-10-



チャイムが鳴り、4時限目の終了を知らせている。



今日はまったく授業内容が、頭の中に入ってこなかった。

私の頭の中にあるのは、土曜日に見た、潤一郎先生と一緒にいた女性の

ことだ。

それと、潤一郎先生が言っていた、『大切な人です。』という言葉。

失恋したことが頭ではわかっていても、気持ちがついてこない。

1年も潤一郎先生のことを好きだった気持ちを、そんな簡単に私の中から

消し去ることなんて、できない・・・。



机の上に両腕をのせ、顔を埋もれさせていると、私の頭をペチペチ叩いて

くる人がいる。

「真琴、昼ご飯食べるよ。なーに机に突っ伏してんのよ。」

瑛子がお弁当を持っている反対の手で私の頭を叩いていたのが、顔を

上げてわかった。

その隣りには、すみれが立っていて、顔を上げた私の顔を両手で挟んで

ぎゅっと押しつぶしながら、

「どうしたのかなぁ、今日の真琴は。朝から元気ないし、授業にも身が

入ってないみたいだし。真面目に授業を受ける真琴らしくないわよ?」


2人共、心配してくれるのは嬉しいんだけど、何も頭叩いたり、顔を

つぶさなくってもいいからっ。

まったく、シリアスに考えることもさせてくれないのかしら、この

2人はっ!


「ちょっとっ!心配してくれるのは嬉しいけど、ペチペチ叩いたり

顔をつぶさなくてもいいんじゃないの?」

すみれの手を顔からどけて、2人を見ながら言った。

「とにかくっ、時間もないからご飯食べるわよ。それと、何があった

のかも聞かせてもらいましょうかね。」

そう言って瑛子は私のカバンからお弁当を取り出し、すみれが

私の手を引いて、3人で屋上に向かった。





「じゃ、ご飯を食べながら聞かせてもらいましょうか。」

「さーどうぞ。」

瑛子とすみれはお弁当を食べながら、私の顔を見ながら言った。

私は食欲が出なくて、お弁当のふただけ開けて箸をつけることが

できずにいた。


あーあ。この2人にも隠し事はできないわね。

そうなに私思ってることが顔に出やすいのかな?


そんなことを思いながら、2人には隠し事が出来ないと思い、

土曜日の出来事を話すことにした。





「ふーん、そんなことがあったんだぁ〜。」

「なるほどね〜。そりゃ真琴も落ち込むわけだわ。」

瑛子とすみれは、私の話をお弁当を食べながら聞いていて、

話終わった後、私の落ち込みの原因が理解できたようだった。

話を聞き終わり、お弁当を食べ終わった2人はお弁当箱を包み

終わった後、それを離れた所に置いたかと思うと、私の顔を見ながら、

瑛子が話し始めた。

「で?真琴はこのままあきらめるんだ。」

「だって、潤一郎先生にはもう『大切な人』がいるんだもん。」

「じゃ、今までの真琴の気持ちはどうするの?」

「そりゃ、1年も好きだった人のことだもん。すぐに忘れることは

できないけど、もう潤一郎先生のことはあきらめないと

いけないんだもん。」

私は瑛子と話しながら辛くなってきて、涙がにじんできて、

鼻の奥がツンっとしてきた。

そんな私の顔を見て、瑛子は溜め息をついたかと思うと、ぺちっと

私の頭を叩いてきた。



「何で頭叩くのよっ!」

「馬鹿な子には叩いて気付かせないといけないから叩いたのよ。」

「何を気付かせないといけないのよ。」

「考えてもみなさいよ。1年もその保父さんのことが真琴は好き

だったんでしょ?

でも真琴は、今まで好きだっただけでしょ?それに対して自分の

思いを伝える努力はしたの?してないでしょ?

そんな未消化のままの気持ちを自分に溜め込んでおくつもりなの?」

私は瑛子の言葉に何も言い返せないでいると、瑛子は話を続けた。

「確かに好きだという気持ちを押し付けることはしちゃいけないと

思うけど、気持ちを伝えるだけはやっても罰は当たらないと思う。

人の好きという気持ちは、相手に彼女がいたとしても、

すぐに変われるものじゃないんだから、伝えてもいいんじゃない?

そうすることで、真琴の中で踏ん切りもつくと思うわよ。」

瑛子は一気に話終わると、すみれの方を見た。

すると、すみれがうーんと唸ったかと思うと、話を始めた。

「確かにね。真琴は自分の気持ちに踏ん切りをつけるためにも、

保父さんに気持ちを言ってもいいんじゃないかな。

私達は真琴が好きだからやっぱり落ち込んだ顔ばっかり見たくは

ないしね。

真琴にはいつもの明るい真琴でいてほしいのよ。

まったく、真琴が落ち込んでるから、こんな柄にもないこと言う羽目に

なっちゃったじゃないのっ!早くいつもの真琴になりな。」

すみれは顔を真っ赤にしながら、横を向いた。

そんなすみれの様子がおかしくて、2人の気持ちが嬉しくて、笑って

しまった。



「何笑ってるのよっ!」

瑛子はそう言って私の頭をペチペチ叩いてくる。

その手をよけながら、

「ごめんごめん。そうね、今まで私の気持ちを伝えることをできないで

いたのよね私。このまま潤一郎先生への気持ちを溜めたままにしてたら、

先に進むなんてできないよね。

伝えても好きなままだとは思うけど、すっぱり振られることで、踏ん切り

をつけることはできるよね。

ありがとう、2人共優しいのね。

よーしっ!そうとなれば、今日潤一郎先生に告白するぞー!!」

私は両腕を空に向かって上げながら言った。


2人共ありがとうね。

思い切って告白するよっ!


「告白するって決めたら、お腹空いてきちゃった。

もう時間もないし、急いで食べなくちゃね。」

そう言ってお弁当のふたを開けて食べようとすると2人が、

「相談料として、から揚げもらうわね。」

「私卵焼き〜。」

そう言って、私のお弁当の中から取っていった。

「お礼がこのぐらいでいいなら安いもんよ。」

そういうと、2人はニヤッと笑いながら、残りのから揚げと卵焼きも

食べだした。

「ちょっとっ!私食べるのないじゃないの!!」

「あるじゃない、ご飯が。」

瑛子がふりかけがかかっているご飯を指差した。


おかずあげるっていったけど、ほとんど食べることないじゃないの!

2人を優しいなんて思った私が馬鹿だったわ。



残ったご飯を見ながら寂しく食べながらそんなことを思っていた。





Novel

Next

Back




検索サイトから来られた方は、 こちら からTOPへどうぞ。