続Loveliness Yo

BACK NEXT TOP


14.笑いの渦の中での混乱


幕が上がり舞台が始まる。
王子役の私は舞台袖から舞台の様子を見ていて、天井から鳴り響いているように聞こえるナレーションは、生徒会長の声で舞台を進行していく。
シンデレラ役の2人はすでに舞台の上で演技を始めていて、継母役の紗和子ちゃんにいじめられているところだ。
もちろん意地悪な義姉もいるわけだけど、そんな2人を押しのけるように楽しそうな様子で紗和子ちゃんが2人をいじめ、時折高笑いなんかも聞こえてくる。
客席から聞こえてくる笑い声からも出だしは好調と言えるかもしれない。

紗和子ちゃん、練習の時よりも生き生きしているように見えるよ。
うわー、あの2人をここまでいじめられるのは紗和子ちゃんしかいないかも。
継母役、紗和子ちゃんで正解だったんだね。

演技を観ながら思わずうなずきながら紗和子ちゃんには口が裂けても言えないようなことを考えていた。
今日の舞台はシンデレラなわけだけど、みんなが知っているような話にはなっていない。
シンデレラが2人いるんだから当然だけど。
なぜかシンデレラは双子の設定となっていて、継母と義姉からいじめられていたけれど、2人でたくましく生きているという設定になっている。
いじめのシーンが終わり、紗和子ちゃんがすっきりした顔をしながら戻ってきて、
「そろそろ優美の出番もくるから用意しとかないとね。」
なんて、緊張が増す言葉をくれて、乾いた笑いしか出てこない。

えーん、そうだよ。人のことをゆっくり観てる場合じゃなかったよぉ。
あっ、妖精役の人が出てった。
そろそろだ!

やってくる自分の出番に緊張も増してくるというもの。
格好は完璧に王子様。あとは、セリフを間違えないように注意するだけだ。
何度も深呼吸を繰り返している間に2人の変身は終わったらしく、生徒会長のナレーションで2人が舞踏会に行くことを説明して、舞台の小道具移動が始まり、自分の出番になってきた。
口から心臓が飛び出そうという言葉があるけれど、まさしく今の私はその状態だ。
このまま回れ右をしてしまいたい。でも、そんなことが出来るはずもなく、2人が戻ってきたと同時に舞台へと出た。
すれ違いざま桐野君から笑顔で頑張ってねと声をかけられたけど賀谷西からは何の言葉もなかった。でも、ポンッと肩を叩かれた。
何気なしにやっているんだろう賀谷西の行為。でも、何故か私の緊張している気持ちを落ち着かせてくれた。
後押しされたように舞台へ出た私は思っていたよりもスムーズにセリフを言うことが出来、今のところ大きな失敗もなく舞台が進んでいく。
王様から王子のための舞踏会を開くと伝えられるシーンもとんとん拍子に進み、舞踏会のシーンへと変わり、私の周りでは舞踏会というだけあって着飾った衣装を着た人達がクルクルと踊り出す。
そんな人達の隙間から2人のシンデレラが登場する。
私はそんな2人に声をかけなければいけない。一緒に踊ってくださいって。
でも、どちらを先に誘うかはお任せだからなんて軽く生徒会長には言われていて、練習のときにはいつも先に桐野君に声をかけ踊りを始めている。
賀谷西には睨まれちゃうけど。
だからいつものように桐野君に声をかけ、手を差し出した。
賀谷西が今日も睨んでるのだろうかと思いちらっと表情を横目で見ながら。
でも、予想していた表情を賀谷西はしていなくて、動きを止めてしまった。
そんな私の様子に気づいた桐野君は本当は私がしなくてはいけなかった中央への誘導を数歩先にやってくれ、私に舞台に集中しないといけないことを思い出させてくれたことで中断させるようなことにはならず、中央へ移動した後いつものように踊り始めた。
身長差、とういうよりか身長が低い私が自分より背が高い人をリードするというのはぎこちなさすぎて客席から笑いが起こる。
それは狙い通りなのでよしとするしかないのだけれど、舞台隅に立っている賀谷西のことが気がかりとなり視線は賀谷西を探そうと動いている。

