続Loveliness Yo


6.招待という名の拉致?


賀谷西の手にお弁当が渡ってから、毎日お弁当を作っている日々・・・。
作ってしまう私が悪いのか、脅しの目線を向けてくる賀谷西が悪いのか。
いや、明らかに賀谷西が悪い!はず。
だって、持ってきただろうなと視線で訴えられれば誰でも作ってくるはず、私はそう思ってるのに紗和子ちゃんからは、意味がよく分からないことを言われてしまっている。
「嫌ならはっきり断るべきでしょ。
今の優美なら出来るはずよ?
きちんと言い返せてるんだから。
それでもわざわざお弁当を作るというのには理由があると思うけど。」

紗和子ちゃんが言う理由、そんなのは賀谷西からの視線が中学の頃からの習慣になってしまっていて、逆らいたいのにそう出来ないだけ。

「そう思うんだったら、そうなんでしょ。」
「佐和子ちゃん、さっきとは違うこと言ってるよね?」
「気づいてないことをわざわざ気づかせたら、楽しさ半減しちゃうもの。
もう少し傍観させてもらうわ、彼らを。」
「彼ら?」
「そう、彼ら。」
紗和子ちゃんの楽し気な微笑みの意味がまったく分からないまま、会話は違う話題へと流れていってしまった。












「優美!どこだ!!」
恐怖の大王こと、賀谷西の雄叫びで始まる昼休み。
すでに恒例となっているからなのか、クラスメートの反応は薄い。
みんなお弁当タイムに入っていて、ざわざわと賑やかさが教室を包む。
賑やかさの中に響き渡る賀谷西の声が私を探していることに気づいてはいるけれど、はい、なんて返事が出来るはずもなく、チャイムと共に教室を飛び出した私は、廊下を駆け足で走っていた。
連日逃げ回っては捕まってお弁当は賀谷西の手の中に、なんてことを繰り返しているけれど、私の足は止まらない。
私が作ったお弁当を美味しそうに、今見せているであろう顔とは全く違う柔らかな表情を見せるのが分かっていても、止まることが出来ないのだから仕方がない。
その時の私の心臓が締めつけられるようななんとも言えない胸のモヤモヤ感があるから余計に動く足。
お弁当の中身がずれないように胸に抱え込みながら走る廊下。
歩く人達にぶつからないように走るのにもなれてしまった。

今日はどこに逃げ込もうか。

そんなことを考えながら走り続けていること数分、急に私の足の勢いを止める。
ガラッと聞こえたかと思うと、私の腕に何かが引っ掛かり、肩に手がおかれそのまま身体が引かれた。
勢いよく走っていたせいで突然の出来事に背中側にこけそうなっていると、まるで舞台の上のお決まりなラブシーンのように私の身体を片腕に乗せ、上から覗き込む態勢の男性。
明らかにこの人が私を引っ張って倒れさせたのだというのは分かる。
分かるけど!

誰!?
誰、この人っ!!
知らない人に身体を支えられてるんですけど!?

突然の男の人の登場に、頭の中はパニック。
それでも胸元に置いているお弁当を放り投げなかったのは私としてはよくやったといえるかもしれない。





「こんにちは、手荒な真似してごめんね。
でも、ちょっと優美ちゃんに話があるんだよね、聞いてくれる?」
私を見下ろしている男の人は少しだけ長めの髪を頬につけ、整った顔を微笑ませている。
ゆっくりと私の身体を起こすと、私の両肩に手を置き、歓迎の言葉を口にした。
「ようこそ、生徒会室へ。」
「はあ。」
「あれ?反応薄いねぇ。
もう少し驚いてくれると思ってたんだけど、予想と違ったなぁ。」
「驚いてます、十分。」
そう、私は驚きすぎて反応が出来ないだけ。
予想もしない出来事に遭遇してしまったら、脳が反応してくれない。
だから、予想と違うと言われても、これ以上の反応を見せられない。

いやいや、別に私がこの人の期待通りの反応をする必要はないわけで。
大体、私がこの部屋に連れ込まれているわけだよね?
何で?何で私は生徒会室なんかに連れ込まれてしまっているのでしょうか・・・。

