続Loveliness Yo


2.憂鬱な自己紹介


紗和子ちゃんが声をかけてくれたことで、何とか賀谷西が椅子に座ったことに安心していると、担任の先生が教室に入ってきた。
簡単な入学祝いの言葉と自分の自己紹介を終えた後、私達に自己紹介をするようにと言ってきた。

自己紹介・・・・。
これこそ悪夢の始まりだったのよね、中学時代。
憂鬱だなぁ。
目の前には賀谷西がいるし、無事に済むか心配だよぉ。

賀谷西の後ろ頭を見つめながら自分の順番が近づいていることで心臓の鼓動が速くなっていくことに息苦しさを覚えていた。
そして、私の前に座る賀谷西の順番がきて、次は私だと思うと、緊張も最高潮になろうとしていたけれど、中学時代の時とは違う悪夢が待っていることを、今の私は気づいていなかった・・・・。











「賀谷西龍です。
趣味は後ろに座っているジャイ子こと優美をいじめること。
ただし、いじめていいのは付き合ってる俺だけなんで、他の奴が優美に手を出そうとしてるのを見つけたら容赦しないんで。
そういうことで、自己紹介終わり。」
言い終わった賀谷西は、ニッと笑いながら椅子に腰かけると、それを合図にしたかのように教室中どよめき出す。
そして、冷やかしの声まで聞こえだす始末。

なっ、何言ってんのよこの男は!?
誰と誰が付き合ってるっていうのよっ。
中学の時よりも立ち悪いことしないでよね!

賀谷西の意味不明発言に緊張よりも動揺と怒りが入り混じったものが私の中で渦巻き出していた。
早い話が、パニックになっているということだ。

やっぱり賀谷西は悪魔だ、絶対そうなんだぁ〜!

クラスメイトの視線がざわめきと共に私に向けられていて、とても自己紹介どころじゃない。
私のバラ色の高校生活はここで終わりなんだと思うと泣いてしまいそうだ。
「木村さん、大丈夫だよ。」
桐野君は優しい笑顔を見せながら、そう言ってくれたけれど何が大丈夫なんだろうとしか思えない。
けれど、私の味方だと思える桐野君にこの場をどうしたらいいのか分からない私は、すがるように助けをもとめてしまっていた。
「何が大丈夫か分からないよぉ。
このままじゃまた中学の時みたいにいじめられちゃうよ。」
「いじめられないよ。
もし、木村さんがいじめられるようなことがあれば僕が助けるし。」
「桐野君。」
「それに、賀谷西君が言ったことは、考えようによってはクラスに溶け込むのに利用できると思うよ?
今の状況を見たら、ノリがよさそうな人が多そうだから、賀谷西君が言ったことは冗談だったと言えばいいんじゃないかな。」
「そうか、私と賀谷西は付き合ってないんだからこのまま冗談だったって言えば・・・・。」
賀谷西の隣に座っている子が自己紹介をしている間、私の助けを受け入れてくれた桐野君と小声で話をしながら次に来る自分の自己紹介の対策を考えることに没頭していた私は、何とか道筋が出来た気がして嬉しくなる。
「おい、何コソコソ話してんだよ。」
「何でもないわよ!
ちゃんと前向いてなさいよね。」
「嫌だね。
俺が見てないと必要以上にお前らが話すだろうが。」
「はい?
必要以上になんて話してないわよ。
桐野君とは必要なことしか話してないもの。」
突然後ろを向いて話しかけてくる賀谷西に、反論の言葉を投げかける。
中学までの私だったら、賀谷西のムッとした表情を見るだけで何も言えなかったけれど、桐野君がそばに居てくれるお陰か、自分の意見が言えていた。
でも、やっぱり怖くて声が震え気味にはなってしまっていたけど。

だいたい、誰のせいで桐野君とコソコソ話すことになったと思ってるのよ!
全部あんたのせいでしょうがっ!!

「そうだよ賀谷西君。
それに、前を向いてないと落ち着きない男に見えるよ。」
「いってくれるじゃねーか。」
私と賀谷西の会話を遮るように桐野君が賀谷西に話しかける。
そんな桐野君に睨みを利かせる賀谷西だったけれど、そんなこと気にすることでもないかのように先ほどと変わりがない微笑みを続ける桐野君に尊敬を感じてしまう私だった。










結局私の自己紹介がどうなったのかというと、なんとか無事に終わった、とは言い難いものだった・・・・。




賀谷西は桐野君に睨みを利かせる中、私の順番がやってきてみんなの視線が痛く感じたけれど、賀谷西が言ったことは冗談で彼氏募集中ですなんてことを言ってみたりして。
すると、賀谷西が立ち上がろうとしていたことに気づいて、何かされる!と自分が言った言葉を後悔してしまう私。
そんな状況の中、どうしようかと思っていると、桐野君が立ち上がり自己紹介を始めて、
「桐野 東です。
木村さんが彼氏募集中ということで、立候補したいと思いますのでみなさんよろしく。」
と、満面の笑みで言って私を驚かせた。
桐野君の言葉は、賀谷西の動きを一瞬止めてしまったけれど、それは本当に一瞬のことで、
「何言ってんだ!
優美は俺のもんだって言っただろうが。」
桐野君に掴みかかりそうな勢いを見せ出し、賀谷西の動きを止めなければと焦った私は賀谷西の腕を掴もうとすると、そんな私の動きを止めるように身体が引っ張られてしまい、身体のバランスが取れなくなってしまう。
「でも、木村さんは違うって言ってるんだから僕が彼氏に立候補してもいいはずだよ?
ね?木村さん。」
バランスを崩したのは、桐野君に腕を引っ張れたことが原因だと分かった頃には私はすでに桐野君の腕の中にいて、背中越しに桐野君の胸の厚みを感じる距離の上に、至近距離で囁かれる声に身体がビクッと震えてしまうし、変な汗は出てくるしでパニック状態を再び向えてしまっていた。

み、耳元〜!
い、息、かかってますよぉ〜!!

「おい!
優美を離せ!!」
「でも、木村さん嫌がってないし。」
「優美!
お前、お仕置きされたいのか、さっさとそいつから離れろっ!!」
「いいかげんにしなさーい!
いつまでも自己紹介が進まないでしょうが。
先生も面白がってないでちゃんと止めてください。
ほら、優美見なさいよ、許容範囲超えて昇天しそうになってるわよ。
桐野君は早く優美を席に座らせて。
賀谷西君は自分の席に座るっ。」
パニック状態にある私を助けてくれる声は紗和子ちゃん。
桐野君は私を座らせた後、賀谷西も自分の席に大人しく座り、今まで進まないでいた自己紹介がやっと進みだし、最後の人まで終わるまで私は机に倒れこんだままになってしまっていた。
そして帰る頃には、三角関係だ、トリオ漫才だなどなど、クラスメイトに言われてしまい、この先も面白がられることとなる。



私のバラ色の高校生活が遠ざかっていってる気がするのは気のせいでしょうか?
帰ってきてっ、バラ色の高校生活!!





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