続・夜桜の下で

私と先輩の関係は?

その言葉の答えは、『友達以上恋人未満』という言葉が合う気がする。
去年の病棟での花見で一緒に幹事をした先輩から思いもよらない告白を受けた。
憧れていた先輩からの告白に、私の胸がときめくのは仕方がないことだと思う。
でも、ときめいたからといって私は先輩のことが好きなのか自分に問いかけたけれど、はっきりと答えを出すことが出来なかった。
そんな私に先輩は、
『俺といることでドキドキしてくれるってことはこの先俺を好きになる可能性が高いってことだよな。
じゃ俺は、あきらめないでこれからは遠慮せず口説くことにするよ。』
そう言って私の手を握り歩き出した後から、自分の言葉を有言実行している。
言っていた夜桜も2人で見に行き、デートらしきものもこの1年で何度もしていたりする。
不規則勤務の私達だから、お互いの休みが合うことは少なかったけれど、気がつけばそんな休みの日は先輩と会っている私。
友達に言わせれば付き合っていると言えるらしい。
でも、私は先輩にきちんと返事をしていない。
付き合います、なんて。
だから付き合っているとは言えないと友達に言うと、いつも呆れた顔をしながら、
『あんたはわざわざ好きでもない人に会うために貴重な休みを使ってるっていうの?
仕事で疲れている時もあるはずなのに、会うっていうのは好きじゃないと出来ないわよ。
いい加減観念したらいいのに。
何を怖がることがあるっていうのよ、両想いのくせに。」
いつも言われる言葉。
友達が言うように、私は先輩のことが好きなんだと思う。
だけど、いまさら、好きです付き合ってください、というのも何だか気が引けてしょうがない。
というよりも、今の友達以上恋人未満の関係が居心地がいい。
正式に付き合うことで、今の関係が壊れてしまうんじゃないかという思いが私を踏みとどまらせてしまっている。
このままの関係で、先輩と一緒にいるのがいいと思っている私。
先輩もそう思っているんじゃないかな?
なんて自分の都合がいいように解釈いている看護師になって3度目の花見を迎えた私の現状。












「どうして俺が今年も幹事なんでしょうかね。」
「いいじゃない、男手あった方が助かるんだし。」
「それだけのためですか。」
「いいじゃないの、みんなを楽しませるお手伝いだと思えばやりがいもあるというものよ。」
「やりがいねぇ、ただ花見の日に俺が休みだから都合がいいからでしょ。
物は言いようとはよく言ったもんです。」
「分かってんじゃない。
私も幹事したかったんだけど、その日は日勤だからねぇ。
残念だけど、槇枝(まきえだ)君にお任せするわ。」
「主任、顔が残念がってませんよ。」
先輩は諦めたような表情をみせつつ、嫌がってはいないみたいで、人の良さがうかがえる。
主任も休みだったら幹事をやると張り切りそうだけれど、仕事だからと先輩に頼んだんだということは分かっている。
先輩は主任との会話の後、仕事を再開し始めたけれど、
「槇枝先輩、私もその日休みなんで一緒に幹事になりました。
よろしくお願いします。」
そう言って声をかけるのは、去年移動をしてきた人で、移動をしてきた日から先輩に恋心を抱いていたと告白をしたパワフルな人だ。
「ああ、よろしく。」
先輩は短い返事をした後、仕事に戻って行った。
そんな2人の姿を見ながら、先輩が幹事をするんだったら私もしたかったな、と思ってしまったけれど、その日の私の勤務は日勤だから無理だった。

きっと去年の私との幹事の時のように先輩は優しく彼女に接するんだろうな。

そう思うと、私の胸の中にもやもやとする空気が立ち込めだしているけれど、その正体が嫉妬からだということに気づかない振りをしながら、私も仕事を再開させた。







「で、いいわけ?あの状態を許しても。」
定時では予想通り仕事が終わらなかった私は、開始時間に少し遅れながらも花見へとやってきて、幹事の先輩は忙しそうにしているのが視界に入りながらも、少し離れた場所に友達と腰を下ろした。
すると、先輩の隣には嬉しそうにぴったりとついている幹事の子を見て、一緒に来ていた同期の愛ちゃんが私に耳打ちしてきた。
「言いも悪いも、2人は幹事なわけだし。」
「口を尖らせながら言っているところを見れば、そんなこと思ってないんじゃないの?」
愛ちゃんは的確に私の心情を読んでいる。
そう、私は口ではそう言いながらも胸のなかにもやもやした物を再び増殖させていた。

もう、先輩に近づきすぎっ!
先輩も、もう少し離れたらいいのに!!

