いろんなところにキス7題


7.まぶたにキス


延期をしていた結婚式を迎えたのは、肌寒い2月。
室内で行うから寒さは気にはならない。
婚姻届は出しているので、私と裕也はすでに夫婦であるけれど、やはり女性としては結婚式を行うことで実感がわいてくるみたいで、白無垢を身に纏い披露宴前の式を行う時間は涙を堪えることが出来なかった。
そんな私のそばに裕也はいて、ぎゅっと手を握り微笑みをくれる。
裕也の表情に自然と笑顔もこぼれながら涙が流れだす。
「意外と泣き虫だったんだな、咲。」
「うるさい。」
「花嫁さんがいう言葉じゃないだろ、それ。」
ククッと笑いながらも私の手を握る手は優しく、控え室に戻る時には、
「後でな。」
そう言って私の頬を優しく撫でてくれた。





メイク直しも終了し、もう少しで披露宴の時間だという時にドアがノックされ、現われたのは千佳ちゃんだった。
「咲さん、きれい。」
「ありがとう。」
千佳ちゃんとの関係は、最初はぎこちなくなってしまっていたけれど、次第に以前のように戻り、私にとっては変わらず可愛い妹のような後輩だ。
そうは言っても、裕也と迎える結婚式に千佳ちゃんを呼ぶのは無神経な気がして躊躇っているところに、
「私絶対に行くから呼んでくださいね!」
そう言って千佳ちゃんの方から言ってくれたので、驚きながらも嬉しくもあった。
「やっぱりいいですよねぇ、花嫁さん。
結婚したくなっちゃいますよ。
でもなぁ、あいつはまだそんな甲斐性ないしなぁ。」
「え、千佳ちゃん彼氏いたの?」
突然の告白に驚いてしまった私に千佳ちゃんは普通に答えた。
「言ってませんでしたっけ?」
「聞いてなかった。」
「言ってたと思ってたんだけどなぁ。
幼馴染なんです、相手。
恋愛対象になんて絶対にならないと思ってた奴で、それでも、咲さん達のお陰でそうじゃないんだって気づかせてもらったんです。」
「え?」
「近くにいすぎると気付かないものなんですね。
大切な人が誰なのか。
咲さん達もきっとそんな状態になってたのかなぁって思えます。
でも、今はお互い気づいて幸せですよね。」
千佳ちゃんはそう言って私に抱きついてきた。
「咲さんは私のあこがれの人です。
絶対幸せになってくださいね。」
「ありがとう、千佳ちゃん。」
今日の私の涙線は緩くなっているようで、涙が浮かんできてしまった。










披露宴では、招待した人達も楽しんでくれたようで、2時間という時間が短く感じられるくらいの楽しい時間だった。
私達の結婚を祝ってくれる人がいるということがこんなにも幸せなことなのだろう。
そんな幸せな時間も終わりを迎え、友人が企画してくれている2次会に行くことになっている私達は、親戚への挨拶を終わらせタクシー乗り場へと向かった。
「あー、酔った。」
「結構飲まされてたもんね、大丈夫?」
「大丈夫だよ、こんなところで潰れてる場合じゃないからな今日は。」
「何で?」
「当然だろ?初夜を迎えないといけないんだから体力は残しておかないと。」
「なっ、何言ってんのよ!」
「照れない、照れない。」
からかう裕也の腕を叩きながら顔が熱くなってくる。
「咲さん。」
じゃれあいながら歩いていた私達は、玄関を出たところで話かけられ、足を止める。
「景山君。」
「今日はおめでとうございます。」
招待をしていた景山君は、裕也のところに来てビールを注いだり、私のも話しかけたりと姿をみなかったわけじゃない。
でも、2次会に行っているものと思っていたから、突然の登場に驚いてしまう。
「驚いてます?」
「そりゃ、いないと思ってた人がいるんだから驚いたわ。」
「実は、言いたいことがあったんですよね。」
「え?」
真剣な表情を見せ、ゆっくりと私達に近づいてきながら私の前で立ち止まる。
「やっぱり踏ん切りをつけた方がいいかなぁって思ったんですよ。
俺が咲さんを好きだったという事実は変えられないし。
気持ちが残ってるのもね。」
「景山君・・・。」
切ない表情を見せる景山君に、私が傷つけたことを改めて思い知らされる。
私が裕也を忘れることができず、傷つけてしまった優しい人。
「景山。」
裕也は声をかけながら私の前に立とうとする。
そんな裕也を押しとどめようとすると、
「そんな顔しないで、別に文句を言いに来たわけじゃないから。」
切なく見せていた表情が変化し、優しい目をして私を見つめる。
「咲さん、いや、咲のことを忘れることは出来ないと思ってた。
どうして俺では駄目なのか、そんな事ばかり考えていたよ。
でも、そんな俺を包み込んでくれる人の存在に気がついた時、本当は咲への想いは昇華されていたんだと気づいたんだ。
彼女が俺を変えてくれたんだ。
そのことに気がついた時、俺は咲を変えることもできず、自分の気持ちばかり押し付けていたということにも気づいて。
今日、先輩と咲のことを見て、改めて終わっていた想いだということを実感できたよ。
それでも、本当に好きだった、咲のこと。
どんなことをしても俺のものにしたいと思うほどに。
でも、その想いも今日でおしまい。
俺にも大切にしたい人が出来て、その人と幸せになるよ。
だから、咲も幸せになってほしい。
先輩、必ず幸せにしてくださいよ。」
「当たり前だ。
俺以外の誰が咲を幸せに出来るっていうんだ?」
「その自信はどこからくるんですかね、うらやましいですよ。」
景山君がそう言うと、裕也と笑いあう。
私も笑いたかったけれど、涙が流れ出来なかった。

