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倖から電話をもらってからしばらくして、再び倖から連絡があった。

「奈々枝、直喜に話したらすぐ神崎君に連絡取ってくれて、奈々枝の勤務に

あわせてくれるって言ってたみたいなの。

奈々枝の勤務どうなってる?」

倖は電話のむこうで楽しそうに私に話しかけてくる。

でも、私は倖みたいに楽しそうに返事をすることができなかった。


倖〜、何でこういう時だけ行動が早いのよっ。


私はそう思いながら、気のない返事を倖にしていた。

「そうだなぁ〜、休みはあるんだけど予定がねぇ〜。」

「予定って何あるの?」

「う〜ん、何ってわけでもないんだけど・・・。」

「じゃーいいじゃない。新しい恋のためにその予定はまた今度ということで、

出会いを大切にしようよ。」

「大切にって言われてもねぇ〜。」

「何でそんなに乗り気じゃないかな。

いつもの奈々枝だったら盛り上がってるはずなのに。」

「そうなんだけどね。

何だか1度会ったことある人ともう一度っていうのも、と思って。」

「そうね〜。

でも、神崎君楽しみにしてるって言ってたみたいよ。

だから、奈々枝も神崎君のことが気になってるんだったら、もう1度会って

みるのもいいんじゃない?」


神崎さん、楽しみにしてる?

何で?

あんな出会いになってしまった私と会うのを楽しみにしてるなんて・・・。

どういうことだろ?


私は、倖が言った神崎さんの言葉が心に引っかかってしまった。

だって、楽しみにしてるだなんてどこをどうしたら楽しみなんて言葉が出て

くるのか私にはわからなかった。

でも、私の中で引っかかってしまった言葉は私を再び神崎さんに会わせよう

とするかのように、私の口を動かしてしまった。

「そう・・だね。」

「そうでしょっ!じゃ、奈々枝の休み教えて。」

「土曜と日曜。」

「それなら丁度いいじゃない。土曜日にしようよ。

直喜に言って神崎君に確認してもらうね。大丈夫とは思うけど。

時間と場所が決まったら連絡するね。

あー何か楽しくなってきたよ、じゃまたね。」

倖はそう言って機嫌よく電話を切ってしまった。

倖の電話を終わらせた私は、神崎さんと再び会うことになったのをどうした

らいいのか悩んでしまった。


何で口から言葉が勝手にでちゃってんだろ・・・。

まだきちんと会う決心なんかついてないのに。

神崎さんが楽しみにしてるって言葉聞いただけで口が勝手に動き出すとは

思ってもいなかったわよ。

やっぱり会いたいって気持ちが強いのかな・・・。

自分が思ってるより。


そんなことを思いつつ、倖に返事をしたにも関わらず決心がつかない私は、

ベッドにダイブして毛布に包まり悶々とした気持ちのままで、朝まで

過ごしてしまった。





倖の電話から数日が過ぎて、とうとう約束の日がきてしまった。

倖と待ち合わせをして約束のお店に行くことになってるんだけど、いまだに

私は、どうしようなんて悩んでいた。

待ち合わせ場所に行くの止めようかな、なんて思ってもみたけど、私の

足はしっかり待ち合わせ場所に向かっていた。



「奈々枝遅いぞ〜。」

待ち合わせ場所に倖はすでに来ていて、私に手を振りながら言った。

「ごめんね。」

「そんなに待ってないよ。さて、行きましょうか。」

倖はそう言って私の腕を取り歩き出した。

私も倖の動きにつられるように歩き出したけど、何だか自分の足が重く

なったように感じながら倖に引かれるまま歩き出した。





倖と歩いて数分、お店の前に着いてしまった。

「さて、中に入ろうか。もう直喜と神埼君着いてるみたいだし。」

「そ・・うなんだ。」

「では、中に入りますかっ。」

倖はそう言って私の手を引きながら笑顔でお店の中に入った。

中に入ると倖はお店の人に話しかけて、神崎さん達がいる場所まで案内

してもらった。

案内してもらった私達に気付いた佐藤さんが手を振り、倖に声をかけた

後、私にも話しかけてきた。

「久しぶりだね。いつも倖がお世話になってるみたいで。」

「いえいえ、2人が仲良くしてくれるんだったらどうってことないし。

私が協力したかいがあるってものだしね。」

「その節はお世話になりました。お世話になりっぱなしも悪いから今日は

倖に言われて克己連れてきたよ。

あの時、2人で飲んでたんだってね。」

佐藤さんに神崎さんの名前を言われて私の心臓はどくっと大きく脈打った

のを感じた。

そして、神崎さんが私の方を向いていることに気付くと、息苦しさまで

感じてしまった。



私達は椅子に座り、飲み物を注文した。

倖と私、神崎さんと佐藤さんといった感じで座り、私は神崎さんと

向かい合わせの位置に座ることになってしまった。

とてもじゃないけど顔を上げて神崎さんを見ることが出来なくて、

一生懸命メニューを見てしまう。

倖に一生懸命話しかけ、神崎さんの存在を感じながら無理やり自分の

中から消そうとしている私。

無駄な足掻きだということはわかってる。

でもそうしないと私の心臓はもっとおかしなことになり、息が止まって

しまう気がしたから・・・。

そんな私に倖と佐藤さんは、

「ほら、2人共久しぶりだからってしゃべらないのはないんじゃないの?」

「そうだな、克巳、武藤さんと会うの楽しみだって言ってたじゃないか。」

そう言って、私達を話させようと話しかけてくる。


でも、今の私にはちょっと・・・ね。


そう思いながらも、やっぱり何も話しかけないというわけにはいかないと

思い、思い切って話しかけることにした。

「久しぶりだね。」

何とか声を出して話しかけた私に神崎さんはそっけなく、

「そうだな。」

と、一言で返してきて、私達の会話は終わってしまった。


何かムカッときたわよ。


私は自分の態度を棚に上げて、神崎さんの対応に引っかかるものを

感じてしまった。


そりゃー私の今取っている態度もどうかと思うけど、神崎さんの

態度もどうなのよっ。


私は理不尽な苛立ちを感じながら、お酒を飲むペースを上げていた。





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