甘いワナ

秋田君と手を繋いだまま登校した私は、教室に入るなりクラスメイトや違うクラスの女の子から質問攻めにあっていた。
それもそのはず、1年生のアイドルは2年生のお姉さま方にも大人気。
その彼がいきなり私と手を繋いで登校してきたんだからみんな興味津々にもなるわよね。
だからといって教室に着いてから昼休みになるまで時間があれば秋田君のことを聞かれるとさすがにうんざりしてくる。
しかも、私が告白されたとみんなに言っても誰も信用しないっ!

そりゃ今まで私はいろんな人に告白してきたけど、年下の男の子に告白したことなんてないわよっ!!

半日寝不足の中説明していた私は、クラスメイトの輪にいるのにうんざりして、昼休みだけは穏やかに過ごしたいと思い、美佐を連れて屋上に脱出することにした。







屋上に着くと今日は寒いせいか誰もいなかった。
私と美佐は、風が当たらない場所を探し、お弁当を食べ始めた。
お弁当を食べだすと、空腹を満たしていくせいかイライラしていた気持ちも次第に落ち着いてくる。
そんな中美佐が可愛い顔で笑いながら、
「亜季ちゃん人気者だねぇ。」
と、おもいっきり現状とずれたことを言うので、口に近づけていた卵焼きが箸から滑り落ち、地面に落ちてしまった。

きゃーっ、卵焼きっ!!
私の大好きな卵焼きが〜。

「美佐、何とんちんかんなこと言ってんのよ。」
「え?とんちんかん?
だって、今日は朝からみんな亜季ちゃんの机の周りにいて近づけなかったもん。
だから、亜季ちゃんは人気者だなって思って。」
「人気者じゃないからっ。

みんなは今日私が秋田君と登校してきたことを聞きに来ているだけで、決して私が人気者だからじゃないのっ!」
「そうだったんだ。
でも、亜季ちゃん秋田君と一緒に登校してきたんだね知らなかっよ。」
美佐はそう言いながらニコニコ笑っている。

美佐がおとぼけちゃんなのは知ってたけどここまでとは・・・。
確かに美佐らしいと言えばそうなのかもしれないけど。

私は美佐の言葉に思わず大きなため息をついてしまった。
そんな私の様子に気づくこともなく、美佐は食べ終わったお弁当箱をなおしながら、気になっていたんだろうことを聞いてきた。
「一緒に登校してきたということは、秋田君と付き合うことにしたんだね。」
「だって、家の前で待たれて、有無を言わさず学校に向かわれたんだもん。
付き合うとは返事してないのに。」
「返事してないの?」
「やー、なんかタイミングがね。
でも、秋田君はお付き合いする気満々みたいなんだよね。
どうしたもんかと考え中。
それなのに、教室に着いてからはみんなからの質問攻め、考える時間もないってもんよ。」
「考える時間は昨日だったんじゃないの?
だから今日はすごく眠そうにしてるんだと思ってたのに。」
「あら?美佐にしてはいい観察力ね。
美佐に寝不足なのが分かるんだったら今日の私はよっぽど眠そうにしていたのね。」
「なんかばかにされてる気がする。」
美佐はそう言ってほっぺたを大きく膨らませる。
そんな美佐の様子が可愛くて私は思わず笑い出してしまった。

ふふ、馬鹿な子ほど可愛いっていうけど、本当美佐って可愛いわね。
子って言っても私の子供じゃないけど、姉心って所よね。
あー、膨らんだほっぺをつぶしたいっ!
つぶしちゃおっと。

