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潤一郎先生を保育園に残し、夕飯の材料を買うために夢と愛と一緒に

スーパーへ向かった。

スーパーで潤一郎先生に食べてもらうため、材料を買いながら、何を

作ったらよいか悩んでいた。


潤一郎先生何食べたいかな?

聞いてくるべきだったよね。告白するのに、やっぱり気分よくご飯を食べて

もらった後に告白した方が、告白しやすいような気がする・・・。

でも今更そんなこと言っても遅いし、とりあえず、得意料理を作って

みようかな。

それなら失敗もないしね。

うんっ!そうしよう。


食材を前に悩みながら、とりあえず作る料理を決めて、必要な食材を

買い物かごの中にどんどん入れていった。

「まことちゃん、きょうのごはんなに?」

「今日はねぇ、グラタンよ。」

「やったーっ!まことちゃんのグラタンすっごくおいしいからすきーっ。

チーズいっぱいのせてくれるよな、もちろん。」

「夢は本当にチーズ好きだねぇ。いいよ、チーズいっぱいのせるね。」

「わたしには?」

愛が心配そうに私の顔を見て聞いてきたのが可愛くて、笑いながら、

「大丈夫、もちろん愛にもいっぱいチーズのせてあげるからね。」

「わーい、チーズ、チーズっ!」

「やっぱりチーズがいっぱいのってないとなグラタンには。」

愛が両手を挙げて喜んでいる横で夢は、うんうんとうなずいている。

そんな2人の姿が可愛くて笑ってしまい、緊張していた私を和ませて

くれた。


夢と愛がいてくれて良かったな。緊張してたのが少し取れてきたもんね。

さて、買い物を早くすませてグラタン作らなくっちゃね。


チーズに喜んでいる2人を促しながら、買い物をすませて家に帰る

ことにした。





家に帰るとすぐに、夢と愛が料理を作り出そうとしている私をソファに

座らせた。

「まことちゃん、ほいくえんでいえなかったこといまからいうね。」

「そうそう、じゅんいちろうがまことちゃんにきいてみろっていったこと。」

「潤一郎先生が?そういえば保育園でもそんなこと言ってたよね2人共。

潤一郎先生が何言ったの?」

「じゅんいちろうはね、このあいだいっしょにいたおんなのひとは『だいじな

ひとっていったけど、すきなひととはいってない』って言ってたの。」

「そうそう。でもおれたちにはよくわからなかったんだよな。」

「うん、わかんなかったの。」

「そしたら、じゅんいちろうがまことちゃんにきいたらいいっていったんだ。」

「うん、そうなの。」

夢と愛は、2人でうなずきあいながら、言った後私をじっと見ている。


この間一緒にいた女性は大事な人とは言ったけど、好きな人ではない?

いったいどういう意味?

大事な人だったら好きな人『恋人』っていう意味じゃないの?

わかんないよぉ。

どういう意味なんだろ。私に聞いてみるようにって2人に言ったのは

なんでなんだろ?

私にはわかりませんっ、潤一郎先生っ!


2人が言った言葉の意味を一生懸命考えてみたけど、まったく私には

わからず、私をじっと見ている2人に何も答えてあげることができなかった。

「私にもわかんないよ。ごめんね2人共。」

「まことちゃんもわかんないんだ。」

「やっぱりじゅんいちろうにもういっかいきいてみないとな。」

「とりあえず、潤一郎先生が来たら聞くことにして、夕飯を作るからね。

潤一郎先生が夕飯ができる前に来ちゃったら困るしね。」

夢と愛にそう言って私は台所に向かった。





グラタンのホワイトソースを作った後、お皿に盛り付けて2人の希望

どおりチーズを沢山のせて、後は焼くだけの状態になった時に、玄関の

チャイムが鳴った。

チャイムの音が聞こえて夢と愛がパタパタと玄関に向かっているのが

わかった。


どうしよぉ〜、やっぱり緊張してきちゃった。

とりあえず、2人が潤一郎先生を案内してくれるだろうから、グラタンを

作ってしまって、その間に少しでも気分を落ち着かせなっちゃ。


そう思いながら、グラタンを焼くためにオーブンにお皿を入れて焼くこと

にした。





「じゅんいちろう、いらっしゃ〜い。」

「いま、まことちゃんがおいしいグラタンつくってるからな。」

「グラタンですか、それは楽しみですね。」

「じゅんいちろう、まことちゃんにきいてみたけど、わかんないって

いわれたよ?」

「そうだよ。じゅんいちろうぜんぜんわかんなかったぞ。だから

もうおしえろよ。」

夢と愛は、家にやってきた潤一郎のズボンを引っ張りながら言った。

そんな2人ににっこりと笑いかけながら潤一郎は、

「そうですか、真琴ちゃんはわかりませんでしたか。では、真琴ちゃんには

教えてあげないといけませんかね。夢君愛ちゃんにお願いなんですが、

真琴ちゃんに僕が教えるまで真琴ちゃんには、ナイショにしてくれますか?

