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潤一郎先生が女性といる。

しかも、腕を組んで仲良さそうに笑い合っている。

他人から見れば、お似合いのカップルがデートしているようにしか

見えない・・・。


何で?

何で潤一郎先生が女の人と仲良さそうに私の目の前を歩いているの?

嫌だっ!他の女の人に優しい笑顔を見せないでっ!

一緒に歩いている女の人は潤一郎先生の彼女なんだろうか?

前、潤一郎先生に彼女がいるのか聞いたときは、いないって言ってた。

でも、それは半年も前のことだし・・・。

やっぱり潤一郎先生の彼女なのかな?

あんな、きれいな大人の女性には子供の私はかなわないよ・・・。


目の前の光景が信じられず呆然と立っていると、夢と愛が心配そうな

顔をしながら、話かけてきた。

「まことちゃん、だいじょうぶ?」

「まことちゃん、ぐあいわるいの?ぐあいわるいんだったら、いえかえろう。」

「そうだよ。まことちゃんおうちかえろうよ。」

夢と愛は、私のスカートのすそを引っ張りながら言った。


そうだよね。

これ以上潤一郎先生と女の人が一緒にいる所を見続けることなんか

私にはできない。

早くこの場所から離れてしまいたい。


そう思い、夢と愛の手を引いて急ぎ足でこの場を離れようとすると、

私達に声をかけてくる人がいる。



声がする方向を見なくても、この声の主が誰なのかわかっている。

いつもは、会いたくて仕方がない人。

今は、1番会いたくない人。



声の主は私達に近づいてくる。

この場を離れたくても、足が前に進んでいかない。





「真琴ちゃん、夢君に愛ちゃんも。お買い物ですか?」

潤一郎先生は、いつものふんわり優しい笑顔で聞いてきた。

その声掛けに振り向くと、潤一郎先生は女性と手を組んだまま、私達の

前に立っている。


こんな近くで潤一郎先生と女の人が仲良くしている所なんか見たくなかった

のに・・・。

何で私の足は前に進んでくれなかったの?


