甘いワナ

私は騙されてたんだ。

教室での会話を聞いた後、身体を震わせふらつきながらも学校から出ることができた。
でも、歩いているんだけど、自分の意思で足を動かしてはいなかった。
自分がどこに向かっているのかも分からず、ただただ足を動かしてると言う状態だ。
そして気づくと公園のベンチに座っている。
日も落ちてきて寒くなっているはずなのに、寒さを感じることができない私は、頭の中を男の子達の会話と秋田君の顔だけがグルグル場面を変えて出てきていた。
その場面を思い出しながら分かることは、私は秋田君に騙されていたということ、そして、笑い者にしていたということ。

秋田君に私は何かした?
だからこんなことをしたの?
でも、話しかけられるまでは秋田君とは何も接点はなかったはず。
次第に秋田君を好きになっていく私を見ているのは楽しかった?
騙されてるとも知らずに浮かれていた私のことが。
今の私は怒っているんだろうか、悲しんでいるんだろうかそれさえも分からなくなってきている。
こんな時って怒りがすごくって怒鳴り込むぐらいのことが出来るんだと思ってた。
自分の性格を考えればそのぐらいのことが出来るはずだから。
でも実際は違った。
その場を離れるしかなかった、自分がいることを気づかれないように。
それが精一杯だった。
信じられないけど。
自分がこんなに弱い人間だとは思わなかったな。
それを気づかせたのは秋田君。
でも、こんな方法で気づかせてほしくなかったよ・・・。




「亜季ちゃんどうしたの、1人?」
どのくらいその場所にいたのか分からなくなっていた私に話しかける人がいた。
ゆっくり顔を上げるとそこには美佐と美佐の彼氏、椿さんだ。
でも、私は返事ができなかった。
そんな私の様子に、
「亜季ちゃん、ホントどうしたのいつもと違う。」
美佐は心配そうな顔をしながらそう言うと、私の手を握った。
私の手を握った美佐は驚いた顔で、
「すごく冷たいっ!氷みたいになってるよっ!!
いつからいるの、こんなに冷たくなるぐらいだから長い時間だよね。
早く温めないと風邪引いちゃうよ。」
そう言って私の手を自分の手でこすって温めようとしてくれている。
自分の手から感じる温もりが全身に広がっていくような気がした。
その温もりが私を包んでくれるのが分かると私の目からは涙が溢れ出す。
「んふぅ、ううう・・・」
私は自分の口からこぼれる嗚咽を止めることができなかった。
そんな私を美佐は優しく抱きしめてくれ、背中をポンポンと叩いてくれる。
私は美佐の胸に顔を埋め、泣き続けた。







それから私はしばらく美佐に抱きしめられ大泣きした後、美佐と椿さんに連れられて美佐の家に向かった。
美佐の部屋に着くと、部屋はすでに暖かく温められていて、身体が冷えていた私をゆっくりと暖めてくれた。
そして今私の手の中にあるのは、美佐が入れてくれたホットココア。
一口飲むと身体の中からもほわっと暖めてくれた。
「こんなに冷えるまで外にいるなんてお前は馬鹿か?」
そう私に言うのは、美佐から電話をもらって部屋を暖めてくれていたシスコン兄だ。

部屋を暖めてくれていたのはありがたいけど、馬鹿って言うことないじゃないの。

ムッとしながらも、いつもみたいにシスコン兄に言い返すだけの元気はなく、無言でホットココアを飲んでいた。
そんな私の様子に驚いたのか、
「いつもみたいに言い返さないのか。
やっぱ今のお前おかしいぞ、何あったんだ?」
と、心配そうに聞いてくる。
「亜季ちゃん、何あったの?
話したらスッキリすると思うよ、話してみない?」
美佐がシスコン兄と同じように心配そうな顔で言った。

ホントこの兄妹はそっくりだよ。
優しいところなんかね。
今の私にはありがたいよ。

そう思うと、また私の目からは涙がこみ上げようとしていた。
「こら、泣いてたら分かんないだろうが。」
「だって、出てくるんだもん。」
「お前が泣くくらいなんだからよっぽどのことなんだろ?」
「どうかな。まー騙されてたわけだから涙も出るんだろうけど。」
「騙された?」
美佐とシスコン兄は声をそろえて聞いてくる。
「そう。秋田君賭けしてたみたい、今日知ったんだけどね。
私を1ヶ月で落とせるかってクラスの子と。
そりゃそうよね、私に急に告白してくるなんて考えたらおかしなことだったのよ。
ホント馬鹿だよね私。」
私は、ははは、と泣き笑いになりながら言うと、
「笑いながら言うことじゃないだろうが。
辛い時に無理して笑うな。
話すだけ話して泣いとけ。その方がスッキリするから。」
シスコン兄はそう言って私の頭を大きな手で触り、髪をくしゃくしゃっとしながら頭を撫でた。
「そうだよ、翔兄の言うとおり思いっきり気持ちぶちまけなよ。
亜季ちゃんが悲しんでるの見るのは私も辛いし、ね。」
美佐はそう言って私がいつもするみたいに私の両頬をつまんでにっこり笑っている。
私は、兄妹から流れ込んでくる温もりに、
「だっ・・・て、好きになって、たん・・だよ?
・・・、それなのに、騙してたっ・・て。
そんな・・まぬけな話ないわよ。
でも、・・・・まだ好きなん・・・だよぉ。
私どう・・・したらいいのよぉ。
わかんない、わかんないよぉ。」
涙を溢れさせ、心の奥底に無意識にしまいこんでいた気持ちも溢れさせ、そして、その気持ちを、嗚咽を鳴らしながら吐き出した。
再び美佐の胸にしがみつきながら・・・。
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