続Loveliness Yo


12.ダブル攻撃


鼻をすすりながら走るというのはいつも以上に息苦しさを強くさせるのだと知ることになるとは思ってもいなかった私。
荒い息と交互にでる音は夜空に吸い込まれるように周りに響いている。
ある意味騒音?なんてことを思う余裕なんてない私は周りを気にすることなく自分から発する音を思う存分出していると、大きく振っていた腕が急に後ろに引かれて動かない。
それだけではなく、急な反動に足がついていかずに思いっきり転びそうになり反射的にギュッと目をつぶり衝撃に備える。
でも、予想をしている衝撃はいつまでもやってくることはなく、私の身体はその場で止まったままになっていることにしばらくすると気づく。
なぜ?そんな考えが当然の如く浮かび、動かなくなった腕が支えになって転ばなかったことに気がついた。
そうはいっても転びそうになったのはこの腕のせいなわけで、どうして腕が動かないんだ?という疑問を確かめるために振り向くと、「ぎゃ!」っと声を上げずにはいられなかった。
「な、何で!?」
「何が?」
「だって、だって、私走って離れたんだよ!?」
「あんなの走ったうちにはいらねーよ、すぐに追いついたぞ。」
私の腕をしっかりと掴んでいるのはさっき走って逃げてきた相手、賀谷西。
しかも、何気に私の足が遅いことを言われているけれど、今の私にはそんなことを気にかける余裕はまったくなく、驚くしかない。
「何で走って逃げるんだよ、話は終わってないからな。」
「えっ、何で?いやー!!」
「おい!暴れるなって。」

無理、無理!
えーん、何で賀谷西追っかけてきたのよぉ。
ど、どうしたらいいのか分かんないよぉ。

掴まれている腕を上下に振りながら賀谷西の手を外そうとしたけれどうまくいかなくてパニックも最高潮になっている私を無視してつかんだまま歩き出した賀谷西にその場に踏ん張るという小さな抵抗を試みてみる。
でも、女の子の力が勝てるわけもなく、ズルズルと引きずられ賀谷西が歩く進行方向に連れ去られてしまった。











「うー。」
「何唸ってるんだか。
ストロー口につけてるんだったら大人しくジュース飲んどけよ。」
賀谷西に連れ去らせた先はファミレス。
ファミレスと言っても賀谷西がバイトしていたところではなく、公園の近くにある場所だった。
腕を掴まれたまま入った私は、テーブルに着いて奥に押しやられ隣に賀谷西に座られることで逃げ場を失くし結局座ったままになってしまっていた。
店員さんを呼んで私に何がいいのか聞くこともなく勝手にデザートとドリンクバーを頼んだ賀谷西は席を立ち私にオレンジジュースをとってきて今の状態に至る。
もう唸ることぐらいしか抵抗できないような気がして唸り続ける私に賀谷西の顔が近づいてきて動揺したせいで声も止まってしまった。
「やっと静かになった。」
「賀谷西のせいなんだからね。」
「意味分かんねーよ。」
「意味分かんなくないでしょ!
突然賀谷西が変なこと言い出すし、ファミレスに連れ去られるし、賀谷西のせいだよ全部。」
「はいはい、俺のせいね。
そういうことにしておくから俺の話を聞けよ。」
「気持がこもってない気がする。」
「こもってるだろ?
優美じゃなかったらこんなこと言わないからな俺は。
さっきも言ったけどこれからは優美に優しくするんだから当然だけどな。
だから、当然優美は俺の気持ちを受け入れるべきだよな。」
「意味分かんない!」
「分かりやすいだろ。
俺にとって優美は特別な女なんだから優美にとって俺も特別であるべきだって当たり前のことを言っただけだんだよ。」
「何でそんな強気になれるのよ!
私は賀谷西なんて好きじゃないもん。
意地悪しかされてなかったんだから好きなわけないじゃん。」
「確かにな。
でも、優美は俺を好きになる。
これは絶対だって言ったろ?
覚悟しとけよ。」

か、覚悟って何!?

不敵な笑みを見せながら言う賀谷西に思わず端によって気持ちばかり賀谷西から離れようとしたけれど、そんなことは並んで座る椅子では無駄な抵抗なわけで、すぐに賀谷西がずれて近づいてきてますます密着してしまうことになってしまっていた。
お互いの腕が触れ、にぎやかに動き出す私の心臓。
何故こんなに賀谷西に反応してしまうのか自分でも分からないけれど、心臓の動きはどんどん速くなっていく。
賀谷西が言う覚悟なんて全く私には分からないけれど、このままでは私の心臓が動きすぎて止まりそうだから離れてほしくて賀谷西の肩を横にグイグイ押してみる。
でも、ビクともしない賀谷西の身体、また泣いちゃいそうな気になってくる。
「何でそんなに離れたがるんだよ。」
「だって、心臓が動きすぎるんだもん。」
「は?」
「だから、心臓が動きすぎて死んじゃいそうなのこのまま賀谷西が近づくと!
だから離れてほしいの。」
「それって、本当に可愛いよな優美って。」
ククッと笑う賀谷西は私の頭を優しく撫でる。
「だから、近づかれたらドキドキするの!」
「分かってるよ。そんな優美が可愛いって言ってるだろ?
心配しなくても死にそうになったら面倒みてやるからそのままドキドキしてろよ。」

だから、それが無理って言ってるんですけど!