約束してくれるなら教えますよ?」

「「え〜、なんでないしょ?」」

2人が声をそろえて不満そうに潤一郎に聞くと、潤一郎が再びにっこりと

笑い、

「とても大事なことだからですよ。だから僕が言うまでは、真琴ちゃんに

ナイショにしてほしいんです。お願いできますか?お願いを聞いてくれたら

すぐに教えてあげますよ?」

潤一郎の言葉に夢と愛は、うーんと腕を組んで唸ったあと、お互いの顔を

見てうなずき合い、潤一郎を見て、

「「わかった。まことちゃんにはいわない。だからおしえて。」」

そう言った。

「では、教えますね。あんまり大きな声では言えないので、耳元で

言いますね。」

潤一郎がそう言うと、夢と愛は楽しそうに潤一郎に耳を近づけると、

潤一郎は2人の耳に囁いた。

「「えーっ!!」」

潤一郎が囁いた後、夢と愛は大きな声で驚くと、そんな2人に潤一郎が唇に

人差し指を当てて、

「ナイショですよ?」

と2人に言った。





夢と愛は何騒いでるんだろ?


グラタンが焼けたので、オーブンからお皿を出していると、夢と愛の

大きな声が聞こえてきた。

オーブンから全てのお皿を出し、テーブルの上に出そうかなと思って

いると、台所に潤一郎先生が入ってきた。

「おいしそうな匂いですね。」

「じゅっ、潤一郎先生っ!いらっしゃいっ。」

「はい、お邪魔しています。テーブルに出していいなら、出しますよ。」

「はい。もう出来たのでテーブルに出そうと思ってたんです。」

「では、出しますよ。グラタンおいしそうですね。」

「潤一郎先生グラタン好きですか?」

「はい。とっても好きですよ。熱いうちに食べましょう。」

そう言って潤一郎先生が、お皿をテーブルの上に出してくれた。


はー、何とか普通に話せたな。でも、緊張が強くなってきてる気が

する。


そんなことを思っていると、夢と愛が、

「「まことちゃーん、はやくたべようよ〜。」」

椅子に座った状態で台所にいた私に声をかけてきた。

「そうね。食べようか。」

そう返事して私は、3人が待つテーブルに向かった。





グラタンをおいしいと言いながら潤一郎先生が食べてくれたけど、

告白のことを考えると、私はグラタンがなかなか口に入っていかず、

半分ぐらいしか食べることができなかった。

食事が終わった後、コーヒーを飲みながら他愛もないことを潤一郎先生と

話していると、夢と愛がニヤニヤしながら私の顔を見ているので、どうか

したのか何度も聞いたが、その度に、

「「なんでもな〜い。」」

と言っては、またニヤニヤと私の顔を見ていた。


なんでニヤニヤして私のこと見てるんだろ?


そう思いながらも、何度どうしたのか聞いても答えないので、気にする

のをやめた。





「じゃ、そろそろ帰りますね。」

潤一郎先生がコーヒーを飲み終わった後、そう言いながら立ち上がった。


きたっ!告白する時がっ!!


潤一郎先生が立ち上がり、帰ろうとする姿に、告白をする時がきたと思い、

緊張が強くなってきた。

「では、また明日保育園で会いましょうね。」

潤一郎先生は、夢と愛の頭をなでた後、私の方を見て、ふんわり優しい

笑顔を見せて言った。

私が大好きな潤一郎先生の笑顔を見て、胸が締め付けられてしまった。


今までは、潤一郎先生の笑顔が見られたら嬉しい気持ちが強かったのに、

失恋するために告白するんだと思うと、胸が締め付けられちゃうよ。


潤一郎先生は玄関に向かって歩き出したので、後ろからついていき、

この間と同じように、玄関の外に出て、お見送りをする状況になった。


まことっ、告白するのよっ!