なんで?いつも睨んでるはずなのに、何で今日はそんなに苦しそうな顔するの?
そんな顔されたら気になってしょうがないじゃない。
いつもの賀谷西らしくないし。

「気になる?」
「え!?別に気になんかしてないよ。賀谷西のことなんて。」
「賀谷西君だとは言ってないんだけどね。」
桐野君は私の手を引き、リードを交代して苦笑しながら私が言ったことを上げ足をとるようなことを言ってくる。
「ずるい質問するんだね。」
「切羽詰まってるからね。」
「え?」
「自分に有利な状況にあるなんて楽天的に考えるタイプでもないからね。
どちらかと言えば不利な感じだし。
ここは有利になるよう頑張りどころみたいだし。
遠慮しないから覚悟を決めといてね、木村さん。この舞台で僕を選んでもらうから。」
さっきまでの表情と違い、含みがある笑顔を見せる桐野君はゆっくりと私から離れていき、曲が終わったことを知らせる。
私に疑問を投げかけたまま離れた桐野君だったけれど、もう私の方は向いていなくて、私の頭の中でさっき桐野君が言った言葉を考えてみる。
でも、考えれば考えただけ頭の中は大混乱。
避けたいと思っていたことをさらりと言ってきた桐野君の後ろ姿を睨まずにはいられない。
それでも舞台は進んでいくため私はもう1人のシンデレラである賀谷西にダンスの申し込みをしないといけないことに生徒会長のナレーションで思い出し、小走りに賀谷西のもとへ向かい、手を差し出しダンスを申し込む。
賀谷西はそんな私の様子に待ってましたと言わんばかりに素早く手を掴むと、私のリードを待つことなくクルクル踊り始めた。
これはこれで客席には受けたらしく笑い声が聞こえだす。
クルクル回る私と賀谷西だったけれど、やっぱり賀谷西がいつもと様子が違う気がして声をかけようとしたけれど、それより前に賀谷西から話しかけてきた。
「桐野と何話してたんだ?」
「何って、別に。」
「そっか。」
そう言ってから賀谷西は口を噤む。
やっぱり違和感が湧いて仕方がない。いつもの賀谷西だったら絶対に詰め寄って聞いてくるはずだから。
「いつもと違うから変な感じがする。」
「何がだよ。」
「だって、賀谷西が色々言ってこないから不自然。
いつもだったら俺以外の男と話すなくらい言うのに。」
「確かにそうだよな。
でも、今はそんな気分じゃないだけだ。これから最終審判を受けるわけだし。」
「最終審判だなんて大げさな。
そこまで私が決めたことが重要だとは思わないんだけど。」
「優美にとってはそうかもしれないけど、俺にとってはそうじゃないんだよ。
もし、もしもだ、優美が桐野を選ぶという選択をしたとする。そうなった場合の俺はどうなるか自分でも分からない。」
「それって、脅してるの?もしかして。」
「そうとれるんだったらそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。」
「困るから!そんな曖昧な返事じゃ!!」
「困ることはないだろ、優美は選ぶだけなんだから。
でも・・・・。」
賀谷西の話が中断したことに気づくと同時くらいに至近距離に賀谷西の顔が近づいていて驚いてしまった。
そんな私に不敵な笑みを浮かべながら言った言葉は驚いたままの私に追い打ちをかけるもので、賀谷西の身体を押しやろうとしてしまったけれど避けられたことで見事なほど大きくこけてしまったのだった。

なっ、何言ってんの!?
そんなセリフ至近距離で言うんじゃない!!
うう、この場面でこけるなんてありえないから!!
賀谷西が言った言葉、『これだけ俺を惚れさせて罪な女だよな。でも、好きだぜ。』
そんなこと言ってくるなぁ!!
いやいや、何でこんなに焦ってんの?
このくらいのこといつも言われてるよね?
え?何で?何?えぇー!?
何でこんなに動揺してるの私!!
って、私今舞台中!!

