秘密の恋は蜜の味


後編


「ただいま。」
今日は草が当直だから帰ってくることがないので、やっと動けるようになってから家に戻ってきた。
「おかえりなさい。」
すると、玄関で靴を脱いでいた私を出迎えてくれたのは高校時代から付き合っていた男性、潤一郎と結婚をした真琴ちゃんだった。
「真琴ちゃん、久しぶりだね、今日はどうしたの?」
「うん、潤一郎さんが出張に行ってて、寂しいだろうから実家に帰っていたらいいって言われたから帰って来たのよ。」
「そうなんだ。
でも、久しぶりに真琴ちゃんのご飯が食べられるなんてラッキー。
今日が休みで良かった。」
「愛は相変わらず料理はしないの?」
「それは聞かないで。
私にも真琴ちゃんと同じ血が流れているはずだけど、当然ながら真美の血が濃すぎてどんなに頑張っても美味しいものは作れないんだもの。」
「お姉ちゃん、料理オンチだもんね。
でも、夢はそんなことないみたいなのに。」
「だって夢はそれが仕事なんだから当然なの。
いいの、掃除はしっかりできるんだから。
彼が料理上手だから問題なし。」
「そういえばそうだったわね。
でも、いつになったらその人に会わせてもらえるのかな?」
「いつって、それはまだ早いでしょ。」
「そんなことないわよ。」
「そりゃ、真琴ちゃんは潤一郎を家に連れ込んできてたけどさ。」
「連れっ、連れ込んでなんてないでしょ!」
「はいはい、照れない照れない。
相変わらず真琴ちゃんはからかいがいがあるね。」
「もう!
今夕飯を作ってるところだから着替えて手伝って。」
「はーい。」
顔を真っ赤にしている真琴ちゃんはいくつになっても可愛い人だと思う。
私はと言えば、すっかり可愛気がなくなったものだ。
夢と2人並べば可愛い双子ちゃんと呼ばれていたというのに。
それはそれでいい思い出だ。
潤一郎と結婚してからはあまり家に来ることがない真琴ちゃんと久しぶりに会えて草が当直で良かったのかもなんてことは、草には口が裂けても言えないんだけどね。











今日は恒例病棟の花見。
今年の幹事は美澄と一緒に去年やった槇枝先輩と移動してきた子。
そんな2人をじっと見つめているだけだった美澄にはっぱをかけ、その結果2人は付き合うことになったようだった。
そんな2人をしっかりと見届けていた私達はお祝いだということで2次会にいったのだけれど、その場所で2人をからかいながらも祝う人の輪の中に私はいた。
草はといえば、お姉さま方に囲まれていてにやけている姿が視界に入ってくる。

何にやけてるのよっ!

そう叫びたいのに、出来ない今の状況は、笑顔が売りの私の表情を次第に変えさせ、
「ちょっと、お手洗いに行ってきます。」
これ以上この場にいるのはまずいだろうと、席を立ちトイレへと向かった。





トイレに向かった私は、鏡を前にして改めてムッとした表情をしている自分を確認してしまい、溜息が自然と出てしまう。
自分で望んだ草との関係を秘密にするということに、自分の嫉妬心を抑えることが出来ないことに対して出てしまった溜息。

だいたい、私がいるって分かってるくせににやける草もどうかって話なのよっ。
私が嫉妬しないとでも思ってるのかしら。
そりゃ、今まで嫉妬したことがあるなんて言ったことはないけどさ。
あーもっ、折角美澄のことを祝ってあげたいと思ってたのに、それさえもできそうにないだなんて。
それもこれも全部草のせいなんだからね!

八つ当たりとも言えることを思いながら、何とかいつもの笑顔を取り戻した私はトイレを後にすることが出来た。
みんなが待つ場所に戻る途中、
「あれ?
青柳もトイレに来てたのか。」
「そう言う先生もトイレですか?」
私に声をかけてきたのは今までお姉さま達に囲まれていた草だった。
名字で呼んだのは、私と入れ替わるようにトイレに入っていく同僚を見たからだろう。
その人がトイレに入るのを確認すると、
「このまま帰るぞ愛。」
そう言って私の手を取り、店からスタスタと私の返事を待つことなく出てしまっていた。
「ちょっと、みんなに何も言ってきてない。」
草に手を引かれながら言う私の言葉が聞こえていないはずはないのに、返事をすることなくタクシーを停め、自分のマンションまでの行き先を運転手さんに伝えたまま口を閉ざしてしまう草。
いつにないムッとした表情を見せる草に声をかける雰囲気ではなくて、結局何も話さないままマンションまで来てしまっていた。
部屋に入るなり、唇を重ねてくる草。
急な行動に驚きながらも、積極的な動きを見せる草の舌に意識を持っていかれてしまう。
「んっ」
長い時間唇を重ねていたけれど、離れる頃には私の足は力が抜けてしまい草に身体を預ける形になっていた。
「愛、俺以外の男に愛想よくしすぎなんだよ。」
「え?」
頭がボーっとなっていた私は、熱い吐息を吐きながら、草がいう言葉の意味が分からず問いかける。
「だから、必要以外に笑顔を見せすぎだって言ってるんだよ。」
ムッとした表情を私から逸らし、横を向いたまま言う草だったけれど、次第にクリアになってくる頭に言葉が入り込んでくる。
「ちょっと、それ、私が言いたいことなんだけど。
お姉さま方に囲まれて二ヤついてたのはどこのどなた?」
「は?二ヤついてなんかないだろ。」
「二ヤついてたっ。
目の前で見てたんだから!
それに、必要以上の笑顔って言われても、私はいつもと変わらずしゃべってただけだもの。
草がムッとする理由が分かんない。」
「気づけよ、俺が嫉妬してることくらい。」
「草だって気づきなさいよ、私が嫉妬してることくらい。」
私達は口調強く言っていることは、お互い嫉妬してしまっていたということを暴露するということで、顔を見合せた後噴き出してしまった。
「お互い様か。」
「お互い様ね。」
結局同じような理由で不機嫌になっていたということだ。
お互いが相手を好きだという気持ちが表情を変えていたということを改めて気づかされる。
そのことがおかしくもあり愛しくもあった。
結局私達は似たもの同士ということだ。
そんなつもりもないのににやけていると思ったり、笑顔を見せすぎだと思ったり、しなくてもいい嫉妬をしている。
「愛は医者の中でも人気あるんだから俺のものだって言いたいんだよ。
それに、俺が愛のものだって言えばこんな風な嫉妬をしなくてもいいと思うんだけど。」
「うーん、確かにそうかも知れないわね。
でも、秘密にしてることでこうやってお互いの気持ちを確認できるっていうこともあるから、やっぱり秘密にしてたいな。
それに、どんなに他の先生達に気に入ってもらっても、私が好きなのは草だけだしね。
大好きよ、時枝(ときえだ)先生。」
「やっぱり話をすり替えられている気になるんだけど。
でも、俺も好きだよ、青柳さん。」
「大好きじゃないの?」
「大好きだ。」
「よろしい。」
草の言葉に満足した私は、ニッコリほほ笑みながら自分から唇を重ねた。







