秘密の恋は蜜の味


前編


「嫌よ。
いつも言ってるじゃない。」
「どうしてそこまで嫌がるかなぁ。」
「草(そう)こそどうしてみんなに話したがるのよ。
私は別に2人がつき合ってることをみんなに知らせる必要はないと思うんだけど。」
「俺に言わせればどうして愛(あい)が言いたがらないのかの方が不思議だよ。」
「ねー、久々に休みが一緒になったっていうのにこんな会話で休日を終わらせるのはもったいない気がするんだけど。」
「・・・・話すり替えようとしてるだろ。」
「違うわよ、私は純粋に草とゆっくり過ごしたいと思ってるだけ。
草は違うの?」
私は草の膝の上に座り、両腕を首に回しながら問いかける。
「こんな時ばかり甘え上手だな愛は。」
「嫌?」
「いいえ、大歓迎ですよ。
据え膳食わぬは恥ですから。」
「じゃー、おいしくいただいてもらっちゃおうかなぁ。」
そう言って草の唇に自分の唇をゆっくりと重ねる。
草も待っていましたとばかりに自分の舌を私の口腔内に侵入させ絡めだす。
「んっ、ふうぅ」
身体の熱を高めるように動く舌に、鼻から息を漏らすけれど、吐息のような音が鳴り、積極的に草動きを受け止める。
そうしている内に頭がボーっとしてくる私の洋服の裾から器用に両手を侵入させホックを外し圧迫するものが無くなった私の胸を優しく揉みしだく大きな手。
「結局いつもと同じパターンだな。
長期戦のつもりだから別にいいけど。
じゃ愛、どこでおいしくいただかれたい?」
草は唇を離した後私の胸に顔を埋めながら聞いてきたけれど、すでに移動をしていた草の手に秘部を探られ出し、息を荒くしていた私は、
「ここ・・・でっ、んっ!」
息も絶え絶えに答えるしかなかった。
「こんなソファーの上でいいのか?
愛はベッドの上の方が落ち着くんだろ?」
ペロッと私の胸の突起を舐めながら聞いてくる草の表情は意地悪さが表れていて反論しようとしたけれど、そんな私の行動などお見通しだったようで秘部に侵入させている指と連動するように突起へ歯を立て私の身体を痺れさせるから反論の代わりに出たのは喘ぎ声だった。
「やぁ、もう・・・・、草意地悪、する・・・。
ここ、で・・・、ほしい、のっ」
「分かってたんだけどな、愛がベッドまで我慢できないだろうということは。
でも、聞きたいだろ?俺としては、愛が俺のことを欲しがる言葉をさ。」

まんまと草の考えに乗せられた自分が嫌にならないでもなかったけど、今の私にはそんなことよりも草がくれる快感を今以上に高める方が大切だった。
自分から仕掛けたことのはずだったのに草の手の上で踊らされてしまっていることに気づきながらも。
「いつも、言ってる・・・・のに、好きだっ・・て。」
「そうだな。
でも、それとこれは、別。
俺のことをいじめた愛への仕返しだよ。」
「意地悪、するの・・・は、ああっ、草・・・・!」
「そうされる方がうれしそうだけど?
っ、ほら、こんなに俺を締め付けて。」
「んんっ、やぁあっ」
草の物を自分の中に埋め込むために座っている状態の草の上から侵入を許した私は、返事も途中でこれ以上話が出来ないほど行為に頭が集中してしまう。
そうしなければおかしくなりそうなほど身体が快感の波に飲まれ、震わせていたから。
それなのにそんな私の様子を楽しみながら身体を揺り動かす草。
「あっ、ああっ・・・・・っ」
「そんなに積極的に動かれたら信じないといけないよな。
ほら、愛の蜜が俺をこんなに濡らしてるんだ。
それだけ感じてるんだろ?」
草は自分の足に流れ落ちてきた私の蜜を指ですくい、私の目の前にもってきてみせてくる。
見せられた蜜は、確かに溢れさせてしまっているものだと分かったけれど、だからと言って素直にそうです、なんて言えるわけもない。
見せられる指から視線を逸らし、揺さぶられる動きに身を任せようとしていると、
「自分のものなのに、視線をそらすことは、ないだろ?
ほら、こんなにも甘く俺を求めていることを教えてくれるのに。」
ペロッと指についている蜜を舐める草の舌がいやらしく見える。
でも、私も人のことは言えない。
身体の痺れを増長させるだけだと分かっていながらも、腰を動かすことをやめることができないのだから。
それでも、私の本能が草を求めてしまう。
もっと、もっと、と。
高まる熱と痺れ。
狂いそうになるほどの快感の渦は心地よささえも与えてくれる。
離すことができるはずのない温かさも感じながら、高みを目指しお互いの腰の動きを同調させ、荒い息使いも快感への道しるべのよう。
「だめ、だめっ・・・っ!」
「くっ、ああ・・・・、俺も、だっ。」
吐き出される熱い吐息を混ぜ合わせながら揃って目指していた高みをとらえようとしていた。












