Loveliness Yo



ふふふっ、やっと、やっとよっ!
やっとアイツから解放されたのよ私は!!
中学生活3年間、私にとっていい思い出なんて1つもない。
親しい友達なんていなかった。
それもアイツ、賀谷西 龍(かやにし りゅう)のせい。
なぜ私をいじめの対象に選んだのかは分からない。
小学校までは私にだって友達はいた。
仲良しの友達に囲まれて楽しく過ごしていたのに、中学に入ってから賀谷西と同じクラスになって私の暗い中学生活が始まることになる。
最初の切っ掛けはアイツの一言だった。
「お前、顔はまん丸だし、ブツブツだらけでジャガイモみたいだな。
よしっ、今日からお前はジャイ子だっ。」
忘れたくても忘れられないアイツの一言。

誰がジャイ子だっ!!

確かに、私はぽっちゃり体型で、急に増えだしたニキビで顔がブツブツだらけだったけれど、女の子に対して失礼な言葉をアイツは平気で初対面の私に隣の席に座った途端に言ってきた。
私は最初何を言われているのかわからなかくて、反応が出来なかった。
だって、今まで初対面の人に自分が気にしていることをこんな失礼な形で言われたことがなかったんだから反応が出来なくても仕方のないことだと思う。
いつまでも何も反応を示さない私に対し、
「おーい、ジャガイモなだけあってしゃべることも出来ないのか?」
私の目の前で手を振りながら意識があるか確認するようにしながらそう声をかけてきた。
その言葉を聞いて、今まで止まってしまっていた私の頭が働きだし、どうして初対面の男の子からこんなことを言われないといけないのだろうと思い、気がつけば泣きだしてしまっていた。
中学は3つの小学校から集まっていて、クラスには同じ小学校の子は少ししかいない上に、同じクラスになったことがある子はいなかった。
だから、泣きだした私を慰めに来てくれる子はいなくて、「ジャイ子だって」なんてことを言いながらクスクス笑う声が聞こえてきていたから、余計に涙は流れだしてしまう。
泣きだしてしまった私にアイツは焦るかと思いきや、ニヤニヤ笑いながら、
「ジャイ子が泣いても可愛くないよなぁ。」
なんてことを言い出す始末。
それが私の暗い中学生活の始まりになるなんてその時は知るはずもない私は、先生が来るまで泣き続けていた。





その日から私のあだ名はジャイ子になり、気がつけば友達と呼べる親しい子を作ることは出来なかった。
というよりも、作れなかった。
それもこれもすべて賀谷西のせいだっ!!
不幸にも3年間同じクラスだった賀谷西は私をいじめ続け、私をクラスの中で孤立させた。
初めの頃は私だってクラスに馴染もうと頑張った。
でも、そんな私の頑張りを賀谷西が私の中のやる気を無くさせ、疲れた私は努力することをやめてしまった。

別に仲がいい子がいなくてもいい。

私を分かってくれる人なんて、助けてくれる人なんていないんだという思いから。
中学時代の私の心の救いはただ1つ、私立の中学にいってしまった仲良しの紗和子(さわこ)ちゃんの存在。
紗和子ちゃんのお陰で何とか中学時代を過ごすことは出来た。












「紗和子ちゃんっ!」
「優美(ゆうみ)!」
「うれしいよぉ、紗和子ちゃんと一緒の学校になれて。
頑張って勉強して良かったよぉ。」
「うんうん、頑張ったもんね優美。」
「クラスも一緒だし、幸先いいなぁ私。」
桜も散り始めだしての入学式、私は必死に勉強してランクを上げ紗和子ちゃんと同じ学校に入ることができ、喜びをかみしめながら紗和子ちゃんに抱きついていた。
そして、あの憎らしい賀谷西もいない高校生活。
これからバラ色の生活が始まると思うと表情も緩みまくるというものだ。
絶対に賀谷西と同じ高校には行くまいと思っていた私は、賀谷西の希望高校を調べた。
嬉しいことに、私と希望が被ることはなかったことに安心したのだけれど。
卒業式の日には嬉しくて嬉しくて涙を流すどころか1人笑顔だった私は、卒業式が終わると写真を取り出す同級生を残し、すぐに楽しい思い出なんか何もない教室を後にした。
賀谷西といえば、どこがいいのか分からないけれどモテテいたせいか女の子に囲まれながら写真を撮りまくっている。
チラッとだけそんな様子を横目で見ていた私は心の中で、

