いろんなところにキス7題


1.おでこにキス


「緊張してるみたいだな。」
楽しそうな口調で話しかけてくるのは、親族が着るフォーマルなスーツに身を包んだ公兄。
すでにウエディングドレスを着てメイクも終えた私は、椅子に腰掛けながら聞いていた。
「そんなことないわよ。」
「強がりだな、桃依はいつも緊張するとまばたきが多くなるし握り拳が2つできるから分かりやすいんだぞ。
ほら、いまも2つ立派なのが膝の上に乗ってる。」
「分かってるんだったらわざと言うのやめてよね。」
「いやー、久しぶりにここまで緊張している姿を見たからついつい。」
「公浩、花嫁さんを怒らせないように。」
「はいはい。美登理の方が怒ってどうするんだか。」
「別に怒ってないわ、呆れてるだけよ。」
からかわれている私への助け舟を出してくれた美登理さんは、ごめんねと言いながら公兄の腕を引き、部屋を後にした。
残された私は、近くにあるペットボトルに手を伸ばした。
今日は私と秋定さんの結婚式。
婚約式を済ませた2週間後、今日という日を迎えた。
早い展開についていけないところもあり、緊張はピークに達していると言ってもいい。
「良い日が取れたから。」
大安吉日、しかも日曜日となれば予約で埋められているのではという考えは甘かった。
社長である秋定さんには強力なコネがあるらしく、友人だという人のホテルを使えるということだった。
確かに私も知っている名前で、有名なホテルの社長。
こんな短期間に結婚式を迎えられるのはありがたいことだとは思う。
でも、それでも、もやもやとした物が緊張した心の隣にある。
きれいにメイクされた自分の顔を鏡で見つめながらうれしいはずの結婚式に影を含んだ笑顔をしている自分の顔が映っていた。







「桃依。」
「秋定さん、式の前に新朗が来るなんてダメよ。」
「待ち切れなかったんだ、桃依の花嫁姿を見るのが。」
鏡を前にしたままの状態を過ごしていると、ドアをノックする音が聞こえどうぞと声をかけ入ってきた人は、タキシード姿の秋定さんだった。
白いタキシードに身を包み、スタイルの良さを強調させるだけではなく、爽やかな表情を際立たせている。
入ってきた秋定さんの素敵さに視線が離せない。
こんな素敵な人が私の旦那様になるということが本当のことなのかと頬をつねりたい衝動に駆られてしまう。
なんて古典的な方法を考えてしまったんだろうという思いが行動に移すことを止める。
そして、秋定さんと釣り合いがとれた格好になっているのかと心配になってしまい、秋定さんと私以外がいないこの空間で、照れ隠しに秋定さんに話しかける。
でも、照れ隠しで言った言葉に秋定さんからますます恥ずかしくなるようなことを言われ、頬を染めてしまう。
「きれいだ、俺の花嫁さんは。」
「そんな、秋定さんの方が素敵過ぎて私なんかきれいでもなんでもないわ。」
「夫になる俺がきれいだと言ってるのが信じられない?」
「そういうわけじゃないけど、やっぱりちょっとだけ・・・。」
「ちょっとだけ、何?」
秋定さんは、私が立ち上がり近づいた状態で、私の手を取り穏やかに微笑みながら私の答えを待ってくれる。
そんな秋定さんを前にして、思っていることをなかなか言い出せないでいると、そっと触れてくる大きくて温かい秋定さんの手を頬に感じ、そばにいてくれるんだということを肌で感じて、少しだけ私に素直になる力をくれる。
「本当に私なんかが秋定さんの花嫁になってもいいのかなっていまさらなんだけど考えちゃうの。
本当だったら秋定さんには私なんかより素敵な女性がいるんじゃないかって思えて仕方がないの。」
本心からの私の告白。
社長である秋定さんには縁談話があったことは知っている。
その中には秋定さんに似合っていると思える女性が何人もいた。
それなのに、秋定さんが私を選んだことは奇跡、ううん、もしかしたら後悔しているかもしれない、そんな考えが私の中で不安を生んでいた。
「そんなことを考えてたのか。」
優しい囁きの秋定さんの声。
私の考えを笑うわけでもなく怒るわけでもない、優しい声。
「誰であろうと桃依の代わりなんていないのに、そんな寂しいこと言わないでくれ。
俺にとって桃依は誰よりも大切な人で、生涯一緒に過ごしたいと思えた唯一の女性なのに。
桃依だけが俺に幸せをくれる、甘い気持ちも、甘いお菓子も。
それは、今まで誰も俺に与えることが出来なかったものだ。
だから、俺には桃依がそばにいてくれること、それだけで幸せをくれている。
俺みたいな人間が桃依と出会うことが出来たことを感謝しているんだ。
桃依にとって俺がそういう風に思ってもらえるほど偉い人間でもなんでもない。
桃依がいてくれることで俺は人間らしい感情を初めて知った欠陥人間と言ってもいいくらいなんだが、こんな俺でも、桃依はいいのか?」
「そんな、秋定さんが欠陥人間だなんて。
私には秋定さんがそばにいてくれることほど嬉しいことはないわ。
結婚なんか絶対にしないと思っていた私が、結婚を決意した人なんだから。
だから私の方こそ秋定さんと出会えたことを感謝しているの。」
「だったら、お互い様だ。
俺達は一緒にいて幸せになるしかないということじゃないかな。
そうは思わないか?」
「そうね、幸せすぎて不安になっちゃったんだわ私。
でも、秋定さんと話してそんな不安も消えていく、ありがとう。」
「こちらこそだよ。
桃依、愛してるよ。」
「私も愛してるわ、秋定さん。」
視線を絡みあわせお互いの顔が微笑みに変わる。
そして、
「本番まで誓いのキスはお預けだけど、一生桃依を愛し、幸せにすることを誓うよ。」
秋定さんの唇が私のおでこに優しくキスをする。
数秒の間だったキス、ゆっくりと離れていく秋定さんに私も誓いの言葉を口にする。
「私も、秋定さんを愛し、一緒に幸せになることを誓います。」




そして、私達を呼びにきた係りの人の声に手を繋ぎ部屋を後にする。
教会で再び誓いの言葉を口にした私達は、今度はお互いの唇に誓いを伝えあう。
おばあ様、両親、公兄、美登理さん、親族に見守られながら私達は夫婦となった。
その後、披露宴に移動をした私達を待っていたのは、友人達。
心から私達の結婚を祝ってくれているのが伝わってきて、涙を流してしまった。
もちろん友人以外の秋定さんの仕事の関係者の方が多かったけれど、友人達が披露宴を盛り上げてくれて楽しい時間が過ぎていき、披露宴の間もそばに寄り添ってくれる秋定さんに私は自分の幸せを笑顔で伝え、幸せを分け合い、幸福に包まれた時間を過ごすことができたのだった。


+おわり♪+




やっと書けた結婚式♪
婚約式が抜けているのでは?という言葉は心に納めて置いてください。
とりあえずは甘甘な2人でございます(笑)
「砂糖菓子のような恋」アンケート1位に投票してくださってありがとうございました。





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