甘いワナ

昼休みが終わってからの授業は、まったく私の耳に入ってこなかった。
入ってこなかったわけじゃないけど、頭の中には入ってこなくて、耳から耳へ流れていったというのが正しいのかもしれない。
自分の中で感じた秋田君への胸のトキメキを、好きだからのトキメキなのか、流されてのトキメキなのかはっきり分からずに授業中ずっと考えていた。

こんなに悩むのは私らしくないっ。
ホントどうしたいのかな私は。
今私の気持ちは、秋田君への気持ちがはっきりしないままなのにお付き合いを続けるべきなのかお断りするべきなのかということでゆれている。
でも、昨日までと違って、もう少し秋田君のことが知りたくなっている気持ちが強くなっている気がする。
そう思うのは、私の中で何かが変化してるからなのかな?
それなら、もう少しお付き合いをしてみてもいいのかもしれない。
秋田君も1ヶ月という猶予をくれたことだし、お付き合い続けてみようかな。

私は、勉強の時よりも頭をフル回転で動かし考えていた。
気がつけばいつの間にかホームルームも終わり、帰り支度を始めだしたクラスメイトのざわめきの中、1人取り残された状態になっていた。





「亜季さん、帰りましょうか。」
そう言って秋田君は今までそうしてきたかのような自然な様子で私の教室に来て、座ったままの状態だった私に話しかけてそう言った。
クラスのみんなは、突然の秋田君の登場に今まで以上にざわめきだしている。
そんな中、一人だけマイペースを保っている美佐が、
「亜季ちゃんお迎えだね。
じゃ、仲良く帰るんだよ、私もお兄ちゃんのお迎えに行かなくちゃ。
じゃ、また明日ね。」
と、可愛いい笑顔で私と秋田君に手を振ると、教室から出て行ってしまった。
「じゃ俺達も帰りましょうか。」
そう言って秋田君は私のカバンを持ち上げた。
「自分で持つよ。」
私は急いで立ち上がり、秋田君の手から自分のカバンを受け取った。

でも、クラスにお迎えってこんなに照れくさいものだったのね。
身体がむず痒くなるような気がするけど、嬉しいかな。

照れくささを見せまいと頑張る私と迎えに来てくれた斎君に、クラスメイトからのどよめきは一向に収まる気配はなかったが、気にしていても仕方ないと思い、聞こえない振りをしたまま教室を後にした。







教室を後にした私達は、駅に向かって歩き出した。
寒さは肌に突き刺さるような寒さではないけれど、マフラーの中に首をすくめてしまう程度には寒かった。
日も陰ってきているせいもあるんだろうけど。
そんな寒さの中並んで歩いている私達は、とても微妙な距離感で並んでいる。
寒いからと言って腕を組むほどの中ではないけれど、お付き合いという形を取っているから友達と歩くよりもお互いの肩が近くにあるように感じる。
この微妙な距離感の中、私は自分が決心したことを、といってもお試しのお付き合いを続けることをきちんと返事をするのはどのタイミングでしたらいいのか考えていた。
歩きながら突然言い出すのも張り切りすぎてるような気もするし、だからといって言わないまま1ヶ月過ごすのもどうだろ、と思ってしまう。

みんなお付き合いをする時って、どうしてるんだろ?
何事もタイミングって大事だと思うのよね。
そのタイミングを逃したら、変なずれができちゃうきがするし。
昨日読んだ本には方法とか書いてたかな・・・。

そんなことを考えながら歩いていると、
「どうしたんですかしゃべらないなんて。」
と秋田君は私を見ながら話しかけてきた。
自分の考えに夢中になっていた私は、無言のまま黙々と歩いてしまっていた。
「ううん、どうもしないよ。」
「大人しい亜季さんは何だか怖いな。」
「それはどういう意味かな秋田君。」
私はいきなり言われた怖いという言葉にピクッと反応し、秋田君の少し睨みながら言った。
すると秋田君は、私の睨みなんかまったく気にする様子もなく、
「亜季さん、秋田君じゃなくて斎って言ったでしょ?
お付き合いの始まりなんだから仲良く名前で呼びましょうよ。」
そう言ってにっこり笑っている。

