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茶碗蒸しもあと少しで出来上がる頃、潤一郎さんが仕事を終わらせ

やって来た。

潤一郎さんが来たことが分かると、夢と愛がパタパタと玄関に走って

いった。

私も一緒に潤一郎さんを迎えたかったんだけど、台所から離れる

ことができなくて、夢と愛に迎えてもらうことにした。





「じゅんいちろう、きょうはちゃわんむしもあるんだぞ!!」

「そうだよ!とってもおいしいんだから、まことちゃんの

ちゃわんむし!!」

「茶碗蒸しですか。それは楽しみですね。」

潤一郎は、にっこり笑いながら、夢と愛を見ながら言った。

「ところで真琴ちゃんは?料理中なんですか?」

「そうだよ、まことちゃんはあとちょっとでちゃわんむしができるから

げんかんにこれないんじゃないか?」

「じゅんいちろうさびしいの?」

「寂しいですよ。真琴ちゃんが迎えてくれると思って楽しみに

してましたからね。でも、夢君と愛ちゃんが迎えてくれたから大丈夫

ですよ。」

「さびしがりだなじゅんいちろうは。」

「ほんとだよね〜。でも、まことちゃんはおいしいごはんつくって

くれてるんだからしょうがないよ。」

夢と愛はクスクス笑いながら潤一郎に言った後、潤一郎のズボンを

引っ張りながら、違う話題を振ってきた。



「じゅんいちろうはいつからまことちゃんのことがすきに

なったんだ?」

「そうそう、いつから?すきならはやくまことちゃんにいっちゃえば

よかったのに。」

潤一郎は、自分のズボンを引っ張りながら質問してくる2人に、

少し困ったような顔をした後、いつも見せる笑顔に戻り、

唇に人差し指を当てながら、

「それはナイショです。」

と、楽しそうに言った。

そんな潤一郎の答えに2人が満足するはずもなく、なんでなんでと

言いながら、2人は潤一郎のズボンを引っ張り続けていた。

そんな2人に潤一郎はニッコリ笑いながら、

「真琴ちゃんに最初に言った後になら教えますよ。

本人に最初に教えてあげないとね。」

と答えた。

潤一郎の答えにしぶしぶ納得した2人は声を揃えて、分かった、と

答えた後、

「ぜったいまことちゃんにいったあとおしえろよ。」

「そうだよ、ぜったいだからねっ!」

と、潤一郎の顔をじっと見ながら言った。

「真琴ちゃんに言った後、絶対言いますよ。さて、お腹も空きました

し、真琴ちゃんの料理も出来ているでしょうから、食べに行きましょうか。」

と、潤一郎は夢と愛の手を取り、真琴が待つ場所へ向かった。





さて、これで準備できたぞ。

でも、3人共遅いなぁ。

折角の料理が冷めちゃうよ。


真琴は3人がなかなかやってこないことを気にしていると、潤一郎が、

夢と愛の手を引いてやってきた。

「仕事お疲れ様でした潤一郎さん。リクエストの肉じゃができてますよ。

それと、茶碗蒸しも作ってみたんです。茶碗蒸しは好きですか?」

「今日もおいしそうですね。茶碗蒸しは好きですよ。

それよりも、真琴ちゃんは潤一郎って呼び捨てでは呼んで

くれないんですか?楽しみにしていたのに。」

潤一郎は夢と愛の手を自分の手からスルリと外し、真琴の前に立ち

私が大好きなふんわり優しい笑顔で言った。


よ・呼び捨てですか!?

潤一郎さんって呼ぶのにもドキドキしてるのに、呼び捨てなんて

まだ無理ですっ!


「あ・あの、いろいろ考えたんですけど、まだ呼び捨てはしにくい

かなって。

それで潤一郎さんって呼ぼうかなって思って・・・。」

私はうつむきながら潤一郎さんに言った。

すると、頭の上から潤一郎さんのクスクス笑いが聞こえてきた。

何事かと思い、顔を上げて潤一郎さんを見ると、

「どちらでもいいんですよ、真琴ちゃんが呼んでくれるなら。

ごめんね、ちょっといじわるでしたね。」

潤一郎さんはそう言いながら私の頭を優しく撫でた。


頭を撫でられるのはうれしいけど、なんだか子供扱いされた

みたいな気になっちゃう。

潤一郎さんから見たら私なんてまだまだ子供なんだろうなぁ〜。

潤一郎さんこんな子供の私で本当にいいのかなぁ。


私がそんなことを考えていると、私の考えが分かっているみたいな

潤一郎さんの言葉が私の耳に入ってきた。

「僕は真琴ちゃんと付き合うことがやっとできて、少し浮かれて

しまってるんですよ。真琴ちゃんのことが大好きですからね。

今まで言えなかった分、これからたくさん真琴ちゃんに好きって

言いたいと思っている僕は面倒臭いですか?」

「そんなことないですっ!私もたくさん潤一郎さんに好きって

言いたいですっ!!」

「それなら良かった。

それと、僕に敬語は使わなくていいですよ。付き合ってるんだし。」

「でも、潤一郎さんも敬語使ってます。」

「僕のは癖になってるんですよ。親しい人にも同じように使って

ますからね。

でも、真琴ちゃんは違うでしょ?親しい人には敬語なんか使ってない

でしょ?それなら、付き合ってる僕にも使わなくていいんですよ。」


なんだか付き合ってるって言葉がくすぐったい。

でも、すごくうれしい言葉だ。

潤一郎さんがそう言うなら・・・。

しばらくは慣れないだろうけど。


「わかりました。潤一郎さんには敬語を使わないようにしますね。」

私は潤一郎さんの言葉が嬉しくて、思わずにやけそうになりながら、

笑顔で言った。

「言ってるそばから敬語ですよ?」

潤一郎さんは少し意地悪な顔で言った。

「すぐには無理ですっ。ちょっとずつ慣れていくの。」

「早く慣れてくださいね。」

「はい。」

私と潤一郎さんは顔を見合わせながら笑っていると、

「「おなかすいたよ〜。」」

夢と愛が声を揃えてお腹をさすりながら、お腹が空いていることを

アピールしてきた。


またやっちゃった。

潤一郎さんと話してると周りの人のこと忘れちゃう。


「ごめんね〜、ご飯にしようね。」

私はそう言って夢と愛と潤一郎さんを椅子に座らせて、ご飯を茶碗に

つぎ、夕飯を食べ始めることにした。





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