続Loveliness Yo

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15.出した答えは・・・。


ガラスの靴を渡され舞台に残された私は、その場に立ったまま視線をガラスの靴に向けていたけれど、頭の中はグルグルのままで思考を停止させようと防衛本能が働いた。
だけどそううまく物事が運ぶわけはなく、どうしようかと思っていると生徒会長が助けの手を差し伸べてくれた。

「王子様はシンデレラからの提案を思案するべく玉座へと戻り、目の前で流れるように行われるダンスを眺めることなく考え込んでしまう。」

生徒会長のナレーションを合図に曲が流れだしダンスが始まり、私の前ではゆっくりとした動きながらも本格的ダンスが行われだした。
ダンスは生徒会長と紗和子ちゃん仕込みで、この2人はダンス経験者らしく私達に教えてくれるのはいいけれど、スパルタ指導で何度弱音を吐いたか分からない。
それでも何とか形になったお陰で今日はみんな素敵なダンスを披露することが出来ている。
そんな中、素敵なダンスが目の前で行われているにも関わらず思考の波にのまれたままの私は、もう少しで舞台の上だということを忘れ叫びそうになりながら悶々と考え込んでしまっていた。
ダンスが終わるのは曲が終わる数分後、いくらなんでもそれ以上の時間を割いてもらえるとは思えないし、そうなると数分の間で私は考えを終わらせないといけないわけで。

終わるか!!
そんな数分で終わるんだったら今日の今日まで悩んでないもん!!
無理、無理―!!
・・・・ふぇーん、舞台袖から2人が見てるよぉ。
あの目は無言のプレッシャーを与える気満々の目だよぉ。
考えますよ、考えればいいんですよね。はい、考えさせていただきますからそんなに見ないでぇ。何気に睨んでるから2人共!


下に向いていた視線をふと上に上げると賀谷西と桐野君の視線にぶつかり、プレッシャーを与えられてしまい、ますます思考は混乱するばかりだ。
曲も中盤を迎えてしまい、まず何から考えればいいのか分からなくなってしまっていると、椅子の後ろから声が聞こえてきて、私の混乱した意識を引き戻してくれた。
それでも、声の主には涙声で話しかけてしまったけれど。
「さ、紗和子ちゃーん。」
「はいはい、見てらんないから来てあげたわよ。で?考えはまとまったわけ?」
「まとまるわけないよぉ。」
「でしょねぇ、優美の様子を見てれば分かってはいたんだけどね。」
「だったら聞かないでほしい・・・。」
「そうも言ってられないからこうやって私がわざわざ舞台まで出てきたんでしょうが。
そんなこと言われるんだったら助けてあげないわよ。」
「ごめんなさい!紗和子ちゃん助けてください!!」
「はいはい、助けますよ。そのために来たんだし。
さてと、パニックになってるのを深呼吸でもして落ち着かせましょうか。」
紗和子ちゃんは私に深呼吸をするように促してきたので、言われるがまま深呼吸を繰り返してみる。何度目かの深呼吸の後酸素が頭の中に回ったお蔭なのか、一拍置いた時間のお蔭なのか落ち着くことが出来た気がする。
「落ち着いたところで話を進めましょう。舞台袖で今か今かと待ってる2人組もいることだし。優美、視線向けない。折角落ち着いたんだから。」
「はい!」
たしなめるように言われたことで折角落ち着いたのを元の状態に戻すことにならなくてホッとしつつも曲の残り時間が少なくなってきたことに気づいてしまった。
「ほら、余計なこと考えなくていいから。
とりあえず今の気持ちを自覚しないといけないわね優美は。
古典的ではあるけど手早くやれるかとも思うから目、つぶってみて。」
「目、つぶるの?」
「そうよ。」
紗和子ちゃんが言ったように目をつぶると、光は閉じていても感じられるけれどまったく何も見えない状態になってしまっている。
「賀谷西君と桐野君、この2人のことを優美がどう思っているかが重要なわけで。だからといって優美は自分の気持ちが分からない。
そんな優美ちゃんに大ヒントをあげるわ。
桐野君は出会った時から優美に優しかったわよね?」
「うん。中学の時優しくしてくれる人なんて誰もいなかったからすっごく嬉しかった。」
「人間、優しくされれば好意が生まれてくるものよ。優美が桐野君のことを好きになるのはおかしいことじゃない。どちらかと言えば優しくしてくれる人と付き合う方がいいのかなぁとも思うし。
でも、優美は賀谷西君に中学時代いじめられてて、それって子供が好きな子をいじめるって種類のものだってもう気づいてるでしょ?もちろんかなり達の悪いものではあるから優美的には納得できないかもしれないけど。予想外の展開で同じ高校になって、好きだって言われた。今までいじめてたくせにね。そんな人より優しくしてくれる人の方が断然お買い得だわ。
どう?優美的には優しくしてくれる人の方がいいと思わない?
同意を求めるような声かけだと気づいたけれど、私はすぐに返事が出来なかった。
もちろん優しく接してくれる人の方と付き合う方がいいと私も思う。思うけど、私の口は、動かなかった。
「返事無し?どうして?賀谷西君みたいにいじわるする人より優しい桐野君の方がお買い得なのに返事しないの?それって、どうして?」
「どうして・・・、どうしてだろ?
賀谷西はいじわるだし私が嫌がる事ばかりするし。でも、何でだろ?大っ嫌いと思っても賀谷西のこと無視したいなんて思わないんだよね。そりゃ、そばにいてドキドキすることが多くなってきて、どうしたらいいのか分からなくなっちゃう時が多くなってきたから微妙な気はするけど。」
尻つぼみに言葉を続ける私に紗和子ちゃんは大きなため息をつき、横眼で見ると呆れ顔にまでなっていた。私にはどうして紗和子ちゃんがそんな顔をするのかまったく意味がわからなくて、どうしてそんな顔になっているのか聞こうとしたけれど、紗和子ちゃんの声に遮られることになる。
「どうしてそこまで分かってるのに肝心な答えが出ないのか私には不思議でならないわよ。
優美、そばにいてドキドキするっていうのはどういうことだと思う?」
「どういうことって言われても・・・、怯えてる、とか?」
「・・・それって本気で言ってるわけ?
本当は気づいてるんでしょ?自分の気持ち。
ただ優美は、認めたくないだけなんじゃないの?いい加減認めなさいよ、その方が楽にもなるし、頭の中の混乱もなくなるわよ。優美の心の中に住んでる人は誰なの?」
言い聞かせるように優しくささやく紗和子ちゃんの声に、ざわつきだしていた心が穏やかさを思い出していた。
そして、瞳を閉じた。考えるために。
考えて、考えて私の頭の中に浮かんできた人は、ただ1人だった。
そして、今まで私がその人に対して感じていたものがトキメキだったのだということも。
もう認めるしかないんだということも。

