続Loveliness Yo


5.追いかけっこ


別にいつも作っている物なんだから2つになろうが3つになろうがかまわないわよ。
でも、でもっ、何で私が賀谷西にお弁当作らないといけないのよ!
ふっ、それもこれも、騙された私が招いた結果なわけよね。
いいんだけどね、いいんだけど、って、よくないわ!!







朝早く、と言っても、いつも起きる時間ではあるが、台所に立ち学校で食べるためのお弁当を手際よく作っている最中だ。
1人ごとを言いつつではあったけれど、毎日と言っていいほど作っているので、ブツブツ言いながらも手は動いてくれる。
いつもは自分の分しか作らないお弁当だが、昨日の放課後賀谷西の口車に乗せられてこんなはめになってしまったことに、いまだ納得できない。
だけど、1度自分の口から作ってもいいと言ってしまったことで、お弁当を奴の分をわざと作らないというのは性格上出来ないためにいそいそと作ってしまう自分が悲しい。
そうこうしながら作り終えたお弁当を袋に入れ終えた後制服に着替え、朝食を食べてからいつもよりはテンション低めにいってきますと言いいながら玄関を出て歩き出す。
バス停までの道のりを手に持っている賀谷西の分も入った袋がいやに重く感じる。
学校に着いてから渡さないといけないのかと思うと、ため息が自然と出てしまっていた。













学校に着いた私を待ち受けていたのは、笑顔全快の賀谷西だった。
しかも、私のげた箱の前に立って。
「ジャイ子、作ってきたんだろうな。」
腕を組み、偉そうに聞こえる口調で話しかけてくる姿を見て、素直に作ってきましたと言える人は何人いるだろう?
いじめっ子である賀谷西の言葉を聞けばほとんどの人がお弁当を素早く出すかもしれない。
中学までの私だってそうするだろう。
でも、今の私は味方を見つけ自分の意見も聞いてもらえず泣いていた私じゃない、だから無言で賀谷西を押しのけた後シューズを取り出し靴を乱暴に入れ、きちんと入ってるのかも確認することもせず、
「作ってきてるわけないでしょ!」
あっかんべをしながら叫んだ後、一目散に走り出した。
言い逃げするのは、やっぱり逃げ腰ではあったけれど。
それでも、今までのことを思うと、とりあえずは自分の気持ちは言えた。
不本意ながらも作ったお弁当をカバンと一緒に持ったまま走り続ける私。

あんな言い方されたらお弁当渡す気も失せるわ。
大体自分がお願いしてきたくせに何で偉そうなのよ。
やっぱり嫌い、大っ嫌い賀谷西なんか。
絶対このお弁当、あげないんだから。

息が荒くなりながら走り続けつつ、心の中で誓う私だった。





走りながら賀谷西が追いかけてきたらどうしようかと思っていたけれど、追いかけてくることもなく、とりあえずお弁当を安全な場所に隠さないといけないということで、いい場所がないかいくつか教室を見て回る。
でも、ここだ、と思える場所がなく、朝礼が始まる時間が近づいていることに気づき焦ってしまう。
焦りを感じつつ、動き続ける足を止めることなく動かし角を曲がる。
「わっ!」
曲がったところにないはずの壁が私の目の前に見え、止ろうとしたけれど、スピードを出して動く足が止まってくれるはずもなく壁に額と鼻をぶつけてしまった。
当然ながらこんな場所に壁なんてあるはずがないので、ぶつけた顔を離し見上げると人の顔が見える。
「どうしたの?
朝からこんな場所で急いでるなんて。」
見上げた私に話しかけてきたのは、桐野君。
勢いよくぶつかったはずなのに、痛がる様子はなく、ただ、走りこんできた私に対して驚いているようだった。
「ごめんね、ぶつかって。」
「そんなこと気にしなくていいけど、本当、どうしたの?
こんなに急いでる木村さん見たことないのに。」
「えーと、それは、急がないといけない理由がありまして。」
「理由?どんな?」
「相変わらずの賀谷西がらみの話になるんだけど、賀谷西に見つからない場所に隠したいものがあって、それでどこかいいところはないかなぁって探してたんだけど、ここだっ!て思える場所を探せないし、朝礼始まりそうだしで急いでたんだ。」
桐野君にぶつかった原因でもある理由をぶつかったことに対して恥ずかしさもあり、誤魔化すように目を細めるほど笑顔を作りながら話す。
桐野君は私の話を聞いた後、何かを考えだしたようで話が途切れてしまう。

