続Loveliness Yo


3.ある日の日曜日


高校に入学して1ヶ月が経った。
バラ色の高校生活が過ごせているのかと聞かれれば、その通りと自信を持って答えることができないのが辛いところ。
でも、中学時代と違い、いじめられることがないのが唯一の救いとも言える。
そのかわり、クラスメイトから面白がられているような気がする。
それは気のせいでもなんでもない、賀谷西のせいだった。
自己紹介の時の出来事のせいで、やれ漫才だ、三角関係だと言われているから、面白がられているんだと思う。
毎日賀谷西から絡まれているところを優しさで助けてくれているだけの桐野君には申し訳ない気持ちになるけれど、やっぱりうれしいものはうれしい。
だって、中学の時の味方は紗和子ちゃんしかいなかったわけで、それが、高校に入ってすぐに味方になってくれた桐野君に感謝の気持ちが強くならないわけがない。
ただ1つ困るのは、桐野君の毎日の告白。
「今日は付き合いについての返事を聞かせてもらえるのかな?」
なんてことを聞いてくるからだ。
賀谷西を前にして言っていることから、私から賀谷西を引き離してくれるために言ってくれるんだとは思うけれど、やり過ぎだと思えて仕方がない。
だって、今まで告白なんてされたことがない私には心臓に悪い言葉だからだ。
やっぱり毎日聞いていたら嘘だと分かっていてもドキドキしてしまうものだから。
そんなことを繰り返している内に日々は過ぎていき、1ヶ月経つ今、紗和子ちゃん以外で仲良くなった女の子と映画に行くことになった。
怪我の功名と言えるのか、自己紹介が終わった後、クラスの雰囲気は笑いに包まれた楽しい空間で、私も気軽に話が出来る雰囲気だった。
それから女の子達とも気軽に話すことができ、賀谷西の妨害もなく快適に過ごせている。
だから、ある意味バラ色の高校生活を過ごせてるのかなぁと思うこともあるけれど、そんな想いも賀谷西の存在が重くのしかかってくることがある。
賀谷西がいなければ本当にバラ色の高校生活なのになぁ〜。
でも、今日はお休み、賀谷西に会うことはないし楽しまなくちゃ!











青空がまぶしい日曜日、待ち合わせの場所に向かうとすでにそこには3人の女の子がまっていた。
1人は紗和子ちゃん、残り2人は同じクラスの梨紗ちゃんと成美ちゃん。
紗和子ちゃんと席が近い2人とは、徐々に話をするようになり、少しずつ親しくなってきている。
4人で話をしている時に映画の話になった時、同じ映画に興味を示したことで今日のお出かけが決定したわけで。
「遅い、優美。」
「ごめんね〜、寝坊しちゃった。」
少しだけ怒り顔の紗和子ちゃんに、両手を合わせながら謝っていると、
「まーまー、そんなに遅くなったわけじゃないんだからいいじゃない。
それよりもお腹空いたな、私。」
「そうねぇ、言われればお腹空いてるわね。
行きましょうか。」
助け舟なことを2人が言ってくれて少しだけ歩いた場所にあるファミレスに向かうことになった。
ファミレスの中に入った私達は椅子に腰かけた後メニューを見ながらデザートはどうしようかなんてことも話しながら料理を決め、店員さんをボタン押して呼び出す。
それから話をしながら店員さんが来るのを待っていたけれど、気がつけば話は私のことで・・・。
「優美も大変と言えば大変よね。
毎日2人の男に囲まれてるんだから。」
「そう?
そりゃ変な男だったら面倒くさいけど、あの2人からなら許せるかも、私。
カッコよくてこれから男の色気が出そうな男と頭もよくてカッコいい将来有望な男、いいじゃない。
私ならウハウハだわ。」
「ウハウハって、梨紗ちゃん。」
梨紗ちゃんの言葉に力が抜けてしまい、力弱く出てしまう言葉。
「確かに梨紗からすればウハウハでしょうよ。
昨日も告白して振られたらしいじゃない。」
成美ちゃんはどこから情報を得たのか、ズバリ梨紗ちゃんの痛いところをついてくる。
「人の古傷を、ひどい成美。」
「1日で古傷になってるということは、傷は浅かったってことでしょ?
だからたいしたことないわよ。」
「優美〜、成美が私をいじめるよぉ〜。」
梨紗ちゃんはそう言うと、隣に座る私に抱きついて泣きまねをしている。
そんな様子が何だか楽しくて嬉しい私は、思わず微笑んでしまう。
中学時代ではこんな気軽に話せる子はいなかったし、何よりも、和気あいあいとした雰囲気になることもなかった私としては、梨紗ちゃんには申し訳ないけれど、楽しくて仕方がない。
そんな私の気持ちに気がついているのか、紗和子ちゃんの表情もとても優しく私を見てくれている気がする。

あ〜、これよ、これ!
私が求めていたバラ色の高校生活っ。
うれしいよぉ〜。

ニコニコ顔になっても仕方がない今の状況の私だったけれど、すぐにそんな時間は終わってしまった。
日曜日の昼下がり、あいつが現れたから!!







