続Loveliness Yo


4.ちょっとだけ違う


楽しい日曜日も終わり、新しい週の始まり。
楽しい時間を過ごしたのと嫌な奴に会ってしまった嫌な時間を過ごした日曜日だったけれど、楽しい時間の方が勝っていた。
こんなに楽しいと思える日曜日を過ごせたのは何年振りだろう。
それだけ私の時間は賀谷西のせいで奪い取られていたのだと思える。
でも、もう昔ほど怖くない。
近くに味方がいると思うだけで強くなれるのだから不思議だ。

もう昔の私じゃないんだから!

学校に来る時に心の中でつぶやく言葉。
そうするだけで少しだけ強気になれる気がするから。
賀谷西なんかに負けず、バラ色の高校生活を目指し爆走するぞ!!











そんな私の想いも、賀谷西の顔を見て少しだけしぼんでしまう、朝の教室。
教室に入り自分の席に座った後、入ってきた賀谷西はすぐに私に話しかけてきた。
その顔は、とても怒っていて、反射的に身体が賀谷西から離れようと動き出そうとしたけれど、そんな私の動きはすぐに止められてしまう。
「何逃げてんだ?
逃げるってことはやましいことがある奴のすることだよな?
てことは、優美は俺に対してやましいことがあるんだ。」
「やましいことなんてないわよっ。
そんな怖い顔されたら誰でも逃げたくなるわよ。」
「この顔は自顔だよ。
それに、彼氏に対して顔が怖いなんて失礼なこと言うんだな。」
「だから、誰が誰の彼氏なのよ!」
「俺が優美の彼氏って言ってんだよ。
すぐそのことを優美は忘れるみたいだけどな。」
「忘れてるんじゃなくて、知らないのよっ。
私には彼氏なんていないんだから。」
「そんなことを言うのはこの口か?」
「んーんー!」
賀谷西に唇を掴まれ引っ張られてしまった私は抗議をしようとしたけれど、口を閉じられ唸ることしかできない。
しばらくそんな状態でいた私だったけれど、しばらくして賀谷西の手から唇を解放された。
「久しぶりに優美の涙が見れたからこれで許してやるよ。」
フフンと満足げな表情の賀谷西。

何で私があんたに許してもらわないといけないのよっ!

そう思いながらも痛みで涙目になってしまっている私は言葉に出すことが出来ない。
朝の誓いが嘘のように私の中で萎んでいく。
「朝からひどいことするんだね。」
いつもと同じ優しい笑顔を見せながら声をかけてきたのは、桐野君。
味方の登場に、痛みのせいとは違う涙があふれそうになってしまって、
「桐野君!」
私は大胆にも桐野君に向かって両手をひろげて駆け寄ってしまっていた。
「おい!」
でも、そんな私の動きも、賀谷西の大きな手が私の額を掴んで止められる。
しかも、おまけとして勢いを急に止められ私の首は後ろにのけ反ってしまい、こけそうになってしまったところを賀谷西に後ろから支えられ、抱き締められてしまう。
「ちょっ、ちょっと、離してよ!」
「嫌だね。
他の男に抱きつこうなんてお仕置きもんだ。」
「意味分かんない!!」
「賀谷西君が嫌がられるようなことをしたんだよね?
可哀想に木村さん。」
「そうなの、桐野君っ。
やっぱり桐野君は私のこと分かってくれてるんだね。」
手足をばたつかせながら賀谷西の腕の中から出ようともがくけれど、それも叶わず桐野君に両手を伸ばし、助けを求める。
「こんな男に助けを求めるな!」
「いやー!!」
「嫌がってるのに無理じいはよくないよ。」
そうして私達3人はギャーギャーと騒いでいると、
「毎朝うるさい!
たまには静かな朝を迎えさせてほしいものね。
ほら、優美はこっちにきて。
賀谷西君は優美を離す。
桐野君も席に着く!」
紗和子ちゃんは腰に手をあて仁王立ちになりながら指示を出す。
確かに紗和子ちゃんが言うように、毎朝こんな感じで過ごしている私達。
「私悪くないのに・・・。」
ぼそっと心の声を呟いてしまった私に、冷たい視線を送ってきた紗和子ちゃん。
「助けてほしくないみたいね、優美は。」
そう言って立ち去ろうとする紗和子ちゃんにすがりつきながら謝ってしまう私なのも、毎朝の光景だ。













結局バラ色の日曜日を過ぎたら、色あせて見えるバラ色の日常。
いつになったら明るい日々がやってくるのか・・・・。

バタバタした朝を過ごした後、いつものように賀谷西に絡まれる時間が終わった放課後、紗和子ちゃんは用事があるからと先に帰り、1人で帰ることになってしまった。
それなら、と、図書室に寄ろうと思った私は、閉館の時間を迎えるまで図書室で過ごす。
勉強は好きじゃないけれど、だからといってやらないわけにはいかない。
だったら、自分が好きな空間でやる方が効率がいいというもの。
本が好きな私は、図書室の静かな空間が好きだ。
誰にも邪魔をされない空間というのは、騒がしく過ごす日々から少しだけ抜けだし、寂しさを紛らわせることもできるから。
中学の時も図書室で過ごすことが多かったけれど、今は、紗和子ちゃんもいるし、他にも仲良くしてくれる子達がいるお陰で、前より通う回数が減っている。
うれしいことだけれど、どこか寂しい。
贅沢なことを言っているなぁと思いつつ、図書室を後にし、廊下を1人で歩いていると、肩を叩かれる。
「げっ。」
「人の顔を見て言う言葉じゃないだろ、それ。」
「心の声が素直に出ただけだもん。」
私の肩を叩いた賀谷西にそう言って私は前を向いて早足で歩き出す。
これ以上一緒にいるのは耐えられなかったから。
この場所には紗和子ちゃんも桐野君もいない。

早く賀谷西から離れないと、何されるか分かんない!!