桐野君、私はお弁当の隠し場所を探したいんですけど。
どうしよう、このまま時間だけが過ぎて行くような気が・・・・。

考え込んだ桐野君を前に、自分が話したことで考え込んだというのに、この場を早く立ち去りたい気持ちで気だけが焦ってしまう。
けれど、そんな私の様子を気づいてはくれていないのか言葉だけでなく動きを止めてしまった桐野君を失礼だとは思ったけれど、このままそっと置いていってしまおうかなんてことまで考えていると、やっと話しかけてきてくれた。
これで動きだせると内心喜んでいた私に、失礼なこと思っしまってごめんなさいと思ってしまう内容を口にしたのだった。












「ジャイ子っ、お前〜!」
「ほら、ほらっ、先生来てるって!」
桐野君と2人先生が教室に来るギリギリに到着した私を待っていたのは、目をギラギラさせ、怒りを溜めている賀谷西だった。

怖いんですけどっ!

賀谷西の顔を見てすぐに浮かんできた言葉に、後ずさりしてしまいたい気持ちになってしまったけれど、すぐに先生が来てくれたことでなんとか足を動かすことが出来た。
それでも、横を通る勇気はなく、不自然なくらい隣の列の横を通り、賀谷西の横を通らずに自分の席に座る。
とりあえずは賀谷西の視線を感じない場所に避難をしたけれど、このまま賀谷西から逃げ切ることが出来るのか心配になってきていた。

何でこんなことになったんだか。
ただでさえバラ色の高校生活が薄いのに、自らもっと薄くさせてしまうなんて。
バカ?本当にバカだよ、私。

知らず知らずため息をついてしまうほど自分のバカさ加減に呆れつつ、これからの対策を考えることにした。
そして、私が考えた対策、それは、このまま逃げ切るということだった。
とりあえずは授業中に考えついた逃げ場所に無事逃げれるようチャイムと同時に動き出す作戦を立てた。
その結果、昼休みまで賀谷西から逃げることに成功した私。
考えた逃げ場所、その場所は女子トイレ。
さすがの賀谷西も女子トイレには入れないようで、奇跡を起こすことが出来た。
この作戦が100%成功するとは思ってはいなかったからうれしかったけれど、何が楽しくて女子トイレに逃げ込んでるのかと悲しくなったりもする。
そんなこんなで迎えた昼休み、何度目かのチャイムと同時の移動を済ませた私は、桐野君に教えてもらったお弁当の隠し場所へと急いだ。
桐野君に教えてもらった隠し場所、その場所とは、生徒会室だった。
この場所だったら、放課後までは誰もこないからと案内された。
でも、生徒会室といったら特別な場所のような気がして、しかも、1年生が使っていい場所とは思えない私は、本当にいいのかと聞いたけれど、知りあいには許可を取るから大丈夫と言われ、あれよあれよという間にお弁当を置きにつれていかれてしまった。
本当にいいのかと思わないでもなかったけれど、隠し場所としては最高だという思いから提案されるまま置いた。
そういうわけで、急いで生徒会室へと向かいつつ、朝のように人にぶつからないよう気をつけながら着いた生徒会室。
「失礼しまーす。」
誰もいないと思いながらも、入り慣れていない場所のため自然と挨拶をして入る。
ゆっくりとドアを閉めた後、お弁当を置いていた場所に視線を向けると何故か見当たらない。
「何で?」
桐野君の情報では誰もこないはずだからなくなる筈がないのに何故か机の上に置いていたはずのお弁当を入れた袋がなくて焦ってしまう。
「ここにあるぞ。」
突然聞こえた声に目を見開いてしまった。
誰もいないと思っていた場所で声をかけられた上に、今日1番聞きたくなかった人物の声だったからだ。
「な、なんでいるの!?」
「いちゃ悪いのかよ。」
「悪いとか悪くないとかじゃなくて・・・。」
「お前が逃げ回るからこんな面倒くさいことになるんだろ?
まったく、作ってきたんだったら素直に渡せばいいものを。」
視線に入っていなかった机の椅子から立ち上がりゆっくりと近づいてくる賀谷西の手には、お弁当が入っている袋が揺れている。
「あー!」
袋を指差し、探し物の行方が分かったことに大きな声が出てしまった。
この時間まで賀谷西の手に渡らないように逃げ回っていたのに、すでに奪われていた事実を知り、愕然とするしかない。
「袋の中身は俺のものだろ?
だから、俺が今持ってるのは当然のことなんだよ。
ほら、食うぞ。」
「ちょっと待ってよ!」
勢いよく近くにある椅子を引き座った賀谷西は、私に座るように言いたいのか隣にある椅子を引く。
そして、袋からお弁当を出し、包みをとき箱を見せる。
行動を見ていた私は結局どうすることも出来ず隣に座り、差し出されたお弁当を前に膝の上に両手を乗せた状態で見つめていた。

