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結局城野の持つチケットを使い中に入ってしまった私。
洸はといえば、久しぶりに来た遊園地に落ち着かないようで、車の中以上にはしゃいでいる
そんな洸の姿を見るのは久しぶりで、私の顔を緩ませる。
どんな経緯にしろ、洸のこんな姿が見られるのは母として嬉しいものだった。
「おじちゃん、僕これに乗る!」
そう言って洸が指さした乗り物はどう考えても洸が乗れるとは思えないジェットコースターだった。
城野もそう思ったようで、
「坊主にはまだ早いな。」
洸にそう呟く。
「えー!
僕乗りたいよー!!」
洸は城野の言葉に納得ができないようで、駄々をこねだす。
私としては、洸が望んでるし乗せてあげたくなるけれど、そういうわけにもいかないので、手に持っているパンフレットを広げ、洸でも乗れる乗り物を捜す。
すると、子供用のジェットコースターがあることに気づき、
「洸、向こうに洸が乗れるジェットコースターがあるみたい。
そこに行ってみようか。」
ニッコリと笑いながら洸にパンフレットを見せた。
すると、洸はパンフレットをじっと見つめ、大きな声で「うん」と返事をした。
私はホッとしながら、その場所に行くべく城野の顔を見つめた。
とりあえずは城野の反応も確認しなくてはいけないと思ったからだ。
一緒にこの場所にいるということは、一緒に行動をするということで、無視するわけにはいかないだろう。
「どこだ場所は。」
私が見ていることに気がついた城野は、パンフレットを見て場所を確認すると、洸の手を引き歩きだす。
城野の動きは私にとって突然のことだったので、思わず慌ててしまったけれど、洸の隣に立ち、一緒に歩き出した。
歩いて行くうちに目的の場所に到着し、子供用ということで動いているジェットコースターを見れば、ゆっくりとした動きに見える。
けれど、このくらいなら安心だと思って、
「洸、これに乗ろうか。」
と声をかけた。
「うん!
おじちゃん早く乗ろうよっ。」
「え?ママと乗らないの?」
「僕ジェットコースターおじちゃんと乗りたいんだ。
いいよね?」
洸の城野と乗りたいという言葉に軽いショックを受けていると、城野は、
「いいぞ。」
そう言って洸を連れて乗り場へと向かいだした。
私はと言えば、1人残されてしまい、階段を昇っている2人の後ろ姿を見つめていた。

やはり洸は、城野に父親を重ねているのね。
母親だけでは埋められないものがあるということかしら。
それは仕方がないことなのかもしれないけれど、何だか城野に負けてるような気になってしまって嫌かも。

そんな思いに駆られながら動き出したジェットコースターを眺めていると、嬉しそうな表情で城野の隣に座る洸がいた。
城野といえば、特に表情を変えることなく乗っている。
いつもと変わらない表情。
そんな表情を見ていると、アキラさんは表情豊かだったと思える。
いつも穏やかな表情だったけれど、笑い顔や悲しいテレビを見た時の泣きそうな表情、他にもいろいろな表情を見せていた。
城野は、人を馬鹿にした表情や無表情ばかりでアキラさんとは全く違う。
比べているつもりはないけれど、同じ顔をしているはずなのにそこまで人によって全く違った表情になるのだということを思えて仕方がない。
そのお陰か、城野をアキラさんと錯覚することは初めて出会った時以来ないけれど。
でも、アキラさんと同じ顔をした人が、あんな人だというのは何だか悲しくなってしまう。
私の勝手な思いだけど。




「ママ、すっごく面白かったよ!」
「良かったわね。
じゃ、次の乗り物は何がいい?」
ジェットコースターを降りてきた洸は、私に駆け寄ってきて息を荒くしたように興奮しているのが分かるほどの声で話しかけてきた。
「次はねぇ、これがいい!
これってクルクル回るのだよね?」
そして、パンフレットを広げながら問いかける私に、指さして答えた乗り物は、メリーゴーランドだった。
「じゃー、ここに行ってみようか。」
そう言ってしゃがむために曲げていた膝を伸ばし立ち上がった後、洸の手を取り歩きだすと、城野もしっかりと洸の手を握って歩きだしていた。





「おじちゃんも乗るの!」
メリーゴーランドの前に着くと、乙女チックな雰囲気を醸し出している乗物に城野は、洸の誘いを断っていたけれど、洸に手を引かれ渋々乗り込む。
私はといえば、折角だからと一緒に乗ることにした。
馬や馬車などいろんな乗り物があるけれど、洸と一緒に乗ることを考えれば無難に馬車がいいかと思い、洸を連れて馬車に乗り込んだ。
城野もゆっくりした足取りながら、私達の後に馬車に乗り込む。
私と洸と向い合せに乗り込んだ城野だったが、全く馬車の雰囲気に合っていなくて、それでも大人しく乗っている城野の姿が可愛らしく思えて、ぷっと笑いが込み上げてきてしまう。
そんな私の様子に気がついた城野は、不機嫌な様子を隠すことなく、
「笑うな。」
と、凄んで見せた。
けれど、今の状況にそんな城野の言動は私の笑いを強くしてしまうだけだった。
堪え切れなくなった私は、自然と大きな声を出し笑いだしてしまっていた。
城野は私が笑っていることに、不愉快そうな表情になり顔を横に向けていたけれど、笑い続けている私を見て何故か表情を緩ませだしていることに私は気づいていなかった。





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