心の中で叫びまくる私のことなんて気づかないらしく、変わらず頭を撫で続ける賀谷西だったけれど、デザートが来たことで少し離れてくれたのでホッとしてスプーンを持ちパフェをすくい口に入れる。
冷たさと甘さが広がる中、頭を撫でられなくなった代わりに賀谷西からじっと見つめられて食べにくくて仕方がない。
「そんなに見る必要なんてないと思う。」
「見るのはタダだろ?
それに、可愛い優美の顔を見たいと思うのは当然なんだから仕方がない。
気にせず食べろよ。」
なんてことを平気で言ってくるから顔が真っ赤になるのを感じる。

何、何で賀谷西がこんなこと言うのよ。
こんなこと今まで言ったことあったっけ?
しかも、かなり優しい声だし、今までと違い過ぎてどうしたらいいのか分かんない!!

もうひたすら食べることしか出来なくてパフェを口に運び続けていると、聞きなれた賀谷西とは違う声が聞こえて視線を向けるとそこには、息を切らしているように見える桐野君が立っていた。
「桐野君!?何で?」
驚いた私はスプーンを片手に桐野君を見つめていると、賀谷西に視線を向けて不愉快そうな顔を隠すことなく向け、声でもしっかり表していた。
「どういうことか説明してもらおうか、賀谷西君。」
「説明も何も電話で言ったとおりだけど?
優美は俺のものになったから諦めろって。
人の物を取ろうとする方が悪いんだしな。」
「木村さんは君のものではないはずだ。
そうだよね、木村さん。」
私にはいつもと同じ笑顔を向けて聞く桐野君だったけど、声はいつになく強めな口調だったせいで勢いのまま答えてしまった。
「うん!」
「ほら、木村さんはこういってるよ。
いつもみたいに賀谷西君が勝手に言っているだけのようだね。
あー焦って急いできた自分が情けないよ。
賀谷西君なんかの口車になんて乗ってしまって。」
「何かってどういうことだ?
優美は俺の恋人なんだよ。
お邪魔虫を排除するのは彼氏の役目に決まってるだろうが。」
「お邪魔虫はどっちなんだろうね。
木村さんの意志を無視するような人が自分のことを恋人なんていうのは虫がよすぎるよ。
君の方こそお邪魔虫だね。」
「ふん、負け惜しみか?」
「それはこっちのセリフだよ。」
いつも以上の険悪な雰囲気に押しつぶされそうになってきた私はこの場の空気を変えなければという義務感が強くなってきて2人の間に両手を伸ばしながら会話を遮る。
「ちょっと2人共目立ってるから!」
桐野君は立ったまま賀谷西と話しているせいで周りの視線は何事かと私達に向いている。
そのことにやっと気づいてくれたのか2人はバツが悪そうな顔をして、桐野君は空いている反対側の席に腰かけた。
「もう2人共訳が分からない事ばかりこんなところで言いあわないでよ。
私は賀谷西の彼女でもないんだから桐野君も落ち着いて、ね?」
「ごめんね木村さん。
つい興奮しちゃったよ。
でもそうだよね、こんな木村さんにいつも意地悪するような男のことなんて木村さんが好きになるはずがないんだから落ち着くべきだったよ。」
「俺はもう優美のことをいじめない、優美にはそのことはきちんと言っているんだ。
今までは優美への愛情の表わし方を間違ってたということに気がついたからな。」
「今さらだね、今まで自分がしたことを帳消しにしようだなんて都合がいいにもほどがある。
木村さんは俺と恋人同士になるんだから賀谷西君は大人しくしておくべきだ。」
「はぁ?
何で優美がお前の恋人になるんだよ。
俺の恋人なんだからいい加減なこと言うのはやめてもらおうか。」
睨みあいながら大人しくなったと思っていた2人はヒートアップしてきている。
「いい加減にして!
何なのよ2人して勝手なことばっかり言って!!
私はどっちとも恋人になんてならないんだからね。
私の気持ちを無視して恋人恋人って、私はどっちも好きじゃないの。
あっと、桐野君は友達としては好きだけど。」
「おい、最後の付け足しはいらないだろうが。」
「友達、ね。今はうれしくない言葉だよね。」
2人の言葉がまったく私を無視して進められていくことに我慢が出来なくて言った言葉だったけれど2人にとっては対した効果はなかったらしく、飄々と答えられてしまって言葉が詰まってしまう。
でも今はそんなことではいけない、このままじゃ2人に言われ放題だし、私の意志が無視されてしまう。
「あのね、私は2人と恋人同士になるなんて考えられない。
だから、2人だけで話を進められても困る。」
いつになく強気な口調で自分の意見が言えたことに何だか嬉しくなってしまっていたけれど、そんな私の言葉が2人に火をつけてしまったらしく、攻撃の矛先が私に向かってきてしまった。