えーん、今までの私の頑張りを返してー。
あ、あっ!賀谷西食べた!!

当然のことながら開けられたお弁当を賀谷西は食べだし、横で見ることしかできない。
逃げ回った午前中の時間が食べられてる気がしてあー!なんて声が力なく出る中、
「うまいっ!」
賀谷西は一口二口と口にする。
しかも、満面の笑みで。
その後はいい食べっぷりと誰が見ても言えるほどの食べ方をしながら、変わらずの笑顔。
さすがにここまで嬉しそうに食べられると嫌がっていたはずの気持ちが変化してくる。
誰だって自分が作った料理をおいしそうに食べてもらえたらこんな気持ちになるものかなぁなんて思うけれど、まさか賀谷西相手に思うとは思ってもいなかった。
「おいしい?」
「おうっ。」

こんなに嬉しそうに食べるなんて意外。
そんなにお弁当食べたかったのかなぁ。
いつもパン食べてるみたいだからお弁当食べたくなるのかな?

賀谷西が嬉しそうに食べる理由を見当違いな方向に考えていたことにはまったく気づいていなかった。




その後、お弁当を食べ終わるかという時に桐野君がやってきて賀谷西と睨みあっているようだった。
「まさかこんな展開になるとは思ってなかったよ。」
「どんな展開になると思ってたんだ?
俺が俺のものを食べてるのは当然の結果だ。
それに、あいつからは情報は平等にあるべきだとさ。
同じ情報を持ってるのに出遅れたのはお前の方だ。
有効に使わないとな、情報は。」
「確かに、油断したよ。
でもまさか知り合いだとは思ってなかった。」
「あいつとは付き合いが長いんだよ。
かといって俺の味方ではなさそうだけどな。」
「そう、じゃ次の時は油断しないようにするよ。」
賀谷西と桐野君は私に分からないことを次々と話している。
でも、1つだけ分かったことは、誰かが賀谷西にこの場所を教えたということ。
いったい誰が教えたのか気になるところだけど、聞ける雰囲気でもなく口を閉じたままだ。

誰だろあいつって。
でも、あいつって人がこの場所教えたんだよね?
ということは、賀谷西だけじゃなくて他にも誰か私の高校生活をかき回す人がいるの?
いやー!
私は平和でバラ色の高校生活が過ごしたいのに、これ以上かき回されるのは嫌だ!!

誰か分からないあいつという人物が誰なのか知るのは、数日先のこと。





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