そう思っているのに、後ろから賀谷西がついてくる気配はしなくて、思わず立ち止まりゆっくりと振り向くと、さっきの場所に立ち止まって下を向いている賀谷西がいた。

え?何で追いかけてこないの?
いつもだったら追いかけてきて、お仕置きだなんてこと言うところじゃないの?
どうしたのよ、賀谷西。

いつもと違う賀谷西の行動に、思わず心配してしまった私は、賀谷西の元に戻ってしまっていた。
「どうしたの?何かあったの?」
どうして私が賀谷西の心配をしないといけないのかと思いつつ、やっぱりいつもと違う姿を見せられては、しょうがない。
でも、心配している私に返事をすることなく、下を向いたままの賀谷西。
「ねえ、本当にどうしたのよ。
何か悩みがあるんだったら、私聞くから。」
「・・・・そんなに俺のこと嫌いか?」
「え?」
「そうだよな、俺、嫌われるようなことしか優美にしてないもんな、嫌われて当然だよな。」
今まで聞いたことがないほど落ち込んだ賀谷西の言葉。
それに、意地悪ではなく、悲しげな表情。

そんな姿を見せることになったのは、私のせいなの?
ううん、そんなことはないっ。
賀谷西が勝手に落ち込んでるんだから、私のせいなんかじゃないわよ。
だいたい、今まで賀谷西が私に対してしてきたことを思えば、このくらい落ち込んだ方がいいんだから。
そう、そうよ!!

自分にそう言い聞かせてみるけれど、落ち込みから回復する気配を見せない賀谷西を前にしていると、落ち着かない。
こんな賀谷西を見るくらいだったら、いつも意地悪をする賀谷西の方がましな気にさえなってくる。
だから、こんな言葉が出ても仕方がなかった。
「そんなに落ち込まないで。
私、気にしてないから、ね?」
「俺のこと嫌ってるんだろ?」
「嫌ってなんてないから。
ただ、もう少し優しくしてくれたり、意地悪なのを止めてくれたらうれしいかな。」
「そうしたら嫌わないでくれるのか?」
「嫌ってなんかないよ。」
弱さを漂わせる賀谷西が何だか可愛く見える。
だからなのか、私は心臓の音が次第に大きくなってくるのを感じていた。
いつも強いところしか見ていない人が弱っているところは、母性本能が働いてしまうのかもしれない。
そのせいで私の心臓は大きな音をたて出しているんだと思っていると、
「うれしいよ、優美。」
そう言って賀谷西は私を抱きしめてきた。
突然のことに驚きながらも、賀谷西の腕を振りほどくことが出来なかった。
だって、私を抱きしめる腕は優しくて、暖かかったから・・・・。
賀谷西に抱きしめられたままの私は、心臓の音が最高潮、顔も熱いからきっと真っ赤になっているはず。
「弁当・・・。」
「え?」
「弁当、優美が作った弁当食いたい。」
「私が作った?」
「いつも作ってんだろ、自分の。
俺も優美が作った弁当食いてーよ。」
確かに私はいつもお弁当は自分で作っていた。
でも、この場面でお弁当と急に言われても、どう反応して良いのやら。
「駄目か?」

そんな切なそうに言われると、嫌なんて言えないじゃない。

「お弁当ぐらい作ってもいいけど。」
「本当に?」
「うん、それくらいなら。」
「そうか。」
「うん、えっ、痛いっ。」
急に強まる賀谷西の腕。
まだ抱きしめられていたままになっていた私は、強められたことで痛みを感じだしたことを抑えることが出来ず口にすると、
「やっぱり優美は俺に気があるってことだよな、弁当作ってくれるんだから。」
ククッと不吉な笑いを耳元でさせる賀谷西の顔はいつもの意地悪な顔を見せていて、私の身体を硬直させる。
「押してダメなら引いてみるもんだな。
優美が素直になってくれるんだから。」
「素直になんかなってないから!」
「照れるなよ、明日楽しみにしてるよ。
さ、帰るか。」
そう言ってパッと私から腕をとき身体を離した賀谷西は、してやったりというような顔だ。

騙された!

「騙したのね!」
「騙してなんかねーよ。
素直にお願いしただけじゃねーか。
ほら、そんなことより帰るぞ。」
さっと私の手を握った賀谷西はスタスタと歩きだし、手を掴まれた状態の私は引かれるがまま歩き出すしかなかった。
そして、そのまま帰る羽目になってしまった私は、何とか賀谷西の手から逃れようとしたけれど、思いは叶わず、バス停で別れるまで手をつなぐはめになってしまうのだった。



いつもと様子が違う賀谷西にすっかり騙されてしまったことに怒りを覚えつつも、うっかり胸を高鳴らせてしまった自分にも怒りが込み上げてくる。

何であんな奴にドキドキしちゃってるのよ私は!
いや、気のせい、間違いよあんなの。
私が賀谷西にドキドキするはずないんだから!!
そうですよね神様っ。
気のせいですよね、そうだと言って〜!!





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