したらいいのか分からないでいると、今度は首筋に唇の感触を感じてキスをされる。
次第に優しく触れる感触が、私が感じる場所を探り当て声を出してしまった。それも、吐息混じりで感じてしまったということを知らせる役目を果たしているかのような声を。
「感じてるんだ。」
「だって、八坂さんが、そんなことするから…。」
「わざとだからね。真珠が感じる場所を探したいと思って。
それに、言ってた下着も見せてもらわないといけないだろ?
それとも、嫌になった?それなら無理にとは言えないから、大人しくしているよ。」
緩んだ腕の力が私の身体を八坂さんから離れさせようとするけれど、私の腕は離れたくないのだと訴えるように八坂さんの上着を握りしめる。
「無理じゃ、ない。」
精一杯の言葉。でも、本心。
このままの流れで行くとどうなるのかくらい私にだって分かっている。
経験がないことに不安がないわけではない。でも、そんな考えよりも想いの方が私の中で強くなった。
そんな気持ちが私だけじゃないといいと思えてきて、確認するように自分から八坂さんの唇を奪う。奪うといっても、軽く触れるくらいのキス。それが私の精一杯。
顔を赤く染めながらの行動は八坂さんにとってどれくらい効果があるのかと離れた後伏せ目がちになっていた視線をゆっくりと上げると、八坂さんは一瞬驚いた表情を見せ、すぐにそんな表情は消えた。
「まさかこうくるとは思ってなかったから、嬉しい誤算だよ。
今のは、同意の知らせだと思っていいのかな?」
八坂さんの言葉にうなずくことで返事をすると、ゆっくりと身体をベッドに倒されスプリングを全身で感じた後見上げる態勢で視線が重なる。
澄んだ瞳で見つめられることにトキメキを感じながら。
高まる鼓動が耳元で聞こえそうになる。そして、再び重ねられた唇の後に待っていたのは、今まで経験したことのないことのオンパレードだった。










違和感が…。

身体を重ねた後、意識をなくすように眠ってしまった私が目覚めたのは八坂さんの腕の中。
外はうっすらと日の光がカーテンの隙間から覗かせだすくらいの時間。それでも、いつもよりは起きるのが遅いのだと壁時計で確認できる。
触れ合ったままになっているお互いの肌に照れくさくなったけれど、それよりも暖かさが私の心を温めていた。
初めての行為に全身が違和感を訴えていたけれど、嫌だと思うことはなく、目の前で眠っている八坂さんの顔をじっと見つめる。
伏せられるとまつげが長いんだということを初めて知った。そんなことも、うれしく思える。
思い立ったかのように自然と動く手は、眠っている八坂さんの髪に触れ、見た目よりの柔らかな髪質なんだと思う。
触りすぎて起こしてしまうのも申し訳ないし、朝食の用意しようかなと思ってベッドから出ようとすると突然身体に腕が回され起き上がることが出来なかった。
「起きるの?」
眠そうに瞼をゆっくりと持ち上げながら声をかけられる。
「はい。朝食の用意しようと思って。八坂さんはまだ寝てていいですよ。」
「八坂さん?真珠、昨日約束したのにもう忘れたの?」
「えっと、忘れてないです、よ?」
「だったら、呼んで。」
「圭さん、おはよう。」
「おはよう、真珠。」
私の返事が合っているご褒美のように額に落とされるキス。
抱かれながら約束させられたこと。それは、名前を呼ぶようにということだった。
意識していなかった呼び方だったけれど、下の名前を呼ぶということは今までより気持が近づいたような気がして嬉しくもありこそばゆさを感じさせる。
「雪、積もってるのかな。」
「この寒さからいくと積もってそうだな。」
「暖房つけますね。」
リモコンをいつも置いているところから探し当てスイッチを押し、ゆっくりと運転を始める。
冷え切っている部屋へ次第に暖かい空気が流れだすけれど、温もるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
「部屋が暖まるまでベッドの中にいようか。」
そう言って抱き寄せられるとお互いの肌の温もりで温められる。
部屋が暖まるまでの間、短い時間だけど2人で過ごす時間を愛しく感じながら過ごせるというのは幸せなことだな、なんて思える。
圭さんの微笑みからも私と同じ気持ちでいてくれている気がして嬉しくなった。


そんな、人から見れば他愛もない冬の1日の始まり。
でも、私にとっては大切な日を過ごした翌日。
そして、愛しさが増した日。


+おわり♪+
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