グルグル回り続ける思考の中、重要なことを思い出した私はブンブン顔を回しながら周りを見渡すと客席からは笑い声、舞台の上にいる人達も笑いを堪えている姿が目に入り、わたわたと立ち上がろうとすると賀谷西が私の身体を抱き起こし、またもや私を動揺させるためにわざとやっているとしか思えないセリフを言い放つ。
「本当に優美は可愛いよな。押し倒したくなるくらい可愛いよ。」
抱き起こされ、囁かれたことでパニックも最高潮の私は頬を赤らめながら舞台袖へと向かった。
その姿が行進のように見える歩き方で手足が左右同時に出ていたとしても、訂正する余裕なんてあるはずもないわけで、戻ってから紗和子ちゃんが目に涙を浮かべながら近づき言われるまで気がつけなかった。
「優美、最高の演出よ。」
「演出なんてしてないもん!
紗和子ちゃーん!どうしたらいい?何でこんなに動揺してるの私!!
賀谷西が変なこと言うよぉ!!」
「何言ってんの?」
紗和子ちゃんに抱きつきながら必死に言う私に紗和子ちゃんは冷静で、温度差さえ感じるほどだ。
冷静に考えれば当たり前のことなのに今の私にはそんなことに気づくはずもなく、紗和子ちゃんと違う理由で涙目になってしまっていた。
紗和子ちゃんになだめられながら舞台での出来事を話すと紗和子ちゃんは呆れ顔になってしまった。
「ここまできてそのセリフはどうなのよ、優美。
ちょっと落ち着いて考えてみたら?
どうして賀谷西君の言葉に動揺するのか。何で桐野君の言葉には賀谷西君ほど動揺しないのか。
そのことを考えることが出来れば答えは簡単なはずよ。」
「なぜ・・・・。」
「そう。ほら、優美出番になったわよ。
あとは舞台の上で考えなさいな。」
トンッと回れ右をさせられた私の背中を紗和子ちゃんは押し、舞台へと戻す。
紗和子ちゃんの言葉の意味を考える余裕もなく舞台に戻った私は立ちつくしてしまっていた。
それもそのはず、目の前にはシンデレラ2人が待ち構えてしたのだから。
まるで、獲物を待ち構えていたと言わんばかり私を見つめながら。

神様!四面楚歌の状態にになってますよ私!!
逃げ道がないですぅ。
これじゃ考えることもできません!

心の中で叫んでしまう私だったけれど、すでに私の両サイドにシンデレラが立ってしまい、もう逃げ道はない。
そして、私を椅子に座らせるとにっこりと微笑みだした。
「王子様、私達はこのままでは魔法が解けてしまい大変なことになります。
そうならないよう王子様に選んでもらわないといけません。どちらを花嫁にするのか。」
「すでに私達は王子様に心奪われております。あとは、王子様のお言葉だけです。
私達のガラスの靴を片方残しておきますので、選んだ方のガラスの靴を届けに来てくださいませ。
時間は魔法が解ける0時まで。」
すでにアドリブになっている2人のセリフ。
どこの世界にシンデレラから故意的にガラスの靴を残される王子様がいるのだろう。
しかも、舞台の上での時間だなんてあってないようなもの。何もせずに時間を引き延ばすことなんて出来ないから私に残された時間は舞台の背景を変えるための時間と他の人達が舞台袖に帰る時間くらいだ。
その間に私の頭は働いてくれるのだろうか?
というより、私は誰が好きなんですか!!
答えがでてませんけど!?

いいんですか神様!そんなんで舞台を進めるのいいんですか!!


BACK NEXT TOP


Copyright(c) 2008 machi all rights reserved.

面白かったよとちょっとでも思ってくれたら押してもらえるとうれしいです♪
よろしかったら感想も一緒に書いてもらえるとますますうれしいです♪




検索サイトから来られた方は、 こちら からTOPへどうぞ。