私は秋田君を名前で呼ぶのはまだ躊躇いがある。
それを彼は感じているんだろうか?
でも、お試しのお付き合いなのに名前で呼ぶのはちょっと、ね。
よしっ、このタイミングで言ってみようかな。

「やっぱりまだ名前では呼べないよ。
きちんと付き合いだしたわけじゃないんだから。
でも、1ヶ月、秋田君と付き合ってみようかなって思ってる。
だから、1ヵ月後のお楽しみということで。」
私がそう言うと、秋田君は微妙な距離感を保っていた私達の距離を縮めて、
「名前で呼んでもらえないのは残念だけど、亜季さんがお試し期間を意識しだしてくれただけでもよしとしないといけないのかもしれないですね。
わかりました、名前で呼んでもらうのは1ヵ月後のお楽しみにしますよ。」
そう言って秋田君は私の手を優しく包み込んだ。
秋田君の突然の行動に驚きながらも、自分の手が彼の温かい手の中に包まれていることに違和感がなくて、自分にとって居心地がいい場所だと感じて、気づいたら私は手を握り返していた。
そんな自分の行動と思いに驚きながら。






それからの私達は、放課後は必ず一緒に帰り、土曜日か日曜日のどちらかの日には、デートをした。
そんな毎日の中、知らなかった彼のことを知ることが多かった。
たとえば、意外と甘いものが好きなこと、とっても寒がりでカイロが必需品だということ、そして、優しいけど時々意地悪なところ。
でも、そんな彼を知れば知るほど、強く彼に引かれていく私。
どんどん自分の胸の中にドキドキが増え、しかもそばにいるのが落ち着かない時がある。でも、そばにいたい。
そう思い出している自分の気持ちを1ヶ月かけてみつめたてきた。
そして、結論を出すことができた。

私、秋田君のことが好きになってる。
そばにいることが落ち着かないけどうれしい。
そんな自分は今までいなかった。
それを気づかせてくれたのは秋田君。
だから、返事をしようかな。

約束の1ヶ月目の日、私は自分の素直に感じた気持ちを受け止めて、秋田君に伝えることにした。
それは放課後、一緒に帰る時に言おうと思っている。

彼はどんな顔をして私の返事を聞くんだろう?
よろこんでくれるのかな?

私は、ホームルームが終わり、秋田君を迎えに行くことにした。
でも、私の心臓はバクバクと大きな音を鳴らしている。
今まで告白は何度もしてきたことあるのに、こんなに心臓を鳴らしたことはなかった。

しかも告白じゃないしっ!返事だしっ!!

と、自分に突っ込みを入れながら自分を落ち着かせようとしてみたりして、秋田君を迎えに行くべく、1年生の校舎に向かった。
人もまばらになっている1年生の校舎に着き、秋田君のクラスを目指して歩くと、近づくにつれて男の子の話が聞こえる。
その声は秋田君のクラスから聞こえてきたもので、ドアに近づくにつれて、声が大きくなる。
そしてその声の中には、秋田君の声も混じっていた。
私は秋田君がいることを確信し、声をかけるためにドアに手をかけようとすると、私のことを話題にしている話が聞こえてきた。

え?私のこと話してる?

そう思い、話しかけるのを中断し話を聞いていると、
「斎、そろそろ1ヶ月じゃないか?」
「そうそう、結構うまくいってるんだろ?
あーあ、賭けは斎の勝ちかぁ〜。」

賭け?

「斎の一人勝ちか?」
「いやまだ分からねーぞ、返事がまだみたいだからな。」
「そうだよな、斎ちゃんと結果教えろよ。」

結果?

知らない男の子達が笑いながら話をしている中で秋田君は、フッと笑いながらその子達を見ている。

その笑いは肯定?

男の子達はまだ笑い続けている。
その中に秋田君はいる。




私はその場にいることが耐えれなかった。
だからその場を私がいることに気づかれることなく離れるしかなかった。
震える身体を無理やり落ち着かせながら・・・。
Copyright (c) 2007 machi All rights reserved.

面白かったよとちょっとでも思ってくれたら押してもらえるとうれしいです♪
よろしかったら感想も一緒に書いてもらえるとますますうれしいです♪



Novel

Next

Back




検索サイトから来られた方は、 こちら からTOPへどうぞ。