城野の行動、真意がさっぱり分からない。
突然やってきたあの日から城野の行動は、何を意味するものなのか分からず私を混乱させる。
あれから城野は毎日店に来ては食事をしていく。
しかも、気がつけば常連さん達と話をするようになっていた。
確かに毎日来ていればお互いの顔を覚えるというものだろう。
それも、店に似つかわしくない人間がいるのだから常連さん達が気にしないわけがない。
でも、最初の頃は常連さん達も城野の雰囲気に近づきにくそうにしていて、話しかけることはなかったけれど、洸が店に顔を出した時に、
「あー!おじちゃんだー!!」
と言って親しげに近づいていく姿を見たことで、みんなの好奇心を刺激したようだった。
それから城野に声をかける常連さん達に、以外にも城野は嫌な顔を見せることなく相手をしていて、気がつけば一緒に飲み始め、洸の相手をしていた。
洸の相手といっても常連さん達のように猫かわいがりするわけではなく、膝の上に座らせたり、その状態で一緒にご飯を食べたり隣に座らせご飯を食べるというぐらいだったけれど、洸はすっかり城野に懐いてしまい、日曜日で店が休みの時は、
「今日、おじちゃん来ないの?」
と、聞いてくる。
「今日はお店お休みだからね。」
そう答える私は、複雑な気持ちになってしまうというのが正直なところだった。
初めての出会いの時に洸を冷たくあしらったかと思えば、今は普通に接している。
それに、私に対しても出会った頃のような人を馬鹿にしたような表情を見せることがなくなっていた。
もちろんだからと言ってムッとするようなことを言わなくなったかと言われればそんなことはなかったのだけれど。
それでも、以前よりは好感が持てるようにはなっていた。
でも、城野の目的はこの土地なのだから気を許すわけにはいかない。
今は城野が毎日来るというだけで何かされているわけではないけれど、それもいつまでの話かは分からないのだから。
きっと今日も城野はくるのだろう。
もう来ないでくれと言うのが正しいことなのかもしれないけれど、今までの私だったら言っていたはずの言葉を最近言うこともなくなってきている。
それはどういう意味なのかは、薄々気づいてはいる。
嫌な男だとしか思っていなかった城野の一面が、どことなくアキラさんと重なって見えるせいだ。
だから私は、言わなければいけない一言をいうことが出来ないのだと。
城野とアキラさんを重ねることは決していいことではない。
重々分かっているから、自分を責めてしまうけれど、私の口はその言葉を発することはなかった。












自分の中の気持ちを消化することが出来ずにボーッとすることが多くなっていた私。
そんな日々を過ごしていたある日の日曜日、久しぶりに天気になったので、洸を連れて出かけることにした。

お弁当も作ったことだし、どこに行こうかな。
いつもだったら公園に行くところだけど、折角だし違う所がいいわよね。
そうなると、お金もかからずに済むところはどこかな。

お弁当を持ち運びがしやすいようにバッグへ入れ、水筒の用意をしながら今日の行き先に頭を巡らしていると、玄関のチャイムが鳴り出した。
途中まで入れ出した水筒の中身を止めることが出来ず焦りながら淹れていると、チャイムがもう1度鳴りだす。

後少し、ちょっと待ってくださいねー。

そんなことを心の中で叫びながら何とか入れ終わった後、小走りに玄関へ向かい、
「は〜い。」
と返事をしながら笑顔でドアを開けるとそこには予想もしていなかった人物が立っていて、笑顔だった私の顔は、そのまま身体と一緒に固まってしまう。
「遅い。」
固まったままになっていた私に向けられた、待たされたことによる不機嫌さを交えた第一声。
「何の御用ですか。」
突然浴びせられた言葉に私も引きずられたように不機嫌な声を出してしまっていた。
「あっ!おじちゃんだ〜!!」
玄関を開けたまま対応をしていると、洸が大きな声で言いながらパタパタと近づいてくる。
洸がおじちゃんと呼ぶ人物、城野は、不機嫌な雰囲気を消しながら浅く腰を屈め、近づいてきた洸に話しかける。
「約束だったから来てやったぞ。」
「約束?」
「この間店で話をしただろ?」
「あっ、遊園地!
連れてってくれるの!!」
「ああ。」
「やったー!」
城野と洸は、目の前で話をしている2人の会話が私にはまったく何の事だか分からず黙って聞いていたけれど、洸の口から遊園地という言葉が出てきて驚いてしまった。
「遊園地?
どういうこと?」
驚きを口に出した私は城野を見ると、ゆっくりと立ち上がった城野は、
「約束は守らないといけないらしいからな。」
そう言って喜びのあまり城野に飛びつく洸を抱きとめていた。
「約束は守らないといけないと洸には言っているけれど、いつのまに勝手にそんな約束をしたの?
何が目的?」
「別に目的というたいそうなことはない。
気分転換というところだ。」
「気分転換?
あなたの気分転換に洸を巻き込まないでっ。」
城野が勝手に洸と約束をしていたということに憤りを感じた私は、口調を強くしながら言うが、城野はどこ吹く風といった様子で、私の言葉を流してしまう。
そのことに気づきながらも、今の状況はどう考えても不自然としか思えない私は、洸を自分の方に引き寄せようと手を伸ばす。

どうしてそんな約束をするのっ。
この土地を狙っているだけの人が。
洸を懐柔して私を説き伏せようと思っている?
そんな目的で店に来ていたなんてっ!

頭の中に浮かんでくる城野の行動の意味を予測している状態で洸に手を伸ばしていたが、
「ママ、顔怖いよ?
おじちゃんが遊園地連れて行ってくれるからママ早く行こうよ。
ね、おじちゃんっ。」
私の様子に洸は不思議そうな表情を見せた後、その表情を笑顔に変え城野を見上げる。
その表情は、遊園地に行けることが嬉しいと私に伝えていて、伸ばした手を止めるには十分な効果があった。
「坊主は早く行きたいそうだ。
お前も早く準備をすることだな。
そうしないと置いていくぞ。」
城野は手を止めてしまっている私に洸の言葉を聞いた後、フッと笑いながらそう言うと、洸を抱き上げ背を向ける。
「ちょっとっ!」
「ママお弁当作ったんだよ。
一緒に食べようね。」
「そうだな。
でも、このままだと坊主のママは置いていくことになりそうだ。
早く用意すれば大丈夫だが。」
「ママを置いていっちゃ駄目だよ!
ママ、早く早く!!」
城野の言葉に洸は焦って私に手招きをする。
そんな洸を抱いたままの城野は背を向けて歩いていて、止まる様子をみせない。
「ちょっと待ちなさいよ!」
呼びかける私の声に気づかないわけはないのに、止まろうとしない城野に私は歯ぎしりをしてしまいそうになるけれど、洸を人質にとられては不本意でも行かないわけにはいかない。
「用意をするから待って!」
そう叫ぶと、
「早くしろ。
車で待っている。」
前を向いたままの城野はそう言って門扉を開け止めている車に向かっているようだった。

もうっ、どうしてこんなことになってるのよ!
穏やかな日曜日のはずだったのにっ!!

用意をしていたお弁当を急いで取りに行きながら城野に呪いの言葉を投げかけたい気持ちになりつつ、2人が待っている車に用意が終わった後向かった。





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