今更ながらの疑問を思い浮かべていると、
「どうしてここにいるの?って顔だね。」
ククッと拳を口元に当てながら私の考えを男の人は言い当てる。
「ぜひ噂の優美ちゃんをじっくり拝見したかったんだよ。
あいつらが夢中になってる女の子をね。
いつ会えるかなぁと思ってたら、偶然生徒会室の前を走りぬけようとしてるじゃない?
これはチャンスと思ったわけだ。
で、招待させてもらったんだよ。」
「招待って。
それより、あいつらって。」
「分からない?」
「まったく、はい。
え?誰のこと?」
私がこの場所に引き入れられた理由のあいつらとはいったい誰なのか、まったく分からないでいると、ガラッと音がドアの方から聞こえ、振り向くとそこには桐野君が驚いた表情で立っていた。
「木村さん?
どうしてここにいるの?」
「どうしてって言われても・・・、この人が招待してくれた、のかな?」
疑問形の返事を返してしまう私に、要領が得ないのか桐野君は男の人に声をかける。
「どういうことでしょうかね、どうしてここに木村さんがいるんですか、生徒会長。」
「生徒会長!?」
桐野君の言葉に驚きの声を上げてしまった。
だって、生徒会長なんて私に関わりがあるはずがない人物ナンバーワンと言ってもいいくらいの人のはず。
ますます私がここに引き込まれた理由が分からなくなってくる。
「あれ?気づいてなかった?俺が生徒会長だって。
悲しいなぁ、真面目に仕事してるとおもったんだけどなぁ。」
「真面目な人が女生徒を生徒会室に拉致なんてしませんよ。」
賀谷西以外の人に冷たい言葉を言う桐野君というのは珍しく感じてしまったけれど、そんな私の考えなど分かるはずもなく、目の前では会話が続けられる。
「拉致なんて人聞きの悪い、純粋な好奇心だよ。」
「それが性質が悪いと言っているんです。
大体面白がりすぎですよ、生徒会長は。」
「だって、面白いんだから仕方ない。
日頃冷静な桐野が彼女には本気みたいだし?
龍もいつになく振り回されてるからね。」
「この間は賀谷西君に手を貸されるなんて余計なことをしてましたね。」
「何事も波乱がないと面白くないかと思ってね。」
「面白くないのは生徒会長かと思いますが。
自分の楽しみとして。」
「分かってるねぇ、さすが生徒会役員。」
「まだ返事はしていませんよ。」
「あれ?そんなこと言っていいのかなぁ。」
ニヤッと何かを企んでいるかのような顔を見せる生徒会長に怪訝そうな顔の桐野君。
その間に挟まれた私はどうしたらいいのでしょうか?



「おい、どうしてここに優美がいるのか教えてもらおうか。」
聞きなれた声、逃げ回っていた相手賀谷西の声が耳に入ってきて身体が自然とビクついてしまう。
「優美、やっと見つけたぞ。
弁当よこせ。」
ムッとした顔を隠すことなく私に近づいてくる賀谷西に、
「お前も遅い登場だな。」
何故か生徒会長が私をかばう様に前に立ち、賀谷西の動きを止める。
「大貴(だいき)、どういうことだ?」
「どういうことも何も、優実ちゃんにお願いがあったからここに来てもらったんだよ。」

初耳なんですけど!?