私が悲しませ、傷つけてしまった人。
それなのに、幸せになってくれと言う。
本当に私は幸せ者だ。
こんなにたくさんの人から祝われているのだから。

嬉し涙が流れだす私に、景山君と笑いあっていた裕也は肩を抱きしめる。
「必ず咲を幸せにするから。」
「任せましたからね。」
景山君はそう言って後ろを振り向き、
「沙希。」
私の名前を呼び掛けられたのかと思ったけれど、違っていた。
建物の影に隠れていたらしい女性は、どうしているのが分かったのかと驚き顔をしている。
「おいで。」
呼びかけられこちらに来た女性の肩を抱きながら紹介をする景山君の表情は、先ほど結婚式を終えた私達よりも幸せそうだ。
「この人が俺の大切な人です。」
「うそ・・・。」
景山君の紹介に、信じられないという様な表情の女性。
「おいおい、それはないだろ。
でも、しょうがないか、今まではっきり言ったことなかったんだから。
俺の今大事な人は沙希、君だよ。
今まで待たせてごめんね。」
景山君の言葉に涙を流す女性、そんな彼女を景山君は抱きしめる。
その姿はとても優しく、美しい姿だった。
「さすがにこんな場所でラブシーンを続けるのはまずいんじゃないか?」
「俺はいいですよ?」
「きゃっ!」
裕也の言葉に女性は景山君から離れ、顔を真っ赤にさせている。
「そんなに急いで離れなくてもいいのに。」
ニッと笑う景山君に、裕也と仲良くなれた理由が分かった気がした。
それも、今まで気づくことがなかった一面であり、自然な景山君を出させることが出来る彼女ができたことに、自分のことのようにうれしい。
私がそんなことを思うのはお門違いかもしれないけれど、それは、今の私の正直な気持ちだった。








2次会の会場に4人で向い、待っていましたと歓迎させて入った私と裕也は、数時間後ホテルではなく、自分達の家へと戻っていた。
裕也はホテルに予約をしようと言っていたけれど、私が家に帰る方がいいと言ったのだ。
2人での生活を始めているこの部屋に、結婚式を終えて戻ってきたいと思ったから。
「本当に良かったのか?ホテルじゃなくて。」
「うん、家の方が落ち着くし。
裕也、嫌だった?」
「嫌じゃないよ。
咲が喜んでくれる方がいいしね。」
「良かった。」
「さて、奥様?
初夜を迎えることにしますか。」
「なっ、何でそんなことを普通に言うのよ!」
「そんなことって、当たり前のことだし、大切なことだろ?
みんなに祝ってもらった後は、お互いの気持ちを確認しあうのは当然。
ほら、咲、おいで。」
すでにお風呂を済ませている私達はパジャマ姿。
そんな私にベッドの上から手を差し出す裕也に逆らうことは出来るはずがなく、裕也の手をとる。
ぎゅっと抱きしめられる私は、裕也の上に促されるまま座る。
「なー、咲?
俺はずっと咲を悲しませてきたよな。」
「どうしたの?」
「いいから聞いてくれよ。
いい加減で呆れられても仕方ない俺を咲はずっと好きでいてくれた。
自分の気持ちに気付きもせず、ただ咲を傷つけていた俺を。
咲、愛してる。
ずっと、ずっと一緒にいような。
そして、幸せになろう。」
「裕也・・・。
やだ、泣かさないでよ。」
最後の最後で裕也が私の涙線を止められなくする。
あふれる涙、ぎゅっと裕也の身体を抱きしめていた私をゆっくりと離し、まぶたにキスを落とす。
「返事はくれないのか?」
「・・・・幸せになろうね。」
まぶたにキスをする裕也の唇は、私の唇にもキスをくれる。
ゆっくりと侵入を始める裕也の指が、濡れた音を出しながら私を感じさせだす。
ボタンを外され露わになった胸の突起を含み舌で転がす裕也の口は、強く吸いついてもきて私の声は吐息へと変化をしてしまう。
「はあ・・、んっ!」
「咲、感じて・・・、もっと、もっと。」
「やぁぁ・・・っ」
倒される身体を裕也の身体が覆いかぶさる。
触れ合う肌の温もりが、愛しさを込み上げさせ、裕也の首に腕をからめ自分から近づく。
身体の奥深くで感じる裕也の熱を受けとめながら溢れ出そうとする想いを口から吐き出す。
「す、・・・きっ、あいして・・・るっ」
「愛してるよ、咲。」
そんな私の言葉に慈しみを瞳に込めて、言ってくれる裕也を愛おしくてたまらない。
裕也と共に歩むこれからの道を幸せな道なのだと思える今が嬉しくて愛おしい。
そう思えることこそが幸せなのだと思いながら、裕也と夜を求め合うまま過ごしていく。

+おわり♪+


最後は裕也と咲の2人です。
この作品はいろいろと思い出があります。
今まで書いた中で連載中皆様からのコメントを1番いただき、賛否両論な意見も多かった作品。
裕也派、景山君派に分かれての応援がエネルギーとなり完結させることができたことをありがたいことだなぁと思っています。
「切なくて、恋しくて」投票ありがとうございました。


2周年企画最後の作品となりました。
本当に皆様に支えられてサイト運営を続けている幸せ者な私。
2年経っても成長が見られない私ではありますが、皆様がサイトを訪ねてこられた時、お暇つぶしに楽しんでもらえるサイトであれば幸いです。
これからも、「Flower Ring」をよろしくお願いします。

20.8.31   マチ拝





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