賀谷西、もう2度とあんたとは会うことはないわ。

そう言いながら、スキップしたくなるほどの喜びの中、母親と共に家に帰っていった。




「でも、すっかりイメージチェンジじゃない。
ニキビもなくなったし、賀谷西ストレスのせいで痩せちゃったし。
髪も伸びてよく似合ってるよ。」
「そ、そうかな?」
紗和子ちゃんの褒め言葉に顔を赤らめてしまうけれど、言われるほど自分がイメージチェンジ出来ているのか不安の方が大きい。

駄目だ、いつまでも賀谷西の呪縛に負けちゃ!
もうアイツはいないんだし、同じ中学の子もほとんどいない。
高校生活は楽しく過ごすって決めたじゃない!!
もうジャイ子なんて呼ばれることもないんだから。

私の中に残っている不安を打ち消すように自分の中で叱咤激励する。
「どうかした?」
叱咤激励中だった私は知らず知らずのうちに両手を握り拳に変えて力んでいたようで、紗和子ちゃんが不思議そうな表情を見せながら私に声をかけてきた。
「何でもない。」
私はそう答えながら笑顔を見せ、
「教室行こうか。」
拳を緩め、紗和子ちゃんの背中を押しながら歩き出した。

ああ、今から始まるのね、私の高校生活が。
雲ひとつない今日の空みたいに私の心の中は爽やかなスカイブルーな青空が広がるわ〜。

鼻歌を歌いたくなるほど浮かれながら紗和子ちゃんと教室に向かっていると、
「ジャイ子。」
卒業式の後聞くことは2度とないと思っていた中学時代のあだ名を、同じように聞くことはないと思っていたこの世で一番嫌いな声の持ち主と思われる声で言われ、私の足の動きは止まってしまう。

な、なんで!?
この、この声、何でこの場所で聞いてるの私!!
いや、聞き間違いよね、だってアイツは違う高校に行ったんだから。

背中に冷や汗を感じると思ってしまうほど緊張してしまった私の身体は動きを止めながら頭の中ではあり得ないと否定をする。
でも、そんな私の思いを裏切るように再び声をかけられた上に、肩に手をおかれる。
「何無視してるんだ、ジャイ子の分際で。」
否定をしたくても、近づいて聞くこの声は疑いようもなくアイツの声。
いるはずがないと頭で警告を鳴らし続けたくなるほど嫌いな、
「賀谷西。」
「無視してんじゃねーよ。」
「な・・・んで。」
「なんで?何が?」
ゆっくりと振り向き、視覚でも賀谷西の存在を確認した私は、どうしてここに賀谷西がいるのか本人に問いかける。
これ以上賀谷西といたくなくて違う高校を選んだはずなのに私に話しかけてくる理由が知りたくて。
「だって・・・・、高校、別。」
「ああ、別の高校受けたんだろってことを言いたかったわけだ。
こそこそ調べてたもんなお前。
俺と別の高校に行きたいと思ってたのまる分かりなんだよ。
でも、俺もこの高校なんだよな。
また3年間よろしくな、クラスも一緒だし。」
「えっ!?」
二ヤッと笑いながら不幸の手紙のようなことをサラリと言う賀谷西の言葉に私は目を見開きながら受け入れがたい事実に愕然とする。

どう、どうして同じ学校なのよ!?
だって、だって、違う高校だったじゃない!!
しかも同じクラスなんて、冗談じゃないわよ!!!