「やぁあっ、もう・・・、いじらないでぇっ」
「そんな嘘をいうのはいけないんじゃないのか?
これだけ俺の手を濡らしてるくせに嫌なはずはないだろ。
いやらしく俺の指を締めつけているしな。
ほら、ここだろ?
愛が感じる場所はさ。」
そう言って指をグリッと動かし、壁を狙ってくる指の動きに身体をビクつかせてしまう。
そして、四つん這いにさせられていた私の腕は、自分の身体を支えることが出来ないほど感じてしまい、腕の力が抜け、シーツに顔をつける恰好になり、ますます草の目の前に自分の秘部をさらす姿勢になってしまっていた。
恥ずかしすぎてこのまま顔を埋めてしまいたいと思っている私なのに、そんなことは許さないと言わんばかりに指を動かし続け、思いも叶わない。
「あああっ、・・・んっ、ぁぁあっ!」
顔をピクつきと共に上げてしまう私に、
「本当、いやらしい顔。
でも、瞳も潤んで俺を求める愛が可愛くて仕方ないよ。
ほら、お願いすることがあるんじゃないのか?
お願いしないと欲しいのはあげないよ?」
私が欲しがっているものを分かっているくせに、口に出させようとするのはいつものことだけど、ここまで意地悪されたことはない気がする。
でも、こういう時の草は口にするまではじらし続けることは分かっている。
これ以上じらされるだけなんて耐えられなかった。
だから、
「お願い、ここに、ほしい・・・の。
草に、もっと、気持ちよく・・・してほしいっ」
素直な自分の気持ちを伝える選択をするのは当然のことだった。
「そんなに欲しい?
自分で広げて俺を迎えいれようとするなんて。」
「うん、うんっ!」
「じゃ、あげるよ。
でも、すぐには終わらせてあげないから覚悟するように。」
「ああああっ!」
圧迫感を与えるほど大きくなっている草のものが私の中に埋め込まれ、大きな声が勝手に出てしまう。
それでも、自分が求めていたものが自分の中に入ってきたことに身体が震える。
そして、草の動きを受け止めるべく身体はいやらしく動きだす。
重なる熱い息使い。
お互いの想いを乗せて動く身体で感じる草の温もり。
すべてが私を高めていき、次第に真っ白な世界へと導かれていった。





口から吐き出される荒い息。
力が抜けた身体を重ね合わせる私達だったけれど、草が私の身体の上から離れたことで温もりがなくなった気がして寂しくなってしまい、草の腕に自分の腕を絡める。
「今日は甘えたいモードみたいだな。」
「たまには、ね。」
「誤魔化すだけの甘えじゃないのは、いつもでも構わないのに。」
「たまにだからありがたみが湧くってものじゃない?」
「じゃ、もっと甘えてもらおうかな。
たまにだって言うなら今日がチャンスなんだろうし。
ほら、愛の身体も甘えたいって言ってるしね。」
「んんっ」
そう言って私の秘部に再び指を侵入させる草の表情は楽しそうで、どこか意地悪さを含んでいる。
だけど、そんな草が嫌なはずもなく、明日が仕事だということを忘れて朝方まで求めてしまった。
その結果、遅刻しそうになり焦ってしまったのだけれど。



今日も1日忙しい日になりそうで、だるい身体を気合いをいれて動かす羽目になる。
でも、心は草に満たされ充実していた。
そんな私と草の関係は先に帰ったことでもしかしたらばれたかもしれないと思っていたけれど、大丈夫だったようで、誰からも突っ込まれることはなかった。


秘密は秘密のままで、その方が甘い蜜の味を味わえると思うし、ね。


+おわり♪+





Copyright(c) 2008 machi all rights reserved.

面白かったよとちょっとでも思ってくれたら押してもらえるとうれしいです♪
よろしかったら感想も一緒に書いてもらえるとますますうれしいです♪

Novel

Back




検索サイトから来られた方は、こちら からTOPへどうぞ。