-14-



授業も終わり、瑛子とすみれと別れて夢と愛をお迎えに行くため、

保育園に向かっている。

保育園までいつも歩いていっているが、保育園に近づいてくると、

身体全部が心臓になってしまったかと思うくらい、ドキドキが身体全体に

広がってきていた。


きっ、緊張してきたよぉ〜。

昨日感じてた緊張と違う緊張が・・・。

潤一郎先生に会ったら、どんなふうに話しかけたらいいんだろ?

彼女になったら何かいつもと違うようなこと言わないといけないのかな?

そうは言っても、いつもと違うことって何があるのっ。

わかんないよぉ〜。

世間一般のカップルは、付き合い出した次の日ってどんな風に過ごして

るんだろ?

あーん、わかんないよぉ。

どんな感じで潤一郎先生に会えばいいの〜。


私は1人歩きながら百面相のように表情を変えながら悩んでいたので、

かなり怪しげな女子高生になっていたと思う。

でも、悩んでいる私にはそんな周りのことに構う余裕はなく、怪しげな

女子高生の状態で歩き続けた。





悩みながらも保育園に着いてしまい、思わず身体の力が抜けてしまい、

門に手をついてしまった。

何かいつもよりお迎えに来るのが疲れちゃった。

いくら身体元気でも気持ちが落ち着かないと、こんなに疲れちゃうのね。


門に手をつきながらそんなことを考えていた。


さて、夢と愛をお迎えに行かなくっちゃね。

潤一郎先生にも緊張しちゃうけど会いたいし。

緊張してるのもどうにかなるわよね。


楽天的な考えになりながら、夢と愛のお迎えと潤一郎先生に会いに

向かった。


「まことちゃんおそいぞ〜っ。」

「まことちゃんまってたよぉ〜。」

夢と愛は私に気付くとそんなことを言いながら私に向かってテケテケ 

  と走ってきた。

「ごめんねぇ。でも今日はそんなに遅くなかったと思うんだけど?」

「おなかすいたからまことちゃんのおやつはやくたべたかったんだよ。」

「そうだよぉ、おなかすいちゃったの。だからまことちゃんがくるの

とってもおそいきがしたの。ねーゆめ。」

そう言って愛は夢に首を傾げながら、ねーと言っている。

そんな姿を可愛く思いながら、

「そうだったんだ。お腹空いちゃったんだね。じゃ早くお家帰って

おやつにしようか。」

「「うんっ!」」

夢と愛は瞳をキラキラさせながら声を揃えて返事をした。

そんな私達にクスクスっと笑いながら近づいてくる人がいた。

近づいてきたその人は、優しい笑顔を見せながら私達に声をかけてきた。

「いいですね、今から家に帰って真琴ちゃんのおやつを食べるんですか?」

潤一郎先生は、夢と愛に言った。

「いいだろ。じゅんいちろうはまだほいくえんかえれないからたべれない

もんな。かわいそうに。」

「ほんとだねぇ〜。じゅんいちろうのかわりにわたしたちがちゃんと

たべとくからねぇ。」

夢と愛は潤一郎先生に笑いかけながら言っている。

そんな2人に潤一郎先生は、ガックリと首を下げながら、2人に向かって

言った。

「本当ですよ。出来ることなら僕も一緒に帰って真琴ちゃんのおやつが

食べたいです。本当に残念ですよ。」

そんな潤一郎先生を見ながら夢と愛はきゃははと笑っている。



そんな状況の中、私はその会話に入ることなく、軽いパニック状態に

なっていた。


じっ、潤一郎先生っ!

潤一郎先生に会ったら緊張よりも照れくささが強くなってきたかも。

昨日のキスとか思い出してきちゃってるし私っ!


グルグル頭の中で考えていると、今まで夢と愛としゃべっていた潤一郎

先生が、私の方を向いて話しかけてきた。

「まことちゃんのおやつは今度ご馳走になりに行っていいですか?」

「はっ、はいっ!全然大丈夫ですっ!!」

私は潤一郎先生の話しに必要以上の大きな声で答えてしまった。


えーん、何で大きな声出すのよ私っ!

しかも照れくさすぎて緊張しているのがばれちゃうよぉ。


自分の反応に思わず顔を真っ赤にして俯いてしまった。

そんな私に潤一郎先生が優しい声で話しかけながら、私の顔をゆっくりと

上に上げ、潤一郎先生の目線に合わせた。

「真琴ちゃん正直に言うと、昨日の今日で真琴ちゃんに会うのが照れくさ

かったんですよ。でも、真琴ちゃんに会って、照れくささより嬉しさの

方が強かったんです。真琴ちゃんはどうですか?」

潤一郎先生にそんなことを言われ、大人の潤一郎先生が私と同じような

気持ちだったことに驚いてしまった。

それに、潤一郎先生が言った照れくささより嬉しさの方が強かったという

言葉が、とても嬉しかった。

私も、潤一郎先生に会えたことがとても嬉しかったのを改めて感じた。

この気持ちを潤一郎先生に伝えたくて、潤一郎先生を見つめながら

話しかけた。

「私も照れくさかったけど、潤一郎先生に会えて嬉しい方が

強かったです。同じですね私達。」

私の答にニッコリ笑いながら、潤一郎先生が、

「真琴ちゃんの気持ちが聞けて嬉しかったですよ。でも、今は

これ以上この場所で話を続けるのは無理そうですね。」

と言った。

その言葉に周りを見ると、夢と愛と一緒に子供たちが私と潤一郎

先生を囲んだ状態になってじっと見ていた。


きゃーっ、子供達が見てるよぉ〜。


子供達の視線が恥ずかしくて、潤一郎先生のそばを離れ夢と愛

の手を引き、潤一郎先生に、

「じゃ潤一郎先生また明日っ!」

と言って、その場から急いで離れた。





あー恥ずかしかった。

あんなに子供達から見られてたなんて。


門の所に来て、そんなことを思っていると、潤一郎先生が私達

を追いかけてきた。

「どうしたんですか潤一郎先生?」

「言い忘れてました。今日もし良かったら真琴ちゃんの夕飯を

ご馳走になりに行ってもいいですか?」

「そんなのいいに決まってるじゃないですかっ。ぜひ来て下さい。

じゃ、潤一郎先生何食べたいですか?先生の好きなもの作りますよ?」

「そうですか?じゃ、肉じゃがなんか食べたいですね。」

「肉じゃがですね、わかりました。

おいしい肉じゃが作って待ってますね。」

私はそう言って潤一郎先生に挨拶をしようとすると、潤一郎先生が

にっこり笑いながら顔を近づけてきた。

「真琴ちゃん、僕達は付き合いだしたんだから先生って言うのは

おかしいんじゃないですか?」


え?そんな何て言ったらいいんだろ?


私が悩んでいると、潤一郎先生が言った。

「潤一郎でいいですよ?」

「そんなっ呼び捨てなんて・・・。」

「いいですよ僕は呼び捨てでも、真琴ちゃんに呼ばれるなら。

付き合ってるんだし。呼んでみて下さい。」

「じゅ・・・潤一郎・・・。」

私は小声になりながら、潤一郎先生のことを初めて『潤一郎』と

呼んでしまった。

そんなことが照れくさくて仕方がなかった。

そんな私に潤一郎先生は、

「かわいいですね真琴ちゃんは。じゃ今日お邪魔させてもらいますね。」

そう言って手を振りながら建物の中に消えていった。

潤一郎先生を見送った後、『潤一郎』と呼べる関係になったんだと改めて

感じて顔がにやけてしまった。





Novel

Next

Back




検索サイトから来られた方は、 こちら からTOPへどうぞ。