「いってらっしゃーい。」
「ベッドからじゃなくて、玄関で送り出すって選択はないのか?」
早朝、だるい身体を起こすことなくベッドの上で草を仕事に送り出す私。
そんな私の行動は恋人として冷たいのかもしれないけれど、朝方まで起きていたのだからお見送りするだけでも許してほしいと思う。
「誰のせいで起き上がれなくなってると思ってるのよ。」
「誰って、もしかして俺のせいって言いたいのか?
でも、朝まで付き合ったのは愛の同意のもとでなんだけど。
愛が俺の物を離したがらな・・・・。」
「それ以上言わないでっ。
早く行かないと遅刻するわよ!」
「はいはい。
じゃ、行ってきます。」
「何?
行ってくるんでしょ?」
「忘れものあるだろ?」
そう言って頬を私の所に近づけてくる草。

まったく。

溜め息をつきそうになるけれど、甘えてくる恋人というのは可愛いもので、希望通りチュッと頬にキスをする。
その後私に微笑みを残し、元気よく仕事へと向かう草を見送りながらゴソゴソと再び眠りに入る私だった。






私と草は、同じ職場で働いている。
けれど、同じ職場でも同じ職種ではない。
私は看護師、草は医者だったりする。
大学病院に勤めて3年目の私と、4年目の草。
ローテーションで外部の病院に出ていた草が大学病院に帰ってきたのは去年のこと。
新人の頃にすでに外部の病院に出ていた草のことを知らなかった私は、有望株が帰ってくるという噂だけの存在の人だった。
そして、草は確かに噂どおりの有望株だということを一緒に仕事をするうちに認めないわけにはいかなかった。
技術的にも人柄的にも問題がなかったからだ。
人当たりは良い上に看護師にあたることもなく、医者として信用できる判断能力を見せ付けられ、看護師の中でも違う意味での有望株になっていて、そんな草と恋人同士になるなんて思ってもいなかった展開。
私と草が恋人同士になるなんて思ってもいなかったのに、あることがきっかけで今の状態にある。
きっかけというのは去年の花見、病棟で例年行っている花見でのことだ。
親友であり同期の美澄(みすみ)が幹事を務めた花見で、一緒に帰るはずだったのに気がつけばおいてけぼりをくらってしまい、割り勘でタクシーに乗って帰るつもりだった私はどうしようかと考えていた所に、近所だからと相乗りを申し出てくれた草のタクシーに乗り込んだことがきっかけだった。
家に帰るはずのタクシーは、話が盛り上がって飲みに行こうということになり、目的地を変更したことが運のつき。
気がつけば一夜を共にするという私的には考えられない展開を体験してしまったのだった。
一夜限りだなんてあり得ないことをしてしまったと朝目覚めて自己嫌悪に陥っていた私。
けれど、草からの思いがけない言葉に顔を真っ赤にしながらうなずいていた。
草は私の存在を他の病院に行く前から知っていて、戻ってきて私が辞めていなければ運命だということで、恋人にするつもりだったと告白してきたからだ。

運命って。
そんな言葉が出てくるとは思ってもなかったんですけど。

そんなことを考えながらも、密かにいいなぁと思っていた人からの告白。
うれしくて仕方がなかったというのが本音。
でも、絶対に病棟のスタッフに付き合いだしたということをばらしたくないと草に念を押したのだった。
同じ科の看護師と医師が付き合っていることがばれたら私の方が移動させられてしまうからだ。
折角希望していた部署に配属され、少しずつ自分で考えて仕事が出来るようになってきているところだったから、移動なんてことになったら今まで頑張ってきたことは何だったのっ!となってしまう。
けれど、1番の理由は、草が人気があることが原因だ。
恋人がいるということはみんなに宣言している草だけど、それでもいいからと狙っている人が絶えないということを知っている。
仕事が出来て人柄もいい上に顔もよい。
そんないい条件の男が身近にいるのだから狙わない人はいないだろう。
有望株の草を狙っているお姉さま方に睨まれたくはないし、私が相手だったら余裕で奪えると思われそうで、今でもその気持ちは変わらないから草からの言葉をはぐらかしている。
だいたい、どうしてみんなに私達が付き合っていることを話したがるのか真意が分からない。
聞いたこともあるけれど、そのことだけは誤魔化すから今でもはっきりとした理由が分からないでいる。
それでも、私と草の関係は順調で、時間があれば草の家に来て同じ時間を過ごす。
もちろんお互い不規則な仕事な上、草の方は休みがあってないようなもの、昨日のようにゆっくりと身体を重ねる時間が取れないせいで今日身体を動かすのが億劫になるほど求めてしまうのだけれど。
今の私には草はそばにいてほしい人であり、そばにいたいと思える大切な人だと言える。
だから余計にスタッフに私達の関係を口にするなんてことは避けたい。
きちんとそのことを話せばいいのかもしれないけれど、今まで草に言ったことはない。
何故なのかと問われれば、私の方が草のことを想っているのだと思われるのがくやしいから言うことができないのかもしれない。





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