生徒会長からお願いごとをされることなんて何もないはずで、そんなことよりも、賀谷西が登場したことでますます生徒会室は居心地が悪い空気が漂っているように思えて、早く立ち去りたくて仕方がない。
でも、そんな私のささやかな願いは叶わないらしく、賀谷西の方を向いていた生徒会長は私の方を振り返り、予想もしていなかったことを言い出した。
「実はね、そろそろ1年生も学校に慣れてきたということで生徒会役員に選びたいんだよね。
そういうことで優実ちゃん、役員やってみない?」
「はい?」
「おい!」
「どういうことですか!」
それぞれが口を揃えたように言った言葉なんて何のその、生徒会長は話を続ける。
「折角一緒に忙しい業務をやるなら可愛い子がいいなぁって思ってたんだよね。
それに、お友達の紗和子ちゃんと一緒に過ごせるよ?」
「紗和子ちゃん?
紗和子ちゃん役員になるんですか?」
「そ、どうかな?
優美ちゃんが夢見るバラ色の高校生活が迎えられるかもしれないよ?」
「バラ色の高校生活・・・・、生徒会をするとそうなれるんですか!?」
「そうそう。」
にっこり笑いながら言われると、そうなのかも、なんて思ってしまうのは、私が単純だからでしょうか?
「おいっ、どこの宗教の勧誘だ。
優美はそんなことやらねーよ。」
「こればかりは賀谷西君に同感です。
木村さん、騙されちゃダメだよ。」
賀谷西と桐野君を庇うように立ち位置を変え、生徒会長を睨んでいる。
そんな2人の様子にも涼しげな表情の生徒会長。
「おいおい、そんな睨むなよ2人して。」
「睨まれるようなことを言い出したのはお前だろうが。」
「そうですよ、何を考えてるんですか。」
「お前達はそう言うだろうとは思ってたんだが、紗和子ちゃんがなぁ。
優美ちゃんと一緒じゃないと生徒会には入らないって言うんだよな。」
「どうしてここにその人物の名前が出るんだよ。」
「それは、私がお願いしたからよ。
まったく、いつになったら話が終わるのか待ちくたびれたわよ。」
「紗和子ちゃん!?」
今までどこにいたのか突然の登場。
よく見れば、もう1つ部屋があるらしく、そこから出てきたらしいことが分かる。
「優美、私も生徒会の役員なんて乗り気じゃないんだけど、頼まれちゃしょうがないなって。
でも、せっかくなら優美が一緒にやってくれるなら心強いのよ。
ダメかな?」
珍しい紗和子ちゃんのお願い。
しかも、いつもの様子とは違う雰囲気。
友達としては無視が出来ない。
紗和子ちゃんにいつもお世話になっている自覚はあるから余計だ。
「でも、私勉強ができるわけでもないし、役に立たないと思うよ?」
「そんなことないわよ。
優美が一緒にやってくれるのが助けになるの。
やってくれる?」
「うーん、紗和子ちゃんのお願いなら、仕方ない、かな?」
「いい?」
「うん。」
「ありがとう。」
そう言って紗和子ちゃんは私の手を取り微笑む。
「「おい!」」
そんな私達のやり取りを見ていた2人が声を揃えて叫ぶ。
「どうして優美が役員なんだよ!」
「そうですよ。」
「そんなに言うなら2人もやったら?」
「え!?」
突然の紗和子ちゃんの提案に驚きの声を上げてしまったけれど、そんな私のことはお構いなしに2人は、
「分かったよ。」
「仕方ない。」
それぞれ同意の言葉を口にした。
「や、別に2人はやらなくても・・・。」
「嫌だっていうのか?」
「そういうわけじゃ・・・。」
凄まれて尻つぼみになる言葉。
「さー、これで生徒会役員全員揃ったよ、助かった。
早速だけど、放課後会議だからみんな出席してくれよな。
じゃ、そういうことで俺達は食事にするから。」
そう言って紗和子ちゃんの肩を抱いて歩こうとする生徒会長だったけれど、パシッと手を叩かれ紗和子ちゃんに阻止される。
「その手は、いらないですよね?」
「はい。」
紗和子ちゃんは目が笑ってない笑顔を見せながら生徒会長から離れる。
「優美、そういうことでお願いね。」
「そういうことって紗和子ちゃん。
状況がうまく飲み込めてないんだけど。」
「大丈夫よ、放課後になったら分かるから。
じゃ、そこの3人、私と優美はお昼食べに行くから。
行こうか、優美。」
促されるまま生徒会室を後にする私。
そんな私達を見つめたままの3人は紗和子ちゃんの笑顔に動きを止められていた。
何が何だか分からないまま廊下を歩く私の手の中には、賀谷西の分のお弁当があって、初めて奪われることがなかった。


神様、何が何だか分かりません!
何故生徒会役員?
バラ色の高校生活、私が迎えられる日は来るんだと信じてもいいんですよね!?





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