「こらこら、そんな嫉妬丸出しな顔は美澄(みすみ)には似合わないわよ。
まったく、それだけ自分の気持ちがはっきりしてるんだったら早く素直になるのが身体には1番いいわよ。
溜めなくてもいいストレスを溜めるのが1番身体には良くないし。
どうして素直に好きだって言わないのかしらねこの子は。」
「だって、このままでもいいかなって思うし。
好きだって言って、付き合いだして先輩が離れて行くようなことがあったら私耐えられないもの。
それだったら今の関係を続ける方がいつまでも先輩のそばにいられるもの。」
私は、少しだけ飲みだしていたアルコールのせいか、今まで思っていながらも口にすることがなかった本心をポツリと漏らす。
そんな私の言葉に愛ちゃんは、黙って聞いてくれていたけれど、話終わった私の頭をペシッと叩いた。
「何なのよその弱気はっ。
そんな分かりもしない先のことばかり考えてたら誰も恋なんか出来ないわよ。
出会いがあれば別れもある、それは事実だけど、絶対ではないの。
そうならないようお互いの気持ちをきちんと確かめあうのが大事なんじゃないの?
今の美澄の態度は、美澄を好きだと言ってる先輩に対して失礼でしかないと私は思う。
自分が好きな人が同じ想いでいてくれるというのは奇跡的なことなのよ?
その奇跡を自分から手放して努力もしないなんて私からみればあり得ない。
美澄はいいわけ?自分にくれていた優しさを他の人にすんなり渡しても。」
愛ちゃんは真剣な表情で、でも、私に言い聞かせるように恋に臆病になっている私に話してくれる。
その言葉は、臆病になっている私の心を揺さぶるだけの効果があった。

愛ちゃんが言っていることはもっともだ。
私は何の努力もしていないし、ただ先輩の優しさに甘えていただけ。
そんなんじゃ何も先には進まず、気がつけば先輩が離れてしまう。
それに、もう私は先輩がくれる優しさや温もりを手放すことなんて出来ないんだから、いつまでも逃げてちゃ駄目なんだ。

「愛ちゃん、ありがとう。
私、もう逃げないできちんと先輩に自分の気持ちを言うよ。
これ以上先輩を待たせない。」
私はニッコリ笑いかけながら自分の決意とお礼を愛ちゃんに告げた。
「いい顔になった、美澄らしい可愛い顔。
本当、世話が焼ける妹みたいな存在ね美澄は。」
「妹みたいって、そりゃ少し歳は愛ちゃんが上だけど同期なのに。」
「同期でも可愛い妹みたいな存在なんだから仕方ないわ。
ほら、そうと決まれば前祝いよ。」
愛ちゃんは私のプラスチックのコップにビールを注ぎだした。
そして、そのビールを口にしながら早く先輩に自分の気持ちを伝えるべくタイミングを探し出す私だった。











しばらくビールを飲みながら先輩の行動を見ていると、席をはずそうとしていることに気づいた私は、愛ちゃんに行ってくると言って笑顔で見送られながら先輩の後を追った。
先輩は、去年私が腰をかけたベンチに座り、同じように桜を見上げている。
「先輩、夜桜きれいですよね。」
そう声をかけながら近づく私に、先輩は、
「去年と逆だな。」
と言って笑いかける。
私は先輩の隣に腰掛けながら、ビールのせいではない動悸を感じて、息が詰まってくる。
でも、今自分の気持ちを言わないといけないという思いが私の口を開かせる。
「私ずっと先輩と夜桜を見たいと思っています。
来年もその先もずっと。」
私は俯きながらやっとの思いで口にした言葉だったけれど、先輩からは返事がなかなか返ってこない。
そのことが気になって顔をゆっくりと上げ先輩の顔を見ると、優しい表情で私を見つめていて、先輩の瞳は私を捕らえ、先輩の瞳に引き寄せられてしまう。
「それは、去年俺が言ったことと同じ気持ちだと受け取ってもいいのかな?」
「はい。」
「でも、待ち過ぎて今の言葉だけじゃ満足できそうにないんだ。
だから、言ってほしい。
はっきりとした言葉で。」
「好きです。
私、先輩のことが大好きです。
ずっと待たせてごめんなさい。
こんな私でもまだ好きでいてくれますか?」
先輩を見つめたままそう言った私は、気がつけば今まで見ていた先輩の瞳ではなく、逞しい胸に頬を寄せていた。
それは、先輩に抱きしめられてたということを示していた。
「ずっと好きだ。
去年と変わらず、それ以上に君が好きだよ。」
「私も、です。」
ゆっくりと私の身体を起こした先輩の瞳と目が合うと、自然な動作で私は目を閉じた。
そして、手を握る時以上に温かい温もりを唇に感じながら、胸にあったもやもやとした物は消え去り、変わりに胸を温かいものが包む。
離れていく唇の温もりをもう少し感じていたいと思うのは、素直になったことで得られた喜びだからだろうか。
「本当はこれから2人でゆっくりしたいところだけど、許してもらえそうにないな。」
「え?」
先輩の言葉の意味が分からないでいると、先輩の視線が私ではない所を見ている。
その視線の先を追うと、ニヤニヤ笑いながら花見をしていたはずの同僚と先生が顔を出していた。




その後、私達はみんなに冷やかされながらも温かく祝われ、2次会に連れて行かれてしまい、ゆっくりと2人で過ごすことは出来なかった。
けれど、私の胸にある温かい物は、いつまでも変わらない状態で今も住んでいる。
そして、私の隣には、愛しい先輩がいつもいてくれて、その温もりを持続させてくれている。
私も先輩の温もりをいつまでも持続させることが出来る人でありたいと思う。



+おわり♪+




この作品は、去年キリバンリクエストで書いた小説の続編になっています。
今回、恋愛遊牧民SS様で、春企画がありまして、その企画を見た時に今回の話が思いついたわけです。
この2人の続きはいつか書きたいと思っていたんですが、何かきっかけがないとなかなか書ききれない私(汗)
とりあえずはやっと両想いなったということでww
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