私は少し離れた場所にあるクラス発表の表を確認するために早足で張り出されている板の前まで戻る。
そして、賀谷西が言った言葉が嘘ではないことを自分の目で確認するはめになる。
「嘘でしょー!」
確認後、私の口からは受け入れたくない現実に、叫び声が出てしまった。
「嘘じゃねーよ。
何?俺が同じ高校が嫌だって言いたいのかジャイ子は。」
「嫌に決まってるじゃない!
あんたのせいで真っ黒な楽しいことは何1つない中学校時代を過ごしてたのよ!!」
「でも俺はお前がいて楽しい中学時代を過ごせたけどな。」
「はぁ?何言ってんのよっ。
そうか、私のこといじめて楽しんでたんだもんね、そりゃ楽しい中学時代だったでしょうよ。
でも私は全然楽しくなんかなかった、あんたのせいでねっ。
だから高校はあんたがいない所に行くって決めてたのよ。
それなのに、何で同じ高校の上に同じクラスなのよぉ。」
私は中学時代に言えなかった心に秘めたままだった想いを賀谷西にぶつけながら、瞳を潤ませる。
そして、溢れだす涙を止めることができなくて、頬を涙が止まることなく流れてしまう。
「何でいるのよぉ。」
涙を流したくなくて手の甲でぬぐってもぬぐっても流れを止めることが出来ない私の手を、賀谷西が掴んで動きを止める。
「やべーよやっぱり、お前の泣き顔。
俺の心臓直撃してくれるな、相変わらず。
だから止められないんだよな、お前いじめるの。」
「意味分かんない。」
「だから、お前の泣き顔って男心を刺激するって言ってんだよ。
簡単に言えば欲情させるってこと。」
「よ、欲情!?」
「そう、もっともっと泣かせてお前の頭の中を俺で満たしてやりたい。
他の奴に目がいかないようにな。
俺にそんな感情を持たせたくせに俺の前からいなくなろうなんて、させるかよ。
お前は俺のものなんだから。
なぁ、優美?」
思いもよらなかったことを言われ頭の中を整理することが出来ない状況の私に、初めてジャイ子ではなく名前を呼ぶ賀谷西。
しかも、耳元でささやくように言ってくる。
優しくて、でも、どこか意地悪さを含みながら。
「可愛さ余ってってことなのかしらね、あなたの今までの行動は。」
今まで存在をすっかり忘れていた紗和子ちゃんがニッコリ笑いながら私達に近づいてきて賀谷西に視線を向けていた。
その視線は笑顔と裏腹に鋭いものではあったけれど。
「あんたうまいこと言うな。」
賀谷西は何が面白いのかククッと笑いながら紗和子ちゃんの言葉に返事を返す。
「まったく、分かりにくい愛情表現よね。
しかも、濃いし。
優美を孤立させてまで独占したいだなんて、暑苦しい愛情。
それに、本人にはまったく伝わってないんだから迷惑な話だわ。」
「暑苦しい、確かにな。
でもしょうがないだろ、優美がそうさせるんだから。」
「人のせいにしないでっ。」
私は2人の会話に割り込むように賀谷西の言葉に反論したけれど、
「本当のことを言ってるだけなのにうるさい口だ。」
そう言って賀谷西は私の唇に自分の唇を重ねた。
それはキスというにはサラッと触れるだけの動作だったけれど、私の口の動きを止めるには十分な効果があった。

キッ、キスされた!!

私は身体を後ろにのけぞらせ、賀谷西との距離を少しだけながら離し、両手で自分の唇をおさえる。
もう次から次にもたらされる驚きのせいで私の瞳からは涙が流れを止めてしまうほどの状況のなか、私達の耳にチャイムの音が聞こえてきた。
「タイムリミットみたいよ。
続きはまた後からがいいんじゃない?
その間に優美の脳も活動を再開させるだろうし。」
「そうだな、これからの楽しい高校生活のためにも優美にはしっかりしてもらいたいところだから続きは後がよさそうだな。」
そう言って賀谷西は私から離れ、校舎に向かって歩き出した。
私はといえば、唇を両手で押さえたままの恰好で立ち尽くし動けない。
そんな状態の私を動かしたのは紗和子ちゃんの声。
「優美、あんたも大変ねあんな奴に目をつけられるなんて。
助けてあげたいけど、私はストッパーになりそうにないみたい。
私が言えることはただ1つ、頑張って。」
ポンポンッと私の肩を叩きながら励ましにならない言葉を言う紗和子ちゃん。
そして、立ちつくす私の手をとり、歩くのを手伝ってくれる。
そうして、私の明るく楽しくなるはずだった高校生活は、私を動揺させたまま始まってしまった。




その後、本当は初めて隣の席になった賀谷西と出会った中学時代に、すでに賀谷西に一目惚れをしていたこと。
それなのにいじめられたことでいじけてしまった私の心を溶かすのに時間がかかり、私と賀谷西が恋人同士になるために周りを巻き込みつつ高校生活を過ごしていくのは、今の私にはまったく想像できないこと。


+おわり♪+





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