私は賀谷西が好きなんだ。
どんなにいじわるをされても、気がつけば中学の時も賀谷西にも優しさを見せる時があった。いじめられた記憶の方が多いのは確かだけど。
本当は中学の時から賀谷西のことが好きだったのに、いつもいじめてくる賀谷西がつらくて、だから好きだという気持ちを封印したんだ。
だからこんなにも気づくのが遅くなってしまった。好きだという気持ちを。

「気づいたみたいね。そんな顔になってる。
はー、長かったわね、気づくの。それもこれも賀谷西君の日頃の行いのせいだろうけど、巻き込まれるこっちの身にもなってほしいものよね。
さて、優美、制限時間がきたみたいよ。ここは素直に自分の気持ちを伝えるのよ。そろそろ落ち着いてもらいたいしね、私も。」
紗和子ちゃんはニッと笑った後私のそばを離れていき、待っていたかのようなタイミングで曲が終わり目の前で繰り広げられていたダンスも終わってしまった。
次々にいなくなる人達と入れ替わるように賀谷西と桐野君が舞台へと戻ってきて、私の前に立つ。
そして、私が握ったままになっているガラスの靴をそれぞれが私の手から取り床へ置いた。
「王子様、そろそろ魔法が解ける0時が近づいています。答えは出ましたか?」
にっこり微笑みかけてくる桐野君は私に答えを促す。そして、賀谷西は私を見つめているけれど何も言ってこない。

本当にいじわるだ、賀谷西って。私がこれからどっちを選ぶなんて分かってると言いたいみたいだもの。
それが分かってるのに、私は今から答えるんだ。

2人から目を逸らすことだけはしたくなくて、正面に立つ2人の顔を見つめた後床に置いているガラスの靴に間をおいて視線を向けしゃがみ片方だけを手に取る。
賀谷西のガラスの靴を。
「私が好きなのはこの靴の持主です。
ずっと気づかないようにしていたからこんなにも遅くなってしまいました。自分の本当の気持ちを気づくのに。
そんな私ですが、好きでいてくれますか?」
ガラスの靴を持ち、賀谷西の顔を素直な気持ちのまま微笑みで見つめる。
「当然です、王子様。
私はずっと、ずっとあなたのことが好きだったのだから。」
私の告白を受けとめた賀谷西は、今まで見たことないくらい破顔し、私を引きよせ抱きしめた。
今は私が王子様だからまったく逆な行動に静まっていた会場からは笑いが起きる。
そして、賀谷西は笑いの渦の中、暴走を始めてしまう。
「きゃっ!」
「しっかりつかまってろよ。」
私を抱き上げ、お姫様だっこをしてしまったのだ。
急な賀谷西の行動に私は慌ててしまったけれど、耳元でささやく賀谷西の言葉を聞いてしまっては降ろしてとは言えず、抱きしめられたままになっていると、生徒会長の声で聞こえ舞台をしめるナレーションが聞こえだした。