「ご注文はお決まりですか?」
店員さんに声をかけられ、さっきまでの騒ぎは何だったのか、メニューに視線を戻した私達だったけれど、先に注文しようとした紗和子ちゃんの言葉が止まってしまい、どうしたのかと思い顔をあげると、そこにはこの場にいることがあり得ない人物、賀谷西が制服を着て立っていた。
「か、賀谷西〜!?」
突然の登場に思わず叫んでしまった私だったけれど、そんな私の顔を見るなり、ニヤッと笑った後、楽しそうに口を開く賀谷西。
「そんなに俺と会えて喜ぶとは可愛いじゃねーか、優美。」
「喜んでない!」
「わざわざ俺に会いに来たんだろ?
ここにいるってことは。」
「偶然よ!
何訳わかんないこと言ってんのよっ。」

どんな神経してんのよ、この男は!
賀谷西がバイトしてるって知ってたらこの店には来なかったわよっ。

さっきまでのバラ色な気持ちも萎んでしまう賀谷西の登場に落ち込むよりも怒りが込み上げてくる。
休みの日に会ってしまったばかりか、訳の分からないことまで言われることに対してだ。
どこまで不幸の星の下に生まれてしまったのかと悲しくなってしまう。
こんな偶然があるなんてあんまりだ。
「注文したいんですけど、店員さん?」
「ああ?俺は今優美と話してんだ、もう少し待ってろ。」
店員らしからぬことを話しかけてきた紗和子ちゃんに対して言い出す賀谷西に対し、紗和子ちゃんがとった行動は、
「すいません、この店員さんが注文を聞いてくれないのでどなたか聞いてくれます?」
笑顔をみせながら賀谷西を撃退してくれる素敵な言葉だった。
「おい!」
「本当のことでしょ?
私達お腹が空いてここに来てるんだから注文もとれない役立たずな店員にいられても困るのよね。」
「言ってくれるじゃねーか。」
「凄む前に自分の状況を把握した方がいいんじゃないの?
向こうから睨みきかせながら近づいてくる人がいるわよ。」
「っ、早く注文しろよっ。」
「最初からそう言えばいいのよ。
ほら、みんな頼もう。」
賀谷西の睨みなんてなんのその、気にすることもなく注文を終える紗和子ちゃんはとても素敵で、思わず拝みそうになってしまった私だった。
「素敵、紗和子ちゃん。」
「素敵じゃないでしょ。
優美も賀谷西に乗せられたままになっちゃ駄目よ。
バラ色の高校生活過ごしたいんでしょ?」
「もちろん!」
「だったら優美もあしらうことをしないと。」
「はい。」
「でも、中学の時は言い返すことも出来なかったんだからいい傾向にあるとは思うわよ。」
「そうだよね!」
「すぐ調子に乗るんだから。」
「だって〜。」
紗和子ちゃんと話しつつ、口をとがらせる私だったけれど、そんな私達の会話を聞きながら梨紗ちゃんと成美ちゃんはクスクス笑っていた。














しばらくして料理を運んできたのは別の人で、その時に先ほどは店員が失礼しましたと謝られてしまった。
賀谷西はどうしているのかと周りを見渡すと、ムッとした顔で他のお客さんのところにいた。
店員がそんな顔をしてるのはどうよと思ってしまったけれど、きっと、運んできてくれた人に怒られたんだと思うと、ざまーみろと思ってしまった私。
そして、目の前に並べられた料理をおしゃべりをしながら食べ終えた私達は、次にきたデザートを口にする。
そうしているうちに、映画の時間も近づいてきていた。
「あれ?木村さん達。」
そろそろ席を立とうとしていた私達に話しかける人は、ラフな格好の桐野君だった。
「桐野君こそどうしたの?」
まさか桐野君にまで会うとは思っていなかった私は、驚いてしまう。
「僕は塾の帰りだよ。
今日は昼までだったんだ。」
「そうなんだ、日曜日まで勉強だなんて大変だね。」
「勉強は嫌いじゃないからね、あんまり苦じゃないんだ。」
「すごいねー、私なんて勉強嫌いだからやらなくていいならやらないよ。
尊敬するなぁ。」
「ありがとう。
で、今日はみんなで集まってどうしたの?」
「今から映画行くんだ。」
「いいね、最近映画行ってないなぁ。」
「そうなんだ。」

