続Loveliness Yo


8.想い人?


予想もしていなかったことが続きすぎて頭の中が飽和状態になってしまっているのに、日常というものは当然のようにやってくるもので、今でもぼわぼわした何とも表現しにくい状態のまま日々過ぎ去っている。
落ち着かなくちゃ、なんて思ったのは最初だけ。
今の私はというと、

無理っ、無理ですから!

なんてことを心の中で叫んでいる。
本当は口に出してしまいたいけれど、環境がそうさせてくれないのだから仕方がない。
生徒会に入ったのは納得した上でのことだからよしと出来る、でも、でも!劇の王子様役ってどう考えても無理ですから!!
とりあえず私としては人前で目立つようなことなんて今までやったことなんてないし、うまく出来る自信もない。
そのことを伝えるために改めて次の日生徒会長に会いに行ったけれど、
「そんなに気負わなくてもいいから、ね?
今日から練習始めるから頑張ろうね。」
有無を言わせない笑顔で言われ、結局スゴスゴと自分の教室に帰ってしまっていた。

はうぅ、頑張れませんよぉ。










「台本はみんな回った?」
放課後、律儀に生徒会室に来てしまう自分に肩を落としつつ、横から回ってきた台本を手に取る。
ご丁寧にもしっかりとした作りをしている台本は、生徒会長がこの日のために作っていたものらしい。
そうでもなければ今日用意出来るわけがないだろうけど、台本を見つめながらため息をついてしまう。
ため息、劇をやることはもうあきらめるしかないということは決めたけれど、両サイドに座る2人がお姫様って・・・・。
桐野君とは仲良くやっていける気がするけれど、賀谷西とはまったくない。

そもそもお姫様が2人ってどういうことなんだろう?
基本、こういう話っていうのはハッピーエンドにならないといけないわけで、でも、2人お姫様がいるというのはハッピーエンドにならないような気がする。

台本を読みながら浮かんできた疑問、そんな私の様子に気がついた桐野君が声をかけてくれた。
「どうしたの?」
「ちょっと疑問があって、お姫様2人だとハッピーエンドにならないような気がして。」
「ああ、確かに。
でも、この話はハッピーエンドになるようになってるみたいだよ。
ただ、最後は普通の劇より特殊な台本にはなってるよね。」
「特殊?」
桐野君に言われて最後の方のページをめくる。
するとそこには三行の文字しか書かれていなかった。


『王子は2人の姫のどちらかを選んでガラスの靴を持って探しに行く。
その後、選ばれた姫は王子と抱き合い、幕を下ろす。
セリフはアドリブで。』


アドリブってなんですか!?

あまりにも特殊すぎる台本の内容に凝視してしまって、そのまま身体の動きまでとめてしまっていた。
あきらめた気持ちながらも劇を頑張ろうと思っていた矢先にこの言葉。
どう考えても無理があるとしか思えなくて凝視しすぎたせいか頭がクラクラしてきた。
「これ、どう考えても無理、だよね?
アドリブなんて無理だよ。」
台本を指さしながら桐野君に声をかけると返事をしたのは、反対側に座っている賀谷西だった。
「無理じゃないだろ、優美が俺を選ぶのは決まってるんだから。」
飄々とした声で言う賀谷西は、椅子を後ろに倒したような状態で器用に前後に動きながらキィキィと音を鳴らしている。
「はい?」

今、何て言いました?
私が賀谷西を選ぶ?
ありえないから!

「決まってない!」
「照れてんのか?」
「照れてるわけないでしょう、何で私が賀谷西を選ぶのよ。
選ぶなら優しい桐野君を選ぶに決まってるでしょ。
いつもいつも意地悪で怖い顔を見せることが多い人を選ぶわけないじゃない。」
賀谷西からの言葉に思っているままの言葉で返す。
「本当に賀谷西君の自信はどこからくるのかいつも感心させられるよ。
とりあえず今のところは僕に有利だから賀谷西君が選ばれる確率は低いと思うよ?」
「そうかもしれないが、最後に勝てばいいだけだろ?
俺はまったく負ける気がしねぇから、お前の自信も崩れるだろうさ。」
私と話していたはずの賀谷西は、桐野君の言葉に不敵な笑みを浮かべながら視線を合わせている。
2人の間に挟まれたままの私は、次第に重苦しい空気に変わってきている自分の周りを漂う空気に押しつぶされそうになっているところに助け船の声が聞こえホッとする。
「おいおい、張り切ってるな2人共。
でも、まだそのやる気は抑えといてくれよ。
本番で意気消沈されても困るからな。」
短い付き合いとはいえ、生徒会長のお気楽な声に安堵感を抱くというのは何だかんだで嫌いなタイプでもなくこうやって助け船を出してくれるからかもしれない、と思いながら生徒会長の顔を見つめる。
あとから紗和子ちゃんに、「優美に縋った目で見られたら誰も見捨てられないからね。」なんてからかわれて自分が今の状況から助けてくれる人を心待ちにしていたことを自覚することになる。
「今からやる気出してた方が楽しめるだろ?
大貴の読みははずれてるな。」
「そうだね、勝負はすでに始まってるわけだから負けないためにもモチベーションは高めておかないといけないからね。
賀谷西君、僕も負ける気はしないんだ。
覚悟しておいた方がいいね、この先も片思いになることを。」
「覚悟がいるのはお前だろ?」
「それはないな。」
「俺もだよ。」
「もう好きにしてくれ。
他のみんなはそれぞれ自分の役を把握してくれ。」
生徒会長は睨み合ったままの2人に呆れ顔のままそう言うと席へと戻っていった。
その後解散となり紗和子ちゃんが私のそばへとやってきた。
その頃には2人は生徒会室から出て行ってしまった後で、紗和子ちゃんは、
「優美はきっとあの2人の言葉の意味なんて全く理解してないんでしょうね。」
なんてことを言って苦笑する。
「言葉の意味って、王子様に選ばれるために頑張るってことを言ってたんでしょ?
ちゃんと分かってるよ。」
「まったく分かってないわよ。
優美の今の状況はかなり美味しい状況なわけ。
でも、優美の意志は含まれてない。
そろそろ自分の気持ちを見つめた方がいい時期がやってきているんだと思うわよ?」
「自分の気持ち?」
「そう、優美が望む想い人が誰なのかをね。
あの2人のどちらかなのか、それとも、どちらでもないのか。
今の状況は私的には面白いけど、このままでも優美のためにはならなそうだからね。
考えてみるのがいいかもね。
さ、帰ろうか、優美は王子様だからセリフ多いから今から覚えないといけないでしょ?明日から読み合わせが始まるんだから。」
そう言って紗和子ちゃんと教室へ戻りカバンをとった後家まで帰ることになる。
けれど、私の頭の中は紗和子ちゃんに言われた言葉を考え続けていて帰り道は口を開くことなくただ一緒に歩く時間となってしまっていた。



神様、紗和子ちゃんの言ったことってどういうことですか?
私が望む人、それは劇に必要な考えですか?
そんな風に思いながらも2人の顔がチラチラ浮かんでくるのは何故なんでしょうか?





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