私は、美佐の膨らんだままになっているほっぺを人差し指でつんつんと突くと、
「亜季ちゃん突かないで。」
と、美佐の抵抗にあってしまった。
膨らみをなくしたほっぺをいつまでも突くのもどうかということで、指を美佐のほっぺから離した。
「もー、急にほっぺた突かれるとビックリするから。」
「ゴメンゴメン。
あんまり見事に膨らんでたもんだから突きたくなったのよね。
でも、どうしようかな秋田君のこと。」
「何が?」
「だって、一緒に登校してきただけでこんなに騒がれるとはさすがに予想してなかったのよね。
それがこの騒ぎでしょ?
毎日みんなに囲まれるのかと思うとちょっと、ね。
お付き合い考えちゃうわ。」
私は午前中のことを思い出し、うんざりした気持ちになりながら美佐に話しをしていると、
「寒いのに屋上でお弁当タイムですか?」
と、美佐ではない誰かが話しかけてくる。
声で気づいてはいたんだけど、今彼の話をしている所だったから身体が飛び跳ねるんじゃないかと思うくらい驚いてしまった。
それでも、そんな素振りを見せるまいと平静を装ってにっこり笑いながら、
「私屋上が好きなの。
ところで秋田君こそなんでこんな寒い屋上にきたの?」
と、秋田君に問いかけた。
「何でって。彼女に会いに来ただけですよ?
授業中は会えないんだから、昼休みはゆっくり会いたいじゃないですか。
あ、松田さんですね初めまして。」
「はじめまして。」
美佐はいつものようににっこり笑いながら返事をしていたけど、私は秋田君の魅力的な笑顔に心臓を激しく動かし、動揺していたりする。
「あ、会いたいってあなた。」
「あなたじゃないですよ、斎です亜季さん。」
秋田君は自分の名前を呼ぶように私に笑顔でプレッシャーを与えてくる。

そんな笑顔でプレッシャー与えないでぇ〜。
照れくさくて呼べませんからっ!
いやいや、それよりもお付き合い断るのよ私はっ!!

「あのね秋田君、やっぱりお付き合いは出来ないかなぁって・・・。」
私は口ごもりながらも何とか自分の考えを伝えることができた。
「何でですか?」
「周りの人が色々言ってくるくらい私と秋田君じゃつり合ってないと思
うの。
秋田君だったらもっと可愛い子と付き合うことが出来ると思うのよ、何も年上の私と付き合わなくっても。」
「俺は亜季さんと付き合いたいんです。
他の誰と付き合いたいわけじゃないんですよ?
亜季さんは俺のことが嫌いですか?」
秋田君は真剣な顔で聞いてくる。
しかも私に顔を近づけながら。
「そんなに顔を近づけないで照れくさいからっ!」
私は後ろに後ずさりながら大きな声で叫んだ。
そんな私の様子をどこか楽しげな顔をして見ながら、
「亜季さん俺の言葉の返事がまだですよ。答えてくれるまでは離れられませんね。
早く答えてくれないとどんどん近づきますよ?」
「嫌いじゃないっ!」
私は秋田君の言葉に、慌てて答えた。
すると秋田君はスッと私の近くにあった顔を離し、私の返事に満足したような顔で、
「安心しました。じゃ、放課後迎えに来ますから一緒に帰りましょうね。
じゃ、放課後。
松田さんもお邪魔しました。」
秋田君は、ご丁寧に美佐にも挨拶して、爽やかに私達の前から去っていった。







「何だかおかしい、亜季ちゃんが押されっぱなしな姿初めて見た気がする。」
「おかしくないからっ!」
「でも、亜季ちゃん真っ赤になったりして秋田君の前では女の子って感じだよ?
私から見たらお似合いの2人だけどなぁ。
あっ、もう教室に戻らないと授業始まっちゃうよっ!」
美佐はそう言って私を急かしながら屋上を2人で後にした。







授業中私は先生の話を秋田君のことを考えていてまともに聞くことは出来なかった。

確かに嫌いじゃないのよね。
何だか胸もトキめくし。
だからと言って好きなのかと言われたらそれは分かんないんだけど。
こんなはっきりしない気持ちのまま付き合っていいもんなのかな?
昨日寝不足になりながら読んでいた本は、結局参考になってないしなぁ。
しかも、秋田君には押されっぱなしだし私としたことがっ。

私はこの調子で頭の中を秋田君のことで一杯にしたまま放課後を迎えることになる。
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