告白するために、自分を奮い立たせた。

「潤一郎先生っ。聞いてほしいことがあるんですっ。」

「なんでしょ?」

潤一郎先生は私の言葉を聞いて、じっと私の顔を見ている。


潤一郎先生に見つめられてる・・・。

緊張しちゃう・・・。

でも、潤一郎先生に告白しなきゃ、私は先に進めないのよっ!


潤一郎先生に見つめられながら、思い切って告白をする決心をして、

「潤一郎先生、私は保育園に夢と愛のお迎えに行きだして潤一郎先生に

会って1年、潤一郎先生のいつも見せる笑顔が好きでした。

潤一郎先生には恋人がいることはわかってるけど、告白をして自分の

気持ちに決着をつけないと、先に進めないと思ったんです。

迷惑だとは思いますが、どうしても知っていて欲しかったんです。」


一気に自分の気持ちを告白した後、潤一郎先生の顔を見ているのが

耐えられなくなり、顔を下に向けてしまった。

すると、頭の上から潤一郎先生の溜め息が聞こえてきた。


どうしよ、やっぱり告白なんて迷惑だったのよね。どうしよぉ。


潤一郎先生の溜め息を聞いて、じんわり目に涙が溜まってきてしまった。

すると、潤一郎先生は、私が予想もしなかったことを言い出した。

「真琴ちゃんの気持ちは嬉しいです。僕も真琴ちゃんのことが好き

ですからね。」


その言葉に驚いて顔を上げると、いつものふんわり優しい笑顔で

話を続けた。

「真琴ちゃんに気付いて欲しくて、ヒントを出したつもりだったんですが、

難しすぎましたかね。この間一緒にいた女性は姉です。買い物に

付き合わされていただけなんですよ。

夢君と愛ちゃんにも協力してもらおうと思って、ヒントを言ったんですが、

真琴ちゃんは気付いてくれなかったですからね。」


「夢と愛にですか?」

「そうですよ。大事な人と好きな人は違うと言ったのは、好きな人は別の人

だと伝えたかったんです。それに、個人的に家に夕飯を食べにくるなんて

普通はしませんよ。真琴ちゃんの手料理を食べたかったんです。」

「そうだったんですか?」

「そうですよ。それと、真琴ちゃんの気持ちはなんとなく気付いて

いたんです。

でも、真琴ちゃんから告白して欲しくていじわるしてしまいました。

そのせいで真琴ちゃんに辛い気持ちにさせてしまいましたね。」

潤一郎先生はそう言って、私の目から流れている涙を指で優しく

拭ってくれた。

そんな潤一郎先生の顔をじっと見つめていると、


「改めて僕の方から言いますね。真琴ちゃん、僕とお付き合いして

くれませんか?」

潤一郎先生の告白に胸が熱くなって、嬉しくて私の目からはドンドン涙が

流れてしまう。

「真琴ちゃん、返事はもらえないんですか?」

潤一郎先生の言葉に、しゃっくりが出ながら、

「はい、お付き合いします。」

と、なんとか返事をすることができた。





嘘みたい。

失恋してると思ってたのに、潤一郎先生からこんな告白が聞けるなんて。


潤一郎先生の告白に何とか返事をすることができた私に、潤一郎先生は

にっこり笑ったかと思うと、私の唇にキスをしてきた。


「んっ」


いきなりのキスに今まで流していた涙が驚いて止まってしまった。

今までキスなんてしたことなかった私に、潤一郎先生は舌で私の歯を

触れてきたことに驚いて口を開けると、私の口の中に舌を侵入させ、

私の舌に絡めてきた。


「んんっっ」


潤一郎先生の行動に驚きながらも、潤一郎先生から与えられる身体が

痺れるような感覚を、どう対処したらいいのかわからず、私の頭の中は

パニック状態に陥っていた。

そんなパニック状態になっている私の唇から潤一郎先生の唇が離れたかと

思うと、潤一郎先生は今まで見たことのないニヤッと笑いながら、

「真琴ちゃん、僕は真琴ちゃんが思ってるほど優しい人間ではないんです。

でも、やっと僕のものになった真琴ちゃんを今更手放すつもりも

ありません。

なので、意地悪をする僕がいるかもしれませんが、これから慣れていって

下さいね。」

と、言った。


意地悪ってどういうことですかぁっ!

優しい人間じゃないって・・・。





そう思いながら、潤一郎先生の顔を見ると、いつものふんわり優しい

笑顔の潤一郎先生がいた。





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