「こうして、王子は1人のシンデレラを選び2人は末永く幸せに暮らしました。もう1人のシンデレラも別の舞踏会に行き、しっかり玉の輿に乗れたのでこちらのシンデレラも末永く幸せに暮らしましたとさ。」











「結果は分かってたんだけどね、それでも素直に諦めたくはなかったんだ。」
舞台が終わり賀谷西に抱きあげられたまま舞台袖に移動した私は、選ぶことが出来なかった桐野君と顔を合わせることになり言葉を詰まらせていると、悲しげに苦笑しながら予想をしていないことを言い出した。
「そうなの?私でも自分の気持ち分かんなかったのに。」
「好きな人のことを見てたら分かることもあるんだよ。分からなくていいことまで分かっちゃうんだけどね。」
「これで優美は正式に俺の物になったわけだ。これからは今までやれなかったことをやれるな。」
ククッと企んだような表情を見せ出す賀谷西の言葉に背筋が急に寒くなってきたのはきっと気のせいなんかじゃないと思う。
「ちょっと!やりたいことって何よ!!」
「この歳でやりたいことなんて決まってるだろ?可愛がってやるからな。」
「いやー!ここにケダモノがいるよぉ!!」
私の様子を楽しそうに眺める賀谷西。

何で!?私達両想いなんだよね!
それなのにいじわるなままってどうなの!!
私選択間違った?間違いましたか、神様!!

「木村さん、賀谷西君が変なことしたらいつでも助けるから心配ないよ。」
「ありがとう、桐野君!」
「おい!何で俺じゃなくて桐野に抱きつこうとしてんだ!」
両想いになったはずの私と賀谷西は、今までと変わりない展開を見せている。そんな状況を桐野君の言葉でますます増長させている。
「相変わらずなわけね。
ほら!今から片付けなんだからいつまでも騒がない!!
桐野君は優美から離れて。賀谷西君はこれ以上騒がない。優美もさっさと着替えてきなさい。」
「紗和子ちゃん、やっぱり冷たい。」
「冷たくない!まったく、結局変わりないじゃないの。
これじゃ、私の役目も終わらないってわけね。」
項垂れる様子を見せる紗和子ちゃんだったけど、表情は笑顔だ。
きっと私が自分の素直な気持ちに気づいたことを喜んでくれているんだと思う。
やっぱり紗和子ちゃんは私の親友なんだと思える。
紗和子ちゃんに促され着替えに行こうとする私の隣には賀谷西がいて、一緒に移動をしようと思っているらしい。
「優美、もう一度言ってくれないか?さっき舞台で言った言葉。」
「言葉?」
「そう、ガラスの靴を持って言ってくれた言葉。」
「も、もしかして、あの言葉だよね。嫌だよ!恥ずかしいもん。」
「聞きたいんだよ、ほら、俺達しかいないだろ?」
「・・・好きだよ。ごめんね、言うのが遅くなって。
賀谷西も私のこと好きだよね?」
「当然だろ?好きすぎてどうにかなりそうなくらいだ。
優美、好きだよ。」
賀谷西は舞台袖の踊り場に着くと私をぎゅっと抱きしめた。
直に感じる賀谷西の温もり、そっと賀谷西の背中に両腕を回してみる。
そうすることで、やっぱり私は賀谷西のことが好きなんだと実感する。
認めることが出来なかった気持ち。素直になることが出来たことで私はこれからバラ色な高校生活を迎えることが出来ると素直に思える。
だから、もう一度口に出してみた、好きって。


その後、本当にバラ色の高校生活を迎えているのかは神のみぞ知る。


+おわり♪+



何とか今年中に完結です♪
皆様より続編をとのお言葉をいただいて書いたわけですが、ご期待にお答えすることが出来たのかと冷や冷やしております。
少しでも楽しんでもらえているとよいのですが。
気がつけば長期間の連載となってしまいましたが、ここまでお付き合いありがとうございました。

マチ拝


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