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「まことちゃんおそい〜。」

「まことちゃーん、まってたよ〜。」


私を呼ぶこの声の持ち主は2人。

私の双子の甥っ子と姪っ子の夢と愛だ。

この双子は私の姉、真美の子供で、婿養子のお兄さんと姉は共働き

なので、双子のお迎えは私青柳 真琴の役目になっている。

私と姉は2人きりの姉妹で、両親は、父の転勤で離れて暮らして

いるため、私は折角希望の高校に入れたんだからと言われ、

姉の家に居候している。

姉は仕事大好きなので、帰りがいつも遅い。そのため、働かざるもの

食うべからずと思っている姉に、双子の迎えに行くように姉から

御達しが出ている。


まー、お世話になっている身なので逆らうこともできず、毎日

真面目に双子のお迎えにいっている。

でも、お迎えにいくのは嫌いじゃない。

双子も私に懐いてくれているからかわいいし、なにより、私はお迎え

に行くのが毎日楽しみで仕方がない。

なんていったってお迎えに行けば、潤一郎先生に会える。


潤一郎先生は、双子が通っている保育園で保父さんをしている人だ。

保父さんをしているだけあって、やわらかい空気を身にまとっているし、

とってもやさしい。


双子のお迎えに初めて来た私はすごく緊張していて、かなり挙動不審な

人になっていた。

そんな私に声を掛けてくる人がいた。

挙動不審だから怪しく思われたのかなぁと心配しながら、声がした方を

見ると、にっこり笑ったやさしい空気を身にまとった男の人が立っていた。

その人は優しい声で「どうしたんですか?」と、聞いてきた。

その声と表情と雰囲気にホッとした私は、肩の力が抜けて落ち着いて

話すことができた。

双子のお迎えに来たことを伝えると、その男の人は双子を連れて来て

くれて、

「優しいんですね、中学生なのに甥っ子姪っ子のお迎えに来るなんて。」

「高校生なんです・・・。」

「そうでしたか。失礼なこと言っちゃいましたね。」

「いえ、いいんです。よく間違えられるんで。」

私は笑いながら言った。


また間違えられちゃった。この童顔のせいだよね。


中学生に間違えられることはいつものことだからと思いながらも、ちょっと

落ち込みながら、2人の手を引いて外に出ると男の人は、

門までお見送りに出てきてくれた。

その日は、緊張している私に優しく声を掛けてくれた男の人が誰なのか

分からなかったが、次の日お迎えに行ったとき双子が、

「じゅんいちろ〜。」

と呼んでいて、あの男の人が潤一郎という名前の保父さんだと言うこと

がわかった。


毎日双子を迎えに行くと潤一郎先生がいて、いつも話をしている内に

やさしい空気を身にまとっている潤一郎先生が好きになっていた。



夢と愛を保育園にお迎えに行くのも1年以上続いている。

その間に、潤一郎先生に告白をしようと何度も思ったけど、やっぱり

勇気が出せずいまだに告白は出来ていない。


今日は掃除当番でお迎えがいつもより遅くなってしまい、私を見つけた

双子は飛びついてきた。

「ごめんね、遅くなっちゃった。」

「ほんとだよ。まことちゃんおそいんだもん。」

「はやくかえってまことちゃんのおやつたべたーい。」

「はいはい、じゃー何食べたい?遅くなったお詫びに2人が食べたい

物作っちゃうよ。」

「「ホットケーキ〜!!」」

双子は目をキラキラさせて言った。


かわい〜!!夢も愛もホントかわいい〜。


甥っ子姪っ子に親ばかな考えをしていると、

「今日はいつもより遅かったんですね。」

と、潤一郎先生が私達に近づきながら聞いてきた。


良かった〜、今日も潤一郎先生に会えたっ。


「そうなんですよ、今日掃除当番だったことをすっかり忘れてて

姉に言ってなかったんです。お迎え遅くなってすいません。」

「いいんですよ。夢ちゃんと愛ちゃんはいい子にしてましたよ。」

「「そうそう、いいこだもんね〜。」

そう言って、夢と愛が首を横に傾げながらお互いに向かって言っている。

「そうだね。いい子だったもんね。」

そう言いながら潤一郎先生は、2人の頭を撫でている。


私も撫でられたーいっ!2人が羨ましい。


そんなことを思っていると、双子が急かしたように言ってきた。

「「まことちゃんっ、かえってホットケーキたべるよっ。」」

そう言って2人で私の手を引っ張り出した。


まだ潤一郎先生と話したいのにぃ〜。


「じゃ、また明日。」

潤一郎先生はにっこり笑いながら手を振っている。

「はい、また明日。」

「じゃーな。」

「じゅんいちろう、またね〜。」


お見送りされちゃったから帰らないといけないのね。


寂しく思いながらもこのままいるわけにもいかないので、大人しく

双子の手を引きながら家まで帰ることにした。


明日も潤一郎先生に会えるしね。今日は遅くなったお詫びに、

2人においしいホットケーキを作ってあげることにしようかな。





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