潤一郎先生の声掛けに返答することができず、下を向いたままでいると、

変わりに夢と愛が返事をしていた。

「まことちゃんのおかいものについてきたの。」

「パフェたべにきたんだよ。じゅんいちろう、となりにいるひとだれだ?」

潤一郎先生は、ゆっくりした声で答えた。

「この女性は、私の大切な人ですよ。今日は買い物に付き合うように

言われて一緒に買い物をしていたんです。荷物持ちなんですけどね。」

「だって、買い物には荷物持ちがいるでしょ?潤一郎に付き合って

もらいたかったのよ。」

「だから付き合ってるじゃないですか。大人しく荷物持ちもしているでしょ?」

「本当に。助かったわよ。」

潤一郎先生と女性は仲良さそうに話をしている。


この女性が潤一郎先生の大切な人・・・。

もう駄目・・・。

このままここにいたら私、泣いちゃいそう。

潤一郎先生の前では泣き出したくないよ・・・。


潤一郎先生と女性が仲良さそうに話していることに耐えれそうもなく、

しかも、この女性が潤一郎先生の大切な人だということが辛すぎて、

自分の足から力が抜けて、座り込んでしまいそうなのを何とか耐えていた。

夢と愛がお互いの顔を見合わせて何か言おうとしていたが、それよりも早く

私は顔を上げて潤一郎先生と隣にいる女性に言った。

「そうなんですか。あの私達急いでるので失礼します。」

「そうですか?ではまた保育園で会いましょうね。」

話す声が震えてしまったが、夢と愛の手を引き急ぎ足で潤一郎先生と女性

のそばを離れた。

夢と愛は、後ろを振り返ったりしていたが、私は後ろを振り向くことなんて

出来るはずもなく、とにかくこの場を離れることしか考えていなかった。





真琴たちが立ち去った後、潤一郎は何か企んでいるような顔で

クスクスっと笑っていた。







潤一郎先生と別れてから、無言で家に着くと私は、夢と愛に、

「今日はごめんね。パフェはまた今度ね。夕飯作る時間まで自分の

部屋にいるから、2人共大人しく遊んでてね。」

と、話しかけた。

夢と愛は、わかった。と返事をしてくれたので、私はすぐに自分の

部屋に行くために、階段を駆け上った。

部屋に入り、ベッドの上にうつ伏せに寝ると、今まで我慢していた

涙が溢れてきた。


告白する前に失恋だなんて、悲しすぎるよ・・・。

まだこんなに潤一郎先生のことが好きなのに。

大切な人がいるからってあきらめることなんかできないよ・・・。





真琴がベッドの上で泣いている頃、夢と愛が話し合いをしていた。

「じゅんいちろうかのじょいないっていってたのにっ。」

「そうだよな。でも、すきなひとはいるっていってたから、いっしょ

にいたひとがそうなのかもしれないな。」

「どうしよ〜。まことちゃんかなしそうだったよ?」

「どうしようっていっても、とりあえずあしたじゅんいちろうに

きいてみようぜ。それから、キューピットさくせんをやってみようっ!」

「キューピットさくせんうまくいくかな?」

「わかんないけど、まことちゃんのためにもおれたちが

がんばらないとなっ!」

「うんっ、わかった!」

夢と愛は、明日キューピット作戦を予定通り実行することを決めた。







日曜日は、自分の部屋にこもって時間が過ぎていった。

今日は月曜日。夢と愛を学校帰りに保育園にお迎えに行かないといけない。

お迎えに行くということは、潤一郎先生に会わなければいけないと

いうことだ。


会いたくないなぁ。

初めてだな、潤一郎先生に会いたくないなんて思ったの。

でも今、潤一郎先生に会うのは辛いよ。


朝目覚めて下に降りている間、そんなことを考えていた。

「おはよ〜まことちゃん。」

「おそいぞ〜、おなかすいたぞおれ。」

夢と愛が階段の下で私に話しかけてきた。


何で2人共もう起きてるの?

休み以外の日に起される前に起きてるなんて初めてだよね?


「どうしたの2人共?起される前から起きてるなんて。」

「「たまにはねぇ〜。」」

夢と愛は声を合わせて答えた。


夢と愛は潤一郎に話すことがありすぎて、興奮してしまい、早く

目が覚めてしまったのだった。







夢と愛は、真美に保育園まで送ってもらい、潤一郎に話をするために

潤一郎を探し出した。

「おはようございます、夢君、愛ちゃん。」

潤一郎が夢と愛に話かけてきた。

「あー、いたっ!じゅんいちろう!!」

「じゅんいちろう、だいじなはなしがあるんだぞっ!」

「大事な話ですか?」

「そうだよっ。だいじなはなしだよ。」

「きのういっしょにいたおんなのひとが、じゅんいちろうのすきな

ひとなのかっ?」

夢と愛は、すごい勢いで潤一郎に詰め寄り聞きだした。

そんな2人に目を細めて笑いながら潤一郎は言った。


「大事な人とは言いましたが、好きな人とは言っていませんよ。」


潤一郎が言っている意味がよく分からず、分かるように言ってと

2人で言ったが、

「これ以上は教えてあげません。」

と、潤一郎は言ったっきり、どんなに夢と愛が聞いても、それ以上の

事は言わなかった。

「そんなこといわれてもわかんないよぉ〜。」

「ほんとだよ。まことちゃんになんていえばいいんだよ。」

潤一郎が言った言葉の意味が分からず悩んでいる2人に潤一郎は言った。

「真琴ちゃんに聞いてみたらどうですか?」

潤一郎の言葉に夢と愛が嬉しそうに言った。

「そうだよね。まことちゃんにきいてみようよ。」

「まことちゃんならわかるかもなっ。」

夢と愛がそうしよ、そうしよ。と言いながら飛び跳ねている。





その姿を見ながら潤一郎は、土曜日に見せた、何かを企んだような

クスクス笑いをしていたが、夢も愛も気付かなかった。





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