そうだよね〜、塾行ってたりしたら映画行くことも難しいよね。

「じゃ、一緒にどお?
恋愛ものとかじゃないから桐野君も観れると思うわよ。」
紗和子ちゃんはなぜか楽しそうな顔を見せながら桐野君を映画に誘う。
紗和子ちゃんの表情の意味を桐野君を誘うことが嬉しいのかと思い、もしかしたら紗和子ちゃん桐野君のことを好きなのかもなんてことを考えてしまう。

そうか、そうだったんだ。
でもそうだったらもう桐野君に助けてもらうのは紗和子ちゃんに申し訳ないってことで。
ど、どうしよう〜。

「優美の考えてること、外れてるわよ。」
「え!?」
うーんと考え込んでしまっていた私に対して、ため息をつきながら話す紗和子ちゃんの顔はあきれ顔。
「どこをどう考えたら私が桐野君を好きだという考えになるんだか。」
「だって〜、一緒にいたいと思って誘ったんだと思ったんだもん。」
「私が誘ったのは色恋じゃないわよ。
ただ、これから楽しい反応をしてくれる人がいるから誘っただけよ。」
「楽しい反応?」
「ほら、現れたわよ。」
そう言って振り向いた紗和子ちゃんの視線の先には、すごい形相を見せている賀谷西が私達に近づいてきていた。

怖いんですけど!

今までにないくらい怒っている賀谷西の顔が怖すぎて、身体が引き気味になってしまう私だった。
そして、そばまで来た賀谷西は、
「おい!何でこいつがここにいるんだ!!
優美っ、お前俺に内緒でこいつと会う気だったんだな。」
大きな声を出しながら凄んでくる。
「僕達は偶然会っただけだよ。」
ニッコリ笑いながら賀谷西の怒りを気にすることなく涼しげに言う桐野君。
「でも、誘われたから今から映画に一緒に行くんだけどね。
賀谷西君も良かったら一緒にと思ったけど、バイトみたいだし残念だな。」
「残念なんてこれっぽっちも思ってないだろ、お前。」
「そんなことないよ。」
「このやろー。」
「はいはい、その辺りでやめとかないと怖い顔の店員さん近くまで来てるわよ。
運がなかったのね、可哀想だけど。
じゃ、私達行くから、頑張ってお金稼ぎなさいよ。
使う日は刻一刻と近づいてるんだから。」
ニヤッと笑いながら言う紗和子ちゃんに対して、今までの怒りを吹き飛ばす効果があったのか、紗和子ちゃんから言われた後賀谷西は今まで見たことないくらい動揺を見せた。
「おまっ、お前なんで!?」
「分からないわけないでしょ。
この時期からバイト始めるなんて、あの時期が近づいてるってことぐらいすぐ分かったわよ。
意外と可愛いところがあるんで驚いたわ。
バイト頑張ってね、じゃ、行きましょうか。」
そう言って私達を促す紗和子ちゃんは何だか楽しそうな表情を見せていたけれど、この言葉の意味を知るのは数か月の時間が過ぎてからのこと。
今の私は訳が分からず頭をひねるだけになってしまっていた。




それから私達は結局用事があるからと帰って行った桐野君と別れ、4人で映画を観て、解散した。
桐野君と別れる時紗和子ちゃんは、
「あー、楽しかった。
まさかあんな表情まで見せてくれるなんてね。
ご協力ありがとう、桐野君。」
「いえいえ、こっちこそ助かったよ。
これからも、味方になってくれるみたいでよかった。」
「それはどうかしら。
これからの展開次第ね。
今のところは味方になってるけどね。」
「味方になってくれていることを願うよ。」
またまた、私には分からない会話をした後去っていった桐野君。
「紗和子ちゃん達が言ってる意味がよくわかんなかったよ。」
そう素直に伝える私に、梨紗ちゃんと成美ちゃんは、
「純粋な子なのねぇ。」
「本当に。」
うなずきながら納得したように話す。
「馬鹿な子ほどかわいいっていうでしょ?」
「確かに。」
納得したようにうなずく2人と満足げな顔の紗和子ちゃん。
そんな中に訳が分からないままの私。


こんな状況でも、バラ色の高校生活の日曜日過ごせてるよね私。
ね?神様?





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