「おい、他に好きな奴がいるってことかそれは。」
「木村さん、それは聞き捨てならないな。」
「ちょっ、誰もそんなこと言ってない!
私には好きな人なんていないから。
私が言いたいのは2人と付き合うっていうのが実感湧かないって言うか・・・・。
だって、今まで2人のことそんな風に考えたこともないし、今の私には今日2人から言われたことは驚いたって言うのが正直な気持ちなんだもの。
それなのに、私の気持ちなんて無視して勝手に話は進めていくし、もうどうしたらいいのか分かんないよ。」
最後は声が力なく尻すぼみになってしまい、少し鼻もすすってしまった。
そんな私の様子に2人が口を閉ざす。
今までの雰囲気が嘘のように静かになった私達の席。
周りはざわついていたけれど、そんなざわつきも気にならない。
しばらくするとそんな空気を押しのけるように2人のため息が申し合わせたかのように同時に聞こえだした。
「優美が鈍感なことを自覚していたはずなのにな。」
「木村さんのペースに合わせるつもりが焦りすぎたな。」
そうつぶやいた2人は落ち着いた視線を私に向けてくる。
さっきまでの怖いほどの勢いがなくなってホッとする。
「怖がらせたんだよな、悪かった。」
「ごめんね、木村さん。」
「ううん、分かってくれたんだったらいいの。ありがとう。
でも、本当に焦っちゃった、何がなんだか分かんない状態になっちゃってたから。
まさか2人からっていうか私なんかがこ、告白?されるなんて思ってもなかったし。」
照れ隠しのように言った告白という言葉を言うのが照れくさくて言葉を詰まらせてしまったけれど、2人は笑ってる様子はないのでホッとする。
それに、落ち着いたようだし今日はこのまま帰れそうだな。なんてことをすっかり溶けきったパフェを目の前にして思っていると、思いもよらない方向に話が進みだすことになり再び何がなにやらな状態を迎えることになる。
「確かに急ぎ過ぎたが、優美を恋人にしたいというのは本心からの言葉だから優美にはしっかりと考えてもらわないといけない。」
「確かにそうだよね、鈍感だと言ってももう僕達の気持ちを知ってもらったわけだしね。
賀谷西君に木村さんを渡すわけにはいかないし、ましてや他の男になんてとんでもないことだからね。」
「それはこっちのセリフだ。
優美は誰にも渡さない、その気持ちは俺も一緒だ。
だが、優美には時間が必要なのかもしれないな。
このままじゃ逃げられるばかりで話にならない。」
「確かに、じゃどうしようか。
いつまでも木村さんの考えがまとまるのを待つだけっていうのもね。」
「そうだな、じゃ今度の劇の時までということでどうだ?
王子である優美は舞台の上で俺達姫のどちらかを選ぶ予定になっている。
期限をつけた方が優美も考えやすいだろうし。
まー、考える時間と言っても俺への気持ちを自覚してもらう時間ってだけだけどな。」
「本当に君の自信はどこからくるんだか。
今のところは誰が考えても僕の方が有利だと思うよ?
元から木村さんは僕に好意的なわけだし、賀谷西君には嫌悪感の方が強いんだから。」
「それは今までの俺の気持ちがうまく伝わっていなかったせいだろ?
今からは素直な俺の気持ちを伝えていくんだから俺の方が有利になるはずだ。
優美、そういうことだからしっかり考えるんだぞ。」
「木村さん焦らなくていいからね、でも、なるべく早くだと助かるな。」
好き勝手に話している2人。
にっこりと微笑みながら私に無言の威圧感を与えてくる。

はい?今さっきの私の話を聞いてくれてましたか?
何?結局私はどうしたらいいんですか!!

「さて、帰るか。」
「そうだね、明日も学校だしね。」
「あ、あの、え?」
私の疑問は2人のスッキリした顔には負けるのかそれともあえて無視されているのかスタスタと歩いていく2人の後をついていった私は賀谷西に会計を済ませてもらい、家まで2人に挟まれ送られ、笑顔でおやすみなんて言われ玄関の前で何故だか手を振り2人の後ろ姿を見送っていた。
家に入り、自分の部屋に入った私は夕方帰ってきた時と同じようにベッドに倒れこんだけれど、夕方よりも頭の中は混乱していて熱が上がりそうだ。


神様、私は何を考えればいいのでしょう?
2人のことなのは分かるのに、もうこれ以上考えられません!
早く私にバラ色の生活を、生活を〜!!





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